もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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200話まであと5話……意外と長くなかったかな?


眠り姫と新米教師の緊張

私たちはいったい何時までこんな場所に閉じ込められてなければいけないのだろう……デュノアを反省させるためにこの場所に来たのに、一夏を怒らせてしまって私と真耶も閉じ込められる破目になってしまったのだ。

 

「真耶、起きてるか?」

 

「起きてますけど……そもそも寝たのか怪しいです」

 

「こんな場所で熟睡出来る訳ないよな」

 

 

この空間は精々1畳半だ。こんな狭い場所でゆっくりと寝られるヤツの神経を疑うくらい寝ずらいのだ。

 

「そう言えば織斑君が持ってきてくれたご飯ですが、今回はおにぎりでしたね」

 

「アイツなりの気配りなのだろう。パンばかりでは飽きるからな」

 

「飽きるほど閉じ込めるつもりなんですかね?」

 

「さぁな、そればかりは一夏に聞くしか無いだろ」

 

 

アイツが教えてくれればの話だがな……

 

「デュノア、お前はおにぎりの具材は何だった?」

 

「………」

 

「デュノア?」

 

 

話しかけてもまったく返事をしないデュノア……何かあったのか焦るが、生憎確かめようが無いのだ。

 

「真耶、デュノアの部屋から何か聞こえるか?」

 

「いえ、何も聞こえません」

 

「まさか死んだんじゃ無いだろうな」

 

「1日くらいで死にはしないと思いますが……」

 

 

同じ境遇のデュノアの事が心配になってしまった。此処で一緒に過ごした仲間に、万が一の事があれば悲しいからな……

 

「相変わらず早起きだな」

 

「一夏!」

 

「な、何だよ……」

 

「デュノアがやけに静かなのだが……」

 

「シャル?」

 

「もしかして死んでしまったのではないかと心配で……」

 

「如何やって死ぬんですか、まったく……」

 

 

一夏は私と真耶の心配をよそに朝食の差し入れを渡してきた。暢気に構えてる場合じゃ無いのかもしれないのだぞ!

 

「ほら、シャルも起きろ」

 

「「……起きろ?」」

 

 

まさかこの空間で熟睡してたんじゃ無いだろうな……私ですら寝るのが難しかったこの空間で熟睡なんて出来る訳無いだろうがな……

 

「う~ん……うわ、何で一夏が僕の部屋に!?」

 

「寝ぼけてるな……」

 

「あ、あれ?此処は……そうか、僕は閉じ込められてたんだっけ」

 

「良く寝られるな、こんな狭い場所で」

 

「だって僕、実家では似たような生活だったから」

 

「似たような?」

 

「愛人の子に使わせる部屋は無いんだってさ。だから僕は地下牢で生活してたんだ」

 

 

なるほど……地下牢ならこの空間とさほど広さは変わらないだろうし、地面がコンクリートじゃ無い分此処の方が快適だったのかもしれないな。

 

「なぁ一夏、私たちは何時出られるんだ?」

 

「千冬姉とシャルはもう暫く入っててもらう事になってる」

 

「誰が決めたんだ?」

 

「学園と相談して俺が決めた」

 

 

一夏の独断では無いのか……さすがに教師を2人も監禁するには学園側に話を通さなければ出来ないのだろうな。

 

「……ん?」

 

「如何かしたか?」

 

「私とデュノアはって事は……」

 

「山田先生は今日の夕方には出られるかもだ」

 

「本当ですか!?」

 

「反省が見られればですがね」

 

 

そう言って一夏は私たちに背中を向けた。

 

「もう帰っちゃうのか?」

 

「そんなにのんびりしてる暇は無いからな」

 

「今、何時だ?」

 

「そろそろ8時になるが」

 

「此処に居ると時間が分からなくて困るな」

 

「……ほれ」

 

 

一夏が例の武装から目覚まし時計を取り出した……あの武装はド○えもんの四次元ポケットなのだろうか……

 

「カレンダー機能もあるからそれで分かるだろ」

 

「こんなもの用意するくらいなら出してくれ」

 

「それは無理だな」

 

「何故だ!?」

 

 

私は別に大して悪い事してないだろうが……いや、一夏に迫ったり巻き込もうとしたりと、色々やってるのかもしれないが。

 

「ゆっくりと反省するようにこの場所があるんだ。もう少し反省したら出してやる」

 

「反省してるさ……お前を巻き込もうとした事も、迷惑掛けっ放しなのも……」

 

「それが本当なら、千冬姉は予定より早く出れるだろうな」

 

「一夏、僕は!?」

 

「シャルを此処に連れて来たのは俺じゃ無い。織斑先生の判断じゃなきゃお前は出られないだろうな」

 

「そんなぁ~……」

 

 

そう言えばデュノアを此処に連れて来たのは私だったな……一夏にこの場所に閉じ込められたから忘れかけてたが、アイツを反省させるために此処に来たんだったな。

 

「じゃあ俺はもう行くから」

 

「織斑君、私大人しく待ってますから」

 

「一夏、私もゆっくりと反省してるぞ」

 

「そんなに嫌なのか?」

 

「「当たり前だ(です)!」」

 

「宇宙規模のストーカーでも此処の状況を把握できないって言ってもか?」

 

「宇宙規模のストーカー?」

 

 

真耶には誰の事か分からないだろうが、私には一夏が言っている人物が誰なのか理解出来る。アイツの事を理解してる数少ない人間として、分かるのが当然だろうな……それが良い事なのかは別と考えるがな。

 

「一夏、この空間はアイツにも察知出来ないのか?」

 

「昨日電話でそんな事を言ってたんだ」

 

「アイツの監視から逃れられるのは魅力的だが……」

 

 

そんな事を考えてたら、何時の間にか一夏は特別指導室から姿を消していた……声くらい掛けてくれても良いだろうが。

 

「千冬さんも早めに出られそうで良かったじゃないですか」

 

「真耶みたいに確定ではないがな」

 

「私だって確定ではなさそうでしたが……」

 

「あの~織斑先生、僕は何時になったら出られるんでしょうか?」

 

「そうだな……私が出た翌日か翌々日だな」

 

「それって何時になるんですか!」

 

「それは一夏の判断次第だな」

 

 

私だって自由に出られる訳では無いのだ。そんな事を私に聞かれたところで、私は知りもしないのだから答えようも無いだの。

 

「兎に角、今はしっかりと反省するんだな」

 

「……僕が何をしたって言うんだ」

 

「何か言ったか?」

 

「いえ、何でも無いです!」

 

 

何かつぶやいたように聞こえたが、デュノアが何でも無いと言ってる以上、問い詰める方法が無いからな……せめて傍に行ければ聞きだす方法などいくらでもって、この考えも一夏の怒りを買った原因の1つなのかもしれないな……改めなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃんに保健室までおぶってもらい、その後少し休んでから部屋に戻った。部屋に戻った時には既に本音以外は起きており、お兄ちゃんが作っておいてくれたであろう朝食を食べていた……いったい何時作ったのだろう?

 

「あっ、マドカちゃんお帰り~」

 

「何時もより遅かったけど、何かあったの?」

 

「ちょっと脚が痙攣しちゃってね。保健室で休んでたの」

 

「それで、大丈夫なのですか?」

 

「お兄ちゃんが運んでくれたし、その後も安静にしてたから平気だと思いますけど」

 

「一夏様が運んだ?」

 

「あっ、今日はお兄ちゃんと一緒に走ってたんだけど、良いとこ見せようと張り切っちゃって脚に負荷が掛かっちゃったんだ。それでお兄ちゃんがおんぶしてくれたの」

 

「一夏君が……おんぶ?」

 

「やっぱりお兄ちゃんは優しいですよね~」

 

 

私が自分で無茶して痙攣したのに、お兄ちゃんはわざわざ私を保健室まで運んでくれたのだ。

 

「ところで、その一夏さんはどちらに?」

 

「姉さんたちの様子を見に行きましたけど……それが如何かしたんですか?」

 

 

虚さんの目が、何時も以上に険しい気がしたのは、多分気のせいだろう……気のせいじゃなきゃ怖いから気のせいだと言う事にしておこう、うん。

 

「一夏様はマドカさんに甘過ぎな気がしてきましたよ……」

 

「そんな事無いでしょ。皆に優しいし、皆を甘やかしてくれてると思うけど」

 

「それでも、マドカには私たち彼女とは違った甘やかし方をしてると思う」

 

「違った甘やかし方?」

 

 

そりゃ私は義妹だし、お兄ちゃんが私だけ別の甘やかし方をしててもおかしくは無いけど、それでも彼女に対しての甘やかせ方よりは良い事無いと思うんだけどな……

 

「マドカちゃんは小さい事に甘えられなかった分、一夏君は甘えさせられなかった分を今してるんだと思うんだけど、それはとっても羨ましい事なのよ」

 

「そう……なんですか」

 

 

お兄ちゃんに甘えられなかったのは、あの屑共の所為だけど、お兄ちゃんはその事を気にしてくれてるようだった。それに私も思いっきり甘えたいと思ってる……だけどそれはあくまでも義妹がお兄ちゃんに甘えてるだけなんだから、彼女である楯無さんたちが嫉妬するような事では無いと思うんだけどな。

 

「でも、お兄ちゃんは結局皆に甘いと思うんですけど……」

 

「そうなんだけどね」

 

「一夏様は意外と押しに弱いですから」

 

「頼めばしてくれるんだけどね」

 

「ですが、頼りっぱなしなのも良く無いんですよ」

 

「難しいですね」

 

 

お兄ちゃんに頼っちゃうと、自分で何かをしようって考えがなくなってきちゃうから大変なんだよね……現に姉さんがそうなってるし。お兄ちゃんに頼りきって生活して10年経つと姉さんみたいな家事無能者が出来上がるようだ……少しくらいは出来るようになろうとか思わないのかな。

 

「あっ、マドカちゃんの分もあるよ」

 

「今その話になるの?」

 

「だって食べないとお腹空いちゃうでしょ?」

 

「授業中にお腹が鳴っちゃいますね」

 

「それは恥ずかしいよ」

 

 

乙女が授業中に空腹でお腹を鳴らすなんて……想像しただけで顔が熱くなってくるよ。女子高だからって恥ずかしさには変わりは無いし、私のクラスにはお兄ちゃんが居るのだ。卑しい子だって思われたくないもんね。

 

「ところで、お兄ちゃんは何時これを作ったんだろう?」

 

「一夏様なら寝る前に仕込みをしてましたし、ちゃちゃっと作っちゃうでしょうからね。何時作ったかは誰も知りませんよ」

 

「一夏君は色々と高スペックだからね~」

 

「時折羨ましく思いますよ……」

 

「一夏の料理の腕は、素直に羨ましい……」

 

 

確かにお兄ちゃんの料理の腕は、女子から見れば羨ましいものなのだろうし、実際私だって羨ましいと思っている。でも、あの腕はお兄ちゃんの苦労と努力の末に身に付いたものだから、そんな簡単に手に入るものでは無いし、ましてやおいそれと貰えるものでも無いのだ。

 

「俺が如何かしたか?」

 

「あっ、お兄ちゃんお帰り~」

 

「一夏君、早く本音を起こさないとまた遅刻しちゃうわよ?」

 

「今まで1回も遅刻した事は無いんですが……」

 

 

確かにお兄ちゃんは遅刻ギリギリは何度かあるけど、遅刻した事は無かった。それはお兄ちゃんが常識では考えられない方法で教室に来るからであって、普通の人間だったら遅刻しても仕方ない状況には度々陥っているのだ。

 

「しかも今日は本音の要望で優しく起こさなければいけないんですよね?」

 

「一夏、本当に起こせるの?」

 

「さぁ?」

 

 

お兄ちゃんは両手を広げて肩を竦めた……お兄ちゃんも自信がある訳では無いようで、少し困っているようにも見えたのだった。

 

「ほら本音、起きろ」

 

「……スピー」

 

「起きないね」

 

「まぁ、これで起きるのなら毎日苦労しないんだがな」

 

「確かに」

 

 

此処最近は毎日お兄ちゃんが本音を起こしているのだ。元々はジャンケンで起こす人を決めていたようなのだが、お兄ちゃんが1番本音を起こすのが上手なようなのだ。だから最近はお兄ちゃんに本音を起こす事を任せて、他の人は自分たちの事をしているのだ。

 

「優しくって言われても、そのやり方が分からん……」

 

「キスしてみるとか?」

 

「白雪姫かよ……」

 

「まあまあお兄ちゃん、物は試しだよ」

 

「絶対に起きないと思うがな……」

 

 

お兄ちゃんは首を左右に振って呆れ顔で簪の提案を実行する事にしたようだった……お兄ちゃんにキスされれば私なら飛び起きるけどな~。

 

「ほら、起きろ本音」

 

「……えへへ~」

 

「あっ起きた……」

 

「効果抜群ね」

 

「羨ましい……」

 

「確かに羨ましいですね……」

 

「起きたならさっさと着替えろ。それほど余裕のある時間じゃ無いんでな」

 

「は~い」

 

 

本音とお兄ちゃん以外の部屋の住人は、今のお兄ちゃんの行為に羨望と嫉妬の綯い交ぜになった視線を本音に向けている……もちろん私もだった。

 

「悪いけど俺は先に行かせてもらいますね」

 

「何で?」

 

「職員室に用があるんだ」

 

 

お兄ちゃんは本音を起こしてすぐにまた部屋から居なくなってしまった。残ったメンバーは全員で本音の唇を眺めながらお兄ちゃんにキスで起こしてもらう妄想をしていたのでした。

 

「皆~何時までも部屋に居たら遅刻しちゃうよ~?」

 

「本音、後で話があるわ」

 

「奇遇だねお姉ちゃん、私も本音に話があるんだ」

 

「私からもあります」

 

「ほえ?」

 

 

楯無さん、簪、虚さんに詰め寄られても、何が原因なのかイマイチ理解していない本音、こんな時でも本音は本音だったのだ。

 

「とりあえず遅刻するのはマズイから部屋から出るとしましょうか」

 

「せっかく一夏に起こしてもらったのに、本音を遅刻させたら怒られちゃうもんね」

 

「一夏さんの用事が何なのか気になりますが、今は教室に向かいましょう」

 

「ねぇ、話ってなんなの~?」

 

「すぐに分かると思いますよ」

 

「少しは自分で考えるって事をした方が良いよ」

 

「ほえ~?」

 

 

須佐乃男も私も、気持ちとしては楯無さんたちに同意なのだ。お兄ちゃんにあんな起こされ方をして自分の幸せを自覚していない本音に対して苛立つのは仕方の無い事だと思っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑先生も山田先生も居ないため、今日のHRは私が担当する事になってしまった……唯一の救いは一夏君が手伝ってくれるので緊張が半減した事だろうな。

 

「それに、座学もやらなくて良いし……」

 

 

学校の教師なのに、座学が出来ない……これは情けない事なのだが、私は元々軍属で、習うより慣れろの世界の住人だったのだ。だから他人に何かを教えるのが苦手でも仕方ないじゃない!

 

「大体一夏君のスペックの高さが異常なのよ」

 

「人の悪口は本人が居ないか如何か確認してから言った方が良いですよ」

 

「うわぁ!」

 

 

何時の間にか私の背後に立っていた一夏君に声をかけられ、私は情けない声を上げて椅子から転げ落ちた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「え、ええ……平気よ」

 

「それにしても、そんなに驚く事無いでしょうが」

 

「いきなり背後から声をかけられれば、誰だって驚くわよ!」

 

「まぁまぁ、落ち着いてください」

 

「一夏君が落ち着きすぎなのよ!」

 

 

この子、本当に高校生なのかしら……時折子供っぽさは見えるが、精神面では学園のどの生徒よりも大人なのだろうな。

 

「それに、職員室で大声を出すのは如何かと」

 

「誰が原因なのよ誰が」

 

「さぁ?」

 

「惚けちゃって……まぁ良いわ」

 

 

此処でムキになっても意味は無いだろうし、それこそ一夏君の冷静さが目立つだけなのだ。私は自分に言い聞かせて心を落ち着かせる……

 

「そんなに緊張しなくても、ただのHRですよ?」

 

「だって何時もは織斑先生がやってるし、居ない時でも私にはお鉢は回ってこなかったんだもん!」

 

「お鉢って……ナターシャ先生はアメリカ育ちですよね?」

 

「そうだけど?」

 

 

何かおかしな事を言ってしまったのだろうか……一夏君は普段より険しい表情で私の事を見ている。

 

「いえ……何でも無いです」

 

「嘘、何かあったでしょ」

 

「何でも……プッ」

 

 

急に一夏君の表情が険しいものからおかしいものに変わった。つまりは笑った顔になったのだが、何で急に笑い出したのか私には分からない……何か面白い事でもあったのだろうか?

 

「如何したのよ?」

 

「いえ、ナターシャ先生の顔立ちであのような表現をされると、ギャップが……」

 

「ギャップ?」

 

「今時日本人でも『お鉢が回ってくる』なんて表現を使いませんよ」

 

「そうなの?」

 

「えぇ……プッ」

 

「ちょっと、笑いすぎよ!」

 

「スミマセン……ふぅ」

 

 

笑いが収まったようで、一夏君は表情を何時も通りに戻した……それにしてもそんなにおかしかったのかしらね?

 

「それでですが、別に連絡事項がある訳でも無いですし、普通に出席確認したら終わりなんですから」

 

「簡単に言ってくれるわね……」

 

「やりたくないのなら、その後の座学を……」

 

「是非HRをやらせてもらうわ!」

 

「……そこまでやりたく無いんですか」

 

「違うの!」

 

「何が違うんですか?」

 

「やりたく無いんじゃなくって、出来ないのよ!」

 

「……胸張って言う事では無いとおもうんですが」

 

「張ってないもん!」

 

「なら偉そうに言う事では無いと思いますが」

 

「偉そうにも言ってないもん!」

 

 

一夏君の言いたい事は分かる。分かるけどその表現を受け入れられる訳無いのだ。だって一夏君は笑ってるから……

 

「注文の多い女性だ」

 

「一夏君が苛めるからでしょ!」

 

「やれやれ……それじゃあナターシャ先生、HRお願いしますね」

 

「う、うん……」

 

 

結果的に一夏君に乗せられた感じだったが、座学を担当させられるのだけは絶対に避けたかったのだ。だって生徒たちに笑われるし、一夏君に呆れられちゃうから……

 

「準備が出来たら来てください」

 

「一夏君は?」

 

「俺は先に行きますよ。そろそろチャイム鳴っちゃいますから」

 

「本当だ!?」

 

 

何時の間にそんな時間が経ったのだろうか……心の準備は教室に向かいながらするとして、一夏君は此処から教室までチャイムが鳴るまでにつけるのだろうか?

 

「ねぇ一夏君」

 

「何です?」

 

「遅刻にしないから一緒に行こ?」

 

「まだ緊張してるんですか……」

 

「し、仕方ないでしょ!」

 

 

泣きそうな声になってしまったが、結果的にそれで一夏君を引き止める事に成功したのだ。これで少しは負担が減った気がするわね。




次回、久しぶりに鈴を出そうかと思ってます

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