もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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ますます寒くなってきましたね…


風邪引き彼女

 駄姉に要求された為、俺は何時もより一人分多い朝食を作っている。何で俺が要求される側なのか分からないが、あの駄姉の独自理論に付き合って時間を無駄にするくらいなら要求を呑んだ方が時間を無駄にしなくてすむのだ。

 

「……それで、何で貴女が此処に居るんですか?」

 

 

 さっきから俺の視界の端にチラチラと見えるウサ耳……俺の知り合いでこんな馬鹿げたものを愛用してるのは一人しか居ない。

 

「ちーちゃんだけズルイな~って思ってさ! いっくん、束さんの朝食も作ってくれて良いんだよ?」

 

「そう言うのは作り始める前に言って下さいよ。分量とか決まってるんですから」

 

「それじゃあ束さんのは別口でも良いよ~?」

 

「…ハァ、俺の分をあげますから、大人しくしててください」

 

 

 さっきからチョロチョロと目障りなのだ。堂々と視界に入ってくるならまだしも、見えるか見えないかのギリギリをウロウロチョロチョロとされると非常に気が散る。

 

「いっくんてさ~最近箒ちゃんと話した~?」

 

「篠ノ乃とですか? 昨日街でバッタリ会いましてそこで少し話しましたが」

 

「学校では~?」

 

「……記憶に無いくらい話してないですね」

 

 

 文化祭の時に話して以来じゃないか? そもそも同じクラスなのに殆ど会話をした記憶が無いな……入学当初は散々付き纏われてたのに、此処最近はまったく会話らしい会話をしてないと改めて思った。

 

「やっぱり箒ちゃんがした事に怒ってるの?」

 

「篠ノ乃がした事? 俺の小学校生活を滅茶苦茶にした事ですか?」

 

 

 アイツの所為で友達の殆どを失ったしな……鈴が来るまで友人の一人も居なかったし……

 

「それもだけど、入学早々ちーちゃんに怒られる原因は箒ちゃんだった訳でしょ? その事もあるのかな~って」

 

「そんな事ありましたっけ? 篠ノ乃が原因で怒られたなんて記憶に無いですね」

 

「ありゃりゃ、箒ちゃんは眼中に無いんだね~」

 

「あの、さっきから何を言いたいんですか? 言っておきますが、篠ノ乃に専用機は造りませんからね」

 

「うん、それは分かってるよ~。私も箒ちゃんにはまだ専用機は早いと思ってるし」

 

 

 ならなんでこの前造れとか言ってきたんだろうか……大体妹なんだから自分で造ってやれば良いものを、何故人に造らせようとするのだろうか……これも何か企みがあるのだろうか。

 

「でもさ~いっくん、幼馴染の箒ちゃんには造ってあげないのに、知り合ったばかりのイタリア代表のヤツと更識から連れて来た……何だっけ?」

 

「四月一日美紀」

 

「そうそれ! その女にはいっくんがカスタマイズした訓練機をあげたんでしょ? 何だか箒ちゃんが可哀想だと思わないの?」

 

「思いませんね。そもそもアイツは何でIS学園に来たのかすら分からないんですが」

 

 

 自分の家族をバラバラにしたISを憎んでるのかと思えば、やたら専用機に拘ったりとやってる事がチグハグだ。

 

「箒ちゃんが箒ちゃんで居られる場所だからじゃないの?」

 

「さぁ、俺も知りませんし知ろうともしませんよ。多分束さんの推測が当たりだとは思いますがね」

 

 

 話ながらもしっかりと朝食の準備を進めていく。あまりのんびりしてるとマドカが起きてしまうからな。

 

「う~ん、相変わらずの手際の良さだね~。今度束さんのラボでクーちゃんに指導してあげてよ~」

 

「今は何処を拠点にしてるんです? この前と違いますよね」

 

 

 さすがに学習したのか、俺が見つけ難い場所に移動して居るはずだ。

 

「えっとね、実はこの学園の上空なんだ。でもいっくんの索敵範囲からは抜け出てるくらい上空なんだよ~」

 

「……大気圏にでも居るのかよ」

 

「大体そんな感じ~!」

 

 

 相変わらずこの駄ウサギは発想が人間離れしてるな……冗談で言ったのに本当にそこまで上空に居るとは思って無かったぞ……

 

「でもいっくんならIS無しで来れるでしょ~? 空気を蹴って空を飛べるんだからね~」

 

「労力の問題ですね。そもそもそんな上空まで生身で行けば確実に死にますよね?」

 

「普通の人間だったらね~。でもいっくんやちーちゃんは普通の人間じゃ無いから大丈夫だよ!」

 

「……何故そこで駄姉が出てくるんだ? 俺は駄姉を担いでアンタのラボに行くつもりなど無いんだが」

 

「いや、ちーちゃんも大丈夫ってだけで、ちーちゃんが来ても部屋が散らかるだけだしね」

 

 

 親友にもこう言われてるぞ、駄姉よ……もし本人が聞いていたら少しは生活を改める気になってくれたのだろうか。

 

「いっくん、ちーちゃんとの喧嘩はまだ終わらないの?」

 

「喧嘩? そんな事してないですよ。唯単に呆れただけです」

 

「いっくんの出生は束さんも分からないし、いっくんがちーちゃんに引き取られる前の記憶は完全に消去しちゃったしね。消す前のいっくんが知ってたとしても今更それを知りようが無いしね~」

 

「随分と簡単に言ってますが、アンタ人の記憶消してるんだぞ。少しは悪びれろよな」

 

「またまた~いっくんだって衝撃で束さんたちの記憶を消してる事があるじゃないのさ~」

 

「あれはアンタたちが悪いだろうが。子供の俺がどれだけ苦労したと思ってるんだ……」

 

「いっくんが苦労性なのは生まれた時から決まってたのだ~」

 

 

 まぁ、あの駄姉の弟として引き取られた事を考えれば、あながち間違ってないのかも知れないな……

 

「はい、出来ましたからさっさと食べて帰ってください」

 

「わ~い! いっくんのご飯だ~!」

 

 

 この駄ウサギもだが、あの駄姉もこれくらいで喜ぶんだから安上がりだよな……そこだけは本当に助かってる。

 

「もぐもぐ……ひょういへびゃ……」

 

「飲み込んでから話せ」

 

「もぐもぐ」

 

 

 最近ではすぐに手は出なくなったが、やはり口に物を入れたまま話すのは行儀が悪くて我慢出来ないな……特にこの駄ウサギは物を飛ばすからな。

 

「ゴックン、そう言えばいっくんは須佐乃男以外のISを動かしたいって思ってるよね~?」

 

「まあ自分でカスタマイズした機体の試運転が出来ないのはね……操縦者に危険が伴うかもしれないのは納得出来ないですから」

 

「これはあくまでも可能性の話だから、信じるか如何かはいっくんの判断に任せるよ」

 

「何ですか?」

 

 

 駄ウサギの声のトーンからこれが冗談とかでは無く結構マジな話だと言う事を感じ取った。この時の束さんの話は結構重要だったりする。

 

「いっくんが一から造ったコアならば、須佐乃男とのリンクを開いたまま別のISを使える可能性があるんだ」

 

「……だがそれだと俺がコアを造れると世界中に知らせる事になる」

 

「うん。だからあまりお勧めはしないよ~。いっくんの平和を奪った私が言うのもなんだけど、いっくんはこれ以上世界に振り回されない生活をした方が良いと思う」

 

「本当に……貴女が言うセリフじゃ無いですね」

 

 

 この人と織斑千冬には言われたく無かったセリフだ。だけど俺の事を心配してくれていると言う事だけは伝わってきた。

 

「それともう一つ、何も全身を造らなくても一部分だけでも空は飛べるんだよ」

 

「……それはつまり、その部分だけを造って束さんの部屋を掃除しに行けと?」

 

「ギクッ! そ、そんな事は言ってないよ~? ただクーちゃんもいっくんに会いたがってるし、そのついでに束さんの部屋の掃除とかをお願いしたいな~なんて思って無いから」

 

 

 この駄ウサギは、自分で自分の首を絞めている事に何故気付かないのだろうか……本音が漏れてるんだが。

 

「まぁそれは追々と言う事で。今は学園の防御を固めて来るべき時に備えますよ」

 

「いっくんの特殊能力で訓練機用のコアも本来の性能を発揮出来るだろうし、ちーちゃんだって居るんだから負けないでしょ?」

 

「さぁ? それはやってみなければ分からない事ですし、駄姉が真面目に働くとも限らないでしょ。向こうの方が給料良かったらあっさりと裏切りそうですしね」

 

「あはは~、それありえるね~。ちーちゃんはいっくんにお金を管理されてる時から転職を考えてたっぽいからね~」

 

 

 それは初耳だな。だがあの駄姉が転職……この学園で教師をする以外に出来る仕事があると思ってるのか? 確かにIS操縦の腕だけは褒められるだけのものは持っているが、あの人に普通の縦社会に順応出来る可能性が見当たらない。しかも亡国企業は完全なる縦社会、上の命令に背くことがあれば忽ち立場は悪くなる、今のスコールのように仲間を作っていれば別の話なんだろうが……

 

「まぁちーちゃんは大丈夫だよ。絶対にいっくんの敵になる事は無いだろうからさ」

 

「既に半分は敵ですよ。邪魔ばかりしてきてろくに働きもしないんですから」

 

「それでも最終的にはいっくんの力になってくれるよ」

 

「だと良いんですがね……」

 

「ご馳走様! それじゃあ束さんは帰るね~」

 

「おい、片付けくらいしてけ……って、もういねぇし」

 

 

 綺麗に平らげてあの駄ウサギは文字通り脱兎の如く逃げ出した……自分で言っててつまらないな。

 

「仕方ない、片付けるか」

 

 

 駄姉にも持っていかなければいけないのだし、さっさと片付けて自分の分を作るか。食べないと刀奈たちに心配されるからな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何時もより少し遅い時間に目が覚めた。今日は月曜日で朝から授業もあるんだけど、何だか身体の調子が良く無いのよね……とりあえず起きて着替えてなきゃ……

 

「あれ?」

 

 

 ベッドから床に脚をつけた途端に世界が回り始めた。何だか気持ち悪いし全身が熱いような気がする……

 

「おっと」

 

「……一夏君?」

 

「珍しく部屋に残ってたら、まさかこんな事になるとはな」

 

「私、もしかして風邪引いたのかな?」

 

「多分な。今体温計持ってくるから」

 

 

 一夏君は私をお姫様抱っこでベッドに戻し、布団をしっかり掛けてから体温計を取りに行った。でも一夏君のおかげで床に倒れこむ事無くすんで良かった。もしかして私が具合悪いの知ってたんじゃないのかな? だって何時もなら軽く運動してるかISの整備をしてるはずだもんね。

 

「ほれ、体温計」

 

「ありがとう」

 

「刀奈でも体調崩す事があるんだな」

 

「何それ。私が馬鹿だって言いたいの?」

 

「まさか。二年学年トップの成績の生徒会長様を馬鹿呼ばわりする訳無いじゃないですか」

 

「……やっぱり馬鹿にしてる」

 

 

 でも一夏君のこうした態度のおかげで、私は幾分か気が楽になってきている。大げさに心配してくれないのも一夏君の優しさゆえなんだろうな。

 

「38.9℃、完全に風邪だな」

 

「ゴメン……」

 

「今日一日は大人しくしてるんだな。とりあえず刀奈の朝食は作り直しだ」

 

「そのままでも良いけど……」

 

「駄目だ。病人は大人しく言う事を聞け」

 

「は~い……」

 

「良い子だ」

 

 

 一夏君は私の頭を撫でると、何時もマドカちゃんやラウラちゃんに向けているような顔を私に向けてくれた。年上だけど、一夏君ってやっぱりお兄ちゃんみたいだなって思える時があるのは、こう言った顔をされるからだろうな。

 

「……あれ?」

 

 

 何だか私のベッドが広くなったような気がする……それに何だか一夏君の匂いが……

 

「此処って一夏君のベッド!?」

 

「刀奈のベッドだと周りが近いからな。少しでも離れた場所で寝かすなら俺のベッドが一番良いだろう」

 

 

 これじゃあ熱とは別の意味で全身に熱が回ってくるよ……でも一夏君のベッドから移動したくは無いんだけどね。

 

「嫌なら保健室まで運ぶが……」

 

「ううん! 此処で良い! むしろ此処が良い!」

 

「興奮するな。余計熱が上がるぞ」

 

「は~い」

 

 

 一夏君に宥められて大人しくベッドに寝転ぶ。此処で毎日一夏君が寝てると思うと、何だかちょっと興奮してくるわね。

 

「お嬢様? 何故一夏さんのベッドで寝てるのですか」

 

「虚ちゃん……ゴホ」

 

 

 目が覚めた虚ちゃんが真っ先に私を見咎めようとしたが、私が咳をした事で事情を察してくれたようだった。

 

「なるほど、一夏さんの心遣いですね。お嬢様にとっても私たちにとっても」

 

「うん……やっぱり一夏君は優しいよね」

 

 

 美紀ちゃんの事もだけど、更識家は一夏君に頭が上がらなくなってきちゃってるな。このままじゃ私の代わりに一夏君が楯無を名乗るようになっちゃうかもね。

 

「ねぇ虚ちゃん」

 

「なんでしょうか?」

 

「一夏君が楯無を名乗るとしたら、私は何て名乗れば良いのかな? 元の更識刀奈? それとも織斑刀奈かな?」

 

「しれっと結婚してる風を装わないでください! そもそも一夏さんが楯無を継ぐとは思いませんよ」

 

「そうなのよね~。一夏君が継いでくれれば私ももっと楽が出来るんだけどな~」

 

「お嬢様は既に楽してるでしょうが! どれだけ一夏さんや私に仕事を押し付ければ気が済むんですか!」

 

「虚、いくら鬱憤が溜まってるとは言え、今の刀奈は病人だ。あまり負担を掛けるんじゃない」

 

「ですが!」

 

「落ち着け」

 

 

 一夏君は虚ちゃんを抱きしめて興奮している虚ちゃんを宥めた。羨ましいけど虚ちゃんに怒られなくて済んだからまぁ良しとしよう。

 

「ほれ刀奈、おかゆ作ったからこれでも食べて薬飲んで寝てろ」

 

「食べさせて~」

 

「お嬢様!」

 

「だって動くのもしんどいんだもん……」

 

 

 実際話すのですらしんどくなってきてるし、腕を動かそうにもまるで海の底にでも居るように重くまともに動かない。

 

「しょうがねぇな。今日だけだからな」

 

 

 一夏君は蓮華に掬ったおかゆを冷ましながら私の口へと運ぶ。これって結構良いかも……

 

「うん、美味しい」

 

「羨ましいです……」

 

「本当……」

 

「ん? 簪も起きたのか」

 

「私も居ますよ、一夏様」

 

「おはよう、須佐乃男」

 

 

 次々と起きてくる人が、全員私を羨ましそうに見てくる。確かに私も向こうの立場だったら羨ましそうに見てたんだろうな~。

 

「皆の朝食は向こうに用意してあるから、各自温めなおすなりして食べてくれ」

 

「一夏様は食べないんですか?」

 

「俺は駄ウサギに付き合って早々に食べたから気にするな」

 

「駄ウサギ? ……まさか、篠ノ乃博士ですか!?」

 

「あれ? 虚も気付かなかったのか。あの駄ウサギは昨日山田先生の部屋に居たんだが」

 

「そうなの!? まさかそんな近くに篠ノ乃博士が居たなんて……」

 

「別に口惜しがる必要は無いだろ。簪が尊敬してる篠ノ乃束はきっと幻想の世界にしか居ないんだから」

 

 

 一夏君は昔から篠ノ乃博士を知ってるから、簪ちゃんが憧れていて楽しそうに篠ノ乃博士の事を話してると何時も苦笑いを浮かべてるのだ。

 

「束様がいらっしゃってたのなら、一夏様も色々と質問出来たのではないですか?」

 

「質問より説教してた時間の方が長いぞ……」

 

「そう言えば一夏君、昨日ちゃんと寝たの?」

 

 

 よくよく考えれば篠ノ乃博士の相手をして、その後で寝たとも考えられないし、よ~く見れば何時もより目の下の隈が酷いような気が……

 

「一時間も寝てないかもな」

 

「それって平気なの?」

 

「何とかなるだろ。今日はそこまで忙しくも無いし、生徒会の業務もそこまで……」

 

 

 何かを思い出したのか、一夏君は途中で言葉を切った。

 

「如何かしたの?」

 

「いや、昨日山田先生の部屋に山積みになってた書類、見間違いじゃなきゃ今日が期限だったような気が……」

 

「山田先生の部屋に行ったの?」

 

「駄姉と駄ウサギを説教しにな。それでチラッと見たのが確か今日までだった気がするんだよな……気のせいであってほしいが」

 

「お嬢様が居ないですし、これ以上一夏さんに負担は掛けられませんよ」

 

「だけど虚一人に任せるのも悪いだろ」

 

 

 本当なら山田先生がちゃんと終わらせなきゃいけないんだろうけど、あの人はあの人で織斑先生の相手だったり、生徒に馬鹿にされたと落ち込んだりとで忙しい人だからね、終わらなくても仕方ないのだけれども最近は特に酷いわね。

 

「まぁ何とかなるだろうし、終わらせられなくとも怒られるのは山田先生だしな」

 

「そうですね。無理に終わらせなくても怒られませんしね」

 

「一夏君と虚ちゃんが悪い人の顔してる~……ゴホ」

 

「刀奈は大人しくしてろ。昼にまたおかゆ作ってやるから」

 

「ゴメン、それとありがとう」

 

 

 一夏君にはこれまでもかなり迷惑を掛けて来たって言うのに、一夏君はずっと私たちに優しくしてくれる。

 

「一夏君」

 

「何だ?」

 

「何時か絶対に恩返しするからね!」

 

「いきなり何だ? 恩返しも何も、俺は恩を着せてるつもりは無いんだが」

 

「それでも私たちは一夏君に恩義を感じてるの。だから何時か絶対に返すから」

 

「まぁそう言うならそれでも良いんだが、俺としては一緒に居てもらってるだけで十分なんだけどな。こんな不埒者と一緒に居てくれてるだけで十分恩は返してもらってるさ」

 

「一夏君は不埒者じゃないよ! 私たちが納得して今の状況になってるんだからさ」

 

「そうそう、一夏は気にしすぎなんだよ」

 

 

 簪ちゃんの言葉に、虚ちゃんと須佐乃男、そして何時の間にか起きた碧さんが頷く。皆今の状況に納得してるし、誰か一人が一夏君と一緒になろうなんて考えてないのだ。出し抜きたいとは思ってるけどね。

 

「それならそれで良いが、俺は一緒に居てくれるだけで十分だと言う事を言いたかっただけだ」

 

 

 そう言って一夏君は再び蓮華に掬ったおかゆを私の口元まで運んだ。照れ隠しなのだろうかは分からなかったけど、さっきより冷ましてなかったおかゆは、ちょっと熱かった。一夏君も動揺したりするんだって分かって、ちょっと嬉しかったのは一夏君には内緒だ。




次回ちょっと急展開の予定です…

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