もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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相関図を作ると面倒になりそうな感じになりました……


一夏←シャル←弾←……

「つ……疲れた」

 

「ええ……疲れましたわ」

 

 

グラウンド30周の罰を漸く終え、僕とセシリアはその場に倒れこんだ。箒とラウラは同情したような表情で僕たちを見ているが、一夏は何故か呆れているような表情で僕たちを見ている……何に呆れてるのだろう?

 

「一夏、何かおかしい?」

 

「何がだ?」

 

 

聞き方が悪かった……今のセリフで理解してもらえるほど、僕は一夏と分かり合えていないのだから、言いたい事は全部言わなければ!

 

「僕たちが倒れこんでるのが、そんなにもおかしいのかなって思って……」

 

「代表候補生ならこれくらい出来ると思ってたから、そこまで疲れ果てるとは思ってなかっただけだ」

 

「候補生だって辛いって!」

 

「一夏さんの基準はおかしいですわ!」

 

 

セシリアも立ち上がり一夏に詰め寄る……僕たちだってそれ相応の訓練は積んできたけど、グラウンド30周も走るなんてしてきて無いよ。

 

「そうなのか……最近では簪や本音もこれくらいは出来るようになってきたから、他の候補生たちは楽勝なのかと思ってたが……」

 

「嘘……だよね?」

 

「あの布仏さんや更識さんが……」

 

 

見るからに僕らより体力のなさそうなあの2人が、グラウンド30周なんて苦難を乗り越えられるなんて、そう簡単に信じられる訳が無い。

だけど一夏は、それが嘘だとは言ってくれない――つまり本当なんだろうな……

 

「もう少しちゃんと訓練した方が良いぞ?」

 

「一夏基準で訓練したら、普通の人間は死んじゃうよ!」

 

「失敬だなシャルは。簪も本音も生きてるだろうが」

 

「それはあの2人が普通じゃ無かったって事じゃ無いの!」

 

「人の彼女を変人扱いするな」

 

 

そっか……あの2人も一夏の彼女なんだよね……そりゃ、変人にもなるよね。

 

「大体これくらいでヘバって、よく候補生になれたな。候補生って以外と簡単になれるものなのか?」

 

「これくらいって……じゃあ一夏も走ってみなよ!絶対に疲れ果てるからさ!」

 

「俺が?……面倒だが、やらなきゃ納得しないだろうし仕方ない……」

 

 

一夏はそう言って軽く準備運動をしてスタート位置に立った。

 

「見える速さで走るから、しっかりと見てろよ」

 

 

僕はまだ、一夏の本当の凄さを知らなかったんだと思い知った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30周走り終え、文句を言っていたシャルとセシリアの下に駆け寄る。これなら文句無いだろうな……

 

「走ったぞ」

 

「うん……」

 

「見てましたわ……」

 

 

何だ2人とも……そんな不思議なものを見たような目をして……今の何処に不思議があったと言うのか?

 

「一夏って、凄いんだね……」

 

「己の未熟を思い知りましたわ……」

 

「別に凄く無いだろ。あんなのはマドカでも出来る軽めの走りだ」

 

「「!?」」

 

「何だその目は……」

 

 

呆れと驚きと恐怖が交ざったような目で見られ、さすがにこっちも驚く……何でそんな目をされたのか分からないからもあるが、人間ってあそこまで目を見開けるものなんだなって関心してしまった。

 

「軽くって、一夏が謙遜してる訳じゃ無いんだよね……」

 

「そう言えば、見える速さでって言ってましたわね……」

 

「あれくらいの速度で良いなら、いくらでも走れるが?」

 

「もう良いよ……」

 

「一夏さんの身体能力の凄さは分かりましたから……」

 

 

イマイチ納得出来ないが、2人とも自分の未熟さが分かったなら善しとしよう……本当に納得は出来ないがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば一夏」

 

「ん?」

 

「お友達に会いに行くのは何時なのかな?」

 

「明日」

 

「明日!?」

 

 

いつの間にか明日の予定を組まれていた……で、でもこれって一夏と一緒に学園から出かけるって事だよね。

 

「弾が学校終わってからだから、夕方に此処の近くに来てもらう」

 

「あっ、そうなんだ……」

 

「何で少し残念そうなんだ?」

 

「な、何でも無いよ!」

 

 

一夏と一緒に出かけたかったなんて、もし言ったら僕は恥ずかしくて、顔から火が出るかもしれないよー!

 

「近くと言ってもさすがに電車移動はするから、ちゃんと許可は取っておけよ」

 

「一夏も許可取るんだよね?」

 

「生徒会権限で如何にでもなる」

 

「うわ~……」

 

 

噂では生徒会長もハチャメチャらしいけど、副会長の一夏も大概だよ~……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ簪ちゃん」

 

「何?」

 

「いよいよ今週は一夏君の誕生日ね」

 

「そうだね」

 

 

相変わらず、部屋には私とお姉ちゃんしか居ない。一夏も本音も須佐乃男もマドカも虚さんも戻ってこない……今までこんな状況になった事ないから、こっちも緊張してしまう。

 

「今週は実家の用事って事で、碧さんも学園に来るけど、まだ何をするか決まって無いのよね……」

 

「そう言う計画はお姉ちゃんの担当なんだから、頑張ってよね」

 

「私、何時の間にそんな担当になってるの!?」

 

「だって、他にそう言うの得意な人居ないでしょ?」

 

「確かに……」

 

 

本音や須佐乃男は、そう言う計画とか練るの苦手だし、虚さんが計画すると、盛り上がりに欠けるイベントになってしまう……マドカも良い線なんだけど、お姉ちゃんと比べると数段見劣りする……そして私はそもそもこう言うイベント事を考えるのが苦手だ。

 

「一夏君に喜んでもらいたいけど、やり過ぎると怒られそうなのよね……」

 

「ちなみに、今の段階で考えてる事はあるの?」

 

「やっぱコスプレでもして……」

 

「それは止めておいた方が良いと思うよ」

 

「そうかな……虚ちゃんに怒られるかな?」

 

「一夏にも怒られると思うよ……」

 

 

一夏には、セクシャルな攻撃は効かない……と言うか逃げられると思うから止めておいたほうが、私たちのためになると思うんだよね……

 

「でも、須佐乃男と本音とマドカちゃんはやる気満々なんだよね」

 

「お姉ちゃんは?」

 

「私?……出来ればやりたいかな~って思ってるんだけど。あれ?……賛成多数で可決?」

 

「全力で阻止したい」

 

「碧さんも意外とやる気だったし、反対は簪ちゃんと虚ちゃんだけね」

 

「祝われる本人が反対すると思うんだけど……」

 

 

最悪暫く逃げられると思う……一夏にそう言った嫌がらせをするのは可哀想……逃げる方も逃げられる方もダメージが大きすぎるよ。

 

「もう少し時間もあるし、ちゃんと考えてね」

 

「ちゃんと考えたわよ~」

 

「考えてそれなの?」

 

「一夏君以外なら大喜びだと思うんだけどな~」

 

「一夏をそこらへんの男子と一緒にしちゃ駄目!」

 

「そうなのよね~……一夏君が目覚めてくれれば良いのだけど」

 

「でも、今の一夏が一番一夏らしいと思うんだよね、私は」

 

「そうなのよね~……私も今の一夏君が一番好きなのよね~」

 

 

さすが姉妹、好きな男の子の好きな場所まで同じとは……やっぱりお姉ちゃんも今の一夏が一番だって思ってるんだな~……

 

「マドカと一緒に考えてみたら?」

 

「マドカちゃん?……そうね、マドカちゃんなら良いアイディア持ってるかも知れないものね」

 

「分かってるとは思うけど……くれぐれも一夏が嫌がらないものにしてよね」

 

「大丈夫よ~」

 

 

その返事……はっきり言って不安しか感じないんだけど……

お姉ちゃんは、やれば出来る人だけど、やり過ぎると酷い結果にしかならないのも事実だし、マドカもやり過ぎる雰囲気を醸し出してるし……血の繋がった姉である織斑先生を見ても、その推測はたぶん正しいんだろう……これは私も手伝った方が良いのか?

 

「一夏君が喜んでもらえるよう、私とマドカちゃんでしっかりと考えるからね」

 

「決まったら私か虚さんに見せてね。虚さんと私がOKを出したらその案を採用するから」

 

「分かった、絶対にOKがもらえるものを考えるから!」

 

 

その言葉に、一抹の不安を抱きながらも、結局はこの2人に頼るしか無い自分の無力さを感じた……もう少し積極性がほしい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の午後、僕は一夏と一緒に出かける……それだけだと何だかデートっぽいけど、実際は一夏のお友達と会うだけなんだよね……でも、そこから昔の一夏の事とか聞きだせるかも知れないし、今日1日で一夏が僕に興味を持ってくれるかもしれないもんね、頑張って一夏に興味を持ってもらうんだ!

 

「シャルロット、今日はやけに浮かれてるが何かあるのか?」

 

「ううん、何でも無いよ!」

 

 

ラウラに話したらきっと……

 

「何!?兄上と一緒に出かけるだと!私も一緒に行くぞ!!」

 

 

とか何とか言って着いてきそうだから言わないでおこう。

 

「そうなのか……今日は午後から箒たちと出かけるんだが、シャルロットも来ないか?」

 

「ゴメン、僕も約束があるから」

 

「そうなのか、なら仕方ないな」

 

「誘ってくれた事は嬉しいんだけどね……」

 

 

一夏と一緒に出かけられるのに、他に誘われて嬉しい訳無いでしょうが……日本ではこう言う風に本音と建前を上手く使い分けられる人が優秀なんだし、僕ももっと上手く使い分けられるようにしなきゃ。

 

「それにしてもシャルロット……今日は随分と気合の入ってる格好だな」

 

「そうかな……人と会う約束があるから、失礼の無いような格好をしてるからそう思うのかな?」

 

「そんなに礼儀が必要な相手なのか?」

 

「結構厳しいかな……」

 

 

一夏のお友達に会うのが本来の用事なんだけど、正直興味無いんだよね……僕としたら一夏と一緒に出かけられる事の方が大事な用になっちゃったし。

 

「そうか、生きて帰って来いよ」

 

「それはちょっと大げさかな」

 

「むっ、そうなのか」

 

「ラウラはもう少し世間に聡くなろうね」

 

「自分では疎いつもりは無いのだがな」

 

 

ラウラって、本当に天然さんだね……幼い時から軍に居たって聞いたけど、せめて世間の一般常識くらいは教えてあげても良かったんじゃないのかな?

 

「お土産期待して良いぞ!」

 

「僕も何か買ってくるよ」

 

「そうか、それは楽しみだな!」

 

 

この純粋さは本当に眩しく思えるよ。汚れきった僕とは比べ物にならないくらいピュアなラウラと同室なんて……もしかして織斑先生に仕組まれたのかな?

 

「では、私はそろそろ出かけるが、戸締りを頼むぞ」

 

「大丈夫だよ。僕はラウラと違って忘れたりしないから」

 

「そうか、なら安心だな!」

 

 

嫌味で言ったのに気付いてないよ~……やっぱりラウラにはもう少し人間の汚さを教えた方が良いのかもしれない。このままじゃきっと痛い目を見る事になるから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今日、一夏のクラスメイトであるシャルロット・デュノアさんに会うことになっている。昨日いきなり一夏から電話があり、シャルロットさんに俺を紹介してくれると言った。

いったい如何言う風の吹き回しかと聞いたら――

 

「お前が恋路を応援しろって言ったんだろ」

 

 

――って何故か俺が怒られた感じになった……一夏のヤツ、虫の居所が悪かったのか?

そんな訳で、俺は今IS学園近くの喫茶店に向かっている。一夏もシャルロットさんも遠くに出かけるのは色々と手続きがあるらしく面倒なので、俺がIS学園の近くまで行く事で何とか許可を取ったらしいが、まさかそこまで俺に会いたいなんて……これはシャルロットさんも俺の事が好きに違い無いな!

 

「ねえねえあそこの男」

 

「さっきからきょろきょろしてキモイよね~」

 

「あんなのに告られたら死んだ方がマシよね~」

 

 

……お前たちみたいな残念なモブキャラに告る訳ねぇだろうが!第一テメェらだって化粧濃くてキモイんだよ!……って言えたら俺の気持ちはどれだけ楽になった事か、女尊男卑の今、そんな事を言っただけで刑務所いきだもんな……

 

「悪い、待たせたか?」

 

「ゴメンね」

 

「いや、全然待ってませんよ」

 

 

心の中でモブキャラに罵倒していたら一夏とシャルロットさんが向こうから歩いてきた。やっぱりシャルロットさんは綺麗だぜ……だが一夏の隣が妙にしっくり来てるのは気のせいだよな?

 

「見て、あの男の子!」

 

「スゲーカッコいい」

 

「隣の女の子も中々の美少年風ね」

 

「付き合ってるのかしら」

 

「一夏、さっさと移動しようぜ」

 

「ん?……ああ、分かった」

 

 

少し考える間があったが、一夏は俺の言葉に隠された副音声をしっかりと理解してくれた。要するにモブキャラが五月蝿いので此処から動きたかったんだ。

 

「移動も何も、中に入るんじゃないの?」

 

「それも十分移動だろ」

 

「そうかな……でも、一夏が言うならそうなんだろうね」

 

 

シャルロットさんの笑顔が一夏に向けられる……やっぱり一夏は少なからずシャルロットさんに想われてるんだな。だが、俺の方がきっと想われてるに違い無いがな!

 

「さっきからコロコロと表情の変わるヤツだな、お前は」

 

「中々面白い人だね」

 

「そうですか?よければもっとお見せしますよ」

 

「あはは~……ちょっと遠慮させてもらおうかな」

 

 

シャルロットさんが恥ずかしそうに俺から目線を外す……これはゼッテー俺に気があるだろ。

 

「あんまりがっつくなよ」

 

「お前に俺の気持ちは分かんねぇよ!」

 

「分かりたくも無いが」

 

 

一夏は興味無さそうにメニューを見て店員を呼んだ。呼ばれた店員の女の子の顔が赤いのは、きっと俺に見惚れたからに違い無いな!

 

「コーヒーを。弾とシャルは如何するんだ?」

 

「僕はアイスティーとこのシフォンケーキを」

 

「俺はアイス宇治抹茶ラテとモンブランで」

 

「畏まりました」

 

 

店員の女の子は恥ずかしそうにこの場から逃げていった……シャルロットさんが居なかったら、あの子が俺の女神だったかもしれないな……モテる男は辛いぜ。

 

「少し席を外す、後は上手くやれ」

 

「サンキュー、さすが一夏だぜ!」

 

 

小声で一夏は俺にささやいた。

一夏は空気を読んでこの場から離れてくれるらしい……口には出さなかったが、やはり親友の心遣いは身に沁みるぜ。

 

「一夏、何処か行くの?」

 

「ちょっと電話をな。シャルは弾と話しててくれ」

 

「そっか……」

 

「悪いな、それじゃあ弾」

 

「おう、ゆっくりと電話してこい」

 

 

一夏が席を離れてる今、俺はシャルロットさんと2人っきりだ。此処から俺とシャルロットさんの歴史がスタートするんだな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れた席に移動して、店員さんに訳を話してコーヒーをこっちに持ってきてもらい、俺は弾とシャルを観察する事にした。

俺に出来る事は弾とシャルを2人っきりにしてなるべく邪魔をしない事だからな。此処から先は弾の力で如何にかしてもらうとするか。

 

「それにしても……相変わらず目立つ頭してんな~」

 

 

赤毛だけでも目立つのに、更に弾は前髪を上げている。離れてても、顔が見えなくても弾だと判断出来るので、以外と俺と数馬の間では好評なのだが、やっぱり目立つものは目立つのだ。

 

「何話してるのかは聞こえないが、唇を見る限り、弾が1人で盛り上がってるな」

 

 

いざとなったらヘタれる弾の事だ、どうせ何話して良いのか分からなくて、とりあえず何かを話してるってとこだろうな。

 

「散々息巻いて、結局ヘタれるんだよな、弾って……」

 

 

そろそろ戻らないと不自然に思われるので戻ろうと思ったら、2人が居る席の近くに見知った顔を見つけた。

 

「あれは……榊原先生?」

 

 

何をしてるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文化祭が終わって一段落ついたと思ったら、また実家からお見合いを勧められた。しかも、私の知らない間に話が進んでいて、お見合いがあるのを知らされたのが前日だったのだ……まったく、本人抜きで話を進めるのは止めてほしいわね。

 

「あれって確か……織斑先生のクラスのデュノアさんよね?」

 

 

一緒に居るのが誰なのか気になるが、あんまり良い雰囲気では無さそね……

生徒でもこうして休日に一緒に出かける相手が居るのに、私は1人さびしく自棄飲み……しかも最近医者に酒を止めた方が良いといわれて自棄コーヒーをしてるなんて……

 

「本当、寂しい女よね……」

 

 

1人つぶやいて更にコーヒーを煽ろうとしたら、後ろから声を掛けられた。

 

「何してるんですか?」

 

「織斑君!?」

 

「しっ!」

 

 

織斑君は私の口を人差し指で押さえて、耳元で話し始める。

 

「今シャルと俺の悪友があそこに居るんですが、悪友の方がシャルに惚れてるらしいので2人っきりにしてるんです。バレると厄介なので、協力してください」

 

「そうなの……それじゃあ織斑君も私の自棄コーヒーに付き合いなさい」

 

「自棄コーヒーって……コーヒーも飲みすぎると身体に毒ですよ。すみません、オレンジジュースを」

 

 

身体の心配をされ、織斑君はオレンジジュースを頼んだ。こう言う所が女の子の気を引くんだろうな……

 

「それで、先生はまたお見合いですか?」

 

「何故それを知ってるの!?」

 

「何故も何も、夏休みに先生の代わりに合同訓練の指導役したのは俺ですよ。それに、あんまりお見合いに積極的じゃなく、むしろ嫌がってると山田先生から聞きましたし」

 

 

ま、真耶の阿呆がー!

何余計な事を吹き込んでくれてんだこのヤロー!

 

「先生も周りの人のアドバイスを聞いて駄目男に惚れるのを如何にかすればお見合いもしなくて良いんじゃ無いですか?」

 

「それって慰めてるの?……それとも貶してるの?」

 

「ある意味両方ですかね」

 

 

織斑君はあっけらかんと言い放ちコーヒーを飲む……はっきりと言ってくれるのは嬉しいけど、生徒に心配される私っていったい……

 

「そろそろ限界みたいですし、俺は向こうに戻りますね」

 

「そっか……あれ、オレンジジュースの伝票は?」

 

「それは俺が払いますから」

 

「え、でも」

 

「俺が頼んだんですから、気にしないでください」

 

 

織斑君は伝票を持ってデュノアさんたちの席に戻って行った。生徒に奢られるなんて、何か残念な気持ちになるじゃないよ……

織斑君たちも帰るみたいでデュノアさんともう1人が席を立つ……

 

「えっ?」

 

 

織斑君の友人を見た途端、胸がときめいた……彼の事を目で追っている自分に気付き、慌てて首を振る……その事を織斑君に見られ、首を傾げられた。

確かデュノアさんに気があるって言ってたけど、あの様子じゃ如何やら駄目だったようね。と言う事は、彼に今恋人は居ないって事よね。

 

「今度、織斑君に詳しい事を聞いてみましょう」

 

 

私は織斑君たちが店を出てから立ち上がり、会計をするためにレジに向かった。だが……

 

「お会計は済んでいますよ」

 

「え?でもコーヒー代は……」

 

「そっちも一緒でと先ほどの男性が」

 

 

……生徒に全額奢られたって事よね。

今度彼の事を聞く時にお金返そう……そう思いながら学園に戻った。




公式で駄目男を好きになる榊原先生が弾を……しかし弾は勘違い中でシャルが自分に気があると思い込んでいる……この三角関係、誰か見たいのか?当分は書くつもりは無いですが、それとなく続いていく感じで……
次回はついに一夏の誕生日回です。もしかしたら番外編も書くかも……

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