もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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タイトルの距離は物理的では無く心理的なものです


兄妹の距離

生徒会の仕事をしている時、何時も以上に一夏君の処理スピードが速かった気がする……ついでに言えば、虚ちゃんのスピードが若干落ちてる気もするんだよね~。

 

「お嬢様、周りばっか見てないで手元を見てください。そして仕事をしてください」

 

「ちょっと気になる事があるんだよね」

 

「気になる事?」

 

 

おっ、虚ちゃんの興味を引いたぞ。このまま話を長引かせれば仕事しなくても良いかも!

 

「心の中でガッツポーズしてるところ悪いですが、しなかった分は昼休みや放課後に回されるだけで、仕事事体はしっかりとしなきゃ駄目ですよ」

 

「一夏君……何で分かったの……」

 

「だってあからさまに嬉しそうでしたし」

 

「お嬢様、話は仕事をしながら行きましょうか」

 

 

やっぱり一夏君は私たちの心の中を見透かしてるんじゃないの、あまりにも的確に心の中を当ててくる……でも一夏君は読心術は使えないって言ってたし……

 

「それでお嬢様、気になる事とはいったいなんだったのです?」

 

「大した事じゃ無いのかもしれないけど、一夏君の処理スピードが何時もよりちょっとだけ速かった気がしたのと、それと虚ちゃんの処理スピードが若干落ちてる気がしたの」

 

「ちょっとだけ速くて若干落ちてる……ですか」

 

「うん、気のせいかもだけどね」

 

 

だって2人とも何時もと変わらないくらいの仕事はしっかりと終わらせている。一夏君は速く感じたから兎も角としても、虚ちゃんは遅くなってると感じてもしっかりと普段と同じくらいは仕事を終わらせてるから。

 

「刀奈さんの妄言は兎も角……」

 

「妄言って酷くない!?」

 

 

やっぱり見間違いなのかな……一夏君も虚ちゃんも私なんかより、よっぽど優秀な人だし、文句言える立場じゃ無いしね。

 

「そろそろ切り上げないと遅刻しますね」

 

「へ?」

 

 

妄言と言われた事をさておくくらい、一夏君の発言は衝撃的だった……壁時計に目をやると、既に朝食を食べる時間が無いくらい、もっと言えばHRに間に合うか如何かの時刻を、時計の針が指しているではないか……

 

「何でこんな時間まで気付かなかったの!」

 

「文句は後で、今は一刻も早く教室に向かうのが先決ですよ」

 

「何で一夏君はそんなに落ち着いてるのよ!?」

 

「走れば余裕ですから」

 

「生徒会役員が率先して校則を破っちゃ駄目でしょ!」

 

「前にマドカに言ったのは刀奈さんでしょ?」

 

「ん?」

 

「『廊下を』走らなきゃ良いんです」

 

 

一夏君はニヤリと笑ってから私を前に、虚ちゃんを後ろに担いで『空中』を走った……いや、駆けた。そのおかげなんだけど、HRには余裕で間に合う事が出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遅い……姉さんと一緒に走った後、部屋に戻ったけどお兄ちゃんの姿は無かった。何時もより長めに訓練してるのかとも思ったけど、本音を起こす時間になっても、食堂に行く時間になっても、教室に向かう時間になっても、お兄ちゃんは私の前に現れなかった。虚さんも居なかったから、ギリギリまで訓練してるのかも、とは思えただろうが、楯無さんも居なかったので、これは訓練では無いだろうな。

 

「あっ、来ましたね」

 

「本当?」

 

 

須佐乃男が廊下を見ながら来たと告げる……誰が来たのかは聞くまでも無い、お兄ちゃんだ。今この状況で他の人の事を言ってるのだとしたら、須佐乃男はお兄ちゃんの彼女失格、専用機としても駄目だと判断せざるを得ない事になってただろう……それくらい今は他の人の事は如何でも良いのだから。

 

「……何か用でもあったのか?」

 

 

教室に入ってくるなり、お兄ちゃんは私に向かってそんな事を言った……確かに用はあったけど、そんな露骨に見てたかな?

 

「一夏様、今日はギリギリですね」

 

「おりむ~が寝坊?」

 

「本音じゃないんだから……ちょっと仕事に集中し過ぎてな、気が付いたら絶望的な時間だった」

 

「一夏様がそこまで言うって事は、相当危なかったと言う事ですか」

 

「普通に歩いて来たら遅刻だっただろうな」

 

 

なるほど、つまりお兄ちゃんは『普通』じゃ無い方法で此処まで来たと言う事か……でもそれって如何やって?

 

「楯無様と虚様も一緒だったのですよね?」

 

「ああ」

 

「その2人は如何したんですか?」

 

「ちゃんと間に合ったさ」

 

「それはつまり……なんて羨ましい!」

 

「須佐乃男?」

 

 

須佐乃男は、お兄ちゃんが此処まで来た方法が分かったと言うのか……私の時は天井を走ると言う危険極まりけりの方法だったけど、それだと2人は運べないだろう……かと言ってお兄ちゃんが素直に廊下を走るとは思えないし。

 

「一夏様、空中を駆け抜けましたね」

 

「他に全員が間に合う方法が思いつかなかったからな、それくらい大目に見てくれ」

 

「間に合ったのは良かったですが、なんて羨ましい事をして来てるんですか!」

 

「羨ましいって、お前だって出来るだろ?」

 

「そっちじゃ無いです!」

 

「……分かっててはぐらかしてるんだが」

 

 

だろうね、お兄ちゃんが分かってないはず無いもんね……相変わらずお兄ちゃんはこう言う話題を正面から受け止めないな~。

 

「ほら、席に着け」

 

「ん?」

 

 

姉さんが教室の入ってきてとりあえず須佐乃男の剣幕は納まったが、代わりにお兄ちゃんが不審そうに姉さんの顔を見ている……いや、私と姉さんの顔をって言った方が正しいか。

 

「如何かしたか、織斑兄」

 

「いや別に、大した事じゃ無いですよ」

 

 

お兄ちゃんは何か納得したような顔で席に着いた……いや、さっきから座ってたんだけど、大人しくなったといった方が良いだろうか、観察を止めたのだ。

 

「それじゃあ今日は山田先生が忙しいため座学も私が担当する」

 

 

姉さんが座学を……偶にあるが姉さんの授業は言葉回しが難しくてよく分からない事が多い。軍で指導してたのもあるのだろうが、姉さんの言葉遣いは結構上から目線な感じがするのだ……ちょっと前まではそれが凄くムカついたけど、今はそうでもない。

 

「っと、教材を忘れた。すぐ戻る、その間は自習してるように」

 

 

ISの座学で教材と言えば教科書だけなのだが、要するにそれを忘れたって事なのだ……姉さんもうっかりする事はあるんだな、当たり前だけど。

 

「あれは浮かれてるな」

 

「え、一夏何か言った?」

 

「いや、シャルには言ってない、独り言だ」

 

「気になるな~」

 

「気にするだけ無駄だから止めておけ」

 

「むぅ」

 

 

私の位置からでは聞き取れないような独り言を、お兄ちゃんはしたようだ……隣の席のシャルロットがお兄ちゃんの独り言を聞き取って何とか会話しようとしてるが、お兄ちゃんの方には話すつもりは無さそうだった。

 

「ねぇ、一夏ってば!」

 

「五月蝿いぞデュノア、私は自習してろと言ったはずだが」

 

「お、織斑先生……お早いお帰りで」

 

「これくらいは造作も無い。だがデュノア、お前の罰は如何するか迷ってるんだ」

 

「参考までに、何で迷ってるか聞いても?」

 

「校庭200周か私との組み手か……どっちが良い?」

 

「ヒィ!」

 

 

姉さんとの組み手など、自殺行為に等しい事だ。だからと言って校庭200周もすれば、途中で意識が朦朧としてくるのは明白、つまりどちらも遠慮出来るのなら遠慮したい事なのだ。

 

「そうか、どっちも嫌か」

 

「は、はい……」

 

「ならISを纏って校庭300周にするか、もちろんISは纏うだけで能力を使う事は禁ずるからな」

 

「周回増えてますし、更に過酷になってますよ!?」

 

「選べないなら、それを併せたくらいの罰則にすれば良い」

 

「その理屈はおかしいですよ……」

 

 

どれだけ反抗しても……いや、反抗すればするほど罰が重くなっていくだろう。だから素直に受け入れた方が身のためなのだが、シャルロットは首を縦に振らなかった……勇気があるのか、はたまたバカなのかは分からないけど。

 

「織斑先生、さっさと授業を始めないと、給料泥棒で学長に言いつけますよ?」

 

「何!?それだけは止めてくれ!!」

 

「シャルの処罰は後でじっくりと決めれば良いんですから」

 

「それもそうだな」

 

「一夏、それって助けてくれてないよね!?」

 

「助けるつもりなど更々無いからな。今のはシャルの自業自得だし」

 

「一夏の独り言が原因でしょ!」

 

「責任転嫁か?例え俺の独り言が原因だったとしても、怒られたのはシャルが自習をせずに大きな声でしゃべってたからだろうが」

 

「うむ、その通りだな。今のはシャルロットが悪い」

 

「箒まで……!?」

 

 

お兄ちゃんとシャルロットの間に篠ノ乃箒が割って入ってきた……席を立ち堂々とお兄ちゃんの味方をしているので、その後ろから急激に機嫌が悪くなった人が居る……篠ノ乃箒はまだ気付いて無いようだけど、お兄ちゃんは既に我関せずの格好を取ってるし、シャルロットは先ほど以上の冷や汗を流している。

 

「篠ノ乃、授業中に立ち歩くとは、良い度胸してるじゃないか。いや、私が舐められてるのか?」

 

「い、いえ!千冬さんを舐めたりは……」

 

「織斑先生だ、馬鹿者!!」

 

「痛っ!」

 

「貴様も後で罰則を与えてやる。嬉しいだろ?」

 

「えっ……」

 

「何だ、嬉し過ぎて言葉も出ないか」

 

「ち、違っ!」

 

「それならデュノアと同等……いや、それ以上のものをくれてやろう」

 

「………」

 

 

最早何も言えなくなっていた……篠ノ乃箒は何も言わず、何も言えずに席に戻って行った。その姿をまるで「ざまあみろ」とでも言いたそうに見てたシャルロットは、やはり腹黒いのだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間目が終わり、篠ノ乃とシャルは織斑先生に連れて行かれた……拘束もされてなければ強制もされてないのに、その姿は連行だった。

 

「千冬様に逆らうと如何なるのか見せ付けてるのでしょうか?」

 

「いや、あれは単純に頭にきてるだけだろ」

 

「織斑先生は怖いな~、さすがおりむ~とマドマドのお姉さんだね~」

 

「ちょっと、私はあそこまで怖く無いわよ!」

 

「……マドカ、兄のフォローはしてくれないのか」

 

「えっ……ゴメン」

 

 

別に本気でマドカの事を責め立てるつもりは無かったのだが、マドカはちょっと本気でへこんでしまったようだった。

 

「本気に取られるとは思わなかったぞ……」

 

「一夏様の冗談は分かりにくいですからね」

 

「えっ、嘘なの!?」

 

「マドカが本気でへこむなんて思って無かったからな……冗談だって分からなかったのか」

 

「うん……」

 

 

肩を落とし、若干涙目の義妹の頭を撫でてあやす。此処が教室で、周りに大勢の人が居るのは分かってるのだが、こうなった義妹を放って置くほど、俺は人でなしでは無いつもりだからな。

 

「機嫌直せって、朝から良い事あったんだろ?」

 

「何で知って……いや、それくらい分からないお兄ちゃんじゃ無いか」

 

「えっ、えっ、マドマド、何か良い事あったの~?」

 

「教えてほしいです、マドカさん!」

 

「如何しようかな~」

 

 

マドカの調子は何時も通りに戻った、つまり撫で続ける必要が無くなったので、俺はその場を離れる事にした。

 

「お兄ちゃん、何処行くの?」

 

 

止めた途端にこれだ……何処に行くかは想像出来るだろうが。

 

「この学園に1つしか無く、また利用者が少ない場所だ」

 

「何処?」

 

「何処だろうね~」

 

「何処でしょうね?」

 

「……分かれよ、これくらいすぐに」

 

 

俺は呆れ半分で教室から出て行く……だってそろそろ我慢の限界が近いからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃんが教室から出て行って、私たちは何処に行ったのか真剣に考えていた。

 

「この学園に1つしか無くって」

 

「利用者が少なくって」

 

「でも一夏様が用のある場所」

 

「「「う~ん」」」

 

 

駄目だ、全然検討付かない……この学園に1つしか無い場所なんて、それこそかなりあるだろう。その中でも利用者が少ない場所だって、相当数あるのだ。

 

「あの……」

 

「何処だと思う?」

 

「分かんないよ~」

 

「気配も消えてますし、自力で見つけろって事でしょうか」

 

 

本音は端から期待してないけど、須佐乃男でも分からないか……これは帰ってきたら本人に聞くしか……

 

「あの!」

 

「うわぁ!」

 

「マドカさん?」

 

 

背後から大声で声を掛けられ、私は不覚にも飛び上がって驚いてしまった……誰、こんな事するのは?

 

「日下部さん?」

 

「声掛けたんだけど、気付いてもらえなかったから……ゴメンなさい」

 

 

お兄ちゃんの隣の席で、最近お兄ちゃんと仲良くなった日下部香澄さんだった……この人、声小さいから気付かないのよね……

 

「それで日下部さん、何か用事?」

 

「えっと、織斑君が向かった場所だけど……」

 

「えっ、日下部さん分かるの!?」

 

「う、うん……多分だけど」

 

 

多分でも検討が付くんだから大したものだと思う。私なんて相談しても皆目見当付かなかったんだから……自慢する事では無いのだけどね。

 

「それで日下部さん、一夏様は何処に行ったんですか?」

 

「私も気になるな~、教えてよカスミン」

 

「カスミン!?」

 

「また本音は……」

 

「妙な渾名を付けますよね、本音様って……」

 

「ほえ?」

 

 

本人に自覚は無いようだが、本音のネーミングセンスは最悪だと言えるだろう……呼ばれ続けると慣れてきて分からなくなってるが、改めて聞くと酷い。それが良く分かった。

 

「……それで日下部さん、一夏様は何処に行ったんですか?」

 

 

須佐乃男が仕切りなおした。今のやり取りは無かった事にして、改めて質問をする事によって今の微妙な空気を切り替えようとしてくれたのだろう。

 

「えっとね、多分トイレだと思う……」

 

「え?」

 

「ゴメン、聞こえない」

 

「もっと大きな声で言ってくれないと駄目だよ~?」

 

 

多分の後が小さくて聞き取れなかった。日下部さんは顔を真っ赤にして私たちに耳打ちをしてくれた。聞いた後に分かったが、確かに大きな声で言うには恥ずかしいよね。

 

「確かにそこなら学園に1つしか無い」

 

「利用者も一夏様だけですね」

 

「カスミン凄いね~!」

 

「あ、あはは……」

 

 

カスミン……もとい日下部さんも愛想笑いを浮かべている。本音は1度付けた渾名は絶対に変える事は無いらしい……つまり本音の中では既に『日下部さん』では無く、『カスミン』で決定したらしいのだ。

 

「でも、お兄ちゃんもそうならそうで言ってくれれば良かったのに」

 

「変に問題形式にして、一夏様は相変わらずです」

 

「おりむ~はこう言った小さなイジワルをしてくるからね~」

 

「……織斑君もすぐ分かるだろうからそうしたんだと思うよ」

 

「何?」

 

「聞こえませんでした」

 

「カスミン、何か言った?」

 

「ううん、なんでも無いよ」

 

 

また何か小さな声でつぶやいたような気がしたけど、この距離で聞き取れないんだからかなり声が小さい人だと言わざるを得ないわね。

 

「あっ、戻ってきた」

 

「お兄ちゃん、スッキリした?」

 

「……年頃の乙女が異性の兄弟に聞くことかね、それが」

 

「おりむ~トイレ行ってたんでしょ~?」

 

「本音、あまり大きな声で話す事じゃ無いと思わないのか?」

 

「ほえ?」

 

 

お兄ちゃんは戻ってくるなり私たちのズレに頭を抱えて盛大にため息を吐いた。そんなお兄ちゃんの姿に見とれてるクラスメイトの数は、瞬時に理解出来た……だって全員だもん。

 

「一夏君、また何か悩み事?」

 

「こいつらに乙女の恥じらいってものを教えてやってくれないか、静寂」

 

「それは無理よ」

 

「何で?」

 

「だって此処は女子高だもの。多少開けっぴろげになっちゃうのは仕方ない事よ」

 

「だからってなぁ……」

 

 

このクラスにおいて、私たちお兄ちゃんの関係者を除けばお兄ちゃんと1番親しい女の子、鷹月静寂さんが近づいてきてお兄ちゃんに話しかけた。お兄ちゃんも自然に鷹月さんと話せてるし、篠ノ乃箒やシャルロット・デュノア、セシリア=オルコット相手とは違った雰囲気を纏っている。

 

「一夏君が気にしすぎなんじゃ無いの?」

 

「異性に『スッキリした?』と聞くのは如何なんだ」

 

「何、一夏君トイレでも行って来たの?」

 

「お前もか……」

 

「これくらい普通よ」

 

「でも、逆だとセクハラくさいぞ」

 

「う~ん……言われてみるとそうね」

 

 

鷹月さんの言い分を、逆に見れば違う風に見えると切り替えしたお兄ちゃん、確かにお兄ちゃんに聞かれたら怒るだろうし恥ずかしいと思うだろう。そう考えると、私たちは相当恥ずかしい事を聞いていたと言う事になる訳で……

 

「マドカ、顔が赤いが如何かしたか?」

 

「熱……では無さそうね」

 

「ん?須佐乃男も赤いぞ、大丈夫か?」

 

「マドマドも須佐乃男も如何したの~?」

 

 

自覚してないのか、それとも恥ずかしいと言う概念を持ち合わせて無いのだろうか。本音は今の話を聞いても特に恥ずかしがるような素振りは見えなかった……

 

「だから私は耳打ちしたのに……」

 

「日下部さん、耳打ちって?」

 

「えっとね、織斑さんたちは織斑君が何処行ったのか分かってなかったようだったから」

 

「えっ、分かってなかったのか?」

 

「うん……」

 

 

日下部さんに聞かされて、お兄ちゃんは馬鹿の子を見るような目で私たちを見てくる……その目って結構傷つくんだよ?

 

「だっておりむ~の問題風の行き先の告げ方は、結構難しかったんだも~ん!」

 

「何処がだ……」

 

「一夏君、何て言ったの?」

 

「ん?……学園に1つしか無く更に利用者の少ない場所」

 

「一夏君以外が言ったら他にも選択肢があるけど、一夏君が言ったのなら真っ先に出てきそうなものよね、トイレ」

 

「だから……まぁ良い」

 

「そ、ある程度は耐えるのが得策よ」

 

「此処じゃ俺が異分子だもんな……気にしすぎも駄目なのかもしれないが、気にしなさすぎも駄目だろ」

 

「そうね……特にこのクラスは一夏君が実際に居るのだからね。少しは恥じらいを持った方が良いかもね」

 

「お兄ちゃん相手に恥じらいって難しいよ」

 

「何処が?」

 

「だってお兄ちゃんになら裸を見られても平気だもん!」

 

「……妹が遠いよ、静寂」

 

「苦労してるのね、お兄ちゃん」

 

 

鷹月さんがお兄ちゃんの事をお兄ちゃんと呼んだ。冗談だと分かっていてもそれは見過ごす事は出来ないものだった。

 

「お兄ちゃんは私のお兄ちゃんであって鷹月さんのお兄ちゃんじゃ無いもん!」

 

「息継ぎ無しで言い切ったわね」

 

「マドカ、今のは静寂の冗談だぞ?」

 

「わ、分かってるもん!」

 

 

急に恥ずかしくなってきて、私は2人から目を逸らした……だって2人とも慈しむような目で私の事を見てるんだもん!




書いてて、こんな妹居ねぇなと思いました……義妹でもありえないだろうな

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