もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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サブタイ考えるのが……


一夏の思惑

生徒会室でお弁当を食べ、今は溜まっている仕事を皆で片付けてるんだけど、やっぱり仕事のスピードは一夏君と虚ちゃんが1段も2段も速い。普段からどれだけ2人に仕事を任せてるのかが良く分かる光景だろう。

 

「楯無様も本音様も随分とゆっくりですね」

 

「違うよ須佐乃男。2人がゆっくりじゃ無くて、一夏と虚さんが速いんだよ」

 

「お兄ちゃん凄い!」

 

「3人は手伝ってくれないの?」

 

 

おしゃべりに興じている3人に恨みがましく視線を向けたが……

 

「「「私たちは役員じゃ無いから(ありませんので)」」」

 

 

と3人で声を揃えて手伝いを拒否してくるのだ。

 

「会長~何時まで経っても机が見えませ~ん!」

 

「泣かないの、ほらしっかり」

 

 

私と本音の前には、山積みになった未処理の書類があるのに対し、一夏君と虚ちゃんの前には処理積みの書類が綺麗に整理されて置いてあるのだ。

 

「なんとか終わりそうですね」

 

「こっちも終わりそうです」

 

「一夏君、虚ちゃん、こっちも手伝ってくれない?」

 

「こっちも~!」

 

「「手伝いません!」」

 

「「ええ~!」」

 

 

一夏君と虚ちゃんに助けを求めたて、それに本音も同じように2人を頼ったが声を揃えて断られてしまった。

 

「これが出来る側と出来ない側の境界線ですか~」

 

「見事に分かれてるね」

 

「生徒会って大変なんだね」

 

 

須佐乃男が指差してるのは綺麗に整理された書類が置かれている一夏君と虚ちゃんの机と、グチャグチャに積まれた書類の山で区切られた私と本音の机の境目だ。

 

「これで終わりです」

 

「こっちもこれで最後ですね」

 

「これ、放課後もやるのよね……」

 

「私はおりむ~の補習を受けるので、楯無様、スミマセンが頑張ってください」

 

「裏切り者~!」

 

 

終わらない仕事に泣きそうになり、更に放課後には本音の分も私に回ってくるので、残った仕事+αが私の分になる訳で、それを考えただけで疲れが増してきた気がする……

 

「お茶でも淹れましょう」

 

「一夏、私たちにもお願い」

 

「分かってる」

 

 

一夏君がお茶を淹れるためにキッチンに移動してるが、私と本音はお茶など飲む気にはなれないのだ……

 

「放課後には私も残った本音の分はやりますから」

 

「でも、全部って訳では無いんでしょ?」

 

「元々お嬢様の分を私と一夏さんで分けて更に自分たちの分も終わらせたんです。それくらいはやってください」

 

「一夏く~ん、会長に興味無い?」

 

「会長と言う役職には興味無いですね」

 

 

はい、とお茶を手渡してくれた一夏君は私の言おうとしてた事を先読みしてばっさりと切り捨てて来た。言葉遊びでもして気を紛らわそうとしたんだけど、一夏君はそれを許してはくれないようだ……

 

「第一、刀奈さんから役職を奪うつもりなどさらさらありませんから」

 

「お嬢様には卒業まで会長職に就いてもらわなければね」

 

「もう、私より一夏君の方が強いって皆知ってるのに~」

 

「学長が一夏を会長にするの渋ってるからね」

 

「学長が許可してくれればすぐにでも一夏君に会長職を譲るのにな~」

 

 

学長の轡木さんとは昔なじみだけど、文句を言おうにも滅多に学園に姿を現さないし、言ったところで一夏君を会長にするのには賛成してくれないだろうな……

 

「文句言ってる暇があるのならさっさと仕事してくださいね」

 

「でも、もうすぐ昼休み終わっちゃうよ?」

 

「なら、残りは放課後ですかね」

 

「やった~!」

 

 

本音は開放された事を喜んでるが、私は一時しか開放されないので喜べない……

 

「本音、喜ぶのは良いが、放課後はしっかりと勉強しろよな?」

 

「わ、分かってるよ~」

 

「そう言えば一夏君、仕事合間に何か他の事やってた気がするんだけど、何してたの?」

 

 

書類とは別の紙に何か書いていたような気がしたので、私は一夏君に訪ねた。てか、他の事してても虚ちゃんと同じスピードって……一夏君、どれだけ処理スピード速いのよ。

 

「放課後の勉強会で使うものをちょっと……」

 

 

一夏君は本音、須佐乃男、マドカちゃんをチラッと見て口の端を上げた……如何やらその3人には嬉しく無いものらしい。

 

「ちょっと見せて」

 

「まぁ、簪なら見せても問題無いが」

 

「私も~」

 

 

興味があったので簪ちゃんの背後に回って一緒に一夏君の作っていたものを見る……これは、学園の特記事項ね。

 

「所々空白なのは何で?」

 

「テストですので」

 

「なるほど~」

 

 

確認テストみたいなものか。一夏君の字で書かれた学園特記事項は、一字一句間違い無くそして非常に読みやすかった。

 

「さて、それじゃあ教室に戻りますか」

 

「ほら本音、隠れてお菓子食べてないで戻るぞ」

 

「ほえ!?」

 

 

一夏君がこっちを見ていたのを良い事に食後のお菓子を食べていた本音は、一夏君が自分の事を一切見ずにお菓子を食べている事がバレてビックリしていた……一夏君の隙を突こうとしても無駄だって知ってるでしょうに……

 

「まあまあ一夏さん、これが最後のお菓子になるかもなんですから」

 

「……それもそうですね」

 

「明日からは食べられないかもだもんね~」

 

 

本音のクラスのテストは明日だ。採点は全クラスが終わってからだが、自己採点と言う方法もあるのだし、明日には本音の結果は分かるだろう。

 

「だが、クラス毎に違うテストを作るって効率悪く無いです?」

 

「それは去年に薫子ちゃんがやらかしたからよ」

 

「黛先輩が?」

 

「そう」

 

 

1年生の5人は首を傾げたが、虚ちゃんは思い出したく無かったのか、かなり苦い顔をしている……

 

「去年までは全クラス一緒のテストだったんだけど、薫子ちゃんのクラスは初日だったのよ」

 

 

半分のクラスは先にテストを受け、残りは次の日なのは今年も一緒なので、全員は此処では何も聞いてこなかった。

 

「それで薫子ちゃんは問題用紙を完全に再現したものを裏で売ったのよ」

 

「あぁ……」

 

「「「「?」」」」

 

 

一夏君だけは納得して虚ちゃん同様苦い顔をしたが、他の4人には今の説明だけでは伝わらなかったようだ。

 

「問題が一緒だから当然問題用紙は回収されてたんだけど、薫子ちゃんは早めに回答を終えて残りの時間で問題全部を頭に詰め込んだのよ」

 

「それで、黛さんはまだテストを受けていないクラスを対象に商売を始めたわけです……」

 

「あの人ならやりそうですね……」

 

 

他の4人も理解したのか、何故各クラスで問題が違うようになってるのか納得してくれたみたい。

 

「でも、一斉にやれば問題無かったのでは?」

 

「そこは知らないわよ」

 

「採点が大変なの分けているみたいですよ」

 

「教師も楽したいんですね……」

 

 

一夏君の一言に、誰も何も言えなかった……誰だって楽したいものだ思うけど、それを言っちゃ駄目でしょ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後の授業も終わり、私は携帯に着たメールを開いた。差出人は一夏君、内容は今日の朝に聞いた事だ。

 

『1組で勉強会をやるから、エイミィも参加するなら来てくれ』

 

 

実に無駄の無いメールだ……伝えたい事のみが書かれたメールを読んで、私は思わず笑ってしまった。こもメールがあまりにも一夏君らしかったからだ。

 

「如何したのエイミィ?」

 

「何が?」

 

 

クラスメイトに見られてたみたいで、私の笑みの理由を聞こうと近づいてきた。

 

「携帯見ながら笑って……何か面白い事でもあったの?」

 

「違うよ~。ただ、友達からのメールがあまりにも『らしかった』からね」

 

「友達?誰々~」

 

「教えな~い!」

 

 

もし、私が一夏君のアドレスを知っているとバレたら、このクラス全員から教えろと言われるに違い無い。それだけは断言出来る自信がある。

 

「怪しいわね~」

 

「何でも無いってば!」

 

 

私は携帯を鞄の中に滑り込ませ逃げるようにその場から立ち去ろうとしたが……

 

「者共、エイミィを逃すな!」

 

「時代劇!?」

 

 

クラスメイトの一言で私は囲まれてしまったのだ。

 

「さぁエイミィ、白状しなさい。誰からのメールだったの?」

 

「ぷ、プライバシーに関わるので言えません」

 

「その発言は予想済みよ。そんな理由で断れると思ってるの?」

 

「諦めるのが普通じゃ無いの!?」

 

「噂大好きな女子高生がそんなもの気にすると思ってるの?」

 

「気にしようよ~」

 

 

私の渾身の逃げも皆には通じなかった……人のメールなんだから気にしないで良いじゃないのよ……

 

「お~いエイミィ、何かあった……のか?」

 

 

私が来ないのを不審に思ったのか、一夏君が迎えに来てくれた。嬉しいけど、何かタイミングが悪いような気が……

 

「織斑君よ!」

 

「エイミィを呼んでるけど、まさか!」

 

「な、何?」

 

 

クラスメイトの1人が何かを思いついたように手を打ったので、私は内心ドキドキだ。

 

「エイミィ、さっきのメールって織斑君からでしょ?」

 

「ち、違うよ?」

 

「これ、何の騒ぎだ?」

 

 

私が必死になって隠してるのに、一夏君は助けてくれないようだ……それどころか騒ぎの中心になってるのにも気付いていないようだった。

 

「エイミィ、織斑君のアドレス、知ってるんじゃないの?」

 

「そ、それは……」

 

 

私はチラッと一夏君を見たが、一夏君は特に気にした様子も無く――

 

「この前教えたからな」

 

「ちょっ!」

 

 

――あっさりとバラしてしまった。

 

「織斑君とエイミィって如何言う関係なの!?」

 

「如何言うって、普通に友達だが?」

 

「うんそう!友達、友達だよ~」

 

「怪しいわね~……」

 

「なぁ、これって何が原因なんだ?」

 

 

一夏君は何で私がクラスメイトに囲まれてたのか分からないようで、しきりに首を捻っている……原因は一夏君だよ!

 

「一夏君、そろそろ始めたいんだけど……?」

 

 

一夏君の背後から一夏君のクラスメイトらしき女の子がやって来た……彼女も名前呼びなんだ……

 

「何かあったの?」

 

「知らない。俺が来た時にはもうこんな状況だった」

 

「い、一夏君!」

 

「ん?」

 

「始めるんでしょ?ほら行こ!」

 

「あ、ああ……」

 

 

クラスメイトの輪から強引に抜け出し、一夏君の手を取って1組に向かった。

 

「何かあるの?」

 

「さぁ?」

 

 

後ろでクラスメイトがひそひそと話しているのを、私は聞き取れなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏君が迎えに行ったのに戻ってこなかったので様子を見に行ったら、何か騒ぎになっていた。どうせ一夏君が来た事で騒いでるのだろうと思ってたが、何やら別の理由だったみたい……一夏君に聞いても分からなかったが、その騒ぎの中心に居た子が無理矢理一夏君の手を取って逃げたので一先ず騒ぎは収まった……

 

「織斑君とエイミィ、あれは何かあるわね」

 

「やっぱりそう思う?」

 

 

いや、別の騒ぎになった感じがするわね……

 

「貴女、何か知ってるの?」

 

「え、何も……」

 

 

さっき彼女が大声で言ってた通り、彼女と一夏君はお友達だ。彼女が如何思ってるかは別として、私は一夏君からそう聞いている。

 

「それじゃあ私もこれで……」

 

 

気まずい雰囲気だったので退散を決め込む事にした。これ以上聞かれても何も知らないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おりむ~がカルカルを迎えに行って、そのおりむ~をしずしずが迎えに行った。本当に仲良しなんだな~。

おりむ~はお友達が少ないので悩んでたけど、カルカルやしずしずが居るじゃないか~!

 

「すまない、ちょっと手こずった」

 

「ゴメン、完全に私の所為だよね……」

 

「あれは何が原因だったの?」

 

 

廊下から3人の声が聞こえてきたので、私は廊下に出た。

 

「遅いよ~!」

 

「そんなに勉強したかったのか、本音」

 

「いや~、そんな事も無いんだけどね~……」

 

 

出迎えた私を見て、おりむ~が嫌な笑みを浮かべてきた……この顔のおりむ~だけは好きになれないだろうな~。

 

「それじゃあ揃ったので、まずはこれをやってくれ」

 

「これは?」

 

「今の実力でどれくらい解けるか知りたいからな。制限時間は5分、始め」

 

「え、もう!?」

 

 

席に着いて早々にテストをさせられる事になったカルカルは驚きを隠せてない様子だけど、私たちだってビックリだよ。

 

「簪、静寐、少し抜ける」

 

「何処行くの?」

 

「ちょっとな……終わった頃には戻るから」

 

「分かった」

 

 

おりむ~は何処かに行っちゃったけど、今はそれどころでは無いのだ……全然分からないんですけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌な予感がして生徒会室に来てみたら、案の定刀奈さんの気配は中に無かった。

 

「まったく!お嬢様は何処に行ったのでしょう……」

 

 

虚さんが1人ぼやいてるのを扉越しに聞いて、やっぱり刀奈さんは仕事をしたくなかったんだろうなと心の中で納得して携帯を取り出した。

 

「やれやれ……」

 

 

本心ではため息を吐きたかったところだが、少しでも減らす努力をしないとまた誰かに唇で塞がれる可能性があるからな……嫌ではないが、その後が大変なので勘弁願いたいのだ。

刀奈さんにメールを送りそのすぐ後、気配を消して観察していた俺に気付く事無く生徒会室に入って行った刀奈さんの姿を確認して、俺は自分のクラスに戻る事にした……世話のかかる生徒会長様だな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏君が教室から出て行って丁度5分、テスト時間終了と同時に一夏君が教室に戻ってきた。

 

「それじゃあ一旦回収するぞ」

 

「一夏君、これは如何するの?」

 

「とりあえず採点だな。簪と静寂も手伝ってくれ」

 

「うん」

 

「分かった」

 

 

集められた答案を3等分にして私たちは採点を始めた。

 

「これは……」

 

「如何かした?」

 

 

採点中に驚いた顔をした更識さん(だっけ?)に声を掛けたが、答案を指差して何も言ってくれなかった。仕方ない、その答案を見れば分かるんでしょ……

 

「あぁ……」

 

 

その答案は布仏さんのものだった。確かに驚いて固まりたくなる気持ちが良く分かる答案だった。

 

「驚くのは後にして、とりあえず採点してくれるか?」

 

「う、うん……」

 

 

更識さんに優しく声を掛けて一夏君が採点の続きを促した。一夏君は既に採点を終えているようでそれぞれの答案を返している。

 

「残りも終わり次第返すからな」

 

 

一夏君がまだ返されてない子たちにそう言って、私たちが採点している答案を指差した。その言葉にビクビクしてる子も居れば、少しワクワクしてる子も居た。自信があるのだろうか、それとも諦めてるのだろうか……

 

「終わったよ」

 

「こっちも終わった」

 

「ありがとう。それじゃあ返すぞ」

 

 

一夏君は私たちにお礼を言って答案を受け取り、1人1人に答案を返していく……そして布仏さんの答案を見て少し頭痛を覚えたようでしきりにこめかみを押さえている。

 

「本音、やる気あるのか?」

 

「ほえ~?」

 

「分からないにしても、少しは考えた風を残せよな」

 

 

今回一夏君が作ったテストは選択問題が半分だ。分からないにしてもあてずっぽうでも当たる可能性は十分にあったのだ。だが布仏さんの答案は、まるっきり新品同様……つまり空欄だったのだ。

 

「だって分からないんだもん~!」

 

「確かに今の実力を知りたいとは言ったが、何も空欄で出す事無いだろうが……」

 

「これが私の実力だも~ん!」

 

「簪、本音の事は俺が何とかするから、後は頼む」

 

「うん……頑張って!」

 

「あぁ……」

 

 

一夏君は布仏さんの襟首を掴んで持ち上げ、そして教室の後ろで1対1で教えるようだ……それほど布仏さんの実力がヤバイって事は今この場に居る全員が分かってたので誰も文句は言わなかった。

 

「えっと……それじゃあ残りの人は生徒手帳を出して答え合わせをしてください」

 

 

さっきのテストはIS学園の特記事項をどれだけ覚えてるかの確認だったので、そのテストの答えは生徒手帳にあるのだ。

 

「終わったらもう1回同じものを渡すので、合図があるまで覚えててください」

 

 

一夏君が作ったのはこれ以外にもあるのだが、とりあえずこれだけでも完璧にしておかないと次に進めないのだ……IS学園特記事項は55項目あるのだが、ISに関する条約の細かな内訳はこれ以上あるので、これが覚えられないと他の事を覚える事など不可能に近いのだ。

 

「ねえ更識さん、本番のテストって確か全部選択肢だったよね?」

 

 

一夏君の作ったテストは半分だけ選択肢で、後は自力で考えろと言う感じなのだ。

 

「全部選択肢だと勘でも当たるって一夏が言ってた」

 

「まぁ、分かってる選択肢を潰していけばそれっぽいものを埋めれば当たるでしょうね」

 

「それだと覚えないから半分だけにしたって」

 

「なるほど……」

 

 

選択肢に頼らないで全部覚えろって事かしら……意外とスパルタなんだね、一夏君って。

 

「ほえ~……」

 

「やらなくても良いぞ。その代わり困るのは本音だからな」

 

「やるよ~……」

 

 

後ろの方では布仏さんが必死に特記事項とにらみ合いしていた。その横で甘い言葉の後に現実を叩きつけている一夏君の姿があるのだが、普段以上に悪い顔をしている。あれはサボったら何されるか分からないわね……

 

「鷹月さん、配るの手伝ってくれる?」

 

「え?……ああゴメン、手伝うわ」

 

 

更識さんに手渡されたテスト用紙を受け取り、布仏さん以外の子に配る。さっきとまったく同じように見えるが、少し選択肢が違うのが良く見れば分かった。これはさっきの回答を覚えて答えようとする人が居るかもと思った一夏君の引っ掛けなのだろうか……まったく同じものと言ってあるからズルしようとすれば出来るもんね……良く考えてあるわね~。

 

「それじゃあ配り終わったら始めてください」

 

 

更識さんの合図で全員が解き始めたが、さっきよりは物を書く音は早い感じがした。やはり2回目って事で皆やりやすいのかな?

 

「ん?」

 

「あれ~?」

 

「同じ?」

 

 

選択肢が若干違う事に気付いた子は全体の半分くらいで、後の子は気にせずに解いている……思わぬ落とし穴があるから気をつけないと駄目だよ。

 

「はい、時間です」

 

 

更識さんが手を叩き終了。集められた答案を見ると、一夏君の思惑通り引っかかった子が結構居た……性格悪いわね~、一夏君って。




実際に同じ物って言われてたのに違ってた事があります。性質悪いですよね~。

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