もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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さすがにあの料理は厳しすぎたようです……


やり過ぎた粛清

 そろそろあの問題児共の起床時間だ。私は一夏にバレないように真耶と見張りを交代する為にコッソリと寮長室から抜け出し、一夏たちの部屋の前を通る。

 

「さすがにトイレの事はバレたら怒られるだけじゃ済まないだろうからな」

 

 

 一夏が提案したのは、あくまでも最低限の生活を認めたプログラムだ。トイレに行かせないなど、一夏の案には含まれていないのだからな。

 

「授業にも普通に参加させ、それ以外の時間は学園の修繕に邁進してもらい、あの場所で反省させる……そんなので本当にあの問題児共が更生すると思ってるのだろうか」

 

 

 正直私は、奉仕部屋で生活させた方が反省する可能性が高いと思っている。もちろん、反省の前に壊れる可能性だってあるが、それで終わるならそれだけのヤツだったと言うだけだ。イギリスやフランス政府に新たな候補生を探すように提案すれば良いだけの話しなのだから……

 

「日本に義理立てするつもりも無いが、他国の候補生が潰れればそれだけ日本が有利になるからな」

 

 

 私が引退してから、日本の国際大会の結果は芳しくない。IS先進国でありながら操縦者の育成に苦戦している為に、現在の国際順位はそれほど高くは無いのだ。

 

「更識妹には期待出来そうだがな」

 

 

 一夏が鍛えている更識妹は、現段階で最も代表に近しい存在にまで成長している。このまま行けばいずれアイツが日本代表になるだろう。

 

「だが、アイツも真耶と似た問題点があるからな……それさえ克服すれば姉にも負けないだろうに……」

 

 

 その問題点はあがり症だ。人前や大会本番になると本来の実力以下しか発揮出来なくなる厄介な症状なのだ。

 

「まったく、私の後の代表はろくなヤツが居ないんだな……」

 

「そうだな、アンタが一番ろくでもないがな」

 

「………」

 

 

 何故此処に居るのだろう……部屋には確かに一夏の気配があった。それはちゃんと確認したはずなのに……

 

「さてと、まずはどれから説教してほしい?」

 

「待て! 私の言い分を聞いてくれ!」

 

「ほう、何か申し開きでもあると言うのか」

 

 

 一夏は鋭い視線のまま、私の言い分を聞く為にその場に座った。脚を組み偉そうな態度なのだが、不思議とそれが気に障らない貫禄を持ち合わせているのだ。

 

「一夏の案ではアイツらは更生しない!」

 

「だが、アンタのやり方では最低限の生活を送れて無い」

 

「……逃げ出す可能性があるから、まだ認める訳にはいかなかったんだ!」

 

 

 本来ならまだ特別指導室で反省していなければいけない状況なのだ。下手に自由にしたら逃げ出す可能性が高いのは一夏だって分かってるはずなのだ。

 

「アンタが本気で見張れば、そこでタヌキ寝入りしてるシャルロットだって容易には逃げ出せないだろ」

 

「僕がタヌキ寝入りだって気付いてたんだ」

 

「夜更けにも言ったが、呼吸の仕方で分かるだろそんなの」

 

「むしろ気付かれて無いとでも思ってたのか?」

 

 

 一夏はもちろん、私だってデュノアのタヌキ寝入りには気付いていた。この餓鬼は容易に信じられる相手では無いからな。

 

「酷いな、僕だってちゃんと反省してるんだよ?」

 

「嘘だな。反省してるなら三度も特別指導室の世話になる事もなかっただろ」

 

「兎に角、今後トイレにはちゃんと行かせる事」

 

 

 これが一つ目の説教だろう。あと何個あるんだ……

 

「次、自分から監視を申し出ておいて、何あっさりと後輩に押し付けてるんだよ」

 

「あれは真耶も納得して交代したんだ!」

 

「なら何故あの人はアンタに無理矢理押し付けられたと俺に言ったんだ?」

 

「それは……」

 

 

 正直、フェアな交渉でなかった事は認める。半ば強引に納得させ、さらに辛い時間帯を全て真耶に押し付けたのも事実。だが決して無理矢理ではなかったはずだ。ちゃんと報酬も渡したし、真耶も納得してたはずなのに……

 

「ほう、その報酬とは何だ?」

 

「んな!? 何故その事を……」

 

「忘れたのか? 俺は相手の表情から何を考えているのかある程度読み取れるって」

 

「………」

 

 

 忘れていた。一夏の前で表情を露わにしたら、それは心の内をさらけ出すのと同意である事を……一夏の前で隠し事は不可能である事を……

 

「その報酬次第では、あの人も説教対象になるがな」

 

「……束が作った妄想DVDの真耶バージョンだ。それだけの加工なら既に出来るようになったと報告を受けてな。それで束に格安で頼んだんだ」

 

「アンタ今月金が無いとか言ってたよな? それでセシリアの件を調べる代わりに俺から報酬を受け取った。まさかその金で頼んだとか言わないよな?」

 

 

 一夏の放つプレッシャーに、少しずつではあるが殺気が混ざってきている。これは本気で危ない時の一夏のオーラだ……

 

「当たった宝くじからその報酬は出した。だが一夏から貰った金にはまだ手をつけていない」

 

「宝くじ? アンタ金あるじゃねぇかよ」

 

「もう無い! 束に払ったので全て使い尽くした!」

 

 

 これは嘘ではない。事実当たったのもそれほど高額では無いし、束から要求された報酬はその殆どだったのだから……

 

「そして最後に、アンタ誤魔化して済ますつもりだっただろ」

 

「……何の話しだ」

 

「俺が此処に来る前に山田先生と交代し、あたかもずっと監視をしていたように見せかけるつもりだったろと言っている」

 

 

 何故その事が分かるのだろう……実際にはそのつもりだったし、真耶にも口裏を合わせるように脅しをかけておいたのに……

 

「まぁアンタもこの場所で生活したいのなら、最初から言ってくれれば良かったのに」

 

「ま、待て! いや、待ってください!」

 

「何を待てというんだ?」

 

「これからはしっかりと監視もしますし、誤魔化す事もしません! だからチャンスを!」

 

「……次は無いからな」

 

 

 そう言って一夏は放っていた殺気を収め視線を私から逸らした。

 

「ちゃんと授業にも参加させ、その後でしっかりと修繕活動をさせるように」

 

「分かった」

 

「それから! トイレには行かせろよ。いくらゴミ置き場とはいえ悪臭を苦情の原因になるからな」

 

「承知した」

 

 

 さすが生徒会副会長、学園問題もしっかりと考えているとはな……

 

「そういえば一夏、部屋にあったお前の気配、如何やったんだ?」

 

「簡単だ。寝起きのアンタを誤魔化す為に、刀奈に俺の服を着させて気配を偽っただけだ」

 

「服だけで偽れるのか?」

 

「普段のアンタなら無理だ。だがアンタは俺を誤魔化す為に強い気配察知は使えなかった。使えば俺に気付かれるから。だから誤魔化せたんだ」

 

「なるほど……」

 

 

 私とした事が、一夏の方が一枚も二枚も上手だという事を失念していたとは……

 

「それじゃあコイツらは任せるからな。俺は今頃騒ぎになってる部屋を沈静化しに行かなきゃいけないからな」

 

 

 それだけ言い残して一夏は姿を消した。相変わらず瞬間移動の腕はさすがだな……

 

「さて貴様ら、起床の時間だ」

 

「もう起きてますよ」

 

「身体中が痛いですわ……」

 

「今何時ですか?」

 

「朝の五時半だ。これより裏庭の修繕活動を行う」

 

 

 一夏に言われた通り、コイツらには学園の修繕の大半を担ってもらう予定なのだ。もちろん無償なので資金の事を気にしなくていい。

 

「まともなご飯が食べたいです」

 

「私もですわ……」

 

「腹に入れば皆同じと思ってた自分が恨めしい……」

 

「安心しろ。今日も私の特製だ」

 

 

 一夏曰く、これが一番反省を促すのに効果的だという事だが、私だって成長してるのだ。何時までも殺人料理を作るわけでは無いのだ!

 

「ちなみにメニューは?」

 

「味噌汁と焼き魚だ」

 

 

 コイツらが作業してるのを確認しつつ、しっかりと調理室で朝食を作る予定なのだ。

 

「一夏さんの料理が食べたいですわ……」

 

「お前は食べた事あるのか?」

 

「夏休みに少し……」

 

「僕も……」

 

 

 修繕活動をしながら、問題児三人は何か話している。これで作業の手が止まれば遠慮無く殴れるのだがな……

 

「それでは私は朝食の準備をしてくる。見張りがいないからと言ってサボらないように。気配で分かるからな」

 

 

 問題児三人に釘を刺し、私は調理室へと向かう。昨日散らかしたものはちゃんと片付けたから、今日は問題無く使えるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 問題児更生プロジェクト一日目の放課後、俺は生徒会に来た陳情に目を通し頭を押さえた。

 

「何か問題でもありましたか?」

 

「料理部からの苦情だ。調理室が使い物にならなくなってしまう前に織斑先生を止めてほしいとな」

 

 

 陳情書を虚に渡して、俺はもう一度頭を押さえる。あの料理のおかげで、問題児たちは逆らう素振りを見せずに大人しく作業している。授業中も前みたく目立つような行為もせずにしっかりと参加しているので、あの物体は継続して食わせたかったのだが、調理室が悲惨な状況になってしまってはな……

 

「ちょっと調理室に行ってくる」

 

「私も行きます。場合によっては掃除しなくてはいけませんので」

 

「そうだな……じゃあついてきてくれ」

 

 

 多分に漏れず、刀奈は今日も生徒会室には来ていない。まぁ今日は元々仕事無しの連絡があったので来て無くても仕方ないのだが……

 

「織斑先生の家事スキルって、確か絶望って言ってませんでした?」

 

「まぁ恐らくは見れば分かるとは思うが……」

 

 

 アイツらが食わされていたものをチラッと見たが、あれを料理と呼ぶのは全料理人、並びに主婦や主夫の方々に失礼に当たる行為だろう……

 

「失礼します」

 

「………!?」

 

 

 調理室のドアを開け、虚が異変に気付いた。異臭や黒煙が調理室に充満しているのだ。

 

「何ですかこれ!? どれだけ失敗すればこれほど散らかせるんですか……」

 

「いや、まだこれならマシだ。掃除すれば終わる程度で良かった」

 

 

 あの人は、過去にキッチンを爆破して使い物にならなくした前科があるのだ。それに比べれば汚し放題の散らかし放題で済んでるのは、俺にとってはマシな結果だ。

 

「さて、さっさと片付けて部屋に帰るぞ」

 

「片付くんですか?」

 

「問題無い。爆発して無ければな」

 

「……無駄に前向きですね」

 

 

 正直悲惨な状況と言われ、俺はまた爆発したのかと思ってたからな。あの時の片付けやご近所への説明の手間に比べたら、こんなの大変のうちに入らないさ……

 

「いったい何を作ればこうなるんですかね?」

 

「ゴミから察するに、昼はしょうが焼きだったようだな」

 

 

 ゴミ箱に捨てられた豚肉が入っていたトレイと、何故か捨てられているしょうがが入っていた袋を虚に見せる。まさかしょうが全てを摩り下ろしたとか言わないよな……

 

「しょうが焼きなら私でも何とか作れますけど、ここまで散らかしませんよ」

 

「虚は着実に成長してるからな。だがあの人は元々の虚以下だから……」

 

 

 フライパンに残ってる匂いから、どれだけ調味料を使ったのかを計算する……まさか一本醤油を使ったんじゃないだろうな……

 

「一夏さん、此処に漬け置きしたと思われるボウルがありますけど」

 

「どれ……ッ!?」

 

 

 何でしょうが焼きの付け置きにクサヤの臭いが交じってるんだ……あの人いったい何を作ったと言うんだ……

 

「虚、早急に窓を開けて室内の換気! それから消臭スプレーを! このままじゃ服に臭いが付く!」

 

「は、はい!」

 

 

 大慌てで虚に命じ、俺はボウルを水に漬ける……これでどれだけ落ちるか分からないが、なるべくまだ使えるようにはしたい……新しいものを買う予算など無いのだから……

 

「持ってきました!」

 

「そこにおいて置け。とりあえず洗い物と煤を払って掃除を終わらせる。消臭はそれからだ」

 

 

 臭いを気にしながらでは掃除も進まないので、とりあえずは気にしないようにした。だがやはりどこかで気になってしまってなかなか掃除は進まない……

 

「一夏居る?」

 

「簪? 如何かしたのか?」

 

「例の三人が腹痛で保健室に運ばれたって連絡が」

 

「………」

 

 

 如何やらこの罰は効き過ぎたようだ……反省の前に脱落するとは……

 

「経過観察で、大丈夫そうなら作業に戻すように伝えてくれ。それから食の管理はこれから俺がやるとも」

 

「分かった」

 

 

 あの人の作ったものを平然と食べられるのは駄ウサギだけだったか……やはりこの罰は問題児三人にも過酷過ぎるものだったようだ……

 

「とりあえず片付けを終わらせるか……」

 

「一夏さんも大変ですね」

 

「仕方ないさ。あれは義姉だからな」

 

 

 義姉が散らかした場所は、義弟である俺が片付け、その後で説教をするしか無いのだ。何せあの義姉には片付けスキルなど皆無だし、あの義姉を説教出来る他人も、また皆無なのだからな……

 

「結局面倒事の原因はあの人かよ……」

 

「一夏さんが亡国企業に狙われる原因も、突き詰めると織斑先生の所為ですしね」

 

「それと駄ウサギだな。諸悪の根元が俺の身内だからな……この場合は誰を恨めば良いんだ?駄姉? 駄ウサギ? それとも俺の運の無さ?」

 

 

 俺の質問に、虚は答えてはくれなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もの凄い痛みと共に、私は目を覚ました。

 

「この痛み……姉さんの作ったクッキーを食べた時以来だ……」

 

 

 腹痛に悩まされる事など、久しくなかったのだが、千冬さんの作ったものは、その私の胃を鋭く攻撃したのだ。

 

「一夏め、私たちにあんなものを食べさせるとは……」

 

 

 一夏に同じものを食べさせないと気が済まないぞ! だが今の私の立場はかなり弱く、一夏に逆らおうものなら退学にさせられるかもしれないのだ。

 

「ううん……僕たちは生きてるの?」

 

「一応はな。だが私もかなり痛い」

 

「まさかご飯を食べて死にそうになるとは思いませんでしたわ……」

 

 

 あれをご飯と呼んで良いのかは微妙だが、あれが原因で倒れたのは事実だ。作業中に強い腹痛に襲われ、そのまま三人とも保健室に運ばれたと言うところか……

 

「織斑先生って、セシリアより料理が下手だったんだね……」

 

「失礼ですわ! 私はあそこまで酷くありませんもの!」

 

「いや、お前のも十分酷い。だが千冬さんのはもっと酷い、それだけだ」

 

 

 姉さんも壊滅的に料理が出来ない人だが、千冬さんもそれと同等かそれ以上に出来ない人だしな……だから一夏の家事スキルが上がっていったのだが。

 

「これで僕たちは解放されるのかな?」

 

「如何でしょう。一夏さんが許してくれるとは思えませんし……」

 

「私たちを保健室送りにしたんだ。これで解放しないのなら抗議してやる」

 

「ほう、それだけ元気があるのなら、今すぐ作業に戻しても良いんだが?」

 

 

 誰の気配も無かったはずの場所から声が聞こえてきた。そしてその声は男のものだった。

 

「「「一夏(さん)!」」」

 

「まぁあの物体を食わされたら腹も壊すわな……」

 

「お前が食わせたんだろうが!」

 

「騒ぐな! とりあえず今日一日は大人しく保健室で寝てるんだな」

 

「明日は?」

 

「状態次第では作業に戻ってもらう。もちろん食事は別メニューになるから安心しろ」

 

 

 とりあえず千冬さんの壊滅料理はもう食べなくていいのか。それだけでもホッとするな。

 

「そして原因であるあの人への粛清はすでに終了した。明日からはもう少しマシな監視になるだろうよ」

 

「ですが一夏さん、私たちは不当な労働を強いられているのですよ?」

 

「不当? 本来なら退学でもおかしく無いのをこうして残れてるんだ。感謝されても恨まれる筋合いは無い。嫌ならさっさと国にでも帰ったら如何だ? もちろん今の地位は全て失うだろうがな」

 

 

 そう言って一夏は人の悪い笑みを見せた。セシリアやシャルロットは今国に帰れば候補生の地位を失い、更には出来損ないの烙印を押される事になるだろう。その事が分かってるから、一夏はああも強気で居られるんだろうな。

 

「それから篠ノ乃、お前は次に問題を起こしたら容赦無く退学、その後駄ウサギに処理してもらう事になってるからそのつもりで」

 

「何故だ! 私は何も悪い事してないだろうが!」

 

「……自覚してないようだから言っておくが、この中で一番問題行為が多いのが貴様だ! 問題行為の質が一番悪いのはシャルだが、お前はそれに次ぐ酷さなんだからな」

 

「なっ! コイツの次だと!?」

 

 

 私から見ても、シャルロットの問題行為は酷いものだと思える。だが一夏は私がその次に酷いと言ったのだ。

 

「私は悪く無いだろ! 全てお前が悪いんだからな、一夏!」

 

「……そうやって罪を認めない。だからお前は何度も同じ事を繰り返す」

 

 

 一夏の呆れ顔に腹が立ち、私は咄嗟に武器を探した。だが苛立った所為で腹痛が私に襲い掛かった。

 

「クッ……」

 

「その攻撃性、問題無しだと思ってるのはお前だけだ」

 

 

 そう言い残して一夏は保健室から姿を消した。現れた時もだが、消える時も私たちには一夏の気配を掴む事は出来なかった。

 

「一夏さんの言ってる事は事実ですわね。シャルロットさんも酷いですが、箒さんも大概ですし……」

 

「僕はひどく無いでしょ? 箒の方がよっぽどだよ」

 

「んな!? お前より酷いヤツが居るか! 自覚してないようだな、お前は!」

 

「箒に言われたく無いよね。まったく自分が悪いなんて思って無いんだから!」

 

「悪いのは一夏だ!」

 

 

 私を無視し、見下し、馬鹿にする一夏が全て悪いのだ。私は悪く無い。

 

「ホント馬鹿だね、箒ちゃんは」

 

「なっ!? 姉さん!?」

 

「悪いのはいっくんじゃなくて箒ちゃん。それは全員が分かってて箒ちゃんだけが分かって無い事。だから束さんは箒ちゃんの専用機を造る事を止めたんだよ」

 

「箒? 如何かしたの?」

 

「そこに姉さんが……」

 

「誰も居ませんわよ?」

 

 

 如何やら二人には見えていないらしい……だが姉さんがこんな事を言うとはな……私は姉さんに見捨てられたのだろうか……




腹痛だけで済んだのはよかったのでしょうか……

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