もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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十一月もあと十日で終わりですか……


各戦線の状況

 お兄ちゃんに頼まれて簪たちの援護に来たけど、これくらいならすぐに片付きそうだと思ってた。

 

「マドカ、一夏は大丈夫なの?」

 

「分からないけど、お兄ちゃんに命令されちゃったからね。すぐに片付けてお兄ちゃんのところに戻らないと!」

 

「一夏君でも苦戦しそうな相手なら、さすがに私たちじゃ代われないだろうしね」

 

 

 簪とエイミィはさすがに候補生だけあって並みの相手じゃ苦戦すらせずに片付けていくけど、歩兵やらなんやらと数が多いからそれなりに苦戦してるように見えるのだ。

 

「須佐乃男は戦えないの?」

 

「さすがにこの姿のままでは……」

 

「急がないとお兄ちゃんでもあの二人相手は大変だろうし」

 

 

 オータム相手なら何とかなるんだろうけど、今回はスコールも一緒に来ている。お兄ちゃんがオータムをキレさせようとしてもスコールが宥めるんだろうな……

 

「もういっそ、全部破壊するのは駄目なの?」

 

「後で一夏に怒られてもいいんならやれば?」

 

「お兄ちゃんに怒られるのは嫌だな……」

 

「一夏君が無事なのか如何か分からないの?」

 

「それなら分かります。一夏様がやられたら私にもダメージがそれなりに来ますし」

 

 

 そう言えばお兄ちゃんと須佐乃男ってリンクしてるんだっけ……ほとんど別行動だから忘れがちだけど、須佐乃男ってお兄ちゃんと密接な関係なんだよね。

 

「それで、お兄ちゃんの現状は?」

 

「結構ヤバイですね……一夏様がリミッターを外してしまう前に向こうに行かないと大変な事になります」

 

「それって、夏休みに私と会った時みたいな事になるって事?」

 

「簡単に言うとそれ以上ですかね。今回は相手が千冬様では無いですし、あの時はまだ千冬様相手に加減してましたから……それが今回は完全に加減無しになりますから、最悪一夏様は一人で歩けなくなる可能性があります」

 

 

 それってかなりヤバイんじゃ……お兄ちゃんが歩けなくなったら、誰がお兄ちゃんの看病をするのかとかで揉めそうだし、それでなくても姉さんが暴走しそうだ……

 

「誰か援軍でも来れば話は別なんでしょうが、何処もかしこも乱戦状態ですからね……」

 

「せめてコイツらを片付けられれば抜けられるのに」

 

 

 他の専用機持ちは、亡国企業の下っ端たちに苦戦してるし、生徒の大半は虚さんに指示で避難してるし……あと一人でも来てくれれば何とかなるのに!

 

「かんちゃん! 皆ー!」

 

「本音!?」

 

「おりむ~から手伝ってやれって」

 

「でも、お兄ちゃんは今……」

 

「私に念話が来て、オープンチャネルで虚様に連絡しました」

 

「それじゃあお姉ちゃんの護衛は?」

 

「今は居ないからさっさと終わらせないとね~」

 

 

 そう言って本音は歩兵をなぎ払い、須佐乃男が通れる道を作った。

 

「此処はかんちゃんとカルカルに任せて、マドマドは須佐乃男をおりむ~の場所まで連れて行って!」

 

「分かった! それじゃあ後はお願いね!」

 

「スミマセン、お願いします」

 

 

 須佐乃男を先導するようにお兄ちゃんが戦ってる場所まで連れて行く。念話をする余裕はあるようだけど、それでも本音を動かさなきゃいけないくらい切羽詰ってるんだろうな……

 

「それにしても須佐乃男、念話が出来るなら早くしてくれれば良かったのに」

 

「一夏様の方が集中してないと出来ませんし、そもそも今回だって偶然キャッチしたに過ぎないんですよ」

 

「そうなの?」

 

「ええ。一夏様が強く念じてくれたのでキャッチ出来ましたが、距離が離れてるのと一夏様が戦闘中なのを考えると、良く通じたと感心したいくらいの偶然ですよ」

 

 

 そうなんだ……念話ってのも意外と使い勝手が悪いんだね。

 

「それにしてもマドカさん、一夏様が相手してるのは……」

 

「うん、亡国企業の中でも指折りの実力者……しかも一人は幹部」

 

「それってつまり……最悪の状況って事ですよね」

 

「うん……最悪って言葉で収まるのか分からないけど、兎に角良い状況でないのは確かだね」

 

 

 生身で戦っててまだ無事なのが不思議なくらい、あの二人は危険だし強い。この学園であの二人相手に此処まで善戦出来るのは、お兄ちゃんを除けば姉さんくらいだろうしね。

 

「他の場所でも戦ってるようですね」

 

「せっかくの専用機も、操縦者が大した事無いと力を発揮出来ないんだろうね」

 

「しょうがないですよ。ラウラさん以外は実戦経験が皆無に等しいんですから」

 

「そうだけどさ……お兄ちゃんのデータが目的で来てる連中が殆どなんだから、もう少しマシなレベルの人間を揃えられなかったのかって」

 

「セシリアさん以外は転入ですからね。そもそも鈴さんは政府に半ば脅しで転入してきましたし」

 

「お兄ちゃんのお友達だっけ? あの人はかなりマシだとは思うよ。でもそれ以外のは駄目だね」

 

 

 イギリスもフランスも大した事無いって亡国企業に教えてるようなものだし、ドイツのも実戦経験があるにしては大した戦果は挙げてないようだし……こりゃお兄ちゃんが気にしてるのも分かるな……

 

「碧さんや美紀は?」

 

「一部隊を鎮圧し次の場所へ移動するようですね」

 

「さすが更識の関係者……普通の教師や学生とは違うね」

 

 

 所々で邪魔が入る為、なかなかお兄ちゃんの場所まで辿り着かない。早く行かないとお兄ちゃんが連れて行かれちゃうかもしれないのに……

 

「あっ、一夏様が如何やら本気を出すようです」

 

「お兄ちゃんが? それって大丈夫なの」

 

 

 聞いた話ではお兄ちゃんが本気を出すと後遺症で暫くはまともに動けなくなるとか……

 

「完全な本気を出されると困りますが、あくまでも力を制御した状態での本気ならば問題は無いんですがね……一夏様も普段本気を出せない分ストレスが溜まってる可能性もありますし、如何にか踏みとどまって欲しいのですが……」

 

 

 確かに普段からお兄ちゃんは力を制御してるし、授業でもお兄ちゃんは教える側が多いのでストレスの発散も出来てないだろうしね。

 

「これは更に急がないといけないようですね」

 

「でも、コイツら邪魔!」

 

「それは同感ですね! 特に何をするでもなく邪魔してくるだけですから余計に邪魔です」

 

「多分だけど、オータムやスコールがお兄ちゃんを捕まえるまでの時間稼ぎなんだと思う」

 

「なるほど、それならばこの人たちが攻撃もせずに道を塞いでる事も納得出来ます」

 

 

 さすがに武器を持ってない相手を吹き飛ばしたら問題になりそうだから、出来るだけ薙ぎ払う程度で済ませてるんだけど、これじゃあ何時までかかるか分からないよ……

 

「須佐乃男、掴まって!」

 

「了解です!」

 

 

 最初からそうすれば良かったのだけど、今更ながらに私は須佐乃男を抱えて空を飛んだ。これならある程度邪魔もされないし、お兄ちゃんたちのところにすぐ行けるしね。

 

「あれは、スコールとオータム? 何で退散してるんだろう」

 

「一夏様お得意のハッタリじゃないでしょうか?」

 

「ハッタリ?」

 

「ええ、一時的に一夏様が優位だと思わせておいて、相手が逃げ出すように仕向けたのではないかと」

 

「なるほど、確かにお兄ちゃんが生身で相手するには厳しい相手だけども、須佐乃男が来たって分かれば確かにお兄ちゃんが優位だと思うね」

 

「いえ、そうでは無く……」

 

 

 須佐乃男が言うには、お兄ちゃんが自分の出せる力を見せ付けて、これ以上やるなら容赦しないと脅す、そうする事で自分たちが不利だとスコールたちに錯覚させる。そこに私たちが近付いてきたと気づけば、余計に不利だと思いこんでくれる。お兄ちゃんの作戦はそう言った事だったらしい……

 

「それにしてもお兄ちゃん、一時的とは言えあの二人相手に優位に立てるなんて……」

 

 

 ISを使ってならまだ分かるが、お兄ちゃんは完全に生身だ。多少ISの武装が使えるといっても、掠っただけでお兄ちゃんは負けな状況には変わりないはずなのだ。

 

「お兄ちゃん!」

 

「一夏様!」

 

「……よう、遅かったな」

 

 

 お兄ちゃんの傍に駆け寄った時には、お兄ちゃんはかなり疲れてる様子だった。疲れてると言うか、完全にやられてるような感じですらあったのだが、お兄ちゃんの瞳には、まだ光が宿っている。

 

「大丈夫ですか、一夏様!」

 

「なんとかな……悪いが自分で立ってるのがやっとだから、早いところ展開させてくれ」

 

「分かりました!」

 

「それとマドカは、別部隊と合流して敵の残党を片付けてくれ。俺も落ち着き次第合流する」

 

「分かった! でもお兄ちゃん、無茶は駄目だからね!」

 

 

 お兄ちゃんの事だから、既に無茶はしてるんだろうけど、釘を刺しておかなければもっと酷い無茶をするだろうから、一応言っておいた。

 それにしてもお兄ちゃん、あの二人相手に無傷だったんだね……やっぱり凄いなぁ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マドカを見送った後、俺はその場に膝をついた。須佐乃男に言ったように、既に自分で立ってるのがやっとだったのだ。

 

「一夏様、早いところ展開を!」

 

「分かってる、だが少し休ましてくれ……さすがにやり過ぎた」

 

「休むのは展開してからでも出来ます! 今襲われたら終わりなんですよ!?」

 

「分かった分かった……操縦者扱いの荒い専用機だ」

 

 

 須佐乃男を展開し、建物の影に移動する。これなら敵に見つかる確率も減るだろう。

 

「(それにしても一夏様、今回もまた随分と無茶をしてますね)」

 

「仕方ないだろ。オータムだけなら兎も角、スコールまで相手となると無茶せずに切り抜ける方法が無いんだから」

 

「(後で怒られても知りませんからね)」

 

「そうだな……虚に報告するからオープンチャネルを開いてくれ」

 

「(了解です)」

 

 

 さっき須佐乃男に伝言を頼んだので、大体の状況は把握してるだろうが、一応無事を伝えておかなければ後で怒られる……

 

『一夏さん! 無事なんですね!?』

 

「あ、ああ……無事と言えるか如何か微妙だが、とりあえず生きてる」

 

『また一夏さんは無茶をして! 心配する私の身にもなってくださいよね!』

 

「反省はしてるさ。でもそうでもしなければ殺されてたか攫われてただろうな。そうなると余計に心配させる事になってたんだから、少しくらい無茶したのは許してくれ」

 

 

 冗談では無く、スコールの麻酔銃は無茶してでも避けなくてはいけなかったんだし……

 

『まったく、一夏さんは自分の身体の事を蔑ろにし過ぎです! 少しは労わってあげて下さいよ!』

 

「分かってる。それで、他の場所の状況、分かるか?」

 

『マドカさんが加わった事により、簪お嬢様とエイミィさんの箇所は鎮圧間近、碧さんと美紀さんの部隊も順調に敵部隊を鎮圧、問題があるとしたらオルコットさんとデュノアさんの部隊と、ボーデヴィッヒさんの部隊でしょうか?』

 

「ラウラの? アイツは実戦経験があるんじゃ無いのか?」

 

『ボーデヴィッヒさんは兎も角、残りは学園の生徒ですし』

 

「なるほど……山田先生とナターシャは? 何か動きがあったか?」

 

『最深部にISのコア反応がありますし、恐らくですが織斑先生が競技生活で使っていた暮桜では無いかと……』

 

「やはり隠し持ってたのか……まぁ不思議じゃねぇわな」

 

 

 駄ウサギも探してたんだし、使っていた駄姉が持ってると考えるのが普通だった。それがまさか学園の最深部にあるとはな……

 

『それで一夏さん、校舎内は安全のようですし、私も出撃したいと思ってるのですが……』

 

「どっちが良い?」

 

『ボーデヴィッヒさんかオルコットさんとデュノアさんの部隊のどちらかと言う意味ですよね?』

 

「そうだ。多分鈴がどっちかの部隊に居ると思うんだが」

 

『凰さんは別行動みたいです。その代わりハミルトンさんがオルコットさんたちと一緒に戦ってますね』

 

「ハミルトン? ……ああ、ティナか」

 

 

 鈴のルームメイトで数少ない俺と普通に話してくれる同級生。まぁ最近はめっきり会わなくなったんだが……

 

「虚、お前ラウラと上手くやる自信あるか?」

 

『……ちょっと自信無いですね』

 

「だろうな。アイツは基本的に人の言う事を聞かないから」

 

『それじゃあ一夏さんがボーデヴィッヒさんの方に?』

 

「そうだな。俺の言う事は聞くだろうし、他の生徒のフォローもしておかないといけないし」

 

 

 恐らくラウラがボロクソに言ってるんだろうしな……軍隊の仲間と学園の生徒を同列に見るのは駄目だろ……

 

『それでは私はオルコットさんたちの許へ行きます』

 

「頼んだ。さて須佐乃男、聞いていた通りだ」

 

「(了解です、一夏様。それではボーデヴィッヒさんの気配を探しますね)」

 

 

 なるべく力を温存しておきたいので、気配察知は須佐乃男に任せた。こうもISが多いとコア識別も面倒だし、何よりそれをするとこっちの居場所までバレる可能性があるのだ。

 

「(一夏様、見つけました)」

 

「何処だ?」

 

「(正門付近です。此処から察するにかなりヤバイ状況です)」

 

「……一人で突っ込んで囲まれてるのか?」

 

「(正解です! さすが一夏様)」

 

「ラウラには良い勉強になっただろうが、さすがに死なれるのは困るな。仕方ないか、須佐乃男、全力で行くぞ」

 

 

 

 なるべく負荷の掛からないように移動したかったのだが、ラウラがそんな状況じゃそんな事も言ってられないか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、此処で死ぬのだろうか……教官や兄上のように強くなりたかったのに、志半ばで終わってしまうのか……

 

「(まだ終わってない!)貴様ら! 私はまだやられてないぞ!」

 

 

 軍の仲間だと思いこんでいたが、私の後ろに居たのは普通の学生だ。命を賭けて戦った事の無い、普通の少女たちだったのだ。それならばせめて一人でも多くの少女を守る為に私が犠牲になろうと決めたのだ。

 

「しぶといヤツだ。さっさと終わらせる」

 

 

 向こうは強奪したのか知らないが、訓練機を大量に保持してるので、世代差で上回ってる私も、数の暴力には抗えない。せめてもう一人専用機持ちが居れば違ったのだろうが、セシリアとシャルロットは別行動だし、鈴も見なかった。そして他の専用機持ちは兄上が指揮をしてるであろう本隊に居るだろうから、結局は私一人で戦うしかなかったのか……

 

「隙だらけだ!」

 

「しまっ!?」

 

 

 戦闘中に余計な事を考えていて勝てるような相手では無かった、私は衝撃に備えて目を瞑ってしまった……前にも同じような事を思ったが、軍人として失格だな、私は……

 

「……?」

 

 

 何時まで待っても訪れない衝撃に不審に思い、私はゆっくりと目を開けた。

 

「ようラウラ、お前は他の生徒を逃がしてやってくれ。コイツらは俺が引き受ける」

 

「兄上!」

 

 

 珍しく須佐乃男を纏っている兄上が、私に襲い掛かってきていたISの攻撃を受け止めていた。

 

「ラウラ、AICは如何したんだ?」

 

「既にそこまでエネルギーが残っていません」

 

「そうか……ならやはりお前は避難の手助けに回れ」

 

「ですが兄上、これほどの数です。私も出来る限り援護を!」

 

「必要無い。この程度ならすぐに片付く」

 

 

 まだ何か言おうとしたのだが、兄上から伝わってくるプレッシャーに負け、私は素直に生徒を避難させる為に動いた。

 

「お前たち、私が殿を引き受けるから早く校舎内に避難を!」

 

 

 訓練機も既にエネルギー切れで使い物にならないので、一先ずこの場に捨て置く事にして、私は兄上の指示通りに生徒を避難させる事に全力をつくした。

 

「さてと、お前ら覚悟は良いんだろうな? 学園を荒らした事を後悔するが良い」

 

 

 背後から兄上の凄まじいオーラを感じたのだが、今は振り返ってる余裕は無い。一人でも多くの仲間を守る為に、私は動かなければ行かないのだから。

 

「あれ、ラウラ?」

 

「簪、それにエイミィか」

 

「無事なの?」

 

「兄上が助けてくれた。だが一人で十機以上のISと対峙しているんだ。早く戻らなければ兄上が!」

 

「分かった。此処は私が引き受けるから、ラウラはエイミィと一緒に一夏の援護を!」

 

「すまない、助かったぞ簪」

 

 

 簪に避難してきた生徒の保護を任せ、私はエイミィと共に兄上の許へと急いだ。

 

「兄……上?」

 

「思ったより早かったな。……ん? エイミィも一緒って事は生徒の避難は簪に任せたのか」

 

「敵は?」

 

「既に蹴散らした。少し本気を見せれば大人しく帰ってくれたよ」

 

 

 兄上は何にも無かったかのようにその場に立っており、辺りは戦闘があったのを感じさせないような風景が広がっていた。

 

「後は虚の方だけだが、向こうももうすぐ鎮圧出来そうだな」

 

「一夏君、さっきもだけど無茶してないの?」

 

「さっき? ああ、須佐乃男の護衛をしてたんだっけか」

 

「うん。ちょっと時間がかかっちゃったけど、とりあえずは一夏君が無事そうで良かったよ」

 

 

 ホッと胸を撫で下ろしたエイミィの横で、私は少し違和感を覚えた。

 

「兄上、少しつらそうなのは私の気のせいでしょうか?」

 

「……やっぱり経験豊富なラウラの目は誤魔化せねぇか、ちょっと無茶してな。少し身体に負担を掛け過ぎたんだ。今は須佐乃男の力で立ってるが、須佐乃男を解除した途端にぶっ倒れるだろうな」

 

「それって全然無事じゃないよね!?」

 

 

 エイミィのツッコミに、兄上が力無く笑った。何時もの余裕はまったく見られず、兄上は私たちに心配させないように優しく頭を撫でてくれた。

 

「大丈夫だ、少し休めば何とかなるから」

 

「本当? 一夏君の事だからまた無茶してるんじゃないの?」

 

「無茶はしてるが無理はしてないから安心しろ」

 

「何それ、殆ど一緒じゃないよ」

 

 

 兄上の言葉に、私もエイミィも泣きそうになる。私たちはこんなにも無力だったのか……兄上に此処まで無茶をさせるほどに……




ラウラとマドカのポジションが完全に被ってるような気が……

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