もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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変態共とは別の問題児です


新たなる問題児

一夏君から部屋に来ないで欲しいと言われ、私たちは食堂でまったりとした時間を過ごしていた。一夏君のおごりだから何時もより豪華なおやつタイムを満喫する事が出来たのだ。

 

「昨日もケーキ食べたけど、やっぱり美味しいわね~」

 

「だからって2個も食べる?」

 

「お嬢様、太っても知りませんからね」

 

「本音も2個食べたよね?」

 

「私は~全部おっぱいに行くからだいじょ~ぶなのだ~!」

 

「「クッ、羨ましい……」」

 

「私も結構胸に行くんだよね~」

 

「止めて、それ以上は死体蹴りにしか見えなくなっちゃう!」

 

「マドマドが一番酷い事言ってるよ~」

 

 

私はただの悪乗りだったのだが、マドカちゃんが2人に止めを刺し(?)虚ちゃんと簪ちゃんはグッタリとテーブルに突っ伏した……

 

「あ、あれ?」

 

「どうせ私は食べても胸に行きませんよーだ……」

 

「如何してお腹周りに行ってしまうんでしょうね……」

 

「体質じゃない?」

 

「大丈夫だよ2人とも!おりむ~は気にしてないから」

 

 

一夏君は胸の大きさやウエストの細さなどは別段気にしてないと言ってたし、それだけで人を判断してる訳でも無いからね。

 

「でも、もう少しは欲しいよ……」

 

「簪様はまだマシですよ。私なんて……」

 

「おね~ちゃん小さいもんね~」

 

「本音!」

 

「わ~、おね~ちゃんが怒った~!」

 

「待ちなさい!」

 

 

微笑ましい(?)姉妹のやり取りを横目に、私は簪ちゃんとマドカちゃんと一緒に一夏君が須佐乃男を呼びつけた理由を考える事にした。

 

「何かしたのかな?」

 

「また無駄遣いしたんじゃないのかな」

 

「お兄ちゃんからお小遣い貰ってるんだよね」

 

「それはマドカちゃんもでしょ」

 

「私は必要分を毎回請求してるから」

 

「出してくれるの?」

 

「う~ん……あまりにも酷くなかったら出してくれるけどね」

 

 

その酷い例を聞いてみたい気もする……基本的にはデート費用などは一夏君持ちなのが多いが(最近はデート自体してないけど)、コッソリついて行ったりした時には自腹になる事が多いのだ(当たり前だと言われればそうなのだけど)。

 

「マドカが使った分も一夏が払ってるの?」

 

「洋服とかのお金はお小遣い以外からお兄ちゃんに出してもらってる」

 

「何か一夏君ってお母さんみたいだよね」

 

「確かに」

 

「でも、こう言うおやつとか外食した分は出してくれないんだよね……」

 

「それはお小遣いの範囲のみ認めてるんだ」

 

「優しいのか厳しいのか、また微妙なところね」

 

 

一夏君の収入源を考えると、そう言った事まで払ってたら厳しいのかしら?

 

「一夏の収入源って家だよね?」

 

「ええ、書類整理や訓練相手なんかもやってもらってるし、それ相応の額は渡してるはずだけど?」

 

「お兄ちゃんって自分にお金使ってるのかな?」

 

「「う~ん……」」

 

 

そう言えば一夏君ってあまりお金を使ってるイメージが無いのよね~……食材なんかも安くまとめ買いしてるみたいだし、調理器具もそこまで高いものでは無さそうだし、本当に何処でお金を使ってるんだろう……

 

「一夏さんは訓練に必要なモノや私たちが頼んだ時のお菓子の材料などに使ってますね」

 

「はなして~!」

 

 

考え込んでいた私たちの下に、本音を引きずった虚ちゃんがやってきてそう教えてくれた。

 

「訓練って私たちや碧さんの隊の?」

 

「それもありますが、最近ではクラスメイトにも教えているみたいですよ」

 

「生徒会の仕事をやり終えたら何処かに行ってると思ったらそれか……」

 

「任された分はやってるのですから、お嬢様がとやかく言える問題では無いと思いますが」

 

「私も参加した事ありますよ」

 

「「えっ、嘘!?」」

 

「本当です」

 

 

マドカちゃんも一夏君がやってる訓練に参加してたなんて……教えてくれても良かったじゃないのよ。

 

「やっぱり専用機も無い、国家代表でも無いクラスメイトに合わせて教えてるからぬるく感じたけど、要点を抑えていて普通の授業よりは分かりやすかったですね」

 

「ほえ~、おりむ~はそんな事もしてたのか~」

 

「本音も参加したら如何です?」

 

「そう言えば本音って、1学期の試験赤点ギリギリだったんだっけ?」

 

「企業代表なのに?」

 

「基本的に本音はそう言った説明の時は寝てますから……」

 

「えへへ~」

 

「「「「褒めてない(ません)!」」」」

 

「ほえ!?」

 

 

危機感の無い本音に対して私たちは同時に叱った。生徒会役員でもある本音が赤点なんて取ったら問題だもんね。

 

「今度の授業で確か小テストがあるって山田先生が言ってたけど……」

 

「毎年行われる理解度をチェックするものですね」

 

「本音、自身はあるの?」

 

「如何だろ~?」

 

 

これは一夏君に徹底的に知識を叩き込んでもらった方が本音のためかもしれない……私たちは何も話し合わず同じ考えに辿り着いた。

 

「本音、もし次の小テストで65点以下だったら暫くおやつ抜きね」

 

「ほえ!?」

 

「これでも優しい方だと思いますが?」

 

「毎年70点以下は全体の半分以下だもんね」

 

「そうなの?」

 

「ええ。授業を聞いていれば出来るものばかりですから」

 

「でも、本音って偶に寝てるよね……」

 

「あ、あわ、あわわわわ!」

 

 

本音は声に出して慌てだした。本音にとっておやつ抜きはそれくらい重い罰なのかもしれないわね……私も嫌だけどね。

 

「幸いテストは明後日だし、今から勉強すれば何とかなるんじゃない?」

 

「よし、おりむ~に電話だ!」

 

 

本音は携帯を取り出して一夏君に電話を掛けた。私たちにも聞こえるようにスピーカーモードにしてもらって……

 

『何か用か?』

 

「おりむ~!勉強教えて!!」

 

『本音?熱でもあるのか?』

 

 

確かにいきなり本音から勉強教えてと言われれば、私や虚ちゃんだって熱があるんじゃ無いかって疑うけど、一夏君もそうだったとは……やっぱり本音は勉強とはかけ離れたイメージなのね。

 

「私のおやつが掛かってるの!」

 

『おやつ?』

 

「そうなの!明後日のテストで65点以下だったら暫くおやつ食べちゃダメって楯無様が!」

 

『諦めて罰を食らえば?』

 

「酷いよおりむ~!」

 

『だって授業を聞いてたかのチェックのためのテストだろ?聞いてない本音が悪いんだろうが』

 

「そこを何とかしてって頼んでるんだよ~」

 

『はぁ……』

 

 

一夏君は呆れてものも言えないといった感じで少し考え(電話越しでもそれが良く分かるのは、多分私たちも同じ気持ちだったからだろう)、何か思いついたように――

 

『なら、明日の放課後は教室でミッチリ教え込んでやるから、覚悟しとけよ』

 

 

――と言った。

一夏君とマンツーマンか……ちょっと羨ましいな。

 

「助けてくれるの~?」

 

『希望者が俺の後ろにも居たからな……』

 

「希望者?」

 

『意外と多いのかも知れないぞ……』

 

「ほえ~?」

 

 

一夏君のクラスって座学は基本的に山田先生だっけ?あの先生の授業って脱線が多い事で有名だし、テスト範囲が終わってなかったりちゃんとしてなかったりしてるのかしら……一夏君は明日の朝に希望者がどれくらい居るのか確かめると言って電話を切った。

 

「私も参加しよっと」

 

「私も」

 

「マドカちゃんや簪ちゃんは必要無いでしょ」

 

「一応復習も兼ねて」

 

「クラスは違うけど範囲は一緒だから」

 

「そっか……」

 

「お嬢様、我々は参加しても意味ありませんからね」

 

 

バレてる……虚ちゃんは私が生徒会の仕事をサボる口実にしようとしたのを瞬時に見抜き先手を打ったのだ……だって一夏君が居ないと終わらないのよ~!

 

「本来なら一夏さんは生徒会とは関係無いはずだったのですから、諦めて仕事してくださいね」

 

「そう言えばお兄ちゃんって何で生徒会の仕事をしてるの?」

 

「なし崩しにね……」

 

 

初めはただの手伝いだったのだけど、あまりにも優秀だったのでそのまま副会長の地位に納まってもらったのだ。その後各部が一夏君を部活に入れろと抗議してきたのでその対処も兼ねたのだけどね。

 

「あっ、一夏君からメールだ」

 

「何か伝え忘れでしょうか?」

 

 

メールの内容は、用件は済んだので部屋に戻ってきても構わないと言う事だった。

 

「それじゃあ部屋に戻ろっか?」

 

「本音の勉強の事もありますしね」

 

「普段からやってれば直前で焦らないのに……」

 

「それが出来ないのが本音なんだよ……」

 

「やだな~、かんちゃん。褒めても何も出ないよ~」

 

「「「「だから褒めてない(ません)!」」」」

 

「ほえ~……」

 

 

相変わらず勘違いしている本音、褒める訳無いのに……何を如何勘違いしたら褒められたと思えるのかしら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本音からの電話を切り、俺はたまらずため息を吐いた……少しは回数を減らそうと決意した初日にこれだ……何時かため息を吐かなくて済む日は来るのだろうか?

 

「一夏君も大変ね」

 

「彼女だからな……」

 

「スミマセン……」

 

 

1学期の半分以上の授業を受けていない須佐乃男は当然授業を理解している訳無いのだ……いくら須佐乃男がISで、俺の腕で授業を聞いていたと言っても(実際に聞いていたのかは知らないが)、やはり相当なハンディが須佐乃男にはあるのだ。

 

「30点以下は追試だっけか?」

 

「そうみたいだね」

 

「一夏様、お願いします……」

 

「まぁ、赤点を取らないようにはなるだろうが……」

 

 

他のクラスに比べたら、1年1組の生徒は不利だろうな……自業自得感もあるのだが、何せ山田先生の授業はすぐに脱線する……あの人は頑張ってるんだろうが、何せ生徒を束ねるだけのカリスマ性が無いのだ。脱線したらそれを元に戻そうとして更なる脱線を生む、そんな人が座学担当なのだから、他のクラスよりは平均点は低そうだ。

 

「私も参加しても良い?」

 

「静寂は必要無いだろ……」

 

「だって楽しそうだし」

 

「楽しい事は無いと思うが……」

 

 

ぶっちゃけクラスの半分は参加しなくても赤点の心配は無いだろう……だが、クラス担任の面子を考えると、全クラスで平均点が最低なんて自体になると別の問題が発生しそうで、これまた面倒なのだ。

 

「明日のHR前に参加希望者を確かめるか……」

 

「多分全員だと思うよ?」

 

「全員?国家代表候補生が3人、それに匹敵する実力者も何人か居るクラスだぞ?」

 

 

マドカは無国籍扱いだし、篠ノ乃もそこそこの実力はあるようだしな……さすがは束さんの血縁者って所か。

 

「実戦は兎も角、座学は全クラス最低の平均点だからね」

 

「何で何だろうな……」

 

 

この前の試験で、学年1位は俺で、静寂は5位だった。シャルも30位くらいには名前があったのにも関わらず、平均点は全クラス最低だったのだ。

 

「私や本音様が赤点ギリギリでしたし、相川さんや夜竹さんも結構危なかったと言ってましたから……」

 

「お前はISなんだから知ってろよ……」

 

「そう言った知識は組み込まれて無いんですよ!」

 

「一番重要だろうが……」

 

「操縦者である一夏様が知ってれば良いと束様が言ってましたから」

 

「あ、あの人は……」

 

 

人の苦労を少しは考えろよ……ただでさえ束さんがISなんてものを発表した所為で色々と大変なんだから、擬人化する可能性があったのならそれ相応の知識も持たせておいてくれたって良かったでしょうが!

 

「一夏君、クラスの命運は一夏君の手にかかってるからね」

 

「楽しそうに言わないでくれ……」

 

「だって織斑先生が暴走したら止められるのは一夏君だけだし」

 

「暴走するのを前提にしてほしくないんだが……」

 

「だって絶対余計な事言う人が居るよ?」

 

「……何人か当てはまるヤツに覚えがある」

 

 

生徒だけでは無く教師にも……あの人は千冬姉を暴走させるのは得意だからな……しかも本人無自覚で油を注ぐからたちが悪い。

 

「兎に角明日だ。何人希望者が居るかは知らんが、出来るだけ頑張ってみるか」

 

「もし多かったら?」

 

「その時は、成績優秀者に手伝いを頼むから」

 

「誰?」

 

「お前」

 

「私!?」

 

 

静寂は自分を指差して驚いている……学年5位の頭脳の持ち主が居るのに頼まない訳無いだろうが……簪が同じクラスなら簪に頼むんだがな。

 

「少なくとも、2人の問題児が居るんだ。俺1人では荷が重いぞ」

 

「一夏君なら問題無くやれそうだけど?」

 

「それは過大評価が過ぎるぞ……」

 

 

俺だって一応は人間なのだ。出来ない事だって当然存在するし、問題児2人を相手にして、更に他の人の面倒を見るのは不可能だ。

 

「一夏様なら大丈夫です!」

 

「お前が言うな、問題児その2」

 

「その1は?」

 

「言うまでも無く本音の事だ」

 

「なるほど」

 

 

授業中にお菓子を食べ始めたり、そのまま寝たりと、まともに受ける態度すら見られない事の方が多い本音は、須佐乃男以上の問題児なのは静寂も納得なようだった。

 

「ボーデヴィッヒさんも結構問題児だと思うけど?」

 

「あれは問題児のベクトルが違う……」

 

 

ラウラの場合は必要に俺や千冬姉を尊敬しているのが問題で、授業においてはそこまで問題は無い……そこまでと表現したのは、実戦経験があるので教科書通りに行かないと偶にケチをつけるからだ。

 

「とりあえず、手伝ってもらうかもしれないから、覚悟だけはしておいてくれ」

 

「また大変な事を頼まれちゃったわね」

 

「重ね重ねスマン……」

 

「どっちも一夏君の所為では無いんだけどね」

 

「そう言ってもらえると助かる」

 

 

俺は静寂に頭を下げて部屋に戻る事にした。まったく、ここ数日間気の休まる時間が少ないのは気のせいなのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は一夏君が去っていった方向とは逆に歩き始め、自分の部屋に向かっている。まさかあの事が原因で一夏君と仲良くなれるなんて思って無かった……本当、何が好転するか分からないわね。

 

「ただいま」

 

「ん」

 

 

篠ノ乃さんは座禅を組み、瞑想していたようで簡単な返事だけでまた集中し始めた。ここだけ見れば武人なのだけど、一夏君が絡むと急にダメになるのよね……篠ノ乃さんも一夏君の事が好きなんだろうな。

 

「(私の好きと篠ノ乃さんの好きはきっと違う思いなんだろうな)」

 

 

私は別に、一夏君と付き合いたいって好きでは無いと思う……自分の気持ちなのに自信が持てないのは仕方ない事なんだろう……だって相手があの織斑一夏なのだから。

でも篠ノ乃さんの好きは、最初からそう言った感情から来るものだと、見ていればすぐに分かった。

 

「(剣道以外は不器用で上手く付き合えてないみたいだけどね)」

 

 

1学期は特に一夏君に対しての行動に問題があってクラスで浮き気味だった篠ノ乃さんだが、途中から行動を改めて落ち着きだしてからはそこまで浮いていない……そこまでと表現したのは、他にも浮いている人が居て、その人たちつ一緒に行動してる事が多いので、やはり浮いているのだ……

 

「……そう言えば」

 

「何?」

 

 

突如話しかけられるにも、だいぶ慣れたわね……始めの頃はビックリして雑誌やら文庫本やらを落としてたっけ。

 

「一夏の用事は何だったんだ?」

 

「ちょっと須佐乃男の事でね」

 

「須佐乃男?」

 

「うん。頼まれ事をしてたんだけど、それが一夏君に内緒だったみたいで……」

 

「『一夏君?』」

 

 

篠ノ乃さんは怪訝そうに眉をひそめ、睨むようにして私を見ている……この人は自分の放ってるプレッシャーがどれくらいのものか分かってるのだろうか……

 

「何故鷹月が一夏の事を名前で呼んでいる。さっきまで『織斑君』と苗字で呼んでいたじゃないか!」

 

「さっき名前で呼んで良いって言ってもらったの。ついでに私の事も静寂で良いって条件でね」

 

「何だと……私の事はいまだに苗字なのに、鷹月の事は名前で呼んでいるのか……」

 

「別に問題無いでしょ?」

 

「あるぞ!」

 

「何?」

 

 

別に一夏君が私の事を名前で呼んでも、篠ノ乃さんには何も問題無いと思うんだけど……いったい何の問題があるって言うのかしら?

 

「幼馴染の私を差し置いて、何故鷹月が名前呼びなんだ!!」

 

「……一夏君に聞けば良いじゃない、そんな事……」

 

 

私に言われても答えようが無いわよ……

 

「だが、一夏の部屋は関係者以外立ち入り禁止区域だし……」

 

「電話すれば?」

 

「番号など知らん……」

 

「じゃあ私が掛けてあげる」

 

 

私はさっき聞いたばかりの番号に電話を掛けた。

 

『何か用か?』

 

「えっとね、篠ノ乃さんが一夏君に聞きたい事あるんだって」

 

『篠ノ乃が?』

 

「うん」

 

『何だ?』

 

「今代わるね」

 

 

私は篠ノ乃さんい携帯を渡して、お気に入りの雑誌を読むためにベッドに転がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静寂から電話が掛かってきて、篠ノ乃が聞きたい事があると言われたが、何を聞きたいって言うんだアイツは……

 

「それで、何の用だ?」

 

『何故鷹月がお前の番号を知っている!』

 

「何故って、さっき教えたからだが」

 

『何だと!!』

 

「耳元で叫ぶな、馬鹿者!」

 

 

ただでさえ篠ノ乃の声は大きいのだ、騒がれたら鼓膜に響く……

 

『あと、何故幼馴染の私は苗字で呼んで、鷹月の事は名前で呼んでるんだ!』

 

「別に良いだろ」

 

『良くない!』

 

「ッ……それで、聞きたい事って何だ?」

 

 

注意しても無駄だと思い、俺はさっさと用件を済ませて電話を終わらせる事にした。

 

『今言った!』

 

「ん?」

 

『だから、何故鷹月は名前で、私は苗字なんだ!』

 

「そんな事を聞くために静寂に電話を掛けさせたのか」

 

『本当に名前で呼んでいるだと……』

 

 

疑ってたのか?別に俺は篠ノ乃の事を苗字で呼ぶのに拘ってる訳では無く、長い間名前で呼んでいたので習慣付いてしまっただけなのだ……もし昔から名前で呼んでたら今も名前で呼んでたかもしれんがな……

 

「用件はそれだけか?じゃあもう切るぞ」

 

『まっ!』

 

 

何か言いかけてたが、どうせろくな事では無いのだろう……俺は携帯をポケットに滑り込ませ、部屋の片付けをする事にした。何故片付いていなかったのかは後で言い訳を聞くことにして……




暫くはほのぼの回が続くと思います。

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