もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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また波乱の予感が……


ファーストコンタクト

一夏君にお姫様抱っこされてる……しかもこんな格好で……一夏君の顔はほんのり赤くなってるが、私は顔には出てない……いや、出していないだけだ。

 

「(その場のノリで引き受けちゃったけど、良く考えればこれってとっても恥ずかしいじゃないのよ)」

 

 

布1枚しか隔てるものが無いのだ……服を着てるときにされるのとは訳が違う……しかも周りに人が居るのだ。

 

「(冷静になりなさい、私は更識家の当主。こんな事で動揺するようじゃダメなんだから)」

 

 

普段はそんな事思わないけど、頭が混乱してるのだろうか。カメラマンさんがいろんな角度から写真を撮っている……フラッシュが焚かれる度に顔が熱くなるのが分かる……それとは逆に一夏君の表情は普段通りになっていっている。

 

「(写真を撮られる事に慣れてるのかしら……)」

 

 

昔の事はあまり話してくれないけど、ISを動かした時にはマスコミが学校に散々押しかけて来てたみたいだし、写真も慣れっこなのだろうか。

 

「う~ん……彼氏さん、もう少し笑ってくれない?」

 

「はぁ……」

 

 

表情が戻ったと言っても、一夏君は普段から表情が硬い……笑えと言われてもそう簡単には笑えないだろう……ドS的な笑みならすぐに出来そうだけど。

 

「それと、更識さんももっとくっついちゃえ!」

 

「えぇ!?」

 

「せっかく彼氏が抱っこしてくれてるんだから、もっと甘える感じがほしいのよ」

 

「あう~///」

 

「あら、顔真っ赤」

 

 

渚子さんに指摘されて更に顔が熱くなる……せっかく冷静を装ってたのに、これじゃあ年上の威厳が……

 

「これって雑誌に載るんですか?」

 

「そうよ、しかもトップにね」

 

「……ほしいヤツなんて居るんですかね」

 

「何でそう思うのかしら?」

 

「だってこの雑誌て女性に向けての雑誌ですよね、IS関連のですし」

 

「そうね」

 

「いくら楯無さんがロシア代表で俺がIS界の例外だからと言って、こんな写真ほしがるんですか?」

 

「あら、織斑君は更識さんの人気を知らないの?」

 

「楯無さんの……人気?」

 

「わ、わぁ~~~~!!」

 

 

渚子さんが余計な事を言い出しそうになったので慌てて会話に割ってはいる……一夏君には知らなくて良い世界があるんだから!

 

「はい、更識さんは大人しくしてましょうね~」

 

「む、むがぁ~!」

 

「………」

 

 

渚子さんに簡単に押さえ込まれ私は抵抗虚しく力尽きた……意識はあるが身体が動かないのだ。

 

「更識楯無と言えば、世界中のレズビアンに人気が高いのよ」

 

「はぁ?」

 

「あうぅ……」

 

 

知られたく無かったのに……遠征に行くたびに女性から『そう言う』お誘いがある事を……襲われそうになった事を……

 

「この見た目に反則級のおっぱい、そしてISに乗ってる時の彼女の姿に男性じゃなくって女性がメロメロなのよ」

 

「……じゃあ楯無さん1人の写真の方が良いんじゃないですか?」

 

「あま~い!」

 

「はぁ……」

 

「貴方が現れてから、世界が変わったの自覚してないの?」

 

「俺にそんな影響力があるとは思ってませんが……」

 

「世界的に有名な『織斑千冬』の弟にしてあの『大天災』に説教出来る男の子、このステータスだけでも貴方は反則級なのよ?」

 

「……まったく嬉しく無いですね、その評価は」

 

 

一夏君は本当に嫌そうな顔をしている……

 

「その男の子が世界中の女性の興味を引かない訳無いでしょ!」

 

「ますます嫌ですね……」

 

「それに最近では両刀の女性も多いのよ?」

 

「うわぁ~……」

 

 

そう言えば私が一夏君と知り合いだと言うと更に過激に誘ってくる人も居たわね……あれって一夏君も一緒に……って事だったのかしら。

 

「だから2人の写真を載せれば売り上げ倍増間違い無し!」

 

「……もう本音を隠す気も無いようですね」

 

「この雑誌が世界的に名を馳せるチャンスなんだから!」

 

「……もう良いです」

 

 

一夏君も呆れてものが言えない状況になったらしい……でも待って!再開しちゃったらまた一夏君に抱きしめられる事になるのよね!?

 

「それじゃあもう1回更識さんを抱きかかえて……いや、いっそ抱きしめちゃえ!」

 

「………」

 

「あの黛さん、さすがにそれは……」

 

「何?」

 

「編集長がOK出すとは思えませんが」

 

「大丈夫、あの人レズだから」

 

「「「………」」」

 

 

突然の暴露……つまりは『そう言う事』をしてOKを貰うって事かしら……想像しただけで気分が悪くなってきたわね。

 

「だから自分が狙ってる更識さんと、更に調教されたいと願ってる織斑君のツーショットを見れば一発よ!」

 

「「「うわぁ……」」」

 

 

最早カメラマンさんも呆れている……さすが薫子ちゃんのお姉さんってだけはあるのね……

 

「さぁ、続きを撮るわよ~」

 

「「「ハァ……」」」

 

 

暴走しかかった渚子さんを止めるのは骨が折れそうだ……それが私と一夏君とカメラマンさんの共通の思いだった……

 

「ほらほら、織斑君も更識さんも早く早く!」

 

「だ、そうですよ?」

 

「こうなったら自棄ね……」

 

 

私は一夏君に勢い良く抱きついた。普段なら積極的に行けるのに、やっぱり人に見られてると自覚するとダメね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後結局暴走した黛姉に促されてキス直前まで撮られた……帰ったら覚悟しておいてくださいね、黛妹!

 

「これだけ撮れれば十分かな~。2人とも、ありがとね」

 

「もう、絶対受けませんからね」

 

「えぇ~!」

 

「おかしな雑誌に協力なんて出来ませんよ」

 

「おかしく無いわよ、ちゃんとした雑誌よ!」

 

「こんな写真載せる雑誌がちゃんとしてるわけ無いだろうが!」

 

 

途中から完全に個人的趣味が入ってるだろうが。

 

「本当なら全裸の写真もほしかったけど、それはさすがに自重したわ」

 

「……この人マジヤベェ……」

 

「経験してるのなら行為中の写真も……」

 

「くたばれ!」

 

「あぅ!」

 

 

暴走した黛姉を強制的に止める……変態度で行けば恐らくブリュンヒルデと大天災に並べるかもしれないレベルだろうな。

 

「楯無さん、帰りましょう」

 

「そ、そうね……」

 

「あぅ……」

 

「お疲れさまでした」

 

「カメラマンさんも」

 

 

気絶してる黛姉を放っておいて、俺たちは帰る事にした。これ以上この場に止まりたくなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏君に引っ張られてオフィス街を進んでいく……よっぽどあの場に居たくなかったのか普段より強引で足早だ。

 

「一夏君、そんなに引っ張らないで」

 

「あ?……あぁ」

 

 

自覚して無かったようで、一夏君は私に注意されてもすぐに理解してくれなかった。

 

「すみません刀奈さん、あんな事に付き合わせてしまって……」

 

「私もあそこまで行くとは思って無かったわよ……」

 

 

報酬に釣られたから引き受けたけど、あれじゃあ報酬がつり合ってないわよ……薫子ちゃん、この責任はとってもらうからね。

 

「それにしても刀奈さん」

 

「何?」

 

「さっきの話って本当ですか?」

 

「さっきの……ッ!?」

 

 

そうだった!一夏君に知られちゃったんだっけ……最初は何に誘われてるのか分からなくって付いて行ってしまったけど、最後の一線は越えていない……怖くて逃げ出したのだ。

 

「まさか、刀奈さんもソッチって事は無いですよね」

 

「当たり前でしょ!」

 

「ですよね……」

 

「だって……私は本当に一夏君が好きなんだから」

 

「……あ、ありがとうございます」

 

「もう///」

 

 

何言わせてるのよ、この変態……一夏君も赤くなってるけど、私の顔は既に限界まで赤くなっている……衆人環視の前でこんな事言わせるなんて、とんだ変態さんなんだから、一夏君って。

 

「さてと、そろそろ帰りますか」

 

「そうね、もう遊び疲れたし。……それ以外でも疲れたしね」

 

「そうですね……」

 

 

取材って怖いものだったのね……それが良く分かった1日だったわ……

 

「ん?」

 

「一夏君、如何かした?」

 

「いえ、あれって……」

 

「ん~?」

 

 

一夏君が見ている方向に目を向ける。そうしたらそこには無理矢理連れて行かれている女性が目に入った……あれってもしかして誘拐!?

 

「一夏君!」

 

「分かってます……でも、状況が悪すぎる」

 

「え?」

 

「あいつら、相当なてだれです……刀奈さんは警察を呼んでおいてください」

 

「私も手伝うわよ」

 

 

一夏君がてだれと言う事は、相当な実力なんだろう……助けるには人数が居た方が良いだろう……そう思って私は提案したのだが――

 

「大丈夫、刀奈さんは安全な場所に居てください」

 

 

――やんわりと断られてしまった。

口調こそは穏やかだったけど、その言葉に込められた圧に、私は逆らえないと理解した。理解させられた。

 

「絶対に怪我しないでね」

 

「分かってます」

 

 

そう言って一夏君は誘拐犯に近づいていく……白昼堂々とした誘拐劇に、誰も気付いてないのを不思議に思わなかった私は、恐らく冷静では無かったのだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀奈さんには黙ってたけど、この誘拐されてる女、前に気配を感じた事があった……確かオータムを救いに来た気配……つまり、亡国企業の人間だ。

 

「茶番はそれくらいにしたら如何だ、『亡国企業』さんよ」

 

「あら、さすがに気付いたのね」

 

「アンタの気配は前に感じ取った事があったし、さすがに今の世の中男が女性を攫おうとしてるのを見てみぬフリはしないだろ、この辺りに催眠波でも流してるのか?」

 

「そんな事まで分かるなんて、さすが私の見込んだ男の子」

 

 

言葉だけなら気持ち悪いと思っただろうが、込められた感情に俺は戦慄を覚えた……やはり狙いは俺か。

 

「自己紹介が未だだったわね」

 

「別に聞きたくねぇがな」

 

「あら、つれない事言うのね」

 

「それで、何が目的だ。生憎今は専用機を持ってないぞ、俺は」

 

 

須佐乃男が目的なら無駄足だったなと言う意味を込めての言葉だった。束さんの作ったISが目的ならわざわざこんな所で会う必要など無いと分かっていながら……

 

「それがほしいならわざわざ貴方を選ばないわよ。例えば……あそこに居る女の子とか?」

 

「なるほど……彼女に手を出したら如何なるか分かってるのか?」

 

「貴方の戦闘力はオータムから聞いてるわ。生身でISを停止させるなんて、どれだけ馬鹿げた能力なのよ」

 

「機嫌が悪かったんだ」

 

 

あの時は色々とイライラが募っていて、更に面倒を持ってきたオータム相手にちょっとやり過ぎたとは思ってる……いくら悪党だからと言って、さすがに半殺しはマズかったよな……

 

「あの後大変だったのよ。オータムのISは動かないし、オータム自身も戦闘恐怖症になっちゃって……」

 

「なら、俺は亡国企業の戦力を削げたのかな?」

 

「期待したところ悪いけど、オータムは既に現場復帰してるわよ」

 

「なんだ……」

 

「ふふ、残念かしら?」

 

「いや、俺の恐怖もそれくらいなのかと思ってな」

 

「ッ!?」

 

 

絶望を与えるつもりだったのだが手加減が過ぎたようだな……次は2度とISに乗りたいと思えないほどの恐怖でも植えつけてやるか。

 

「あの彼女、誰かを待ってるようだけど?」

 

「あぁ、警察を呼ぶように頼んだんだが、如何やら意味無かったようだな」

 

「催眠波はまだ出てるもの」

 

「手の込んだイタズラだったな」

 

「それだけ貴方に価値があるのよ、織斑一夏」

 

「オータムが言ってた上司はアンタか」

 

「そうよ」

 

 

見た目は派手なセレブみたいだが、纏ってる雰囲気がその勘違いを許さない……ナターシャさんのように実戦経験があり、ナターシャさんには無い濃密な殺意を含んでいる雰囲気だ。

 

「オータムのように話を引き伸ばしても情報は得られそうに無いな」

 

「知りたいのなら教えましょうか?」

 

「それが事実ならな」

 

「うふ、頭のいい子は好きよ」

 

 

やはり本当の事は話す気が無いらしい……あのオータムの上司だとはとても思えないほど知略的な人だ。

 

「率直に言うわ、私は貴方がほしいの」

 

「……それは如何言う意味でだ?」

 

「全てにおいての意味よ」

 

「……ショタコン」

 

 

少なくとも千冬姉よりは年上だろうし、ブラコンって表現は適切では無いと思ったのでそう言ったのだ。

 

「貴方がショタって感じかしら?」

 

「……違うだろうな」

 

「うふ、でも可愛い男の子よね」

 

 

嘗め回すような視線に背筋が震える……何だ、この女……ただの変態では無いのだけは分かるのだが、目的も実力もさっぱり分からない。

 

「貴方は真実を知るべきなのよ」

 

「真実?」

 

「あっ……今のは忘れてちょうだい」

 

「……お前は俺の何を知っているんだ」

 

「今は言えない……貴方が亡国企業に来るなら教えてあげるわ」

 

「はっ、ありえねぇ」

 

 

亡国企業に行くって事は刀奈さんや簪たちを裏切るって事だ、そんな事絶対にありえない。

 

「ありえない?何故言い切れるのかしら」

 

「俺がお前に協力すると思ってるのか?だとしたらとんだお馬鹿だな、アンタも」

 

「そうやって逆上させて話させる気かしら?」

 

「ふん、オータムよりは確実に頭が良いらしいな」

 

 

分かってたがあえて口にした。オータムが零した情報では彼女とオータムは『そう言った』関係らしいので、そこを刺激すれば少しは情報が得られるかもと思ったからだ。

 

「彼女はお馬鹿ですからね。それこそ、Mと同じくらい、いえそれ以上かしらね」

 

「M?」

 

「聞いていないの?」

 

「……マドカのMって事か」

 

「察しが良い子は本当に楽ね」

 

「……そりゃどうも」

 

 

皮肉を飛ばすしか俺には反撃の手段が無かった……この女、まったく隙が見当たらない、相当な実力者って事は分かってたが、これは千冬姉クラスだぞ。

 

「彼女にも教えていない貴方の真実、知りたいとは思わないの?」

 

「生憎過去に興味は無い」

 

「出自にも?」

 

「……ああ」

 

 

一瞬迷ったのを見逃してくれる相手では無かった……それだけは興味が無いと言い切れないものだったから。

 

「興味があるようだけど?」

 

「ハッ、アンタ口も相当だな」

 

「経験が違うもの」

 

「違い無い」

 

 

俺だって普通に生活してたらこんな風にはなってないと言い切れるだけの経験は積んだが、やはり年齢が年齢なので経験も向こうには勝てない……せめて一矢報いたいのだが、隙がまったく無いんだよな、この人。

 

「興味があるならこの番号に電話してきなさい。何時でも教えてあげるわ。ただし、貴方が亡国企業に入ってくれるって条件でね」

 

「……何故そこまで俺に固執する。話題性だけでは無いだろ……」

 

 

裏組織である亡国企業に話題性など必要無いのは分かってる。だが、それ以外の目的がまったく想像出来ないのだ……戦闘力だけでも無さそうだし。

 

「それは言えないの、ゴメンなさいね」

 

「それとそのしゃべり方、アンタ俺の事前から知ってるのか?」

 

 

やけに親しげに話す彼女、少なくとも俺の方には覚えが無い……出自を知ってるっぽいし、やはり会った事があるのだろうか。

 

「うふ、やっぱり面白いわね」

 

「……何がだ」

 

 

楽しませてるつもりは更々無いのだが……なぜか楽しそうに笑っている彼女を見て、俺は更に警戒した、また落とし穴があるかもしれないから。

 

「だってこの私相手に此処まで切り込んで来る相手なんて最近居なかったんですから」

 

「……質問に答えろ」

 

「答えると思って?」

 

「いや、思っては無いさ……これで答えるようならアンタの評価が変わるところだった」

 

「どんな風に?」

 

「見た目派手なただのバカ」

 

「プッ」

 

 

俺の表現が面白かったらしく、暫く笑っていた……笑いながらもまったく隙が生まれないのはさすがとしか言いようが無い。

 

「やっぱり面白いわね、貴方……ねぇ、一夏って呼んでも良いかしら?」

 

「……断っても呼ぶんだろ」

 

「本当に察しが良いわね」

 

「断っても承諾しても呼ぶんなら勝手に呼べ」

 

 

天邪鬼な彼女だ、如何答えても一夏と呼ぶのだろう……なら俺に出来る唯一の抵抗は不貞腐れるくらいしか無い……此処まで手ごわい相手は何時以来だろう……記憶を辿ったが思い当たる節は無かった。

 

「なら一夏、もう一度言うわ。亡国企業に来ない?」

 

「何度言われてもお断りだ」

 

「如何誘えば入ってくれるの?」

 

「如何誘われても断るさ」

 

「一夏が入ってくれれば私も楽が出来るのに」

 

「なら、一生苦労してろ」

 

「一生か……」

 

「ん?」

 

 

何を言っても動じなかった彼女が一生と言う言葉に反応した……何かあるのだろか?

 

「一夏は命の終わりって何だと思う?」

 

「哲学か?」

 

「いえ、単純に答えて」

 

 

何だいきなり……

 

「命の終わりって事は要するに死って事だろ?」

 

「なら、一生って何?」

 

「言葉通り、一度の生って事じゃ無いのか?」

 

「なら私は……」

 

「お、おい?」

 

 

何故だか泣いているように見える……俺、何か地雷踏んだのか?

 

「ゴメンなさい、一夏には関係無いわよね」

 

「……何があったんだ?」

 

「知りたい?」

 

「話したく無いなら聞かない」

 

「そ……ありがとう」

 

 

俺は何で敵に情けを掛けてるんだ……この女は亡国企業の上層部で危険度で言えばオータムの比では無いのに……

 

「スコール・ミューゼル」

 

「は?」

 

「私の名前よ」

 

「はぁ……」

 

 

この流れで自己紹介とか……てか、さっき知りたく無いって言っただろうが。

 

「覚えておいてね、一夏」

 

「は?」

 

「必ず貴方を手に入れるから」

 

「何を……!?」

 

 

言っていると続けようとしたが、口が塞がれた……油断してたのは否めないが、この女まったく行動が読めない。

 

「これは手付金代わりよ」

 

「……俺は売り物じゃねぇぞ」

 

「ふふ、絶対に手に入れるからね」

 

「……さっさと行け。さもないと俺はアンタを殺してしまうかもしれない」

 

「あら怖い、なら退散と行きましょうか」

 

 

あっさりと逃がしたが、此処で捕まえておけば後々楽が出来たのではないだろうか。後悔先に立たず……後悔した時には既に遅いのだ。

 

「刀奈さんに何て言い訳しよう……」

 

 

さっきの『アレ』も当然見てただろうし、刀奈さんの下に帰るのが若干怖いぞ……それにしてもスコール・ミューゼルか……俺の事を知ってる風だったし、本当に出自も知ってるのだろうか……そして何故俺を亡国企業に誘うのだろうか。




後半、えげつないくらいスコールがメインに……頭の中に平野さんの声が再生されてました。

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