もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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何時までこの暑さは続くのでしょうか……


長の責任

朝、時計を見て愕然とする……昨日は早めに寝たのに何でこんな時間まで起きられなかったのだろうか……寝坊、とまでは行かなくとも、既に外は明るくなっているのだ。

 

「これじゃあ何時もと変わらないよ……」

 

 

部屋を見渡すと、一夏君、マドカちゃんは当然部屋に居ない。そして普段なら私よりは遅く起きる虚ちゃんの姿も無かった……つまり一夏君の相手は虚ちゃんかマドカちゃんのどちらか、あるいは両方と言う事だろうな。

 

「寝る時間は簡単に変えられても、起きる時間は無理なのかな……」

 

 

習慣と言うのは恐ろしいものだ……あれだけ早く寝たのに、起きた時間は普段通りなのだから。

 

「でも、簪ちゃんも本音もまだ寝てるし、私だけがおかしい訳じゃ無いのかな?」

 

 

特に目覚ましもセットした訳でも無いのだし、早く起きようと思って起きられる人が大勢居たら目覚まし時計なんて廃れるし、携帯にアラーム機能だって付いて無いだろう……それだけ睡眠は人間にとって重要なのだろう。

 

「てか、そんな事考えてる場合じゃ無いよね……」

 

 

今からでも遅くないかな……出来るだけ早く着替えて、そしてアリーナに向かおう。一夏君と2人きりは無理でも、他の人と2人きりにさせるよりはよっぽどマシだろうしね!

 

「そうと決まれば早く着替えなきゃ!」

 

 

私は一気に寝巻きを脱ぎ捨てて着替えを出すためにクローゼットを開ける、先に出しておけば良かったと後々悔いたのだが、そんなものは後の祭りだ。

 

「………」

 

「え………」

 

 

部屋と廊下を隔てるドアがある通路、そこに人が立っている……相手は服を着ているが私は全裸だ……下着は一応つけてるが、寝る時は外してるので上は丸見えだったりする……

 

「お嬢様、何てはしたない格好を……」

 

「俺、外に出てますね」

 

「あ……」

 

 

バッチリと一夏君と目が合った……何事も無かったように一夏君は廊下に出て行ったけど、何も無かったなんて思えないよ!

 

「えっと……見られたよね?」

 

「私よりも広い視野を持っている一夏さんなら、間違い無く見たかと……」

 

「だよね……」

 

 

お風呂で見られるのと部屋で見られるのでは訳が違う、別に私は一夏君になら何時だって見せれるけど、それだって心の準備をしたらの話であって、不意に見られればやっぱり恥ずかしいのだ。

 

「兎に角、何時までもそんな格好で居ないでさっさと着替えてください!」

 

「はい……」

 

 

あぁ、今日1日一夏君と目を合わせ辛いな……平常心を保ったまま一夏君と会話する自信は無い。こんな形で見られるなんて思って無かったし、見せようとも思って無かったのだ。

 

「如何しよう……」

 

「日ごろから注意してれば防げたはずですよ」

 

「注意してたもん!」

 

 

でも、今日だけは気持ちが逸ってしまったのだ……一夏君の訓練相手をするために、1分1秒でも早く着替えたかったから。

 

「こうなったら!」

 

「?」

 

「虚ちゃん、一夏君を呼んできて!」

 

「お嬢様!?」

 

「見られるなら全部見せる!」

 

 

私は唯一身に付けていたパンツを脱ぎ捨て、一夏君を迎え入れる事にした。だってどうせ見られたのなら全部見られた方がいっそスッキリする。

 

「馬鹿な事を言わないでください!」

 

「じゃあ私から一夏君のところに行く!」

 

「全裸で廊下に出るつもりですか!?」

 

「止めないで虚ちゃん!」

 

「止めるに決まってるでしょうが!」

 

 

廊下に出るためのドアに続く1本の通路、そこで全裸の私を必死に止める虚ちゃん……第3者がこの光景を見たら如何思うのだろうか、思われるのだろうか。

 

「さっきから騒がしいですよ」

 

「一夏さん、今は駄目です!」

 

「よし来た!」

 

 

外まで私たちの声が漏れていたのだろう、一夏君が呆れた声を出しながら部屋に入ってきた。これでスッキリ出来る。

 

「刀奈さんがバカな事をやってるのは聞こえてましたし、目を瞑れば如何とでも出来ます」

 

「え?」

 

「虚さん、気絶させるので後の事は任せます」

 

「何を……」

 

 

その後の言葉は、私の口から発せられる事は無かった……後頭部に衝撃を受けたと思ったら、その次の瞬間には意識が無かったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全裸のお嬢様を気絶させて、一夏さんは再び部屋から出て行ってしまった……それにしても目を瞑ったまま的確にお嬢様の延髄に衝撃を与えて意識を刈り取るとは、さすが一夏さんですね。

それにしてもこの状況、改めてみると非常に不自然ですよね……気絶した全裸のお嬢様の隣には私が居るわけで、一夏さんが気絶させたって事が分からない人にとっては、私がお嬢様に襲い掛かってる様にも見えるんじゃないでしょうか……まぁ、そんな都合よく勘違いするような人は、この部屋には居ませんね。

 

「それじゃあ、さっさとお嬢様に服を着せなければ」

 

 

何時までも全裸じゃ、一夏さんがこの部屋で目を開ける事が出来ないですからね。私はお嬢様の着替え一式をクローゼットから取り出して1枚ずつお嬢様に着させていく……さすがに着替えの世話まではした事無かったので、結構苦戦してしまいました。

 

「これでよしっと」

 

 

気絶してるので余計な力が無い分、簡単に着替えさせる事が出来たが、それでも人に服を着させると言うのは大変な事だった……相手がお嬢様じゃなかったら本気で殴ってたかもしれないですね。

 

「お嬢様、起きてください」

 

 

何時までも気絶されてたら生徒会の仕事が滞ってしまう……今はそこまで忙しいわけでは無いが、それでも暇ではないのだ。

 

「う~ん……」

 

「お嬢様、いい加減起きてください」

 

「一夏君に……」

 

「寝言を言ってる暇があるのなら仕事してください!」

 

 

一向に起きる気配が無かったので1発軽いのを頬に入れた……後で問題にならない程度の力だったはずだが、日ごろの恨みが出てしまってないかが心配だ。

 

「何か痛い……」

 

「……起きましたか?」

 

「……虚ちゃん?」

 

「おはようございます」

 

「うん、おはよ……?」

 

 

お嬢様は辺りをキョロキョロと見渡した後に自分の格好を確認しました。

 

「夢?」

 

「何がです?」

 

「いや、でも何で私、床で寝てるんだろう……あれは夢じゃ無いのかな?」

 

「お嬢様、聞いてます?」

 

「夢だとしても妙に現実味があるって言うか……一夏君に殴られたところが痛いから、やっぱり夢じゃ無いのかな?」

 

「お嬢様!」

 

「ひゃう!?」

 

 

あまりにも気付かないお嬢様にイライラして、私はお嬢様の耳元で大きな声で叫んだ。そうする事で何で悩んでたのかを忘れさせると言う狙いも多少あったが、それは微々たる理由だった。

 

「あれ、虚ちゃん如何かしたの?」

 

「何度も呼びかけてもお嬢様が気付かなかったんです!」

 

「そう?」

 

「そうですよ!」

 

「何かゴメンね……ってあれ?」

 

「何か?」

 

「私、何で悩んでたんだっけ……結構重要な事だったと思うんだけど」

 

「さぁ、私は知りませんよ」

 

 

都合良く忘れたのならそれで良い事なんですから、わざわざ私が教える事も無いでしょう。日ごろからのストレス……と表現して良いのか分かりませんが、その少しが解消された感じがしますね。

 

「私、何時の間に着替えたんだろう?」

 

「寝ぼけてるんですか?さっきご自分で着替えてましたよ」

 

「そう……かな……」

 

「まだ高校生なのに、もうボケちゃったんですか?」

 

「そんな事ないもん!」

 

「なら、しっかりしてくださいよ」

 

「は~い……」

 

 

まだ腑に落ちないような表情をしてますが、思い出せないようなのでこれはこれで良かったのでしょう。まさか混乱して一夏さんに全裸を見せようとしてたなんて覚えてる必要は無いのですから……出来る事なら私も消したい記憶ですがね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴走した刀奈さんの処理は虚さんに任せて、俺は生徒会室を訪れていた。いくら教師からの仕事が終わったとは言え、本来の生徒会の仕事はまだたんまりとあるのだから。

 

「やれる時にやっておかないと、何時何が起こるか分からないからな」

 

 

誰に向けた言葉でも無い、何か起こると言う確信も無い、これはただの独り言、目の前の仕事の山を見て逃げ出したくなった俺の弱さが出たと言う事だろう……答えをくれる相手も、仕事を手伝ってくれる相手も居ないのだし、独り言を言ってる暇があるならさっさと始めよう、後で虚さんも来るだろうし。

仕事に取り掛かってすぐ、窓の外に誰かが見えたような気がした……外と言っても此処は3階なので、見えたのは偶々だし、その姿も小さいものだったが、何故かはっきりと見えたような気がしたのだ。

 

「誰だ、こんな朝早くに……」

 

 

自分が起きている事を棚に上げて、俺は外を通ったであろう人影を探す……もしかすると俺は、生徒会の仕事をしたくなかったのかもしれない。

 

「さすがに見えないな……でも、気配は確かにある」

 

 

一瞬で通り過ぎたので今更窓から覗いてもその姿を確認する事は不可能だろう、だが敷地内に居るのなら気配を掴む事は容易だ。

外にある気配は3つ……1つは校門に居る警備員のものだから除外するとして残る2つは良く知っている気配、その内1つは動いてないからさっき此処を通ったのは必然的に最後の1つの気配の持ち主と言う事になる……しかし何であんなスピードで走ってるんだ?

その気配の持ち主、マドカは別に速さを求めて走ってた訳では無かったはずだが、何か心境の変化でもあったのだろうか……例えばもう1つの気配の持ち主と勝負したとか。

 

「とりあえずは仲良くなったのか?」

 

 

早朝から一緒に運動してるんだから、前ほど険悪では無いのだろうが、俺の見てないところで問題があっても俺には対処しきれない……てか、関わりたく無い。実の姉妹なんだから上手くやるのも喧嘩するのも自由だと俺は思う。思うのだが、俺を巻き込んだ面倒事だけは起こさないでほしいと言うのが偽らざる本音なのも間違いでは無いのだ。

 

「近い内に解決すると思って良いのだろうか……」

 

 

蟠りが解消しても暫くはギクシャクした関係になるだろうから、近い内、と言う訳にはいかないだろうが、そう遠く無い未来にはあの姉妹が笑いあってる姿が見られるかもしれない。そうすれば心労が1つ減る事になる……なんてすばらしい未来だろうか。まぁ、現実を見ればそんな事は当分無いと分かるのだが……すべてを知ってるだろう両親が見つからない以上、この問題は解決の糸口すら見出せないっぽいのだ。

 

「でもまぁ、それぞれが信じたい事実があっても良いよな……真実は知らない方が良い時もあるのだし」

 

 

記憶の無い俺がとやかく言える問題でも無いし、関係が上手くいってるのならそれで良いじゃないか……若干投げ槍な感じもしないでも無いが、とりあえずは今のままで良い。俺はそう結論付けて仕事に戻る事にした……あんまりやりたくは無いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私としては早く起きたつもりだった。でも上には上が居ると言われるように、私よりも早く起きている人が、そこには居た。

 

「織斑先生?」

 

「ん?……お前は確か」

 

「アメリア=カルラです」

 

「如何した、こんな早い時間に」

 

「目が覚めちゃって、軽く走ろうかと」

 

 

普段から早い時は早いのだが、遅い時は目一杯寝てるのだ。そして今日は早い日だった、ただそれだけだ。

 

「自主的に身体を動かすのは関心するが、それを毎日続けられなければ意味は無いぞ」

 

「は、は~い……」

 

 

一夏君やマドカみたいに毎日早い時間に起きてる人は確かに毎日運動してるっぽいけど、私は本当に偶々にしか早起きをしない……てか出来ない。

 

「あれ、エイミィ?」

 

「おはよ、マドカ」

 

「何だ、知り合いだったのか」

 

「うん、友達だよ」

 

 

織斑先生とマドカとの会話に、前みたいな刺々しい感じはしなかった。一夏君が悩んでた事は解決されたようで私は嬉しかった。

 

「そうだエイミィ!」

 

「ん、何?」

 

「私と一緒に走らない?」

 

「マドカと?」

 

「うん!」

 

 

誘ってくれたのは素直に嬉しい……でもマドカは織斑先生と一夏君の妹だ、どんな身体能力を持ってるか定かでは無い。一緒にと言っても、私が付いていけるスピードか如何か分からない状況で、迂闊に頷く事は私には出来ない。

 

「えっと、マドカってどれくらいのスピードで走るの?」

 

「姉さんやお兄ちゃんと比べれば全然だよ」

 

「いや、その2人じゃあまり参考にならないよ……」

 

 

だって時速80キロの車に軽く走って追いつくような人なんだよ?

 

「じゃあ、校舎周りを競争しようか?」

 

「ハンディをください!」

 

「走る前から負けを認めてるのと同じだぞ」

 

「だって勝てる見込みが無いんですもん……」

 

 

いくら2人よりは遅いって言っても、それでもマドカは早そうな雰囲気を醸し出しているのだ。普通の人間しか身内に居ない私が、マドカに勝てる未来なんてまったく見えないもん。

 

「なら、30秒後にマドカがスタートする。ってのは如何だ?」

 

「う~ん……30秒なら追いつけるかな?」

 

「楽勝だろ」

 

「そりゃ、姉さんなら楽勝だろうけど、私には如何だろう」

 

「………」

 

 

繰り広げられる姉妹の会話に、私の思考回路はショート寸前までになってしまった……30秒と言えば結構なハンディだ。だがそれを物ともしないと言っている教師と、少し厳しいとしか捕らえていない友人が、私には信じがたいものだとしか思えなかったのだから……

 

「とりあえずやってみろ」

 

「そうだね……ってエイミィ?」

 

「何?」

 

「頭から湯気が出てるよ?」

 

「それくらいの衝撃を受けたからね……」

 

「「?」」

 

 

この似たもの姉妹め……まったく同じタイミングでまったく同じ仕草をした。この2人には私が言っている事が理解出来ないようだが、多分この場に他の人が居ればきっと私に共感してくれるに違い無い……だってそれが普通だと思ってるから。

 

「それじゃあまずはカルラからだ」

 

「負けないよ~」

 

「……うん、とりあえずは頑張るよ」

 

 

気合十分のマドカを見て、私は出来るだけ本気で走ろうと決意した……私の本気が規格外人間に何処まで通用するかは分からないけど、何となく掴まったら死んじゃうような気がしたから……

まぁ結果は言うまでも無くマドカの圧勝だったのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お嬢様を落ち着かせたすぐ後に、簪お嬢様と須佐乃男が目を覚ました……もう少し早く起きてくれれば私ももう少し楽だったでしょうね……ですが、それは簪お嬢様にも須佐乃男にも非は無い話なので口にはしませんが……

 

「おはよ~簪ちゃん!」

 

「おはよう、お姉ちゃん……」

 

「まだ眠そうね~」

 

「早く寝ても疲れってそんなに取れないものだね……何かダルイ」

 

「うんうん、その気持ち分かるよ~。だから一緒に寝よう!」

 

「お嬢様は生徒会の仕事が残ってますよ」

 

「うえ~ん、虚ちゃんが苛めるよ~」

 

「一夏さん1人に任せっぱなしでは可哀想ですよ」

 

「一夏君に……あれ、何か思い出しそうな」

 

 

余計な事を思い出されてはまた大変な事態になりかねませんね……此処は無理にでも話題を変えなければいけませんね。

 

「無駄な事ばっか覚えて無いで、屋敷の事や生徒会の事を覚えててくださいよ」

 

「だってそう言うのは虚ちゃんや一夏君が覚えてるでしょ?」

 

「私たちが覚えてても、当主であり生徒会長なんですから、少しはしっかりしてください」

 

「分かってるんだけどね~。如何しても虚ちゃんや一夏君に甘えちゃうのよ~」

 

「一夏様は頼りになりますし、虚様も何だかんだで楯無様に甘いところがありますからね」

 

 

須佐乃男が会話に加わった事によって、お嬢様が今朝の事を思い出しそうな気配が無くなった……これでとりあえずは安心ですね。

 

「でも、お姉ちゃんだって何時までも甘えっぱなしじゃ駄目だって分かってるでしょ?」

 

「それは……まあね」

 

「なら、出来る事は自分でやった方が良いよ?」

 

「簪ちゃんまで……」

 

 

お嬢様は、簪お嬢様にまで言われるとは思って無かったようで、少なからずショックを受けている様子です……私が言ってもまったく響かないのに、やはり姉妹に言われると効くものなのでしょうか……私が本音に言ってもこれほど響く事は無いでしょうがね。

 

「ほら、一夏だって仕事してくれてるんだし、お姉ちゃんも頑張って!」

 

「……分かったわよ。虚ちゃん、生徒会室に行くわよ」

 

「分かりました。それでは簪お嬢様、須佐乃男も後ほど」

 

 

まだ寝てる妹の事は放っておいて良いでしょう。起こしたって起きませんし、連れて行っても戦力にはならないのは火を見るより明らかですからね……情けない事ですが。

 

「それにしても虚ちゃん、さっき無理矢理話題を変えて何かを誤魔化そうとしてたように見えたけど、あれって何?」

 

「話題は変えてませんよ。お嬢様がもう少し仕事をしてくれればと思っただけです」

 

 

下手な事を言って思い出されても困りますし、此処は事実を織り交ぜて誤魔化しましょう。

 

「でも、一夏君の名前が出た時、何か思い出しそうになったんだよね……虚ちゃん、本当に知らないの?」

 

「知りませんし、そんな事言って仕事をサボろうとしても駄目ですからね」

 

「別にサボろうとはしてないよ~」

 

「なら、何故足が生徒会室とは別の方向を向いているのでしょうか?」

 

「これは……えへ?」

 

「可愛く誤魔化そうとしても駄目ですからね」

 

「分かってます……」

 

 

お嬢様を生徒会室に連れて行くために、一瞬でも気を抜く事が出来ない状況だと理解した。お嬢様は隙あらば逃げ出そうと言う腹積もりらしい……さっきの言葉は今朝の事を思い出させないためだったが、紛れも無い本心だったりもするのだから。

 

「さぁ、仕事は山積みなんですから。お嬢様にもしっかりと働いてもらいますよ」

 

「……今日は仕事しちゃいけない日なのよね~」

 

「そんな日は永遠にありません!」

 

「……は~い」

 

 

子供じみた逃げ口上を使ってきたが、そんなもので誤魔化されてはあげません。少しでも負担を減らすにはこれくらいしなきゃいけないのですから。




若干刀奈が痴女みたいになってますが、そこは寝ぼけ頭だったと言う事で……

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