もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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嗅ぎ慣れた匂い

 気だるさと共に目を覚ますと、何だかとても良い匂いが部屋に充満している。この匂いは一夏君のご飯の匂いだけど、一夏君が部屋に居る訳無いし、これはきっと夢だね。

 

「夢でも良いから一夏君のご飯が食べたいな~」

 

 

 まだ万全じゃ無い身体を引き摺ってキッチンまで向かう。この匂いの元は間違いなくキッチンだし、この匂いを出せるのは私の知る限り一夏君しか居ない。

 

「一夏君? 居るの?」

 

「何だ、もう起きたのか?」

 

 

 ゆっくりとキッチンを覗くと、そこに居たのは間違いなく一夏君だった。何だ、やっぱり夢なんだね。

 

「夢なら何しても良いよね?」

 

「……寝ぼけてるのか?」

 

 

 一夏君が近付いてきて私の頭を軽く小突いた。ちょっと痛い……

 

「何するのよ一夏君! 痛いじゃないのよ! ……あれ? 夢なのに痛い?」

 

「だから何時まで寝ぼけてるんだよ。まだ体調が良く無いんじゃないのか?」

 

「そうかもね……って! そうじゃなくて!」

 

「五月蝿いぞ。まだ寝てるのが居るんだから」

 

 

 一夏君に怒られて慌てて口を押さえた。確かにこんな時間に大声で騒いでたら皆が起きちゃうものね。

 

「一夏君、絶対安静なんじゃないの?」

 

「とりあえず動けるくらいには回復したから出てきた。さすがに万全とは行かないから実技の授業は無理だけどな」

 

「……どれだけ回復が早いのよ」

 

 

 直接見てたから分かるけど、一夏君の怪我は二日やそこらで動けるような怪我では無かった。それを動けるようになったから出てきたって……やっぱり一夏君は常識の範囲に居ない存在ね。

 

「今日一日は休むが、明日からは普通に授業に参加すると織斑先生には伝えてある」

 

「そうなの? 織斑先生だってビックリしたでしょ」

 

「あの人がこれくらいで驚く訳無いだろ。色々とぶっ飛んでるお方なんだからよ」

 

「何それ」

 

 

 一夏君の言い回しが面白くて思わず笑ってしまった。

 

「ゴホ……」

 

「やっぱりまだ刀奈は回復してねぇんじゃねぇかよ。大人しく寝てろ」

 

「今のは咽ただけよ……ゴホ」

 

「病人は大人しく寝てる。ほら、さっさとベッドに戻れ」

 

「ちょっと、一夏君!?」

 

 

 素早くしゃがんで私を抱き上げてベッドまで運ぶ一夏君……無茶は出来ないって言ってなかったっけ……でも、かなり嬉しいわね。

 

「今日は付きっ切りで看病してやるから、大人しく寝てるんだな」

 

「は~い……」

 

 

 不貞腐れたように見せたが、実はかなり嬉しくて小躍りしたくなっているのだ。だって一夏君が付きっ切りで看病してくれるって言ってくれたんだから!

 

「まだおかゆが良いか?」

 

「ううん、そっちは普通でも大丈夫だと思う」

 

「そうか、じゃあそうするか」

 

 

 一夏君のご飯なら風邪を引いていても食べられる自信がある。他のだとちょっと辛いかなと思うけども、一夏君のだとすんなり喉を通ってくれるのだから。

 

「しかし、俺より回復が遅いって、よっぽど重い風邪なんだな」

 

「………」

 

 

 化け物じみた回復力の一夏君とか弱い乙女の風邪を同列に見ないで欲しいわね。でも、一夏君なら思われても良いかな~なんて。

 

「この部屋でも生徒会の業務は出来るだろうし、刀奈の看病と併せてそっちも進めておくか」

 

「一夏君も居なかったから、虚ちゃんが大変そうだったわよ」

 

「知ってる。念話で須佐乃男から色々と質問されてたからな」

 

「そっか、須佐乃男は一夏君と会話出来てたんだ……」

 

 

 私たちは丸一日以上会話出来なかったのに……これは須佐乃男には何かペナルティが必要になってきたわね。

 

「出来るまでは大人しく寝てるんだな。本当に寝ても良いが」

 

「寝ないよ。だって一夏君が作ってくれるご飯の匂いで完全に目が覚めちゃったから」

 

「……そうかよ。じゃあ大人しくしてろよ」

 

 

 一夏君は念押しをしてキッチンに戻って行った。そう言えばそろそろマドカちゃんが起きる時間じゃないのだろうか……

 

「う~ん……何か良い匂い」

 

 

 リアクションは私と大して変らないのね。でもやっぱり良い匂いって事ははっきりと分かるのよね。

 

「あれ? 楯無さん、もう起きてたんですか?」

 

「うん、ちょっとね。それとキッチンに行けば完全に目が覚めると思うわよ?」

 

「キッチン? 姉さんが料理でもしてるんですか?」

 

 

 それはそれで恐ろしくて目が覚めるわね……でも織斑先生が料理してたらこんな良い匂いでは無くもっと煙臭いでしょうけどね。

 

「あれ? お兄ちゃんが居る!?」

 

「マドカ、お前も中々五月蝿いぞ」

 

 

 同じように驚きのリアクションをして一夏君に怒られるマドカちゃん、やっぱり驚くわよね。

 

「如何して? お兄ちゃんは重症だって聞いてたのに……」

 

「とりあえず動けるからって……説明は全員が起きてから纏めてするから今は我慢しろ」

 

 

 面倒になったのか一夏君は説明を放棄した。まぁこれから何人も起きてくるのだから、一々説明していくよりも纏めて説明した方が楽でしょうけど、それでも気になるわよね。

 

「お兄ちゃんがそう言うなら我慢するけど……」

 

「あれ? 素直に引き下がっちゃうの!?」

 

 

 随分と聞き分けが良い子になってるような気がするのだけど……マドカちゃんってこんなに良い子じゃ無かったような気が……

 

「その代わり、ちゃんと説明してくれないと嫌だからね!」

 

「分かってる、誤魔化したりはしないよ」

 

 

 一夏君がお兄ちゃんの声になっている。偶にしか聞けないけど、この声の時の一夏君は凄く優しい雰囲気がするので結構マドカちゃんが羨ましいのだ。一夏君は私より年下だけど……

 

「それじゃあ身体動かしてくる」

 

「多分あの人も居るだろうから、一緒に運動してくれば良い。あの人も喜ぶだろうしな」

 

「分かった!」

 

 

 勢い良くマドカちゃんは部屋から出て行き、その姿を見送った一夏君はやっぱりお兄ちゃんの顔だった。

 

「……何か用か?」

 

「へっ?」

 

「さっきからジロジロとこっちを見てたが、何か用でもあるんじゃないのか?」

 

 

 壁越しでも視線を感じてたの!? ……って、一夏君ならそれくらい出来て当然だよね。でもそんなに見てたかな?

 

「いやね、一夏君が時々マドカちゃん見せるお兄ちゃんの顔が羨ましいな~って」

 

「羨ましい? 何で」

 

「だって私たちには見せてくれない顔でしょ?」

 

「そりゃ刀奈たちは義妹じゃなくって彼女だからな。マドカには見せない顔は見せてるつもりだが」

 

「でもお兄ちゃんの顔はマドカちゃんだけじゃない? 私たちは全員一緒なのに」

 

「年下ならまだしも、お前は年上だろうが。どちらかと言うと刀奈がお姉ちゃんの顔をするんじゃないのか?」

 

「だって一夏君は弟って感じじゃないでしょ? やっぱりお兄ちゃんって感じだし」

 

 

 年齢は兎も角としても、やっぱり一夏君はしっかりしてるから頼ってしまう。とても頼り甲斐のあるお兄ちゃんな感じなのだ、彼氏だけど……

 

「良く分からん。大体お兄ちゃんの顔って言われても俺にはさっぱり分からん」

 

 

 そう言って一夏君は頭を掻きながらキッチンに戻っていった。調理を再開する為だろうけど、何だかちょっと寂しい気分になるのはやっぱり私が一夏君に甘えてるからだろうか。

 

「お嬢様? 誰と話してたんです?」

 

「虚ちゃん、起きてたの?」

 

「話し声が聞こえたので……それで、何方と話されてたのです?」

 

「キッチンに行けば分かるよ」

 

「キッチン?」

 

 

 首を傾げながらも虚ちゃんはキッチンに向かい、そしてマドカちゃんと同じ反応を見せてくれた。

 

「一夏さん!?」

 

「今度は虚か……説明は纏めてするから、今は大人しくしてろ」

 

 

 最早面倒だと言う事を隠そうともしない一夏君の態度に、私は思わず噴出した。たった一日だけだったけど、随分と久しぶりな感じがしたからだ。

 

「如何言う事なんです?」

 

「後で説明してくれるって言ってるんだし、それまで考えてましょうよ」

 

 

 私も詳しい事は何も聞いてないのだけれど、とりあえず回復したとは言っていたので心配はしていない。でもまた無茶しようとしたら本気で怒るけどね。

 その後簪ちゃん、須佐乃男、碧さんの順番に目を覚まし、それぞれが同じ反応をキッチンでしたのを虚ちゃんと見ていた私は、その都度噴出して笑ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間も時間なので、とりあえず朝の行事の一環になりつつある本音を起こす作業をする事にした。

 

「本音、起きろ」

 

「むにゃむにゃ……後五十分」

 

 

 お前は起きる気無いだろ……五分や十分ならよくある事なのだろうが、五十分とは……相変わらず一筋縄ではいかないヤツだ。

 

「ほら起きろ! 早くしないと殴るぞ」

 

「う~ん……おりむ~、もう少し寝かせてよ~……」

 

 

 如何やら俺だと認識してるらしい。それでも驚かないのは、本音がまだ半分以上寝ているからだろうな。

 

「寝てても良いが、本音の分の朝食は全員に分ける事になるが良いんだな?」

 

「……駄目! おりむ~のご飯は……?」

 

 

 漸く事態が飲み込めたのか、本音は起き上がってすぐの格好のまま固まって考え込んでしまった。

 

「珍しい光景だな。本音が何かを考えてるなんて」

 

「おりむ~!? 何で此処に居るの!?」

 

「散々人の事呼んでおいて今更だな。とりあえず顔洗って食事してこい。話はそれからだ」

 

「う、うん……」

 

 

 不特要領顔だったが、本音はとりあえず顔を洗いに洗面所に向かった。昨日一日しなかったから分かるが、本音を起こすのは大変だな……

 

「一夏君、お疲れさまー」

 

「相変わらず見事な手際だね」

 

「刀奈、簪……見てたなら手伝えよ」

 

 

 朝食を摂り終えた二人がコッソリとこっちを見ていたのには気付いていたが、まさか最後まで見てるだけとは思わなかったぞ……

 

「それで一夏、ちゃんと説明してくれるんだよね」

 

「本音の食事が終わったらな。だから何時もより早く起こしたんだ」

 

 

 普段ならまだ本音は夢の中だが、今日は事情説明もあるので早めに起こしたのだ。

 

「やっぱり本音を起こすなら一夏君のご飯を使うのが一番ね」

 

「使うって……何か表現が嫌だな」

 

 

 確かに使ってはいるのだが、何だかそれが目的で作ってるみたいでなんだか納得が行かないような気分になってくる……

 

「そうだ一夏」

 

「ん? 何だ簪」

 

「ご馳走様。美味しかったよ」

 

「そうか」

 

 

 普段はあまり言われないが、やはり感謝されると嬉しいものだな。また作りたいと思えてくる。

 

「一日一夏君の料理を食べなかったから、改めて一夏君の料理の美味しさを実感出来たわ」

 

「刀奈は作り置きのおかゆを食べてたんじゃ無いのか?」

 

「そうだけど、やっぱり一夏君がその日に作ってくれたものの方が美味しいのよ」

 

「そんなものか? 自分では良く分からない感覚だな」

 

 

 そもそも自分の料理をまともに食ってないし、作りたてでも時間が経ってても美味しく食べられるように工夫はしてるつもりなんだがな……

 

「確かに一夏さんの料理は美味しいですよ」

 

「虚、お前までなんだいきなり……」

 

「昨日一夏さんの料理を食べなかったからなんでしょうが、今日の朝食は何時も以上に美味しく感じました」

 

「……それなら何日に一日は作らないで良いか?」

 

「「「駄目(です)!」」」

 

「お、おぅ……」

 

 

 三人の勢いに思わずたじろいでしまった。そんなに大声出さなくても良いじゃないか……

 

「如何しました?」

 

「何かあったの?」

 

 

 大声に反応して碧とマドカもこっちにやって来た。

 

「マドカ、口の周りについてるぞ」

 

「ふぇ!? 何処?」

 

「こっち来い、拭いてやるから」

 

 

 マドカを手招きで呼び寄せてティッシュで口元を拭く。如何して子供っぽさが抜けないんだろうな……いくら一つ下だからと言っても普通なら中三、蘭と同い年なんだがな……

 

「やっぱりマドカちゃんには甘い……」

 

「同感ですね」

 

「須佐乃男、お前も来たのか」

 

「なにやら面白そうな雰囲気だったもので」

 

 

 別に大した話はしてない。須佐乃男が何を差して面白そうと言っているのかはさっぱりだ。

 

「それで、一夏さんたちは何を話してたんです?」

 

「何日に一日は飯を作らなくても良いかって話だが……」

 

「「「駄目です(だよ)!」」」

 

「……お前らまで」

 

 

 さっきの三人にも負けない大声で言われ、さすがに諦める事にした。別に苦では無いので良いのだが、偶には休みたいと思う時だってあるかもしれないじゃないか……

 

「一夏様のご飯は私たちの活力なんですから!」

 

「……いや、お前は食べなくても動けるだろ」

 

「良いんです! 気分の問題ですから」

 

「気分ねぇ……」

 

 

 その気分で一人分の食事代が増えてるんだが……まぁ大した額じゃ無いから気にしてないんだが……

 

「それで一夏様、詳細な説明をしてもらいたいのですが」

 

「まぁ待て。まだ本音が来てない」

 

「本音! 早く食べちゃいなさい!」

 

「待ってよおね~ちゃん! おりむ~のご飯はゆっくりと味わいたいんだよ~」

 

「じゃあもう食べながらでも良いから、本音もこっち来て!」

 

「楯無様まで~!」

 

 

 急かされた本音は、茶碗を持って来た。別に良いんだが、何か行儀が悪いような感じがするんだよな……気にしすぎか?

 

「それじゃあ説明するが、端的に言えば完全には回復していない」

 

 

 とりあえず現状を伝える為に結論を先に言っておいた。この方が説明しやすいと思ったからだ。

 

「そりゃ完全に回復してたら驚くよ」

 

「そうですね。あれだけの怪我でしたし」

 

「それで、一夏様はどんな裏技を使って医務室から抜け出したんですか?」

 

「裏技って……」

 

 

 お前はゲームのし過ぎじゃないか? そんな単語は普通すぐに出てこないだろうが……

 

「その前に如何やって回復したかだよ。すぐ回復出来るのならそもそも医務室に連れてかれなかったでしょ?」

 

「そうだな。まずはそっちの説明からするか」

 

 

 刀奈の最もな疑問に答える為、俺は明朝に聞いた話をそのまま話した。俺自身も信じられないような話だったので、納得してくれるかは正直微妙だったのだが、意外にも簡単に信じてくれた。

 

「なるほど……」

 

「一夏さんらしいですね」

 

「でも、何でそんな事が出来るの?」

 

「それは俺も分からん。そももそ駄ウサギもそこまではっきりとは分かって無さそうだったしな」

 

 

 あの人も半信半疑っぽかったし。実際にやって見せるまでは多分あの人も疑いを持っていたんだろうな。

 

「それでとりあえずは動けるようにはなったんだが、ダメージはそのままだから激しい動きは当分無理だから」

 

「それで実習は出ないんだね」

 

 

 今朝刀奈にだけ話した事を言われ、俺は頷いた。実習となるとやはり無茶をしなくてはいけないので、当分は我慢だ。

 

「ISを動かすのも無理なんだ?」

 

「そうだな。とりあえず身体に負荷の掛かるものはなるべく避けておいた方が良いだろうってな」

 

「それじゃあ次の質問ですが、如何やって医務室から抜け出したんですか? いきなり治ったら検査とかで余計に身動きが取れなさそうなのですが……」

 

「そこは駄ウサギがな……ちょちょいと記憶の改竄をして」

 

「なるほど、束様らしいですね」

 

 

 この中で唯一束さんの事を詳しく知っている須佐乃男は納得してくれたが、他のメンバーはポカンと口を開けて固まってしまった。

 

「本音、こぼれてる」

 

「ほえ!? ホントだ」

 

 

 指摘してやると本音は我に返り、そしてこぼしたものを拾ってテーブルに置いた。

 

「記憶の改竄って……そんな事が出来るの?」

 

「そもそも俺の記憶を弄ったのは他でも無いあの駄ウサギなんだが……」

 

 

 小一以前の記憶を抹消したのも、駄姉と本当の姉弟だと言う記憶を植えつけたのもあの駄ウサギだ。それくらいの事は出来て当然だろう。

 

「それで、あの束様が無償で一夏様に力を貸すとは思えませんが?」

 

「その通りだ。ラボの掃除と朝食を作らされた」

 

 

 予想外に汚かったので掃除に時間がかかったが、とりあえずは綺麗になった。何か見たくないDVDが大量にあったのだが、それには一切手を触れなかったんだがな。あの一角だけは自分たちで掃除してもらおう。

 

「願えば治るって凄い事だね」

 

「良く感覚が掴めてないから、そう簡単には出来ないがな」

 

 

 願望と言うものがイマイチ理解出来ないのだ。

 

「それじゃあ一夏様は今日から授業に出られるのですか?」

 

「いや、さすがに今日は大人しく部屋に居るつもりだ。刀奈の看病もあるしな」

 

「そうですか……それでは一夏さんにはお嬢様の看病をお願いするとして、放課後は生徒会室で作業を頼めますか? 体育祭の件が全くの手付かずなので」

 

「それは構わないが、それだと刀奈も居た方が良いんじゃないか?」

 

 

 生徒会長だし、最終判断はやはり刀奈にしてもらった方が良いだろう。

 

「一夏君が運んでくれるのなら行けると思うけど」

 

「それくらいなら出来るかも知れんが、途中で倒れたら責任取れないぞ」

 

 

 刀奈の重さなら大丈夫だとは思うんだが、何処まで無茶が利くのか分からない状況だしな。

 

「それでは書類をこっちに持ってきて作業しましょうか。少しずつに分ければ部屋に持ってきても支障は無いでしょうし」

 

「それが良いだろうな。それなら本音や須佐乃男にも手伝ってもらえるしな」

 

 

 そもそも本音は生徒会役員なんだがな。

 

「それくらいなら任せて~!」

 

「私も、運ぶだけならお手伝いします」

 

 

 二人共運ぶだけだと強調してるが、それ程作業したく無いのか……昨日一日で懲りたんだろうな。

 

「それじゃあ放課後は此処で体育祭についての話し合いをすると言う事で。それじゃあ俺と刀奈以外はそろそろ行った方が良いぞ?」

 

 

 腕時計を指差して時間を知らせる。遅刻はしないだろうが、あまり余裕のある時間では無いのだ。

 全員を見送った俺と刀奈は、とりあえず大人しく過ごす事にしたのだった。




考えたら今日で十一月は終わりなんですね……一年、早かったなー……

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