もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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タイトルはちょっと大げさかもしれません


美紀の家出

 私は、家に帰ってきたのをちょっと後悔している。楯無様や一夏様が帰ると言うので私も戻ってきたが、やっぱりこの家は嫌いだ。

 

「美紀、織斑一夏には取り入ってるのか? アイツさえ此方の陣営に取り込めれば……」

 

「そんな事してない! 私はお父さんの言いなりに何かならないから!」

 

「それが親に対する態度か! やはりお前は屑だな」

 

「ッ!」

 

 

 自分が楯無様に代わって実権を握りたいお父さんは、実の娘である私の事ですら道具として扱うのだ。

 

「さっさと織斑一夏を誘惑でもしてこい。お前は見た目だけはまともなんだから」

 

「嫌! もう出てってよ!」

 

「此処は私の家だ。嫌ならお前が出て行け」

 

 

 高校に通えるようになって少しは変わるのかとも思ってたけど、やっぱりこの人は最低の下衆野郎だった。

 

「お父さん、少し言い過ぎですよ」

 

「何? お前も私に文句があるって言うのか!」

 

「違いますよ。利用価値のあるこの子を今手放すのは惜しいと言ってるんです」

 

 

 お母さんも結局は私個人を見てはくれてないみたいだった……やっぱり私はIS学園に残ればよかったな……

 

「御免下さい。美紀さんは居ますか?」

 

「あっ、はい! 今行きます」

 

 

 玄関から声をかけられて、私は反射的に返事をした。でも私を訪ねてくる人なんて居るんだな……ここ最近は誰も私になんか会いに来てくれなかったし。

 

「何処に行く!」

 

「お客様を待たせる訳にはいきませんので」

 

 

 お父さんの前から一分一秒でも早く動きたかったので、この訪問は非常にありがたかった。誰の声かも判断出来なかったけど、この際誰でも良いのだ。

 

「お待たせしましたって! 一夏様!? 何故こんな所に……」

 

「更識家当主楯無の代理として呼びに来ただけだ」

 

「楯無様の?」

 

「ああ。自分が行けばきっと問題が起こるだろうから、代わりに行ってくれと言われた」

 

 

 確かにお父さんと楯無様はヒジョーに微妙な関係なのだ。それが原因なのか楯無様も簪ちゃんも虚さんも本音もこの家を訪ねてくる事は無くなってしまったのだ。

 

「それで、ご用件はなんでしょうか?」

 

「さぁ? それは本人に直接聞いてくれ。問題無いならすぐにでも来て欲しいそうだが、取り込み中だったか?」

 

「いえ! 大丈夫ですのですぐに行きましょう!」

 

「? 問題無いならそれで良いが、後ろからもの凄い圧を掛けてる人は放っておいて良いのか?」

 

 

 私の背後に居るお父さんに気付いている一夏様は、ついさっきまで私とお父さんの間に何かあったのを見抜いているように聞いてきました。

 

「良いんです! あんな人放っておいて!」

 

「そうか、ならしっかりと掴まってろよ」

 

「へ?」

 

 

 一瞬何を言われたのかが分からなかったのですが、気付いた時には私は宙を飛んでいました。

 

「速い速い~! さすが一夏様ですね~!」

 

「この速度ではしゃげるのは美紀か本音のどっちかだな」

 

「だって風を生身で切ってるんですよ! はしゃぐなと言われる方が無理ですって!」

 

「簪や虚は騒ぐだけだがな」

 

「何でです? こんなに気持ち良いのに」

 

「怖いんだと」

 

 

 一夏様は更識の敷地内をこうやって移動する事が出来るので、楯無様の名代として様々な分家や家臣の屋敷を訪ねる事も多いそうです。

 

「ほい、到着」

 

「あ~!! 美紀ちゃんが一夏君に抱っこされてる!」

 

「何だよ、早くつれてこいって言ったから運んできただけだぞ」

 

「ズルイズルイ~! 一夏君、後で私も抱っこして~!」

 

「お嬢様」

 

 

 一夏様にじゃれ付こうとしていた楯無様を、虚さんが冷静に呼び止めた。でも虚さんも何だか羨ましそうな目で私を見てると言う事は、多分虚さんも抱っこしてほしいんだろうな。

 

「分かってる。美紀ちゃん、ちょっとコッチに来てくれるかな?」

 

「分かりました」

 

 

 連れて行かれたのは応接間では無く楯無様個人の部屋だった。先代の楯無様がご存命の時に一回だけ入った事があるが、それはもの凄く小さかった時に、今の楯無様と簪ちゃんと本音とで屋敷を探検してた時に迷い込んだのだ。

 

「えっとね、美紀ちゃん」

 

「なんでしょうか?」

 

「……此処は誰も盗み聞き出来ないから、昔みたいなしゃべり方でお願い出来る?」

 

「昔みたいな……ですがもう楯無様は楯無様ですし……」

 

「大丈夫よ。一夏君だって普段は私の事を本当の名前で呼ぶし」

 

 

 そう言えば学園でも一夏様は楯無様の事を『刀奈』って呼んでるような……でもさっきはお父さんが聞いてるのもあって『楯無』って呼んでたっけ。ちゃんと使い分けが出来るのなら私だって昔みたいに呼びたいし話したいけど、そんな器用な真似が出来るとも思えないし……

 

「お嬢様のお願いですし、美紀さんもその方が良いと思ってるんじゃありませんか?」

 

「……やっぱり虚お姉ちゃんには隠し事は出来ないね」

 

「残念、これは一夏さんが見抜いたんですよ」

 

「そうなの?」

 

 

 部屋の隅に居る一夏様に視線を向けると、少し苦めだが笑っているようだった。

 

「美紀ちゃんも私たちと一緒に遊びましょ? その方が絶対に楽しいから」

 

「そうだね! それじゃあまたよろしくね、刀奈お姉ちゃん」

 

「うん!」

 

「その前に刀奈、お前は溜まってる仕事を如何にかしろよな」

 

「一夏君、お願い! せっかく美紀ちゃんと昔みたいに遊べるんだから、一夏君が代わりにやってくれないかな?」

 

 

 刀奈お姉ちゃんは、一夏様に頼み込むように手を合わせてる。虚お姉ちゃんが呆れた顔で見てるけど、一夏様は左手で頭を掻いて仕方無さそうに頷いた。

 

「その代わり明日は自分一人でするんだからな。俺も虚も明日は屋敷に居ないんだから」

 

「そうなの?」

 

「そうだった……明日は一夏君と虚ちゃんでデートだから、仕事があったら私がしなきゃいけないんだった!」

 

 

 刀奈お姉ちゃんを見たら、お姉ちゃんは思い出したと言わんばかりに慌てていた。

 

「虚も今日は一緒に遊んできて良いぞ。せっかく幼馴染が揃ったんだから、今日くらいは思う存分遊んでこい」

 

「ですが、それだと一夏さんの負担が……」

 

「今更少し負担が増えたくらいで如何ってこと無い」

 

 

 一夏様は当主の机の上に積まれている大量の書類に目をやったが、すぐに心配無いと言い聞かせるように笑って見せました。

 

「それじゃあ一夏君、今日はお願いね」

 

「すみません一夏様」

 

「やっぱり私は……」

 

「虚、お前も少しは遊ぶ余裕を持たなきゃ駄目だ」

 

「そうそう。虚ちゃんはもう少し余裕を持たなきゃ駄目よ~」

 

「刀奈は代わりに危機感を持てよな」

 

「持ってるわよ~」

 

「……絶対持ってないだろ」

 

「えへ?」

 

 

 刀奈お姉ちゃんが可愛らしく舌をだして見せたのを見て、一夏様と虚お姉ちゃんは同時にため息を吐いた。

 

「とりあえず今日だけは代わってやるから、思う存分遊んでこい。その代わり明日はしっかりと当主としての勤めを果すんだな」

 

「分かってる。明日は仕方ないもんね」

 

 

 本当ならそれが当主のあるべき姿なんだとは思うんだけど、刀奈お姉ちゃんは昔から面倒事は避けてきてたからなぁ。

 

「それじゃあ簪ちゃんの部屋に行くわよ~!」

 

「またゲームかよ……」

 

 

 一夏様が呆れたように首を左右に振りましたが、刀奈お姉ちゃんも虚お姉ちゃんも既に気持ちが遊ぶ事に向いているようで一夏様の反応には気付きませんでした。

 

「それじゃあ一夏君、お願いね♪」

 

「すみません一夏さん、お願いします」

 

「ん。美紀も楽しんでくるんだな」

 

「はい!」

 

 

 四月一日家ではお父さんとお母さんに馬鹿にされるだけなのに、更識家では皆優しくしてくれる。それに人前では出来ないけど、こうやって幼馴染で集まる時には昔みたいに話しても良いって言ってくれた。

 

「ねぇ美紀ちゃん」

 

「なに?」

 

「おじ様たちと上手くいってないなら、こっちに部屋を用意するけど」

 

「大丈夫、来週からは学園に残るから」

 

「ですが、それだと簪お嬢様や本音が寂しがりますし、碧さんも一夏さんも学園には居ませんので織斑先生の指導になりますが……」

 

「全力でお願いします!」

 

 

 織斑先生の指導は厳しいを通り越して辛いのだ。だから私は刀奈お姉ちゃんに全力で頭を下げて部屋を用意してもらう事にしたのだ。

 

「それじゃあ碧さんの部屋の隣かな」

 

「それか本音の部屋の隣ですかね」

 

「隊長か本音ちゃんの部屋の隣ですか……」

 

 

 隊長の部屋の隣なら、すぐに相談出来るし便利だろうな。何せ隊長はしょっちゅう携帯を無くすからメールや電話で相談しても掴まらない事が多いのよね……

 一方の本音ちゃんの部屋の隣だと、絶対に退屈はしないでしょうけど、ゆっくりと過ごしたい時でも騒がしい感じがするわね……ネガティブにはならないだろうけど、疲れが取れないかも知れないわね。

 

「どっちが良いかな?」

 

「美紀さんがよければ今日にも使えるようにしますけど」

 

「本音ちゃんの隣って事は、更識家内の重要ポジションの人の部屋が多いって事だよね?」

 

「私や簪ちゃんの部屋や虚ちゃんの部屋の傍だね」

 

「じゃあ隊長の部屋の隣は?」

 

「一夏君やマドカちゃんの部屋が傍だね。あと須佐乃男も」

 

「あちらは個人で襲撃者に対してそれなりに戦える人たちの部屋が多いですね」

 

 

 確かに隊長や一夏様なら並大抵の侵略者なら簡単に返り討ちにしてしまうだろうな。

 

「私も向こうが良かったんだけど……」

 

「さすがに当主が守りの薄い場所に部屋を設けるなんて出来ませんよ」

 

「ならせめて簪ちゃんの部屋を隣にしてほしいわね」

 

「重要人物の部屋を隣同士なんてしたら、襲われたら簡単にお終いですよ」

 

「だからって遠いわよ! 姉妹なんだよ! もう少し部屋が近くても良いじゃない!」

 

「十分近いですよね?」

 

「空き部屋2つ挟んで虚ちゃんともう一つ空き部挟んでるんだよ!? 全然近くないじゃないのよ!」

 

「いや、十分近いよ……」

 

 

 刀奈お姉ちゃんの部屋はこの屋敷の最奥に位置している。そこから考えれば十分簪ちゃんの部屋は近いのだが、何せ一部屋が広いからちょっと距離はあるのは確かなんだけどね。

 

「美紀さんは本音の隣、つまりはこのエリアの角部屋ですね」

 

「刀奈お姉ちゃんと一緒だね。角部屋」

 

「私のは自室と仕事部屋を兼ねてるから無駄に広いけどね」

 

「殆ど使ってないじゃないですか」

 

 

 普段は大広間か一夏様の部屋に居る事が多いようで、仕事部屋は別にもあるので普段はそっちを使って一夏様と虚お姉ちゃんが仕事をしているのだそうだ。

 

「それじゃあ本音ちゃんの隣にする」

 

「分かった。それじゃあ家の人に掃除させておくから」

 

「お願いします」

 

 

 虚お姉ちゃんが無線でそう言うと、大勢の女中さんが掃除道具を持って私の部屋になる空き部屋に入っていった……凄い勢いと人数だったな……

 

「着替えとかは後で持ってこさせるから大丈夫だよ」

 

「それくらいは自分でやるよ」

 

「だっておじ様と会えばまた喧嘩になるでしょ? 一夏君を護衛につければ平気だろうけど、さすがに一夏君でもあの量の仕事を終わらせるのには時間がかかるだろうしね」

 

「お嬢様がやってたら二日経っても終わらなかったでしょうがね」

 

「昨日少しやったわよ」

 

「ほぼ手付かずに見えましたけど?」

 

「……はい、すぐに飽きて昨日はさっさと寝ました」

 

 

 虚お姉ちゃんに見透かされた刀奈お姉ちゃんは、ガックリと肩を落としてトボトボと廊下を歩く。でも簪ちゃんの部屋に着いたらすぐに元気になって夕ご飯の時間までずっとゲームをして遊んでいた。

 ご飯の時間になると女中さんが呼びに来てくれてみんなで一緒に食堂に向かったのだが、部屋を出てすぐに一夏様と鉢合わせた。

 

「あれ、一夏君。もう終わったの?」

 

「とっくに。さっきまで外に居たんだが、追加が無いか確認してただけだ」

 

「あれだけの量を……何時終わらせたの?」

 

「そうだな……美紀の部屋の掃除が終わる前には終わってたが」

 

「えっと虚ちゃん、美紀ちゃんの部屋の掃除が終わったのって何時だっけ?」

 

「一時間前ですね。つまり一夏さんが仕事を始めて二時間と言った所でしょうか」

 

 

 あれだけの山を二時間で片付けるなんて……一夏様のハイスペックさに全員が言葉を無くした。特に刀奈お姉ちゃんと虚お姉ちゃんが受けた衝撃は簪ちゃんや本音ちゃんたちとは違ったんだろうな。

 

「そう言えば美紀、玄関に荷物が来てるが」

 

「あら、もう来たのね」

 

「誰が運ぶんですか?」

 

「そりゃ……ねぇ」

 

「……俺が?」

 

 

 虚お姉ちゃんの質問に私たち全員の視線は一夏様に向いた。この屋敷には男の人も居るのだが、さすがに下着とかが入ってるものを良く知らない男の人に運んでもらうのは嫌だからね。

 その点一夏様なら女物の下着を見て興奮する事も無いし、見られても他の男性ほど恥ずかしくないから頼みやすいのだ。

 

「一夏様、お願い出来ますか?」

 

「……仕方ねぇな」

 

「さすが一夏君! それじゃあご飯の後にお願いね」

 

 

 一夏様はさっき刀奈お姉ちゃんの部屋でやったように左手で頭を掻いて承諾してくれた。如何やらあれは一夏様のクセのようだ。

 

「そうだ美紀、これやっとけ」

 

「何それ?」

 

「編入前の授業の内容を纏めたものだ。テスト前に慌ててやるより今からこつこつとやっておいた方が後で楽だろ」

 

 

 一夏様から手渡されたのはノート数十冊。今から頭が痛くなってきたけど、これを纏めるのに一夏様はどれくらい労力を使われたのだろう……

 

「一夏、学園で疲れ気味だったのはこれを作ってたから?」

 

「それだけじゃねぇけど、確かにそれもあるかもな」

 

 

 一夏様、そこまで私の心配をして下さってるんですか。ならしっかりとやらなければいけない!

 

「本当なら解説もしてやりたいんだが、時間がな。だから分からなかったら簪に聞いてくれ」

 

「そっか、一夏は明日居ないんだもんね」

 

「間違っても本音や須佐乃男、マドカには質問するなよ。絶対に答えられないだろうから」

 

 

 一夏様にそう言われた三人は、恥ずかしそうに頭を掻いている……反論が無いと言う事は答えられないんだろうな。

 

「学園でなら教えてやれるだろうから、簪に聞き辛いのなら学園で俺が教えるが、今日一日できまづさも解消されてるようだしな」

 

 

 一夏様はそれだけ言って私たちとは別の方向に脚を向けました。

 

「あれ? 一夏君ご飯は?」

 

「後で食べる。今はちょっと用事があるから出てくる」

 

「今から?」

 

「別に問題は無いだろ。しょっちゅう出かけてるぞ?」

 

 

 そう言われて全員が首を捻ったのを見ると、如何やら一夏様が出かけてる事を知らなかったようだ。

 一夏様を見送って私たちは食堂でご飯を食べる事にした。久しぶりのこんなに楽しい食事の時間を過ごせたなぁ~……家ではこんな楽しい時間は無かったし、学園ではまだそんなに馴染めてないし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何時もより早く寝た訳でも無いのに、何時もよりも早くに目が覚めた。理由は分かっている。だが、別にそれをするのが初めてではないのに何故だ? 

 

「そうか、二人きりだからですね」

 

 

 一夏さんとデートする事は既に経験した事がありますが、二人きりとなると初めてなのです。お嬢様も簪お嬢様もこんな気分だったのでしょうか……

 

「一夏さんと出かける事自体久しぶりかもしれませんね」

 

 

 学園の行き来くらいで、後は殆ど出かけませんし、夏休みに皆で出かけて以来ですかね。それだけ貴重な一夏さんとのお出かけなのですが、それが二人きりとなるとその貴重さは何倍にも跳ね上がります。

 もしその権利に値段が付くとするならば、私なんかが買える訳無い値段が付くのでしょうね。

 

「とりあえず起きて顔でも洗いましょう」

 

 

 この屋敷には各部屋に洗面所が無い。トイレはあるのに不便な屋敷ですね。

 

「贅沢言ってられる経済状況じゃ無いんですがね」

 

 

 資金に余裕があればリフォームも考えられるのですが、そんな予算は何処にも無いのです。一夏さんのおかげで何とかなってますが、経済的余裕は今の更識には存在しません。

 IS業界でもそれなりに成功してますし、お嬢様はロシア代表、簪お嬢様は日本の代表候補生で有名でそれなりに収入はあるはずなのですが、何故か本家には余裕が無いのです。

 

「誰かが意図的に本家のお金をくすねてるような様子も無いですし、何処か不自然な使い方も見当たりませんしね……」

 

 

 再三再四領収書や収支報告書を確認しても、不審な点は見当たらないのです。なのに本家に入ってくるはずの額と、実際に入ってきた額に差があるのです。

 

「誰かがやはり途中で抜いているのでしょうね……身内を疑うのは心苦しいですよね」

 

 

 一夏さんが念入りに調べて漸く分かるような手回しの良さと更識に何か怨みを持ってる人を見つけ出すにはそんなに大変では無いのですが、見つけてからが大変なんですよね……

 せっかくのデート当日にそんな事を考えて鬱になりたくないので、とりあえずはその事を頭の片隅に追いやった。

 

「よし! 今日は目一杯楽しみましょう!」

 

 

 普段はしっかりものの姉のポジションですが、一夏さんと二人きりならその必要は無いですしね。

 

「前に夫婦みたいと言われた事もありましたっけ」

 

 

 私も一夏さんも実年齢より上に見られる傾向が強いので、知らない人が見たら学生カップルには見えないんでしょうね。

 

「夫婦……」

 

 

 想像しただけで頬が熱くなってくのが分かる……想像だけでこんなになるのですから、もし本当にそうなったら如何なるんでしょう……考えるだけで恥ずかしいです。

 

「お~い虚、そろそろ出かけるぞ」

 

「は、はい!」

 

 

 時間が近付いてきていたのに気付かなかった私を、一夏さんが迎えに来てくれました。

 デート中は余計な事を考えないで一夏さんに思いっきり甘える事だけを考えましょう。そうすればきっと素直に楽しめるでしょうし。




次回デート回、今回は如何盛り上げたら良いんだ……

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