もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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今日休んで明日から年明けまで仕事です。


悪友からの頼み

 午前のテストを開始したのとほぼ同時に、俺の携帯に着信を知らせるメロディが流れた。

 

「悪い、ちょっと出てくる」

 

「監督は任せといて」

 

 

 刀奈たちにテストの監督を任せ、俺は廊下に出た。

 

「誰だよ日曜のこんな時間に……」

 

 

 主だった知り合いは部屋に居るし、鈴は電話なんて掛けてこないしな……

 

「もしもし?」

 

『一夏、俺だ』

 

「……どちら様で?」

 

 

 ディスプレイを見れば誰が掛けて来たか分かるのだが、面倒だったので見ずに出たら、相手は名乗らずいきなり俺とか言い出した。まあ声で誰だか分かるんだが……

 

『お前は相変わらずだな……ディスプレイを見てから出たら如何だ?』

 

「それで、いったい何の用だよ?」

 

『お前の学校って、試験何時だ?』

 

「来週だが」

 

 

 一週間でどれだけ赤点から遠ざけられるかが勝負だな。補習になったらなったで面倒だし、さらに駄姉まで俺に絡んでくる可能性が高くなるから……

 

『俺のところは再来週なんだが』

 

「で?」

 

 

 途中から用件は何となく検討がついているのだが、自分の口で言わないヤツの頼みなど聞くつもりは無い。

 

『だから……その……』

 

「用が無いなら切るぞ。俺だって暇じゃねぇんだ」

 

『IS学園だって普通教科はあるよな!?』

 

「うっせ……あるが、それが何だよ」

 

『実は、菜月さんとのデートなんだが……』

 

「赤点だと補習だからいけなくなるってか?」

 

『そう! そうなんだよ!』

 

「だからうっさい」

 

 

 電話越しとは言え、耳元で大声を出されたらそれなりに五月蝿い。よくアニメとかである電話を耳から遠ざけるイメージだ。

 

『悪い悪い……それで頼みなんだが……』

 

「お前の勉強など知るか。大体授業進度が違うだろ」

 

『そう言うなって! 今度俺の秘蔵コレクション貸してやるから!』

 

「いらねぇよ! 大体そんなものを買う金があるなら、榊原先生にプレゼントの一つでもしたら如何だ?」

 

『……普通の学生には厳しいんだって』

 

「まるで俺が普通じゃねぇみたいな言い草だな」

 

『一夏なら稼いでるから大丈夫かもしれんが、バイトも出来ない高校生の身にもなれってんだよ!』

 

「厳さんと蓮さんに頼んでバイトすればいいじゃねぇかよ」

 

 

 別に禁止だと言われてる訳じゃねぇんだし、頼めばあの二人だって分かってくれると思う。

 

『バッ、俺に死ねって言ってるのかよ!』

 

「別に死にゃしないだろうが……大体そこまで恐れるほどか?」

 

 

 厳さんのお玉はそれなりに脅威だとは思うが、蓮さんはそんなに怖いイメージは無いんだがな……

 

『お前には優しいかも知れねぇが、かーちゃんはそりゃ怖いんだぞ』

 

「ふーん……それで、用件はそれだけか? なら切るぞ」

 

『だから、お前に頼むしかねぇんだってば!』

 

「榊原先生に頼めば良いだろ。あの人だって教師なんだし、何よりお前の彼女なんだろ?」

 

『菜月さんに頼むのは、何かみっともないから嫌だ』

 

「既にみっともない成績なんだから、これ以上みっともなくなる事も無いだろ」

 

『おまっ! ……言い返せないのが悔しいぜ』

 

 

 夏休みに見せてもらった弾の成績は、低空飛行と言うか墜落してたのだ。

 

「大体俺に頼むのがおかしいだろ。誰か同じクラスに頼めそうなヤツはいねぇのかよ」

 

『居たら苦労しねぇっての! 大体同じクラスに頭の良いヤツが居たら一夏には頼まねぇよ』

 

「ふ~ん……じゃあ誰か探したら如何だ?」

 

『だから居ないんだって……』

 

「俺には頼まないんだろ?」

 

『だから……スミマセン、教えてください』

 

 

 電話越しでも何となく弾が土下座したのが分かる。コイツはホントプライドがねぇな……

 

「それで、榊原先生とは上手く行ってるのか?」

 

『えっ……あ、ああ。それなりにデートは重ねてるし……』

 

「何だその間は?」

 

『いや……そ、そんな事よりも! 一夏、頼むから勉強を教えてくれ!』

 

「範囲が分からねぇと如何しようもねぇぞ」

 

 

 IS学園の進度が普通の公立校と同じだとは思えないし、そもそも内容にも違いがあるのでは無いだろうか……

 

『範囲が分かれば教えてくれるんだな!』

 

「さぁ、面倒なら断る」

 

『お前は親友がこれほど頼んでるのに断るのかよ!?』

 

「親友? 誰が?」

 

『俺だろ!』

 

 

 ……コイツはこっぱずかしい事を平然と言い切りやがった。確かに友人とは認めてやってるが、親友って……お前なんか悪友で十分だ。

 

「お前ん家、ファックスあったよな」

 

『あ? まああるが……それが如何かしたのか?』

 

「こっちの番号教えるから、範囲を纏めたものを送ってこい。それ次第で考えてやる」

 

『本当だな!? 約束だぞ!』

 

「だから考えてやるだけで引き受けたとは……」

 

『そうと決まれば急いで範囲を纏めた紙をそっちに送るからな!』

 

「あっおい! ……引き受けるとも言ってないし、まだ番号も教えてないんだが……」

 

 

 相変わらずの考え無しだな……まあ榊原先生の為に頑張ろうとしてるのだけは認めてやるが、完全に人任せなのがいただけないような気もするんだがな……

 

「まあ、弾なりに頑張ってるんだろうが……こんなんじゃ蘭に教えてもらうようになるかもしれんな……」

 

 

 自分で言った冗談に、何故だか笑い飛ばせない説得力があって、俺は悪友が居るであろう方向に視線を移し合掌した。

 

「ん? 今度は誰だよ……はい?」

 

『よお一夏、今電話良いか?』

 

「……まず名を名乗れ」

 

『……ディスプレイ見ないクセは相変わらずなのか……俺だ、数馬だ』

 

 

 まあ声で分かってるんだが……それにしても、弾の次は数馬かよ……

 

「何か用なのか? 遊ぶ計画なら当分は無理だぞ」

 

『違う違う、今日は遊びのお誘いじゃねぇんだ』

 

「それで? 遊びじゃねぇなら何の用だ?」

 

 

 それ以外で数馬から電話を貰った事など、あったか如何か……たぶんねぇな。

 

『IS学園って、試験何時だ?』

 

「来週だが」

 

『それじゃあチッと頼みたい事があるんだが……』

 

「勉強なら教えないぞ」

 

『何で分かったんだ!?』

 

 

 ついさっき同じ内容の電話をもう一人の悪友から貰ったばかりだからだ……どいつもコイツも人任せ……少しは自分で何とかしようって気が無いのかねぇ……

 

『頼む一夏! ハルフォーフさんと約束したイベントに、赤点取ったら行けねぇんだよ!』

 

「ハルフォーフ? ……クラリッサさんの事か、ラウラの隊の副長の」

 

『だから頼むよ一夏!』

 

 

 数馬の方も上手く行ってるようだな……だが何故学校の違う俺を頼ってくるんだ……

 

「弾にでも教えてもらえば?」

 

『一夏、笑えない冗談は止めてくれ』

 

「スマン、自分で言っててありえないと思った」

 

 

 数馬の成績は、悪い事は悪いのだが、弾ほど低空飛行ではない。まあ、鈴曰く目くそ鼻くそだが……ホント口がワリィヤツだよな。

 

『頼むよ! ハルフォーフさんのとこの隊長に、赤点取ったら殺すって言われてるんだ……』

 

「ラウラに? また何で」

 

『自分の姉のような相手を悲しませた相手を許さないとか何とか言ってきて……』

 

 

 てか、お前とラウラが繋がってたのが初耳なんだが……

 

「ラウラの事だから脅しって訳じゃないんだろうな……アイツならホントに殺しかねない」

 

『頼む! 俺はまだ死にたくないんだ!』

 

「何処の世界のセリフだよ……とてもじゃないが高校生が言うような事では無いだろ」

 

『俺だって分かってるよ! でも……あの目が……』

 

「目?」

 

 

 ラウラの目の事だろうか? まさか睨まれて失禁したんじゃねぇだろうな……

 

『思い出しただけで震えてくるんだ……』

 

「情けねぇヤツ……ラウラなんて猫みたいなもんだろ」

 

『お前は懐かれてるから分からねぇんだろうが、猫ってのは嫌ってる相手には恐ろしいんだぞ!』

 

 

 てか、ラウラは猫じゃねぇ……

 

「お前といい、弾といい、何で俺に頼むんだよ」

 

『弾? 何だ、アイツも一夏に頼んだのか?』

 

「ああ。先走って引き受けるとも言ってないのに舞い上がった」

 

『馬鹿だな……』

 

「それで、範囲は弾と同じだよな?」

 

『あ、ああ……同じ学校だからな』

 

「お前ん家にもファックスはあるよな?」

 

『あるぜ』

 

 

 なら纏めて相手すれば良いのか……榊原先生もそうだが、クラリッサさんもそれなりに繋がりがあるんだよな……何せラウラがクラスメイトで、俺を兄のように慕ってるんだし……その二人を悲しませるのはさすがに気分が悪いと言うか申し訳無いと言うか……俺、全く関係無いんだがな……

 

「それじゃあ弾から範囲が届いたら……って、アイツに番号教えてないんだった」

 

『何で教えなかったんだ?』

 

「教える前に切ったんだよ、あの馬鹿が」

 

『やっぱ馬鹿だ……』

 

 

 数馬に言われるようじゃ弾もお終いだな……

 

『それじゃあ俺ん家の番号は後でメールする』

 

「分かった。とりあえずこっちの試験と平行してやるから、遅くても文句言うなよ」

 

『何だ? 一夏なら勉強せずとも大丈夫だろ』

 

「俺じゃねぇよ。お前らみたいのがこっちにも居るってだけだ」

 

『なるほど……だが一夏、それって当然女だろ?』

 

「? 当たり前だろ。IS学園は女子校なんだから」

 

 

 そもそもISを使えるのが女だけなのだから、そのISの操縦者を育成する学校が女子校なのは当然だ。むしろ女子校と表現して良いのかすら分からないくらい、この学園には男が存在しない……学長くらいしか居ないもんな……

 

『じゃあお礼は当然……』

 

「お礼? そんなもん貰わないが」

 

『何ッ!? イベントフラグだろうが!』

 

「……スマン、日本語で頼む」

 

『日本語だ! お前、せっかくのフラグをスルーするのか!?』

 

「だから何だよそのフラグ? とか言うのは……」

 

 

 ゲームか何かの話だろうか……まったくついて行けん。

 

『だから! 勉強を教えてあげたお礼にその子を……』

 

「馬鹿馬鹿しい。勉強教えるの止めるぞ」

 

『悪かったって! だからそれだけはホント止めてくれ……殺されてしまう』

 

「分かったから。ラウラには言っておくし、勉強もとりあえずは見てやるから。だから泣くなよな……」

 

『な、泣いてねぇ!』

 

 

 声が既に涙声なんだが……しかもこの反応……絶対に泣いてるな。

 

「それじゃあ弾の馬鹿に範囲を貰ったら問題作ってやるから、それを解いてこっちにファックスで送ってくれ。採点して返すから」

 

『分かった。だが一夏、すぐに理解は出来んぞ』

 

「そんな事は分かってる。まずはどれだけ出来ないかを確認するんだよ」

 

 

 それから二人に合わせた説明を書き込んで勉強させる予定だ。

 

『俺は弾よりは出来るからな!』

 

「はいはい、五十歩百歩」

 

『一夏!』

 

「うるせぇよ。とりあえずメールはしておいてくれよ。送れねぇから」

 

『分かった』

 

 

 数馬との通話を切り、俺は弾にメールを送った。悪友二人に頼まれるとは思って無かったが、その両方の彼女とはそれなりに縁があるし、悲しませるのはやっぱり気まずいのだ。

 

「さてと、メールの返信が来る前に、ラウラの真意を確かめておくか」

 

 

 さすがに殺しはしないとは思うが、ラウラならありえそうで怖いのだ。

 

「えっとラウラの番号は……知らねぇんだったな」

 

 

 俺の携帯に登録されているクラスメイトは、静寂と本音だけだ。マドカと須佐乃男は携帯持ってないし……あっ、セシリアの番号は一応知ってるんだっけか。

 

「仕方ない、ラウラの部屋に行くか」

 

 

 ルームメイトのシャルは、今特別指導室だし、部屋を訪れてもさほど騒ぎにはならないだろう。

 そう高を括って、俺はラウラの部屋を訪れた。

 

「ラウラ、居るか?」

 

『兄上? ちょっと待って下さい、今開けます』

 

 

 扉の向こうから気配が近づいてくる。如何やら部屋でくつろいでいたようだ。

 

「何か御用ですか?」

 

「ちょっとな。今時間良いか?」

 

「もちろんです!」

 

「それじゃあ聞くが……お前、御手洗数馬に殺すって脅しをかけたのは本当か?」

 

 

 一応確認の意味を込めての質問。答えは分かってるが、念のためと言うやつだ。

 

「本当です。アヤツが補習とかになるとクラリッサが悲しむので」

 

「いったい如何やって脅したんだ?」

 

「如何って、普通に睨みつけてナイフを突きつけただけです」

 

 

 ……なるほど、数馬がビビる訳だ。睨みだけなら兎も角、ナイフまで取り出したら普通の高校生はビビるわな……

 

「次からは睨むだけにしておけ」

 

「兄上が仰るなら」

 

「おう。用事はそれだけだ。くつろいでたとこ悪かったな」

 

「いえ! 兄上が来てくださるとは思ってませんでしたので、かなり嬉しいです」

 

「来るってか、お前の番号を知らないから来るしかなかっただけなんだが」

 

「そう言えば……じゃあ私の番号を教えますよ」

 

 

 そりゃ助かる。これから先、何度数馬から泣き言を言われるか分からないからな……その都度ラウラの部屋を訪れるのも面倒だ。

 

「それでは!」

 

「ん、じゃあな」

 

 

 さてと、これで事実確認は出来たし、そろそろテストも終わる頃だろ。俺は採点の為に部屋に戻る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏さんが部屋を出て行ってから、この部屋は異常な緊張感からは解放されてました。一夏さんが居るだけで、テストを受けている六人は妙な緊張感を醸し出すんですよね……

 

「虚ちゃん、一夏君の電話の相手、誰だと思う?」

 

「そんな事分かりませんよ。一夏さんにだって付き合いはあるでしょうし」

 

 

 中学時代は学校が違いましたので、一夏さんの交友関係はさっぱりですしね。

 

「もしかして他に女が……」

 

「まさか。一夏さんに限ってそれはありえませんって」

 

「そうよね。一夏君はあまり女性に興味が無いようだし」

 

 

 その言い方は少し語弊があるようにも思いますが、確かに一夏さんは一般の高校生男子の方と比べると異性に対する興味は薄い方ですからね。

 

「お姉ちゃん、虚さん、少し声のボリュームを抑えて」

 

「ゴメンなさい」

 

「簪ちゃんが怒った~」

 

 

 お嬢様はあっけらかんとしてますが、確かにテストの邪魔になるだけのボリュームだったと自覚してました……六人に無言で頭を下げ、その後は無言で終わるのも待ちました。

 

「どんな感じだ?」

 

「あら、一夏君お帰り」

 

「後五分ですね」

 

 

 一夏さんが部屋に戻ってきた事によって、再び部屋に異様な緊張感が漂い始めました。一夏さんは特に気にした様子では無いですが、他の皆さんは妙にピリピリしてますね……

 

「おっ、これか……」

 

 

 一夏さんがファックスに向かって何かを取り上げました。いったい何なのでしょう……

 

「一夏君、それは?」

 

「ん? 悪友二人に頼まれてな。馬鹿二人追加だ」

 

「……一夏君も大変ねぇ」

 

「オバサン臭いぞ、静寂」

 

「あら、失礼しちゃうわね」

 

 

 クラスメイトであり、一夏さんが認める数少ない友人である鷹月さんと楽しそうに話してる姿を見ると、少し胸の奥がチリチリします。

 

「虚……事実だが数少ないとか言うなよ」

 

「言ってませんよ?」

 

「じゃあ思うなよ」

 

「ゴメンなさい」

 

 

 如何やら一夏さんに心の内を読まれたようで、一夏さんは呆れ顔で私にそう言ってきました。

 

「ところで一夏君、馬鹿二人って誰?」

 

「ん? 片方は刀奈だって見た事あるだろ? 文化祭に来てた赤髪の男だ」

 

「もしかして榊原先生の?」

 

「そっか、簪は見た事あるんだったな」

 

 

 前に聞いた話で、簪お嬢様とのデート中に偶然鉢合わせたとか……それで絡まれていた友人を一夏さんが助けたとか何とか……

 

「二人共彼女と出かける為に補習は何としても逃れたいらしい」

 

「そっか、一夏君はホントに大変だね~」

 

「そうだな……もう少し刀奈が生徒会や更識の仕事をしてくれれば助かるんだが」

 

 

 あっ、一夏さんが小舅モードに……嫌味ったらしく言う事で、お嬢様に精神的ダメージを与える方法なのですが、意外とこれが効くようです。

 

「ゴメン、もう少し頑張るから」

 

「そうしてくれ。さて、残り一分」

 

 

 おしゃべりしてても一夏さんはしっかりとテストの事も考えてるようで、六人に残り時間を告げました。

 

「言ってなかったが、今回の合格点は六十だ。それ以下は……さて、如何するか」

 

 

 一夏さんは顎に手を当てて考え込みました。残り一分でそれを言われても如何しようも無いんですがね。

 

「午後のテストでの合格点を+五にするか」

 

 

 つまり、六十点が合格なら六十五点を取らなければいけない訳ですか……それなりに厳しい罰ですね。

 

「よしそこまで! 潔くペンを置いて採点結果を待て」

 

 

 一夏さんが手を叩くと、一斉に動かしていた手を止めてペンを置く六人……よく訓練されてますね……

 

「さてと、採点の間はゆっくりしてていいからな」

 

 

 一夏さんがもの凄い勢いで採点している間だけ、六人は心からリラックスしてるように感じるのですよね……半分は一夏さんの身内なのですが、やはり普段と違うプレッシャーを感じているのでしょうね。

 

「さて、採点が終わった訳だが」

 

「早っ!?」

 

 

 お嬢様が思わず声を上げましたが、他の面々も大方同じ気持ちです。もちろん私も……

 

「今回のトップはエイミィの七十五点だ」

 

「おおぅ~! 頑張った頑張った!」

 

「自分で言うな……」

 

 

 一夏さんは自画自賛の声を上げたカルラさんに、呆れながら答案を返しました。

 

「後は……まあ頑張った方だな」

 

 

 一人一人に答案を返していき、一夏さんは一つため息を吐きました。

 

「ギリギリが多かったから、午後はそこを重点的に勉強してもらうからな」

 

 

 七十点超えはカルラさんだけで、後の五人は六十点台、本音と美紀さんはホントギリギリで合格した様子……一夏さんがため息を吐きたくなる気持ちも分かります。

 

「それじゃ、飯にするか」

 

 

 一夏さんが表情を変えると、皆さん嬉しそうに頷きました。……あれ? ご飯の準備は何時したのでしょうか?




彼女の為に頑張ろうとしたのですが、自力では不可能だと悟り一夏に助けを求めた二人……もう少し頑張れよ……

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