もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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新たなフラグ……らしきものを建てました


打ち上げと罰

一夏君と一緒に寝たはずなのに、目が覚めると隣には一夏君の姿は無かった。

 

「夢……だったのかしら」

 

 

自分でつぶやいたこの一言を、自分で否定する根拠を、私は持ち合わせていた。微かにだが、私の隣には一夏君の匂いがするのだ。

 

「なんか、いい匂いがする……」

 

 

半覚醒の頭でも分かるいい匂い……その匂いに釣られるように足がキッチンに向かう。

 

「一夏君?」

 

「何ですか、刀奈さん」

 

 

キッチンには一夏君が居た。昨日、あれだけ疲れていた一夏君だが、眠った事で回復したのだろう。

 

「もう起きて平気なの?」

 

「怪我した訳では無いですし、普段より多めに寝たのでもう平気ですよ」

 

 

口では平気って言ってるけど、まだ少し辛そうに見えるのは、私の気のせいだろうか……朝食を作る一夏君の姿に、私は少し不安になった。

 

「今日は起きるの早いですね、まだ6時を少し過ぎたくらいですよ」

 

「私も昨日は早く寝たからね」

 

「すみませんでしたね、如何やら刀奈さんのベッドで寝てしまったようで」

 

「ううん、別に気にしないで」

 

「刀奈さんが良いのなら、俺はそれで良いんですがね」

 

「一夏君と一緒に寝れたしね。私はお礼を言いたいくらいよ」

 

「そうですか……」

 

 

一夏君は何かに気付いたように、ゆっくりと私から視線を外した……何に気付いたのだろう……一夏君が見ていたであろう視線を辿ってみると……

 

「ありゃ、胸元がはだけてるや」

 

 

一夏君は意外と初心なので、素肌が見えると気まずくなって視線を外すんだよね~。

 

「見たくないの?」

 

「何をですか?」

 

「いや、一夏君くらいの年頃なら、普通は見たがると思ってたんだけど」

 

「他が如何なのかは知りませんが、俺はそんなに見たいとは思いませんよ」

 

「そっか……ねえ一夏君」

 

「何ですか?」

 

 

聞こうか聞くまいか悩んでたが、これ以上悩むのも色々問題なので、この際一夏君にはっきりと聞いておこう。

 

「私って、そんなに魅力無いかな?」

 

「……それが刀奈さんの聞きたい事ですか?」

 

 

一夏君は、数秒固まった後、そう聞いてきた。

 

「だって一夏君、あんまり構ってくれないでしょ?それって、私に魅力が無いからなのかなっておもってさ」

 

「はぁ……」

 

 

一夏君は調理の手を止め、私の方に向き直った……視線は普段よりだいぶ上だが。

 

「刀奈さんは十分魅力的だと思いますよ。それこそ、クラスメイトとは比べ物にならないくらいに」

 

「じゃあ、何で私に興味を示してくれないの?本音や簪ちゃんとはあんなに仲良いのに……」

 

「興味は持ってるつもりなんですがね……それに本音や簪は同い年ですから接しやすいんだと思いますよ。多分敬語を使ってるから距離があると感じてるんだと思いますが」

 

 

確かに一夏君は、私と虚ちゃんには基本的には敬語で接している。学校では先輩だけど、普段は彼女なんだから、敬語を止めてほしいってお願いしてるのに、一夏君は普段から私と虚ちゃんには敬語なのだ。

 

「今だって一夏君は敬語だし……」

 

「そんなに距離、感じる必要は無いんですがね」

 

「でも!」

 

「刀奈さんや虚さんが気にしすぎなんですよ。俺は他の彼女同様、刀奈さんや虚さんの事も大事に思ってますよ」

 

 

一夏君は私の目線まで自分の目線が下がるように屈み、言い含ませるように優しい口調で大切だと言ってくれた。

 

「大切に思ってくれてるのは嬉しいけど、一緒に寝たんだよ?何か無いの?」

 

「……何かとは?」

 

 

一夏君は微妙に目線を逸らし、分からない振りをして、この話題から逃げ出したいと思ってるのがバレバレな態度で何とか言葉を紡いだ。

 

「性的興奮したとかさ」

 

「……刀奈さんも女の子なんですから、そう言った発言をするのは如何かと思うんですが」

 

「答えて」

 

「……それなりに思うことはありましたが、それに直結するかと言われれば如何なんでしょう。生憎そう言う事に疎いもので……」

 

「そっか……一夏君でも興奮するんだね」

 

「刀奈さんは、いったい俺を何だと思ってるんですか」

 

「だってさ~……」

 

 

一夏君はこれだけ女の子に囲まれてるのに、しかも年頃の男の子なのにもかかわらず、誰1人ちょっかいを出すこと無く生活しているのだ。もし、私たちと付き合って無かったら、そっちの気があるんじゃ無いかって疑ってたかもしれない……

 

「前にマドカにも言われましたが、間違ってもそんな事は無いですからね」

 

「じゃあ、何時かはしてくれるの?」

 

「……少なくとも在学中は無いです」

 

「そっか……早く卒業したくなっちゃったな♪」

 

「もう良いですか?そろそろ調理を再開したいんですが」

 

「もう良いよ、ゴメンね、邪魔しちゃって」

 

「いえ、邪魔って事は無いですよ」

 

 

一夏君はそれだけ言って私から視線を外し、再び朝食作りに集中し始めた。でもそっか、一夏君でも興奮したり、気まずくなって視線を外すなんて事もあるんだな~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普段なら、お兄ちゃんと一緒に校内を走ったり、アリーナを使ってのIS訓練などをするんだけど、今日はお兄ちゃんが寝ているので軽めなメニューで終わらせる事にした。

 

「お兄ちゃんでも疲れる事、あるんだな……」

 

 

昔の記憶でも、お兄ちゃんが疲れてるなんて1回も無かった……それがあそこまで疲労困憊になるなんて、いったい何があったんだろう?

 

「襲撃者が居たって噂だけど、それが誰かはまったく分からないんだな……」

 

 

あの時、お兄ちゃんが教われてただろう時間に、私は須佐乃男と一緒に居た。つまり、相手がIS使ってた場合、お兄ちゃんは生身でその相手と戦ったって事になるんだよな……そりゃお兄ちゃんでも疲れるよね。

 

「でも、何処も怪我してないって事は、ISを使ってないのかな?」

 

 

如何やら学園側から緘口令が布かれたようで、何時、何処で、どの様に襲われたのかの一切が詳しく説明される事は無かった……襲われたお兄ちゃん本人と、生徒会のメンバーだけは知っているようだが、それを聞こうとしても教えてはくれないだろうな。私たち普通の生徒は、お兄ちゃんが何者かに襲われたと言う事しか知らされてなく、相手を撃退したとしか聞いていないのだ。

 

「アイツも知ってるみたいだけど、絶対に聞きに行くもんか」

 

 

教師であるアイツなら、詳しい事情を知っていてもおかしくは無いが、アイツに聞くくらいなら、知らない方がマシだ。

 

「須佐乃男も、何か知ってるみたいだったし、後で聞いてみようかな」

 

 

生徒会メンバーでは無いが、須佐乃男はお兄ちゃんと特別な関係なので、色々事情に精通しているのだ。よし、部屋に戻ったら須佐乃男に聞いてみようっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知りませんよ」

 

 

マドカさんが部屋に戻ってくるなり、一夏様が襲われた時の状況を教えてくれと言ってきました。私だって、何でも知ってる訳では無いのですが……

それに、一夏様から絶対に誰にも言うなと言われてますし、それでなくても学園側でも緘口令を布いている案件です。一夏様から止められて無くとも、そう簡単に話せる内容では無いんですよね~。

 

「だって須佐乃男、何か知ってるような口ぶりだったじゃん!」

 

「さて、何の事ですか?」

 

「惚けないでよ!」

 

 

よっぽど知りたいのか、マドカさんは徐々にヒートアップしてきます。そんなに騒ぐと一夏様に怒られますよ~。

 

「別に惚けてる訳では無くって、本当に知らないんですよ」

 

「嘘吐いてない?」

 

「嘘は吐いてませんよ」

 

 

実際のところ、詳しい事情は本当に知らないのですが、ある程度の事なら一夏様から教えられていますが、それはマドカさんだけには知らせるなと、一夏様から散々念を押されているので、間違ってもマドカさんに話す事は出来ないのです。

 

「何を騒いでるんだ?」

 

「お兄ちゃんが襲われた時の状況を、須佐乃男が知ってるんじゃないかって思って問い詰めてたの」

 

「終わった事を蒸し返すのは良くないぞ。何より面倒だ」

 

「そっちが本音ですね、一夏様……」

 

 

一夏様は普段は真面目に仕事なり授業なりをこなしますが、面倒な事はとことん嫌い、なるべく関わりたくないと言っているのです。今回も、説明するのが面倒なので、学園に緘口令を布かせたのでは無いかと、密かに疑っているのですが、中々詳細を掴む事が出来ないのです。

 

「兎も角、終わった事を蒸し返すなよ。いくらマドカとはいえ、容赦しないからな」

 

「うん、分かった……」

 

「なら良い。そろそろ出来るから、とっとと着替えてろ」

 

 

一夏様は、マドカさんにプレッシャーをかけてキッチンに戻って行きました。そのプレッシャーを感じてなのかは分かりませんが、本音様が目を覚ましました。

 

「あれ、本音が起きてる」

 

「誰が起こすか決めようと思って来たのに」

 

「起きてる分には問題は無いですがね」

 

「私だって偶には自分で起きるよ~」

 

 

本音様は何かを探すようにキョロキョロと視線を動かしていましたが、楯無様、簪様、虚様に立て続けに言われ、その行為を中断して自力で起きたと文句を仰いました……おそらく自力ではなく一夏様の所為で起きたんだと思いますよ……

 

「それじゃあ着替えましょうか」

 

「私はシャワー浴びてくる」

 

「もう少し寝てたかったな~」

 

「一夏さんの朝食がいらないのなら寝てても良いですよ」

 

「その分、私たちが食べるから」

 

「私もおりむ~のご飯食べたい!」

 

 

目をこすりながら眠そうにしていた本音様が、虚様と簪様の脅しで一気に目覚めました。やはり一夏様のご飯と言うのは、本音様を起こすのに最適なアイテムなのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文化祭も終わり、週末だけど屋敷に戻ってないので、私たちは今、暇を持て余している。こんな日に限って、生徒会の仕事は一夏君と虚ちゃんが終わらせちゃってるし、訓練したいけど一夏君が心配だから頼めないしで、特にする事無く部屋でごろごろしているのだ。

 

「簪ちゃん、何か面白い事無いの~?」

 

「大人しく本でも読んでれば?」

 

「本ね~……何か面白いものある~?」

 

「お姉ちゃんの趣味に合うか分からないけど、こう言うのは如何?」

 

 

簪ちゃんが手渡してきたのは所謂純愛モノ、王道ラブストーリーの本だった。簪ちゃんってこう言うの読むんだ……知らなかったわね。

 

「活字は読んでると飽きるのよね~」

 

「それじゃあ本音が持ってる漫画でも借りれば?」

 

「その本音は、須佐乃男とマドカちゃんと一緒にどっか行っちゃてるからね~」

 

「クラスの打ち上げだって言ってたよ」

 

「打ち上げね~……それじゃあ一夏君も一緒なのかな?」

 

「一夏はラウラと箒に注意するって織斑先生と職員室に居るはず」

 

「一夏君も大変ね~」

 

 

昨日あれだけの事をして、今日は今日でクラスメイトを説教するんだから。

 

「やっぱり暇~!」

 

「それじゃあ虚さんでも手伝いに行けば?」

 

「虚ちゃんって何してるんだっけ?」

 

「舞台の解体作業の監督をしてるはず」

 

「それもあんまり面白そうじゃないわね~」

 

 

解体作業って言っても、ぶっ壊すなら面白いけど、地味に1個1個壊してくんじゃ面白味も何にも無い。

 

「それじゃあ大人しく寝てれば?」

 

「一夏君と一緒が良い」

 

「それは昨日だけの特別でしょ」

 

「じゃあ、簪ちゃんと一緒でも良いよ?」

 

 

偶には姉妹のスキンシップも必要だしね。

 

「私は本を読むので忙しいから、寝るんなら1人で寝てよ」

 

「最近簪ちゃんが冷たい」

 

「お姉ちゃんが暑苦しいだけでしょ」

 

 

こうして、せっかくの休日も無為に過ぎていく……平和なんだろうけど、平和過ぎるのも暇なのよね~……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂で打ち上げが行われているのですが、最優秀に選ばれた一番の立役者である一夏様は不参加と言う、なんとも盛り上がらない打ち上げになっています。

 

「織斑君が居ないと、イマイチ盛り上がらないわね」

 

「ねぇ本音、織斑君を呼べない?」

 

 

相川さんと夜竹さんが、本音様に一夏様を呼べないか確認を取りますが、本音様はケーキを食べるのに夢中で聞いていません……少しは落ち着いて食べたら如何なのでしょうか、誰もケーキは摂りませんよ。

 

「須佐乃男でも良いけど、織斑君を呼ぶ事は出来ないの?」

 

 

クラスの中で、多分一夏様の次に落ち着いている鷹月さんが冷静な声で私に確認してきました。やはり鷹月さんは落ち着いてますね~。

 

「恐らく無理だと思います。一夏様は今、職員室で指導中でしょうから」

 

「指導?……そう言えば篠ノ乃さんとボーデヴィッヒさんの姿も見えないわね」

 

「オルコットさんとデュノアさんも居ないよ~?」

 

「箒さんとラウラさんは、一夏様と千冬様に注意されてます」

 

「デュノアさんとオルコットさんは?」

 

「その2人は……」

 

 

私にも分からないんですよね~……一夏様に本気で怒られ、その後に千冬様に怒られたのでは、人間恐怖症になってもおかしく無いと思いますし、今日と明日は部屋から出てこないのではないのでしょうか。

 

「お兄ちゃんに怒られるなんて、そう簡単に経験出来る事じゃ無いよ」

 

「出来れば経験しないで過ごしたいですがね」

 

「確かに、織斑君は怒ると怖そうだもんね~」

 

「文化祭の時に少し怒ってたけど、あれって本気なのかな?」

 

 

相川さんが言っているのは、教室で騒いでいた鈴さんと五反田兄妹の事なのでしょう。確かに一夏様は怒ってましたが、あれは如何考えても本気では無いですよ……一夏様が本気で怒ると私でも一夏様の動きについていけませんからね。

 

「おりむ~の本気なんて、私でも見たこと無いよ~」

 

「私も……お兄ちゃんが本気で怒る所なんて見たこと無い」

 

「私は1度だけ……あれは凄まじいものでした」

 

「そっか……織斑君を怒らしちゃいけないのね」

 

「説教くらいなら大丈夫ですが、本気で怒ると雷ではなく大噴火ですからね……」

 

 

夏休みに千冬様に怒った時には、一夏様は記憶をなくすくらい本気で怒ってましたし、その後は反動でまともに動くことができませんでしたから……噴火するのにもエネルギーが必要なんでしょうね。

 

「一夏様の体調を考えると、できるだけ怒らせない方が良いんでしょうが……」

 

「普段から問題を抱えてるからね……」

 

「クラスにも、そして部屋にもだもんね~」

 

「問題児の最たる貴女が言いますか……」

 

「おりむ~にとって、問題児はむしろシャルルンたちだよ~しーちゃん」

 

「デュノアさん?」

 

 

クラスメイトの方々は、シャルさんたちの昨日の行動を知らないようで、優等生で通っているシャルさんが問題児扱いされているのが不思議のようでした……最近は問題行動が多かった気がしますがね。

 

「お兄ちゃんの魅力に取り付かれ、お兄ちゃんの逆鱗に触れた愚か者だ」

 

「織斑君の逆鱗?」

 

「何だか怖そう」

 

「キヨキヨもサユユンもおりむ~の逆鱗だけは気をつけた方が良いよ~」

 

「一夏様に魅了されるのも気をつけた方が……手遅れですね、はい」

 

 

この学園の女子の殆どが一夏様に魅了されていると、この前黛様から聞きましたし、クラスメイトに当てはめても、そのデータは正しいと思えるものでした。

 

「昨日居た、織斑君のお友達……何か下品な感じがしたよね~」

 

「ああ、あの赤毛の男の子でしょ?」

 

「何で織斑君とあんなのが友達なんだろうね?」

 

「でも、結構優しそうだったよ?」

 

「えぇー!」

 

「かなりのシスコンっぷりだったよ」

 

 

一夏様のお友達で、シスコンで下品な赤毛の男の子となると……ひょっとしなくても五反田弾さんの事でしょうね……本人が居ないのに、此処まで貶される――しかも弾さんの事を殆ど知らないのに、推測で貶されるとは……一夏様では無くともこう思います

 

哀れだなって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回はこれで許してやるが、もう1回同じ事をしてみろ。今度はあの2人のようになるからな!」

 

「「すみませんでした!」」

 

 

職員室での厳重注意――そう言う名の説教――が終わり、私はラウラと共に職員室から出て行く。

途中までは一夏も一緒に説教してたんだが、あの2人に反省をさせるためにグラウンドを走るよう命令した千冬さんに監視を言われて外に出て行ってしまったのだ……しかし反省のために走らせるとは、千冬さんって結構体育会系なんだな。

 

「教官に怒られるのは久しぶりだったな」

 

「私は1学期に散々怒られたぞ」

 

「兄上にしつこく迫ってたからだろ。今のシャルロットみたいに」

 

「あそこまでは酷くなかった……はずだ」

 

 

自分の行動なんだが、イマイチ言い切れるだけの自信が無い……あそこまで一夏を怒らせてないから、私はシャルロットよりマシなんだよな?

 

「兎に角、これ以上兄上と教官に迷惑を掛けないようにしないとな」

 

「私も説教はこりごりだ」

 

 

反省のために走らされている2人は如何なったんだろう……ちょっと興味があるので見に行ってみるか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後15周!」

 

「死んじゃうよ!」

 

「もう……限界ですわ……」

 

「止めても良いぞー、後で織斑先生にバレてもっと酷い罰を受けたいのなら」

 

「僕頑張る!」

 

「限界は超えるためにあるのですわ!」

 

 

織斑先生からグラウンド30周を言い渡され、漸く終わりが近づいてきたと思ってたら、まだ15周も残っていた……一夏が居なきゃテキトーに誤魔化して終わらせる事も出来たんだけど、それをする可能性を見抜かれていたんだろうな……

 

「兄上!」

 

「ん?……ラウラに篠ノ乃、もう説教は終わったのか?」

 

「もうって……あれから何時間経ったと思ってるんだ」

 

「確かに……それで何の用だ?お前たちも走るのか?」

 

「私たちは、次に何かしたらこうなるんだ。って言う姿を見に来たんだ」

 

 

箒とラウラが僕たちを戒めに、これからは真面目になるらしいけど、実際に体験しないと反省なんて出来ないと思うんだけどな……

 

「でも、これは軽い罰だろうな」

 

「そうなのか?」

 

「あの織斑先生が、『高々30周』で満足するとも思えんからな」

 

「お前たち姉弟と一緒にするな……我々には30周は『高々』では無いぞ」

 

 

一夏と箒が普通に話している……一夏は、まだ少し距離を取ってる感じがするけど、それでも1学期と比べれば相当仲良くなってるんだろうな。

 

「そうだ、シャル」

 

「な、何?」

 

「お前が気になってるって言う男が居るんだが、興味あるか?」

 

「それって!」

 

 

ひょっとして一夏なの?もしそうなら喜んで付き合うよ!

 

「俺の友達なんだが、会ってみる気無いか?」

 

「それって昨日の?」

 

「ああ」

 

「そっか……会うだけなら」

 

「なら、今度の休みに」

 

 

一夏は携帯を取り出して誰かに電話をし始める……これって楽するチャンスなのでは。

僕は少し内側を走ろうとしたが、一夏からの鋭い視線ですぐに大外を走る……まったく隙が無いよ~。




弾救済イベント発生、さて……どうしよう

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