もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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思いっきし雨に打たれた……しかももう止んでるし……


恥ずかしい勘違い

一夏から報告を受けて、私はすぐにヤツに連絡を取った。より詳しい情報を得るためには仕方ないからな……これ以上は一夏が教えてくれるとは限らないし。

 

『もすもすひね……』

 

「ワンパターンだな」

 

『違うバージョンも考えなきゃね~』

 

「それで、お前はさっきの一夏の話は知ってたのか?」

 

『さっき?』

 

「何だ、監視してたんじゃないのか?」

 

 

この部屋は束に監視されている……如何やってかは知らないが、カーテンを閉めても何をしても覗かれてるのを考えると、この部屋の中にカメラがあると思った方が良いだろうな……一夏が片付けてくれなくなってから散らかる一方だからな、仕込むには持って来いの場所だろう、この部屋は。

 

『今はそれどころじゃ無かったからね~』

 

「何かあったのか?」

 

 

束が一夏や私の監視よりも優先しなければいけないような事なんてそれほど無いだろう。その束が一夏にあった事を知らないとなると、それはよっぽど重要な事なのだろうな。

 

『クーちゃんが熱出しちゃって、看病が大変なんだよ~』

 

「……あぁ、お前も家事とか一切駄目だからな」

 

『ねぇちーちゃん、いっくんをこっちに呼んじゃ駄目かな~?』

 

「お前の家族なんだろ、ならお前が何とかしろ」

 

『午前中は平気そうだったのに、急に倒れちゃうんだもん』

 

「どれだけ負担掛けてるんだお前は……」

 

『ちーちゃんにだけは言われたく無いもん!』

 

「……此処で否定出来ない自分が虚しい」

 

 

束以上に私は一夏に苦労を掛けて来たのは、私自身が認める事実だ。一夏が丈夫な身体を持ってなかったら今頃私も一夏もこうやって生活出来てたか分からないくらいだからな。

 

『そんな訳でさっきの話って言われてもすぐには分からないよ』

 

「そうか……一夏が今日亡国企業の幹部に会ったのも知らないのか?」

 

『何それ!』

 

「その反応、本当に知らなかったんだな……」

 

 

完全に束の興味を引いてしまった……これじゃあ看病そっちのけで映像に見入ってしまうだろうな。

 

「興味持つのは良いが、しっかりと看病してやれよ。普段はお前が世話になってるんだろ?」

 

『分かってるよ~……でも、クーちゃんが平気になったらすぐに調べるから』

 

「何か分かったら教えろ」

 

『分かってるって、いっくんが何を隠してるのかバッチリ調べるからね~』

 

 

そう言って束は電話を切った……相変わらず一方的に会話を終わらせるヤツだな。

 

「此方でも調べてみるとするか……」

 

 

情報収集は真耶の仕事だし、今から部屋に行って引きずってくるとするか……確か今日は非番だったから家に居るだろうし。私は学園傍に住んでいる真耶を迎えに行く事にした……どうせ彼氏も居ない寂しい生活を送ってるんだから部屋に引きこもってるだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黛先輩への注意は一通り終えて、俺は皆が学園に着くまでぶらぶらする事にした……他にする事も無いしな。

 

「あれ、一夏君」

 

「ん?」

 

 

気配を探ってなかったので声を掛けられるなんて思わなかった……随分と物好きが居るんだな、この学園にも。

 

「やっほ~!」

 

「エイミィ、君はいっつも元気だな」

 

「そう?」

 

「ああ、少なくとも沈んだエイミィを見たのはテストの前の勉強会くらいだな」

 

「その節は大変お世話になりました」

 

 

お辞儀されても困るんだが……事情を知らない人が見たら俺がエイミィを苛めてるように見えるんじゃないだろうか?

 

「それで、点数はどれくらい取れそうなんだ?」

 

「一夏君の作った模擬テストのおかげで全部分かったよ。後は書き間違いが無ければ完璧なはず」

 

「そうか、頑張ったんだな」

 

「えへへ~、褒めて褒めて~」

 

 

無邪気な笑みを浮かべて近づいてくるエイミィ、まぁこれくらいなら許してくれるよな?

 

「うにゅ~」

 

「何かエイミィって猫みたいだな」

 

「そうかな~……」

 

 

頭を撫でると喉を鳴らして気持ち良さそうな顔をしているエイミィ、本音でも此処まで猫っぽくはならないぞ。

 

「さて、俺はそろそろ行くけどエイミィは如何する?」

 

「ふにゃ?」

 

「……暇なら食堂に行かないか?」

 

「行く!」

 

「……そうか」

 

 

もしエイミィに尻尾があったらブンブンと音をたてて左右に揺れているに違い無いような反応だった。

 

「コーヒーくらいなら奢るぞ」

 

「コーヒーは苦手なんだよね~」

 

「そうなのか?」

 

「だって苦いもん」

 

「そんなもんか」

 

 

俺からすれば食堂のコーヒーは薄いくらいなのだが、普通の人にとってはあれは苦いらしい。やっぱり自分の好みでコーヒーは淹れたいよな。

 

「一夏君って、コーヒー好きなの?」

 

「部屋にコーヒーメイカーを置くくらい好きだが」

 

「自分で豆引いてるの?」

 

「今は全て機械がやってくれるからな。俺がやるのは豆と水を入れるだけだ」

 

「へ~、そんなに簡単なんだ~」

 

「しかも濃さまで選べて結構便利なんだ」

 

「でも、そんなの売ってたっけ?」

 

「いや、市販はされてないと思うぞ」

 

 

だってあれは束さんが昔の誕生日にくれた束さんのハンドメイドだから。こう言った発明に専念してくれてたら束さんだって身を隠すような生活をしなくても済んだだろうに……まぁ、あの大天災があんな発明だけしてて満足するとは思えないがな。

 

「ちょっと飲んでみたいかも……」

 

「コーヒー苦手なんだろ?」

 

「だって濃さ調整出来るんでしょ?」

 

「だが、どれくらいなら飲めるのか分からないだろ」

 

 

刀奈さんもコーヒーは苦手らしく、普段からお茶か紅茶のどちらかしか飲まない。1度だけ最大まで薄めたコーヒーにミルクと砂糖を入れたものを飲ませた事があるが、それでも嫌そうな顔をしていたっけ……エイミィはそれよりは飲めるのだろうか。

 

「まったく飲めない訳じゃ無いよ、でも好きじゃ無いけど」

 

「無理に飲む必要は無いが」

 

「だって興味あるんだもん!」

 

「分かった分かった、それじゃあ部屋来るか?」

 

「良いの!?」

 

「コーヒーを飲む間だけなら問題無いだろ」

 

 

普段は立ち入り禁止だが、その区域の人間と一緒に来るかそこに居る人間に用があれば入れるのだ。

 

「一夏君の部屋って入ると死ぬって噂されてるんだけど……」

 

「俺は普通に生活してるんだが……」

 

 

何故怪奇現象が起こるような部屋だと思われてるんだろうか……

 

「まぁ行けるなら行くけどね」

 

「だから平気だって言ってるだろ……」

 

 

コーヒー1杯だけで何でこれだけ恐れられてるんだろうか……そんなに俺の部屋は恐ろしいのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏君が居ないだけで車の中が静かね……皆どれだけ一夏君に話しかけてたのかが良く分かるわね。

 

「そろそろ着きますよ」

 

「うん」

 

「碧さん、何時もスミマセン」

 

「気にしないでください。これも仕事ですから」

 

 

碧さんの仕事は主に一夏君の護衛なのだが、最近では私たちをIS学園に送り届ける事も仕事になってきてるのだ。

 

「ねぇ虚ちゃん、碧さんの給料って上がってるの?」

 

 

IS部隊の隊長で、一夏君の護衛担当、それに加えて私たちの移動の度に運転手までやってくれてるのだ。これで給料が低かったら辞められてしまうかもしれないのだ。

 

「他の方々よりは多めに出てるようですが、それでも高いとは言えない額ですね」

 

「そうなの?」

 

「先代から経費削減を掲げてますから、あまり高い給料は出せないんです」

 

「お、お父さんが……」

 

 

更識の経済事情はそこまで苦しくは無いはずなのだが、お父さんは兎に角無駄を省きたがった人だから仕方ないか……でも、当主の私が知らないんだから、よっぽど浸透してないのだろう。

 

「一夏さんが見積もって今も何とか削ってますが、最近特に情報収集とかで経費がかかってますし……」

 

「IS産業で得た利益も経費と維持費で大抵消えてるしね……」

 

「さすが経理担当、簪ちゃんも良く知ってるわね」

 

「お姉ちゃんが知ら無過ぎるんでしょ!」

 

「ゴメン……」

 

 

普段から仕事してないからね……まさかこの流れで怒られるとは思ってもいなかったわ。

 

「でも、一夏さんが投資で幾分か資産を増やしてくれてますので、焦るまでは行ってません」

 

「一夏君、どれだけ有能なのよ……」

 

「一介の高校生ではありえないほどの能力を有してますからね」

 

 

普通の高校生が投資なんてしても利益なんて得られない可能性の方が高い、でも一夏君は『普通の』高校生では無い。ISを動かしただけでは無く、一夏君は色々な意味で普通では無いのだ。

 

「まぁ、一夏さんへの報酬もそこから出してる始末ですし……」

 

「それって報酬じゃなくって普通に一夏君が稼いだのよね?」

 

「元金は更識からですが、間違い無く一夏さんが稼いだものです……」

 

「あ、あはは……」

 

 

一夏君、本当にゴメンなさい……私が不甲斐ないばかりに苦労ばっか掛けて、しかも報酬も自力で稼いでたなんて……

 

「更識で雇ってる訳じゃ無いのに、一夏君は働いてくれてる……しかもあんまり報酬は出せてない、しかもその報酬の殆どは私たちのために使ってる……一夏君に見限られたら私たちは終わりね」

 

「情けないですが、今の更識が何とかなってるのは一夏さんの力が大きいのは確かですね」

 

「お父さんも道半ばで倒れちゃったし、お姉ちゃんは殆ど仕事してないし、もう一夏が当主でも良いんじゃ無い?」

 

「かんちゃん、それは楯無さまが可哀想だよ~」

 

「本音……」

 

 

本音が私の事をフォローしてくれるなんて……

 

「だってそれじゃあただの遊び人って評価になっちゃうから」

 

「………」

 

 

フォローじゃなくって止めだった……そうよね、本音がフォローなんて出来る訳無いものね……分かってたわそんな事。

 

「今でさえ遊び人って評価なのですがね」

 

「ちょっと虚ちゃん!?」

 

「その評価を覆したいのなら、少しは真面目に仕事をして一夏さんの負担を減らしては如何ですか?」

 

「……分かったわよ。頑張ってみる」

 

 

一夏君が私たちを見限るなんて、それこそ天地がひっくり返ってもありえないと思ってるけど、さすがにこれ以上は一夏君に負担を掛ける訳にも行かないからね。

 

「さしあたっては生徒会の仕事ですね」

 

「……そっちは更識と関係無いんじゃないかな~……なんて」

 

「生徒会の仕事もまともに出来ない人が、当主としての仕事をしっかり出来るとは思えませんので」

 

「……はい、しっかりと仕事させてもらいます」

 

 

これじゃあ私の青春は仕事で潰されるわね……いっそのこと一夏君に生徒会長を譲って私は遊んでようかしら……でも、一夏君は絶対に引き受けてくれないでしょうけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏君の部屋に入ってみたけど、他の部屋とは随分と作りが違うんだな~……うわ、お風呂広いわね~、私が入ったら沈むんじゃないかな?

 

「あんまりキョロキョロと人の部屋を見るもんじゃないぞ?」

 

「あっ、ゴメン……」

 

 

あまりにも珍しくて色々と見ていたら一夏君に注意されてしまった……確かにあまり良い気分では無いものね。

 

「何処かテキトーに座っててくれ。すぐ準備するから」

 

「お構いなく~」

 

「……コーヒーを飲みに来たんだろうが」

 

「1回言ってみたかったんだよ」

 

「そんなもんか?」

 

「うん」

 

 

一夏君は首を捻りながらキッチンに向かっていく……恐らくはアッチにコーヒーメイカーが置いてあるのだろうな。

 

「ねぇ一夏君、私も作るところ見たいな~」

 

「別に楽しくは無いと思うが」

 

「見たいな~」

 

「好きにしろ」

 

「うん、好きにする」

 

 

一夏君が許可してくれたのでキッチンに足を運ぶ、私たちの部屋にも簡易キッチンはあるけど、ここまで本格的なのはやはり一夏君のために作られた部屋だからだろうか。

 

「広いのね~」

 

「そうなのか?」

 

「だってこんなにスペース取れないよ、普通の部屋じゃ」

 

「普通の部屋がどんなものか知らないんだが……」

 

「あっ、そっか」

 

 

一夏君は普通の寮の部屋に入った事は無いのか……部屋の前までなら来た事があるらしいけど、中までは入ってないとの事だ。

 

「普通はコンロがあってその周りにモノを置く感じなんだよ」

 

「そんなんでまともに料理出来るのか?」

 

「此処の子たちはそんなにまともに料理しないよ~。大体は食堂で済ますし、小腹が空いたらお菓子で誤魔化すから」

 

「なるほど、大体本音と同じ行動だな」

 

「女の子なんてそんなものだよ」

 

「ふ~ん」

 

 

一夏君はカップと水を用意してコーヒーメイカーを作動させた。ボタンがいっぱいあるけど何が何のボタンなんだろう……

 

「エイミィは薄めで良いんだよな?」

 

「え、うん」

 

「ミルクと砂糖は自分で入れてくれ」

 

「は~い」

 

 

一夏君がピッ、ピッっとコーヒーメイカーのボタンを押していってコーヒーが作られていく、何だか良い匂いがするね……味は如何も好きになれないけど、匂いはとっても好きなのだ。

 

「ほれ、熱かったら氷があるから自分で調整してくれ」

 

「分かった」

 

 

一夏君は普段からホットコーヒーを飲んでいるらしく、私のもホットだ。9月も後半とは言え、まだホットで飲み物を飲む気にはなれないので、私は冷凍庫から氷を出してコーヒーに浮かべた。

 

「ミルクミルクっと」

 

「1回はそのままで飲めよ……」

 

「だって苦いと嫌じゃない」

 

「はぁ……」

 

 

一夏君は淹れたてのホットコーヒーをそのまま飲んでいる……見るからに濃そうなんだけど、一夏君は気にせず飲んでいるのだ。

 

「じゃ、じゃあ私も一口だけ……」

 

 

作れる中で一番薄く、更に氷を足して更に薄くなったコーヒーを飲んでみる、さすがに顔を顰める事は無かったが、それでも私には苦かった。

 

「うへぇ……」

 

「ほら、ミルクと砂糖だ」

 

 

ポーションミルクとシュガーポットを渡されて私は大量に投入していく……それこそ一夏君が引くくらいに。

 

「そんなに苦いか?」

 

「一夏君と私じゃ味覚が違うのよ!」

 

「……それはそうだろうが、そんなに入れると最早コーヒーでは無くなるぞ」

 

「だって苦いんだもん!」

 

 

一夏君は私の動きを見て本当に引いている……ドバドバと入れたおかげで私でも問題無く飲めるくらいになっていた。

 

「うん、美味しい」

 

「……甘そう」

 

「飲む?」

 

 

一夏君にカップを差し出し私特製のコーヒーを勧める。一夏君は躊躇いながらも一口啜った……そしてすぐに顔を顰めて自分のコーヒーを一気に飲み干した。

 

「如何かしたの?」

 

「……甘過ぎだ」

 

「そうかな~?」

 

 

一夏君はもう1杯コーヒーを淹れて口を濯ぐように飲んでいる……そう言えば一夏君って甘いもの苦手なんだっけ。

 

「好みは人それぞれだよ~」

 

「そうだな……お互い不可侵で行こう」

 

 

よっぽど甘かったのか、一夏君は私の持っているコーヒーを見てまた顔を顰めた……多分味を思い出し他のだろうな。

 

「こんなの飲んだら寝れなくなるな~」

 

「は?」

 

「だってコーヒー飲んだら寝られないでしょ?」

 

 

一夏君は何言ってるんだと言わんばかりの顔をしているが、私からしてみれば何故一夏君がそんな顔をしてるんだと言いたい……だってコーヒー飲んだら寝れないでしょ?

 

「そんなに甘いもの飲んだら普通に寝れるだろ」

 

「え~そんな事無いよ~」

 

「大体、コーヒーなんて飲んでも寝れるだろ」

 

「そうなの?」

 

「普通に寝れる」

 

「それは一夏君が異常なんだよ~」

 

 

私の友達も眠くなったらコーヒーを飲んで目を覚ましてるし、その後寝れなくて困ったって話をかなり聞くもん。

 

「慣れの問題もあるだろうが、コーヒー飲んで寝れなくなるなんてそんなに無いと思うぞ」

 

「そうかな~?」

 

「そうだろ」

 

 

一夏君はもう1杯コーヒーを淹れている……そんなに飲んだら絶対寝れないよ。

 

「織斑先生も結構飲んでるっぽいけど、あの人も普通に寝てるだろ」

 

「全然眠そうじゃ無いもんね」

 

「子供の頃ならいざ知らず、今ならまったく問題無いな」

 

「いったい何時からコーヒー飲んでるのよ」

 

 

一夏君は少し考えて、結局分からないと言ってカップを洗い始めた。良く考えてみたら、私今一夏君の部屋に2人きりなのね……今更ながら緊張してきた。

 

「エイミィ?」

 

「な、何!?」

 

「いや、何だか顔が赤いような……風邪か?」

 

「ち、違うよ!」

 

「そうか……飲み終わったんならカップを貸してくれ。洗うから」

 

「え、あ、うん……」

 

 

一夏君にカップを手渡し、私は呆然とその場に立ち尽くす……一夏君と2人きりになるのって大体外だったり廊下だったりして、何時誰が来てもおかしく無い場所なんだけど、今のこの場は関係者以外立ち入り禁止区域だ、早々人が来る場所では無い。

 

「ただいま~」

 

「疲れた~」

 

「車移動でしょうが」

 

「何故疲れるのです?」

 

「ずっと同じ体勢って結構疲れますよ」

 

「須佐乃男はISじゃん。それでも疲れるの?」

 

「え?」

 

 

入り口から複数人の声……え、だって此処は関係者以外立ち入り禁止じゃ……

 

「遅かったですね」

 

「あら一夏君、私たちが居ない間に他の女の子を連れ込んで何してたのかな~?」

 

「何って、普通にコーヒー飲んでただけですが」

 

「あっ、カルカルだ~!」

 

 

部屋に入ってきたのは会長や布仏先輩、その他にも簪や本音、マドカと須佐乃男だった。

 

「この部屋って一夏君の部屋ですよね?」

 

「そうよ?」

 

「え、じゃあ何で……」

 

「言ってなかったか?此処は楯無さんたちの部屋でもあるんだ」

 

「え……えぇ!!?」

 

 

つまり……如何言う事?

 

「私たちは一夏君と一緒に生活してるのよ」

 

「その言い方……もう少し工夫出来ませんか?」

 

「うん、無理!」

 

「ハァ……」

 

「一夏さん、ため息吐くの駄目だって言ったじゃないですか」

 

「さすがに吐きたくなりますよ」

 

 

それは私のセリフだ……一夏君って結構進んでるんだ~……此処に居る皆と一夏君が……

 

「エイミィ、何でいきなり鼻血なんて出してるんだ?」

 

「え?」

 

「……ふ~ん、エイミィさんは『ナニ』を想像したのかな~?」

 

「え、えっ!?」

 

「お嬢様、その顔は止めてください」

 

「すっごいニマニマしてる~」

 

「?」

 

 

一夏君以外は会長が言った事を正しく理解してるようで、違いはあるが顔が赤くなっている。だが、一夏君だけはその理由が分かっていないらしく、しきりに首を傾げている……これはつまり……

 

「エイミィが思ってる事は何も無いよ」

 

「あっ、そうなんだ……」

 

 

簪に耳打ちされ、私は自分の勘違いを改めて理解した……かなり恥ずかしい勘違いをしてしまったわね……せめてもの救いは一夏君が分かってないって事かしらね。




高校生は男女が一緒の部屋ってだけで想像が膨らむものなのでしょうか?自分はそんな事無かった気がします

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