もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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310話目です。今年はずっといけそうですね


甘えん坊な年上の彼女

 お昼の準備はしっかりと一夏が終わらせていて、私たちはまたまた一夏に全てを任せた形になってしまった……仕事が速いのは良い事なんだけど、一夏の場合早速過ぎとも言えるくらいのスピードなので、私たちが手伝う隙が無いんだよね……

 

「おりむ~おりむ~、いったい何時ご飯を作ったの~?」

 

「手抜き料理だからな。それ程時間はかからなかったから気付かなかったんだろ」

 

「手抜き? これが……」

 

 

 今日のお昼は魚介のパスタとオニオングラタンスープ、これが手抜きだと思う人は今すぐレストランに行ってシェフの人に頭を下げるべきだと思う……

 

「ホント一夏君は有能だね~。毎日美味しい料理をありがとね」

 

「珍しくお嬢様がまともな事を言ってますね」

 

「虚ちゃん!? 珍しくは酷くない!?」

 

「でも、確かに一夏様の料理は美味しいですよね。実家と比べると明らかです」

 

 

 確か美紀のお母さんって料理苦手なんだっけ……お手伝いさんが作ってるらしいけど、それもそんなに美味しくなかったんだ……

 

「普段食堂で食べてばっかだからね。偶にはこう言う美味しいご飯もいいね」

 

「エイミィ、それは食堂のオバサマ方に失礼だろ」

 

「もちろん食堂のも美味しいんだよ? でもやっぱり一夏君のは格別だよ」

 

 

 一夏にジト目で見られ、エイミィは慌てたように食堂の料理のフォローを始めた。まあ確かに美味しいのは分かるけど、一夏のと比べちゃ駄目だよ……有名店も真っ青なくらいの腕前なんだから。

 

「さて、午後もちょっと抜けるからな」

 

「また? 何かあったの?」

 

「うんまあ……馬鹿二人を追加で面倒みなくてはいけなくなった」

 

「馬鹿二人? 誰の事よ」

 

「静寂は知らないと思うが……俺の中学時代の悪友二人だ」

 

「それって文化祭に来てた?」

 

「一人はそうだ。もう一人は多分須佐乃男以外知らない」

 

「もしかしなくても数馬様ですか?」

 

「そうだ。あの低空飛行組に泣き付かれた」

 

 

 須佐乃男は中学時代の一夏を間近で見れてたんだよね……あの時は一夏の腕に巻きついてたから……

 

「と言う訳で、俺は別の高校の阿呆の面倒もみないといけないから何かあったら電話してくれ」

 

「珍しいね~。おりむ~が私たち以外の面倒をみるなんて~」

 

 

 確かに。一夏は基本私たち以外の面倒を進んでみようしないのに、いくら相手が友達だからって一夏がこんな簡単に面倒事を引き受けるとは思えないのだけど……

 

「馬鹿二人だけなら俺だって放って置くさ。だがその彼女まで思うと、さすがにな……」

 

「確か一人は榊原先生と付き合ってるんだっけ?」

 

「そっか。それは刀奈も知ってるんだっけか」

 

 

 榊原先生と付き合ってると言う事は、この間のデートの時に偶然あったあの男の子か……ちょっと怖そうだったけど、しっかりと榊原先生の事を庇ってたし、意外と優しい人なのかもしれないんだよね。

 

「もう一人は軍を挙げて命を狙われるらしいからな」

 

「何ですか、それ?」

 

「数馬の彼女はドイツ軍の副隊長なんだよ。その人との約束に、赤点を取るといけなくなるから、悲しませた罰として軍に命を狙われるとか言ってた」

 

「随分と凄い話ですが、ですが数馬様がどの様な経緯でドイツ軍の方とお知り合いに? そして一夏様にどの様な関係が?」

 

「そのドイツ軍の人ってのは、ラウラの部隊副官だ。そして数馬に脅しを掛けたのはラウラだ」

 

「なるほど……ラウラさんならありえそうですね」

 

 

 この中で唯一一夏の二人の悪友を知っている須佐乃男は、しきりに頷きながら遠い目をした。恐らくその二人の事を思ってるのだろう。

 

「それじゃあ午後は私たちだけで面倒をみるってこと?」

 

「終わり次第俺もみるが、纏めて作るからどれくらいかかるか分からん」

 

「一夏さんも大変ですね……」

 

 

 虚さんが同情するようにつぶやくと、お姉ちゃんもつられて頷いた。普段迷惑掛けてるのはお姉ちゃんだと思うんだけどな……

 

「……また電話? 今度は誰だ」

 

 

 一夏はポケットから携帯を取り出して相手も確認しないで電話に出る。普段から確認してないけど、何でしないんだろう……

 

「はい? ……何か?」

 

 

 皆が一夏の電話の相手を確かめようと一夏の携帯に耳を近づける。その事に気付いた一夏は携帯をスピーカーモードに切り替えた。多分密着されるのを嫌ったんだろうな。

 

『酷いよいっくん! 昨日はいきなり殴り倒すんだから! 漸く目が覚めたんだからね!』

 

「人に致死量の睡眠薬を飲ませたアンタは酷くないんですか?」

 

『あれはちょっとしたイタズラだよ~』

 

「下手すりゃ死んでたんですが? それでもイタズラだと?」

 

 

 致死量の睡眠薬……そんなのを飲まされてたんだ……

 

『それよりもいっくん! ちーちゃんがまだ起きないんだけど』

 

「そんな事は知らん。大体アンタが殴られたのも駄姉が殴られたのも自業自得だ。俺が知った事じゃ無い」

 

『そんな事ないよ~! いっくんが私たちを構ってくれないからああなるんだよ~』

 

「いい大人が何を子供じみた事を……そんなんだから嫁の貰い手が無いんですよ」

 

『一生いっくんに面倒みてもらうから大丈夫だも~ん!』

 

「だれが見るか誰が! クロエさんにでもみてもらえば良いだろ! まあ捨てられなければの話だがな」

 

『クーちゃんは束さんを見捨てたりはしないよ~』

 

「あっそ。用が無いなら切るからな」

 

『ああ、待って待って!』

 

 

 一夏が電話を切ろうとしたら、篠ノ乃博士が大慌てで一夏を呼び止めた。

 

「何だ?」

 

『ちーちゃんに頼まれたものを渡したんだけど、まだ代金貰ってないんだよね~』

 

「それで? 俺に如何しろと」

 

『いっくんが立て替えてくれないかな~?』

 

「断る。大体俺と駄姉の財布は別なんだ。駄姉の為に俺が金を使う義理も無い」

 

 

 そう言って一夏は容赦無く電話を切った。一夏と織斑先生の確執はまだ解決してないようだった……夏休み明けくらいから何となくぎこちないんだよね……

 

「ったく、面倒な駄ウサギだ」

 

「一夏様、本当に篠ノ乃博士とお知り合いだったんですね。昨日のは夢かと思ってましたよ」

 

「昨日? ……ああ、あの馬鹿共を制裁した時か」

 

 

 多分世界中何処を探しても、篠ノ乃博士と織斑先生の事を馬鹿共と言えるの人は居ないだろうな……ホント一夏は凄いなぁ。

 

「兎に角、あの馬鹿ウサギの事を尊敬の目で見るのは止めるんだな。あれはただの馬鹿だ」

 

「一夏君、馬鹿って二回言ってるよ」

 

「静寂も見ただろ。あれはただの馬鹿だ」

 

「三回目……一夏様はホント束様がお嫌いなのですね」

 

「あの件に絡んでるからな。てか、アイツも元凶の一人だ」

 

「そうなんですがね……ですが、一夏様の恩人でもあるんですよね?」

 

「恩人? 今までの苦労と相殺してもしきれないくらいの面倒をかけられたんだが?」

 

「……一夏様、私に当たってもしょうがないですよ……てか怖いです」

 

 

 一夏の眼光鋭い視線に、須佐乃男が後ずさる……よほど苦労してきたんだろうね、そこまで怒るなんて……

 

「一夏さん、そろそろ午後の勉強を始めた方が良いでしょうか?」

 

「ん? ……ああ、もうこんな時間か。そうだな、始めてくれ。俺は片付けたらちょっと出るから」

 

「分かりました。それでは皆さん、そろそろ始めますよ」

 

 

 虚さんが一夏の代わりに率先して勉強を見るようで、私たちはその手伝い。最上級生でありその学年のトップである虚さんが仕切るのは当然と言えば当然だ。

 

「午後のテストは五時になったら始めますので、それまでは各自このプリントをやっておいて下さい。分からない箇所は下手に考え込まずに私たちに聞いてくださいね」

 

「おね~ちゃん、まず全てが分からないんだけど」

 

「……何でですか?」

 

「英語が苦手だから~」

 

 

 如何やら午後の勉強は英語を主にやるらしい……一般教科も勉強しておかないと駄目だからね……

 

「本音が得意な科目ってあるの?」

 

「無いよ~。そう言うカスミンは?」

 

「私も……全部苦手」

 

 

 そう言えば香澄も勉強が苦手なんだっけ……それにしたらここでは何時もトップ取ってるんだよね……まあ他の五人が酷いってのもあるんだけどさ……

 

「兎に角まずは少しくらいは自分でやって……辞書を使っても良いですから」

 

「え~! おね~ちゃんが分からなかったら聞けっていったんじゃ~ん!」

 

 

 確かに虚さんはそう言ったけど、まさか初めから躓くとは思って無かったんだろうな……キッチンで一夏が噴出したのが聞こえたような気がしたけど、それを確かめる術は無い。一夏も初めから分からないなんて思って無かったんだろうな……

 

「それじゃあ虚、頼むな」

 

「はい……早速不安ですが……」

 

 

 一夏が部屋から出て行く前に、もう一度虚さんに此処の中心を頼んでいった。やっぱり一夏が一番信頼してるのは虚さんなのかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虚たちに六人の世話を任せたのは良いが、俺は何処で作業しようか……昨日みたいに生徒会室でも良いんだが、あそこだと視界に溜まった仕事が入ってきて如何してもそっちに気を取られるんだよな……完全シャットアウトは疲れるし、今の身体ではあまり使いたくない……

 

「かといって別の場所に心当たりがある訳でも無いし……」

 

 

 さて、何処で作業するべきか……いっそのこと駄姉の部屋で……

 

「いや、それは無いな……」

 

 

 さっきの駄ウサギの話だと、駄姉はまだくたばってるらしいし、後処理も面倒だからな……

 

「あれ、一夏君じゃないの。何してるの?」

 

「ナターシャ? 別に何もしてないが……そう言うお前は?」

 

「私? 私は職員室に用があって、終わったから部屋に戻ろうかなって」

 

「なるほど……」

 

「一夏君が持ってるのって、高校の授業資料だよね?」

 

「ああ。一般の高校に通ってる馬鹿二人に頼まれてな……テスト対策の問題集を作る破目になった……」

 

 

 馬鹿二人だけなら、さっきも言ったように見捨てても良かったんだが、その恋人にまで関係してくるとなると、見捨てると目覚めが悪い気がするんだよな……

 

「それで、一夏君はその資料を持って何処に行くつもりだったの?」

 

「さぁ? 俺もまだ決めてなかったんだが」

 

「それじゃあさあ、私の部屋に来ない?」

 

「ナターシャの? また何で」

 

 

 この前行ったばっかだし、それほど散らかっては無かったような気がするんだが……

 

「私の部屋なら落ち着いて作業出来るだろうし、それにコーヒーくらいなら出せるよ」

 

「隣の山田先生が乱入、とかは無いよな」

 

「多分大丈夫。それに山田先生出かけてるっぽいし」

 

「出かけてる?」

 

 

 あの人を連れ出しそうな駄姉は気絶してるし、完全に個人で出かけたのか?

 

「榊原先生に引っ張られていったよ」

 

「ああ……」

 

 

 そう言えばこの前も榊原先生に連れられてたっけか……確かデート用の服を買うのに付き合わされたとかで……今日も似たような事なのかもな。

 

「それじゃあお邪魔しようか」

 

「やった!」

 

「ん?」

 

 

 何故だかナターシャがガッツポーズをしている。それほど嬉しい事なのだろうか?

 

「それじゃあ行きましょ」

 

「ああ……なあナターシャ」

 

「なに?」

 

「近くねぇか?」

 

 

 完全に腕組みしてるような距離感だ……さすがに近いだろ。

 

「気のせいだよ。それに、一夏君と私は付き合ってるんだから、これくらい気にしないの」

 

「はぁ……まあいいけどよ」

 

 

 最近ナターシャのアタックが激しいよな気もしないでもないんだが……彼女の中で一番構えてない上に部屋も別だからな……これくらいは仕方ないのかもしれないが。

 

「ふっふん~」

 

「………」

 

 

 鼻歌混じりにスキップでもしそうなくらいテンションが高いナターシャを間近で見て、もう少し構ってやった方がいいんだろうかとも考えさせられる。計画してる打ち上げにはナターシャも呼んでやるか……

 碧も一応はついてくるが、迷子る可能性が高いからもう一人くらい引率が必要だしな……別にそこまで遅くまで遊ぶつもりではないが、テンションが上がると如何なるか分からないヤツが若干名居るからな……

 

「なあナターシャ」

 

「ん~? な~に?」

 

「テスト終わりにみんなで出かけようとしてるんだが、お前も来るか?」

 

「みんなって?」

 

「今部屋に居る連中と。まだ話しては無いがな」

 

「勉強の打ち上げ? でも私も行って良いの?」

 

「一応引率って形で良いんじゃね? 碧一人だと如何も心もとないと言うか……」

 

 

 あのドジっ子だけは如何にかならないのだろうか……それが無きゃ安心して物事を頼めるんだがな……まあ、あれが碧の売りって言えばそれまでなんだが。

 

「それじゃあ行く! ……あっ、でもまだ秘密なんだよね?」

 

「先に教えると浮かれて駄目になりそうなヤツに心当たりがあるからな……テストが終わってから話すつもりだ」

 

「そっか。それじゃあ私も黙っとくね」

 

「そうしてくれ」

 

 

 ナターシャと話しながら教員の寮に到着した。寮長は居ないし、原則として男子禁制のIS学園内にある教員寮に男を連れ込もうとする猛者は存在しないから必要ないんだがな……だが俺は最近此処に来る回数が多い気がするんだが……

 

「今日は片付いてるから気にしなくて良いよ~」

 

「ナターシャだけが俺に下着見られて恥ずかしがるんだよな」

 

「他の子は大丈夫なの?」

 

「ああ。初日に抵抗を見せた静寂も、今日は普通に洗濯したし」

 

 

 てか、昨日の夜にはもう何も言ってこなかったな……金曜の夜だけか、抵抗したのは……

 

「一夏君は主夫だからね。一度洗濯されたら、もう抵抗するだけ疲れるって分かるんじゃないかな」

 

「大体着けてるわけじゃないんだし、見られて恥ずかしいとか思うものなのかね……」

 

「一夏君、それってちょっと問題発言じゃない?」

 

「何処が? 洗濯物なんだから気にするだけ無駄だって言っただけだが」

 

「致命的にズレてるよ……やっぱり小さい頃から女性の下着に見慣れちゃってるからかな」

 

 

 俺だって慣れたく無かったさ……だが、駄姉や駄ウサギが洗濯すると衣服がボロボロになり、酷いと洗濯機も破壊されたからな……一年で何台買ったことか……もちろん資金は壊したヤツ持ちだったがな……

 

「さ、どうぞ」

 

「お邪魔します」

 

 

 考えると、俺が異性の部屋を訪れるのって、此処くらいなものか……駄姉は異性にカウントされないし、駄ウサギの場合は部屋と言うより研究所だからな……

 

「今コーヒー淹れるね」

 

「別に構わなくても大丈夫だぞ」

 

 

 ナターシャの部屋のテーブルを借りて弾と数馬用の問題集を作り始める。この事が鈴に知られたらまたお人よしとか言われるんだろうな……普段は鬼だ悪魔だ言うくせに、からかう時だけはそう言うんよな、鈴は……

 

「(普通の高校ってのは随分とゆっくり教えてるんだな。弾から範囲を貰った時は驚いた)」

 

「はい、コーヒー」

 

「(だが、この程度でついていけてないとなると、やっぱり弾も数馬も低空飛行なんだな)」

 

「一夏君?」

 

「(彼女持ちになったんだから、もう少し自分で頑張ろうとは思わないものかねぇ……少しは苦労しろってんだよ……)」

 

「お~い」

 

「……ん?」

 

 

 目の前で手を振られて、俺は意識をそっちに向ける。ナターシャが呼んでいたのに気付かずに阿呆二人の事を考えていたようだ。

 

「凄い集中力だね。何を考えてたの?」

 

「馬鹿な悪友二人の事をな……彼女持ちになったんだからもう少しその事を自覚して頑張れば良いのにと思ってただけだ」

 

「そっか。でも、一夏君みたいに何でもかんでも出来る人なんてそうそう居ないんだよ?」

 

「俺だって何でも出来る訳じゃねぇんだが……」

 

 

 人並みくらいに出来ない事はあるつもりだが……如何やら周りにはそうは思われてないのは自覚してる……

 

「とりあえずコーヒー淹れたから飲んでね」

 

「おう、サンキュ」

 

 

 ナターシャに淹れてもらったコーヒーを啜りながら、俺はテスト範囲とにらめっこして問題を製作する。授業を受けた訳じゃねぇから、どの辺を重要視してるのかが分からないので、問題として出されそうなものは全てピックアップして問題に組み込む。

 少し集中して作業してると、背中に何か重みを感じた。

 

「如何かしたのか?」

 

「ううん。急に抱きつきたくなっちゃったの」

 

「そうか……」

 

 

 ナターシャの重みを感じながら、俺は再び問題作成に意識を向ける。問題を作って終わりなら楽なんだが、当然この問題の回答が送られてくる訳だから、俺はそれを採点しなければならないのだ。

 

「(やっぱ断ればよかったな……)」

 

 

 早くも後悔してきたが、引き受けた以上赤点なんて結果には終わらせられねぇからな……榊原先生とクラリッサさんにも悪いし……

 

「(何で人の彼女の心配までしてるんだ俺は……こんなんだから鈴にお人よしだってからかわれるんだろうな……)」

 

 

 暫く集中して作業して、半分以上完成したところで背後のナターシャを抱きしめ返す。何時までも抱きつかれてるとさすがに意識がそっちに持ってかれるのだ。

 

「きゃ!」

 

「少しは我慢してくれ……もう少しで終わるから」

 

「うん……ねぇ一夏君」

 

「何だ?」

 

「後でキスしてほしいな」

 

 

 キスね……随分と積極的な彼女だ……

 

「それで気が済むのならいくらでもしてやるさ。だから今は離れてくれ」

 

「分かった……」

 

 

 さて、ナターシャも離れてくれた事だし、後は数学と理科の問題を作成すれば終わりだ。一気に終わらせてナターシャを満足させて部屋に戻って採点しなければいけないんだよな……俺も学生だった気がするんだがな……何時から教師みたいな事をしなければいけなくなったんだろうな……

 

「コーヒー、もう一杯飲む?」

 

「頼む」

 

 

 どうも集中出来ない……余計な事を考えてしまうのは、きっと疲れてるからだろうな……

 

「(良く考えたら、俺寝てねぇんだっけ……)」

 

 

 集中が続かない理由に思い当たり、俺はコーヒーで誤魔化しながら一気に作業を終わらせた。

 

「それじゃあな。助かった」

 

 

 ナターシャにお礼の意味を込めてキスをして、教員寮から学生寮に戻るのだった……なんだか疲れたな……




日めくりカレンダーも残り僅か……一年って早いですね。

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