もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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水道工事でちょっとだけ断水しました


成長している彼氏

 織斑先生の意外……でも無い性癖を聞かされて気分の悪くなった簪お嬢様を介抱する為に、一夏さんと二人で手当てをしました。

 

「簪はもう寝てた方が良いかもな」

 

「そうですね、無理してぶり返したら大変ですしね」

 

「ゴメン……」

 

 

 私たちに迷惑を掛けたとお思いになっている簪お嬢様がションボリとしてしまいましたが、一夏さんが優しく慰めます。

 

「簪は悪く無いだろ。多分だがこの部屋に居る誰も悪く無い。悪いのは話のネタになったあの人だろうからな」

 

「でも、私たちが聞きたいって言ったんだよ?」

 

「気になるのはしょうがないだろ。人間は好奇心には勝てないんだから」

 

 

 そう言いながら簪お嬢様の頭を優しく撫でている一夏さんは、やはり優しくて良い人だと再認識させられます。

 簪お嬢様を撫でている一夏さんを見ていると、何だかモヤモヤっとした気持ちが私を支配し始めるのですが、今は我慢しなければなりません。

 

「今日はもう横になってな」

 

「うん……ねぇ一夏?」

 

「何だ?」

 

 

 甘えるように簪お嬢様が一夏さんの名前を呼びました。一夏さんも何となく何を言われるのか検討がついているような感じですが、あえて言われるまで行動しないつもりのようです。

 

「ちょっと動けないから、一夏がベッドまで運んでくれない?」

 

「構わないが、刀奈さんや本音が嫉妬するぞ?」

 

「病人の特権だよ」

 

「そうか」

 

 

 撫でていた手を止めて簪お嬢様の身体の下にその手を潜り込ませ、簪お嬢様を抱きかかえる一夏さん、相変わらずのスムーズさと絶妙な力加減であっという間に簪お嬢様をベッドまで運んで行きました。

 

「ああ~! 簪ちゃん、一夏君に抱っこされてる~!」

 

「ズルイよかんちゃん!」

 

「しょうがないでしょ、歩けなくなっちゃったんだから」

 

「なら虚ちゃんに運んでもらえば良いじゃない!」

 

「虚さんじゃさすがに運べないだろ。いくら簪が軽いからって、虚さんだってそれほど力持ちじゃ無いんだから」

 

「じゃあ一夏君、後で私も運んでよね!」

 

「何でだよ……刀奈は普通に歩けるだろうが」

 

 

 心配してた通りに羨ましがるお嬢様と本音、さっき約束した通りに一夏さんはお嬢様を呼び捨てにしてタメ口で話しています……改めて聞くと凄い違和感ですね。

 

「だって一夏君に抱っこされるなんて滅多に無いじゃない!」

 

「必要が無いからな」

 

「おりむ~、私も何だかフラフラするよ~」

 

「本音は何時もフラフラしてるだろ」

 

 

 仕事をサボってフラフラしてると揶揄されて、本音は演技を止めて一夏さんに抗議する。

 

「それとこれとは違うよ~!」

 

「普通に歩けてるぞ」

 

「……あっ!」

 

 

 抗議の為一夏さんに近づいた本音は、何時も通り普通に歩く事が出来ていた。演技なので当たり前なのだが、一夏さんはあえてその事を指摘しなかった。

 

「誰か、簪を着替えさせてやってくれ」

 

「じゃあ私が」

 

「頼む」

 

 

 ベッドまで簪お嬢様を運んだ一夏さんは、須佐乃男に着替えを任せて此方に戻ってこようとしました。

 さすがに着替えを見るのはマズイと思ってたのでしょうが、途中でお嬢様と本音に行く手を阻まれてしまいました。

 

「……何だよ?」

 

「簪ちゃんばっかり贔屓だ!」

 

「偶には私たちも贔屓するんだ~!」

 

「偶にはも何も、本音は毎朝起こしてるだろ」

 

「そう言えば……」

 

「た、楯無様!? まさか裏切るんですか~?」

 

「だって本音は毎日一夏君に甘えてるんだし……」

 

「刀奈だって俺に仕事押し付けて遊び呆けてるんだから」

 

「そ、そんな事無いもん! 今日はちゃんと仕事したもん!」

 

「今日『は』だもんな……何時もは仕事してないって自覚してるんだな」

 

「あうぅ……」

 

 

 一夏さんにあっさりと口で負かされ、お嬢様と本音はガックリとその場に膝をつきました。その横を通りすぎる際に、一夏さんは二人の頭を軽く撫でているのを、私ははっきりと見ました。

 

「お兄ちゃんは口でも強いんだね~」

 

「この部屋では何時もこうなの?」

 

 

 感心しているマドカさんと、この光景を初めて見るナターシャ先生が一夏さんに近づきます。なかなかキッチンに辿り着かない一夏さんですが、これは何時もの事なので本人もあまり気にしてない様子……

 

「別に口論してた訳では無いし、事実を言っただけだからな」

 

「でも、事実でもあそこまで的確に抉れないって」

 

「抉るって……そんなつもりは無いんだが」

 

「そうなの? お兄ちゃんなら嬉々として相手の心を抉るもんだと思ってた」

 

「……一度ゆっくりと話し合う必要がありそうだな」

 

 

 マドカさんの中の評価を聞いて、一夏さんはため息を吐きそうになってました。ですが最近はため息禁止してるので、首を振って何とか堪えた様子でした。

 

「それでこの光景は大体何時も通りですよ」

 

「そうなんだ……一夏君は大変な毎日を送ってるんだね」

 

「今日はまだマシな方だ……酷いとこれにブリュンヒルデと大天災の相手もしなければいけないんだから」

 

「うわぁ……」

 

 

 ナターシャさんの反応から分かるように、それくらい一夏さんは大変な毎日を送ってるのだ。迷惑を掛けている一人である私が言うのもなんだが、一夏さんは少し休んだ方が良いかもしれない。

 

「さてと、風呂でも入るか」

 

 

 キッチンに来るのを諦めたのか、一夏さんはそのままお風呂場に向かいました。何時もお風呂の支度をしてくれるのも一夏さんで、お風呂掃除をしてくれるのも一夏さんなのだ……少しは手伝った方が良いですね……

 

「一夏さん、手伝いますよ?」

 

「そうか? じゃあ手伝ってもらおうか」

 

「はい!」

 

 

 料理では足を引っ張る事しか出来ませんが、お風呂掃除なら役に立てるはず! 私は気合を入れてお風呂掃除に取り掛かる事にしました……その気合が空回らないように気をつけながら行動しなくては!

 

「それじゃあ虚はバスタブを洗ってもらおうか。昨日皆がはしゃいだ所為で結構汚れてるからな」

 

「すみません……」

 

「いや、虚だけが悪い訳じゃ無いんだろう? 俺だって軽くしか洗わなかったから同罪っちゃ同罪だろうからな」

 

「そんな事無いですよ! 一夏さんは何も悪く無いです!」

 

 

 お嬢様と一緒にはしゃいだ私たちに全ての責任があって、一夏さんには何一つ問題は無いはずなのに、一夏さんはそう言って気を使ってくれる……優しいと思うと同時に申し訳なく思えてくるんですよね……

 

「虚が洗ってる間に俺は床を掃除しとくから」

 

「お願いします」

 

 

 こうして呼び捨てにされて、タメ口で話してもらうと、今まで以上に一夏さんの彼女なんだと言う気持ちが強くなってきます。簪お嬢様や本音から見れば普通の事なのでしょうが、お嬢様と私はずっと敬語で接しられてましたし、最近ようやく二人きりの時にだけと約束付けたのですが、部屋限定とは言え皆の前で呼び捨てられるのは嬉しいですし気持ち良いですね。

 

「ん? 何か付いてるか?」

 

「いえ! 如何してそんな事を聞くんですか?」

 

「いや、ずっと見てるから……」

 

 

 一夏さんに指摘されたように、私は一夏さんをジッと見ていました。今までも彼氏だった人なのですが、今日は特別な気持ちになっているのです。だからつい一夏さんを見てしまうのは仕方ない事なのです……だって漸く他の人と同じって感じになったんですから。

 

「一夏さん」

 

「ん?」

 

「明日の放課後は屋敷に戻るので、生徒会の仕事はなるべく昼までに終わらせたいんです。手伝ってくれますか?」

 

「何時もの事だろ。刀奈もとっ掴まえて早朝から作業すれば終わるだろ」

 

 

 あまりにもスムーズにお嬢様の事を呼び捨てにした一夏さんに、私は驚きと尊敬が混ざった視線を送りました。

 だってお嬢様を呼び捨てに出来る人なんて、織斑先生くらいしか思いつきませんので……それが名前となるともう先代の楯無様くらいしか居ませんでしたし……奥様は今では様付けですし、襲名する前もさん付けでしたしね。

 

「何かおかしな事言ったか?」

 

「いえ、お嬢様を呼び捨てに出来る人は、一夏さんしか居ないんだなと思いまして」

 

「? 呼ぼうとすれば誰でも呼べるんじゃ無いのか?」

 

「いえ、一夏さん以外には呼べる人に心当たりはありませんね」

 

「そうなのか?」

 

「ええ。先代の楯無様しかお嬢様の事を『刀奈』とは呼びませんでしたし」

 

「……そうだったな」

 

 

 一夏さんも更識の家庭事情を思い出したようで、ちょっと複雑な表情を浮かべてました。

 

「親が居ても名前を呼び捨てにしてもらえないんだよな、刀奈は……親の居ない俺と、世間が見ればどっちが不幸なんだろうな……」

 

「それは……」

 

 

 一夏さんは何時も気にしてないと言ってますが、世間から見れば一夏さんは親に捨てられた子なんですよね……織斑先生が居たからそんなに目立たないですが、一夏さんは身内と言うものに縁が無いのでした……

 

「別に虚が気に病む事じゃ無いから」

 

「いえ、改めて私たちは恵まれてるんだと思ってたんです」

 

「恵まれてる?」

 

「ええ。親が居て、その親と普通に会話出来るのが当たり前だと思ってましたが、お嬢様や一夏さん、マドカさんはその当たり前が出来ないんですもんね」

 

「当たり前か……でもそれは人に寄っては当たり前じゃ無いのかもしれないな。親のありがたみを知らない奴らも、大勢居るだろうし」

 

「最近多いみたいですね」

 

 

 特に男親を疎ましく思う子供が多くなってきているようで、世間では親なんて要らないって風潮も強まってるらしいですし……

 

「当たり前を当たり前だと思えてる虚は、立派なんだろうな」

 

「そんな事無いですよ……一夏さんの方がずっと立派です」

 

 

 一夏さんに褒められて恥ずかしさと嬉しさが同時に訪れてきた私の心は、未だかつて無いくらいドキドキしている。

 

「さてと、こっちは掃除終わったが」

 

「え……」

 

 

 会話しながらも手を動かしてたのは私も同じ、なのに一夏さんの方はピカピカに仕上がっているのに対して、私はまだ終わってない……事務作業なら同じ速度くらいは出せるんですが、家事になると全く駄目ですね……やっぱり一夏さんは凄いです。

 

「ほら、虚もちゃんと手を動かす」

 

「ッ!」

 

 

 何時の間にか私の背後に回っていた一夏さんは、私の腕を取り必死に掃除のやり方を教えてくれている……ですが私の心はそんな事を考えられるほど冷静では無かったんです。

 

「(これって、後ろから抱きしめられてる!?)」

 

 

 抱きついた事はありますけど、抱きつかれるのは初めてかもしれません……さっき体験したドキドキが生温いと感じられるほど、私はドキドキしています。

 

「聞いてるのか?」

 

「は、はい!」

 

「そうか……なら良いんだが」

 

 

 実際には何を言われたのか全く分かってないんですが、とりあえず返事をしておかなければ不審に思われてしまうと思ったので返事だけはしっかりとしました。

 

「虚?」

 

「は、はい?」

 

「大丈夫か? 何だか心此処にあらずな感じがするんだが……」

 

「!?」

 

「熱では無さそうだな」

 

 

 私の額に一夏さんの額が押し当てられ、熱を測られました。その時はまだ熱くなかったのですが、一夏さんの顔が近くにあると意識したら急激に顔が熱くなってきました。

 

「気分が悪いなら無理して手伝ってもらわなくても大丈夫だったんだが」

 

「そ、そんな事無いですよ! 私は大丈夫です!」

 

「後は俺がやっとくから、虚は少し休んでろ」

 

 

 そう言って一夏さんは私を抱え上げ脱衣所に座らせました。上の空だった理由は一夏さんに後ろから抱きしめられてたからなのですが、今は別の理由で上の空になってしまいました。

 

「(一夏さんに抱かかえられた……しかもこんなにも優しくしてくれる)」

 

 

 普段から優しい人なのですが、こう言った事を特に意識せずにされるとときめいてしまう。これは私だけなのでしょうか? それとも、これが普通の女子の気持ちなのでしょうか?

 聞く相手もいませんし、答えは得られそうに無いですが、この気持ちは特に不快では無いので大切にしましょう……そんな事を考えてる間に、一夏さんがお風呂場の掃除を終わらせていた。

 

「これでお湯を張れば入れますね」

 

「何時もありがとうございます」

 

「一番使うのが俺なんだから、洗うのは当然だと思うが」

 

「ですが、私たちも使いますし、汚すのも大体が私たちなんですが……」

 

「虚は汚さないだろ? 大体本音か刀奈だろうし」

 

 

 一夏さんの言う通りなのですが、本音は妹だしお嬢様は主ですので、結局は私が謝る事になるんですよ……

 

「虚は何でも自分で背負い込みすぎだ。少しは周りに任せたら如何だ?」

 

「ですが、任せる相手が一夏さんじゃ、一夏さんの負担が増えるだけですよ……」

 

 

 お嬢様や本音の相手などを一夏さんに任せっきりになってきてるのに、これ以上一夏さんに負担は掛けたくないんです……

 

「別に俺じゃ無くても、刀奈や本音に仕事をやらせれば良いだけだ。それでも駄目なら俺を頼ってくれて構わないから」

 

「一夏さん……」

 

 

 サラッとカッコいいセリフを言われ、私はまたときめいてしまいました。

 

「お~い風呂の準備出来たからそっちも支度しとけよ」

 

「一夏君と一緒に入れるの?」

 

「……今日だけだぞ」

 

「やった!」

 

 

 脱衣所に顔を覗かせたお嬢様が部屋まで戻ると、そっちの方向からもの凄い歓声が聞こえてきました。

 

「やれやれ……」

 

「一夏さん、お疲れなら後でマッサージしますけど?」

 

「そうか……じゃあお願いする」

 

 

 素直に甘えられるのが、こんなにも嬉しい事だったなんて知らなかった。普段なら気持ちだけとか、また今度とか言われて断られるのだが、今日は素直に甘えてくれた。

 

「さてと、俺たちも支度しないとな。ああなった刀奈は早いからな」

 

「そうですね」

 

 

 お嬢様は普段はのんびりとしてる方ですが、自分がうれしい事や楽しい事に直面するともの凄い行動力を発揮するのです。

 その事が分かっている私と一夏さんは、二人揃って苦笑いを浮かべながら脱衣所から部屋に移動しました。

 

「一夏君、虚ちゃん、早く早く!」

 

「おりむ~もおね~ちゃんものんびりしすぎだよ~」

 

「ナターシャ先生のサイズは、これで大丈夫ですか?」

 

「うん、これで大丈夫だけど……何処から出してるの?」

 

「企業秘密です」

 

「気になるんだけど教えてくれないんですよ」

 

 

 既に準備万端な五人を見て、苦笑いが苦い笑いに変わった一夏さん、きっと一緒に入るのを認めた事を後悔してるんでしょうが、今更無しには出来ませんし、その事は一夏さんも分かってるはずです。

 

「先に入ってろ。俺は簪の様子を見てから行くから」

 

「絶対だからね!」

 

「急いでね~!」

 

「ほら、虚様も急いでください」

 

「え、私も簪お嬢様の様子を……」

 

「お兄ちゃんに任せとけば大丈夫だからさ!」

 

「それじゃあ一夏君、後でね」

 

 

 須佐乃男とマドカさんに引っ張られたのですが、私はまだお風呂の準備をしてないんですが……

 

「マドカ、須佐乃男」

 

「何ですか?」

 

「何、お兄ちゃん?」

 

「虚はまだ準備してないんだから、引っ張るのは止めろ」

 

 

 私が如何やってこの手を離してもらおうか困っていると、一夏さんが助け舟を出してくれました。

 

「そうでしたね」

 

「それじゃあ仕方ないね」

 

 

 そう言って掴まれていた手が解放され、私はその場に立ち止まりました。

 

「あんまりはしゃいでると行かないって刀奈にも言っといてくれ」

 

「分かりました」

 

「お兄ちゃん、待ってるからね!」

 

 

 軽く釘を刺されてもめげない二人は、私を解放してもなお高いテンションで脱衣所に消えていきました。

 

「やれやれ……誰に影響されてるんだか」

 

「大変ですね、お義兄ちゃんも」

 

「お姉ちゃんだって大変そうだが?」

 

「それもそうですね」

 

 

 事情を知っている私は、あえて『お兄ちゃん』では無く『お義兄ちゃん』と言ったのですが、一夏さんには正確に伝わったようでした。

 

「簪、具合は如何だ?」

 

「うん平気……残念だなぁ」

 

「ん?」

 

「何がですか?」

 

 

 簪お嬢様が悔しがっている理由が分からない私と一夏さんは、揃って首を捻りました。

 

「せっかく一夏と一緒にお風呂に入れると思ったのに……」

 

「今日は我慢するんだな」

 

「そうですよ。無理して悪化させたら大変なんですから」

 

「うん…分かってるんだけど……」

 

 

 簪お嬢様の気持ちは分かる。普段一緒に入れない一夏さんと一緒に入れる機会に、自分だけのけ者にされるのは悔しいし寂しいでしょう……ですが簪お嬢様の体調を考えると、これだけは許可出来ないのです。

 

「簪お嬢様、何とか我慢してください」

 

「大丈夫、私はお姉ちゃんほど我が侭じゃ無いから」

 

「そうだな……そんな簪にはご褒美だ」

 

「ご褒美? 何かくれるの?」

 

 

 一夏さんの『ご褒美』が、私には何となく分かりました……羨ましいですね、簪お嬢様。

 

「!?」

 

「これで我慢してくれ」

 

「うん……」

 

 

 私の想像の通り、一夏さんは簪お嬢様にキスをしました。いきなりで驚いていた簪お徐様でしたが、キスされたと実感したと同時に顔が真っ赤になっていました。

 

「さてと、じゃあ準備して俺たちも風呂に行くか」

 

「そうですね……」

 

「何不貞腐れてるんだよ?」

 

「自分の彼氏が他の女とキスしてる場面を見たらこうなりますよ!」

 

「他の女って……別に浮気じゃないんだがな」

 

「それでもです!」

 

 

 平等が心情の一夏さんの彼女としては、今のはちょっと違うんではないかと思ってしまうのです。これから私たちは一夏さんと一緒にお風呂なので、簪お嬢様には別の事で穴埋めをしたのですが、私もキスの方が良かったです。

 

「嫉妬か?」

 

「違っ……!?」

 

「これで良いか?」

 

 

 いきなり塞がれた唇に、一夏さんの唇が触れてたと気付いたのは、してやってり顔で笑っている一夏さんを見てからだった……




そろそろ千冬にナターシャが彼女になった事を知らせなければ……

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