もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

110 / 394
また7,000字を越えてしまった……


一夏の過去と真実

昨日は結局ベッドを占領されてしまったので、寮のラウンジで寝た。

いくら彼女たちとは言え、女の子が寝ているベッドに入る勇気は無い。

 

「さすがに寝不足か……」

 

 

朝の自主練をしながらあくびをかみ殺す。

ソファーで寝たので寝つきが良くなかったのだ。

 

「無理しないで、誰かのベッド使えば良かった…」

 

 

部屋には別のベッドもあるので、それを使っても良かったのだが、使ったのがバレたら、使われなかったメンバーに何か言われそうだったので止めた。

今日の訓練は大丈夫なのだろうか?

 

「昨日誰が連携訓練をしたのかは知らないけど、きっと残ってるんだろうな…」

 

 

初日のメンバー以上に大変なメンバーが待ち構えてると思うと今から疲れてくる。

誰かを贔屓する訳にもいかないし、かと言って厳しくしたら後で何か言われるかもしれない。

 

「考えてもしょうがないな…」

 

 

あまり考え込んでも良くないので、もう1周走ることにした。

これで少しは気が紛れれば良いんだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり一夏か」

 

 

何者かの気配を感じて外に出てみれば、そこには一夏が居た。

昨日1日束に付き合ってたので、私の一夏分は枯渇寸前だったのだ。

 

「一夏、お前はお姉ちゃんが守るからな…」

 

 

ここ数日感じている嫌な気配が、一夏に及ばないようにしなければ…

これ以上一夏に問題を背負わせるわけにも行かないのだ。

 

「それにしても…一夏はカッコいいな……」

 

 

前に黛から没収した一夏の隠し撮り写真を眺めながら昨日を過ごしたのだが、やはり本物の方が私をドキドキさせる。

もし弟じゃ無かったら襲ってるかもしれない…

 

「いや、弟でも襲いそうなんだが…」

 

 

コレでは私が変態みたいじゃないか!

私は変態ではないぞ!

一夏がカッコよすぎるのがいけないんだ!

 

「……これじゃあ責任転嫁だよな…」

 

 

冷静に考えれば私の思考は変態だと思われても仕方ない事を考えてるのだ。

弟相手に興奮する、完全な変態だろう…

 

「でも、一夏相手に興奮しない女など居ないだろうな…」

 

 

現に一番興奮しないだろう相手、姉である私がこうして一夏に興奮してるんだから。

免疫が一番あるであろう家族、しかも唯一の家族であるこの私を興奮させる一夏の魅力…

 

「このままではイカンな……」

 

 

思考が危ない方向に進みつつある事を自覚し、軽く頭を振る。

いくらカッコよくとも、一夏は私の弟だ。

その事実は変わらない……

 

「もしアイツが一夏を見たら如何思うのだろうか……」

 

 

私は、一夏が知らないもう1人(……)の家族の事を思う…

私によく似たアイツの事だ、きっと一夏の事を好きになるだろうな…

 

「さっきから隠れて何してるんですか?」

 

「!?」

 

「そんな驚かれても…」

 

「何だ真耶か……」

 

「その反応は酷くないですか!?」

 

「お前がこっそり私の背後を取るからだろ」

 

「さっきから居ましたよ?」

 

「そうなのか?」

 

 

考え込んでたからだろうか…真耶の接近に気付かないなんて…

こんなんじゃ一夏を守る所じゃないな…

 

「そう言えば、織斑先生の携帯が鳴ってましたよ?」

 

「そうか」

 

 

私に連絡を取ろうとする相手など1人しか居ないからな…

何の用かは知らないが、朝からアイツの相手などしたくないのだ。

 

「真耶はそんな事を知らせに来たのか?」

 

「いえ、偶々早くに目が覚めたのでゆっくり散歩でもと思いまして…」

 

「学園の中で散歩?大方の場所は知ってるだろ」

 

「朝早くの光景はあまり知りませんし…」

 

 

……怪しい…

まず真耶が早起きしてるのが怪しすぎる。

寝起きがあまり良くない真耶は、基本的に7時過ぎまで寝ている。

それが今日に限って5時前に目を覚ますなんて怪しすぎるぞ…

 

「な、何ですか?」

 

 

それに如何して此処に来たんだ?

此処は一夏の自主練が見られる絶好のポジションだ。

一夏に気取られないギリギリの範囲で、ギリギリ一夏を見れる唯一の場所。

そんな場所に来るのは私くらいだと思ってた…

 

「まさか真耶…貴様も一夏を見に来たのか?」

 

「な、何の事ですか!?」

 

「貴様如きに一夏のカッコいい姿など見せん!」

 

「そんな!?」

 

「やはりそれが目当てか!!」

 

「あっ!」

 

 

真耶が白状したので、此処はお仕置きと行かなくてはな…

一夏を狙う不届き物は、この私が始末してくれる!

 

「何騒いでるんだよ、朝っぱらから…」

 

「あっ!一夏君」

 

「貴様!どさくさ紛れに一夏と呼んだな!!」

 

「五月蝿いぞ!まだ寝ている生徒が居るんだ!!」

 

「はい!スミマセン!!」

 

 

一夏に怒られ素直に謝る。

どうも一夏には逆らえないのだ……

 

「さっきからコソコソと何の用だ?」

 

「気付いてたのか!?」

 

「わ、私は別に…」

 

「貴様!」

 

 

真耶が良い逃れようとしているのを睨んで責める。

だが、真耶は私を見ないようにしているのだ。

 

「誤魔化してもバレてるので無駄ですよ」

 

「あう……」

 

「ふっ、一夏を誤魔化そうとしても、真耶如きでは無駄だろうと思ってたさ」

 

「何でアンタが偉そうにしてるんだよ」

 

 

一夏に殴られ目の前に星が現れる。

よく漫画などである表現だが、強い衝撃を受ければ実際に目の前に星が現れる事があるのだ。

 

「痛いぞ一夏…」

 

「ずっと隠れて人の事見てるヤツを殴って何が悪い」

 

「気付いていたのか!?」

 

「寧ろ気付かれてないと思ってたのか?」

 

 

一夏は一気に呆れ顔になった。

そんな一夏も良い……ではなく!

 

「いったい何時から気付いてたんだ!」

 

「最初から気付いてたに決まってるだろ」

 

「な、何だと……」

 

 

気配も殺して、一夏の気配散策範囲からも外れているこの場所に居たのに、何故気付かれたのだろうか?

もしかして、一夏もお姉ちゃんの事をコッソリと見てるから、お姉ちゃんがコッソリ見てるのを知ってたのか?

 

「何気持ち悪い事考えてるんだよ」

 

「何が気持ち悪いんだ!」

 

「アンタの考えがだ!」

 

 

おもわず反論したが、それ以上の強さで反論されてしまった。

 

「アンタの事は、あそこからでも見えるんだよ。アンタだけが俺の事を見えてる訳じゃ無いんだから、それくらい分かれ…」

 

「そうか…」

 

 

単純に一夏も私の事が見えていたのか…

よく考えれば分かる事だった。

一夏は私以上に視力が良く、視界も私より広い。

その一夏が私の事を見つけるなど簡単な事だったのだ。

 

「それから、さっき黛先輩がどうのこうのって考えてたが、その写真もコッチで没収するからな」

 

「そ、そんな~」

 

「やっぱこの姉弟は互いの思ってる事が分かってる?」

 

「山田先生」

 

「はい?」

 

「コイツの思考は顔に出ますから、嫌でも分かります」

 

「私には顔の変化など分からないんですが…」

 

「そりゃ一夏以外には見抜けない変化だからな!」

 

「威張るな!」

 

 

真耶相手に胸を張って自慢したら一夏に殴られた。

だってお姉ちゃんの変化は一夏以外に気付かれないのだぞ?

 

「それから、山田先生も随分前から俺の事を覗き見してますよね?その事はチョッと詳しく教えてほしいのですが?」

 

「あ、ああ……」

 

「ふん!貴様は自業自得だな!!」

 

「アンタも黛先輩から脅し取ったフィルム、出してもらうからな!」

 

「そ、それだけは!」

 

 

まだ実家の一夏アルバムに貼ってない写真だってあるのだ。

それだけは死守しなくては!

 

「ああ、そのアルバムなら此処にあるぞ」

 

「此処?」

 

「ああ、学生寮に」

 

「何で…あれは実家の私の部屋の箪笥の裏に……」

 

「なるほど、箪笥の裏ね」

 

「!?騙したのか!」

 

「ブラフに引っかかったアンタが悪い。アルバムは処分させてもらうからな」

 

「待て!せめて最近のだけにしてくれ!昔のは!昔のだけは勘弁してくれ!!」

 

「昔の…?アンタ、昔の写真は無いって言ったよな?」

 

「あ、ああ……」

 

 

1つ失敗すれば、それに連なり他のものも失敗する。

昔誰かに言われた言葉を、私自信が体験する事になるとは……

 

「昔っていったい何時のだ!言え!!」

 

「……それだけは言えない」

 

「何でだ!!」

 

「織斑君、落ち着いて!」

 

「貴女には関係無い!!」

 

「ッ!?」

 

「あ……」

 

 

急に一夏の興奮が冷めたのが分かった。

一夏が真耶に八つ当たりしてしまったと自覚したからだ。

一夏は自分自身の力が、他人を傷つけるには十分過ぎると知っている。

だから普段は他人に厳しくあたる事はしないのだが、興奮していたため、真耶にキツクあたってしまったのだ。

 

「スミマセン……」

 

「いえ、私こそ…」

 

「一夏、何処かで頭を冷やしてこい」

 

「ああ、そうする……」

 

 

一夏を落ち着かせるためには、この場所から離した方が良い。

冷静になれば普段の一夏に戻ってくれるだろうからな…

 

「真耶、私からも謝る、すまなかった」

 

「い、いえ!本当に大丈夫ですから」

 

「だが震えてるぞ?」

 

「え?」

 

 

私に指摘され気付いたのか、真耶は自分の身体を抱きしめた。

振るえを止めようとしているのだろうか?

 

「け、今朝は寒いからですよ…」

 

「寧ろ暑いくらいだぞ」

 

「あう~…」

 

 

誤魔化そうとして失敗した真耶が、おかしな言葉を発して項垂れた。

せめてもっとましな誤魔化し方は無かったのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やってしまった…」

 

 

どうも興奮すると自分を上手くコントロール出来ない…

千冬姉にあたるならまだしも、山田先生にあたってしまうなんて…

 

「顔合わせ辛いな…」

 

 

完全に俺に脅えている感じだったしな…

学園の、しかも自分のクラスの副担任を脅えさせるなんてなぁ…

 

「今日の訓練、如何しよう…」

 

 

まだ時間が有るとは言え、訓練のためにアリーナに行けば、絶対に山田先生に会ってしまう。

俺は良いが、山田先生が脅えてまともに訓練出来なかったら大変だ…

 

「学園では自分を抑えてたんだがな~……」

 

 

千冬姉が昔の写真なんて言うからだろうか?

俺自身に小1以前の記憶は無い。

普段は思い出したいとは思わないのだが、少しでも可能性があると知りたくなってしまうのだ。

千冬姉の言う昔の写真が小1以前のものか如何かも定かでは無いのに詰め寄ってしまったのは、あの人は昔の写真は持ってないと言ってたからだ。

 

「何時の写真なのかは知りたかったな…」

 

 

もしかしたら親でも写ってるかもしれないし。

子供を捨てて自分たちだけ幸せになろうとした親なんて興味は無いが、顔くらいは知っていても良いと思うのだ。

もし、現れたらぶっ飛ばせるからな。

 

「でも、現れるなら千冬姉がモンド・グロッソで優勝した時に現れるか…」

 

 

大会の優勝賞金はハンパ無いものだったし、金目当てで擦り寄ってくる自称親戚の数も多かったからな…

 

「あの中に親が居ても、俺は気付かないんだよな…」

 

 

記憶が無い俺に、実の親の顔を見抜けと言われても無理なのだ。

まあ、もし居たら千冬姉がぶっ飛ばしてるだろうから分かったんだろうが…

 

「いくら姉とは言え、勝手に部屋を物色したらマズイよな…」

 

 

写真の在り処は分かってるのだが、俺に姉の部屋を物色する変態的趣味は無い。

 

「でも、何で千冬姉はクローゼットって言わないんだ?」

 

 

あの人はキッチンも台所と言う。

まあ、間違っては無いが如何も古臭い…

 

「クローゼットの裏っていったい何処だ?」

 

 

壁の隙間にでも隠してるのだろうか?

わざわざ板を買ってきてスペースを誤魔化してまで?

 

「あの千冬姉に限って、それは無いな…」

 

 

究極の無精者である千冬姉がそんな苦労までして物を隠すとは思えないしな…

 

「とりあえず、山田先生に謝らなければ」

 

 

考えても仕方ない事は一旦忘れて、まずは山田先生に謝らなければな!

そうと決まればさっさと行動しなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真耶、少しは落ち着いたか?」

 

「ええ、もう大丈夫です」

 

 

一夏が去ってから暫くして、漸く真耶の振るえは収まってきた。

それにしてもあの一夏の剣幕…原因は私だよな…

昔の事は一夏の前では禁句だった…

 

「本当にすまなかったな」

 

「いえ、織斑先生の所為では無いですから…もちろん織斑君の所為でも無いです」

 

「いや、私の不注意が原因だ」

 

「不注意…ですか?」

 

 

真耶が不思議そうに首を傾げた。

まあ、真耶になら言ってもいいだろう。

 

「真耶は、一夏が昔の事を覚えて無い事は知ってるか?」

 

「いえ、初めて聞きました」

 

「そうか…」

 

 

知ってるものだと思ってたが、真耶は知らなかったのか…

 

「それって記憶喪失ってやつですか?」

 

「そこまで大げさな事じゃ無い。一夏は小1以前の記憶がスッポリと抜け落ちてるのだ」

 

「それって大変な事ですよ!?」

 

「親に捨てられたショックからかは知らないが、親の顔、幼稚園の思い出などが完全に一夏の記憶から消えている。覚えていたのは自分の名前と、姉である私の事だけだった」

 

「………」

 

 

言葉が出ないのだろう。

親が居ないとは言っていたが、捨てられたとは言ってなかったからな。

 

「一夏は始めこそ思い出そうとしたが、次第に興味を失って気にしなくなった」

 

「自分の親の事なのにですか?」

 

「その責任を放棄したんだ。一夏が忘れてしまったのは都合が良かった」

 

 

下手に覚えていたら寂しがったかもしれないからな…

 

「それから私は一夏に昔の事を思い出させないようにしたのだ」

 

「そうだったんですか……」

 

「だが、さっきの昔の写真と言った事で、一夏が知らない事のヒントがあるのかもと思わせてしまったのだ」

 

「それであんな剣幕で詰め寄ってたんですね…」

 

「ああ…一夏には悪いが、アレは一夏が知らなくて良い事だからな」

 

「…千冬さんってちゃんとお姉ちゃんなんですね」

 

「何?」

 

 

真耶が何を言ってるのかが分からない。

私は前からちゃんとお姉ちゃんだぞ?

 

「弟さんの事を気遣って、自分だけが傷つこうとするなんて、素敵なお姉ちゃんですよ」

 

「真耶……」

 

「千冬さん?……い、痛いです!」

 

「私は身内ネタで弄られるのが嫌いだ!」

 

「今は良いじゃないですか~!」

 

 

しんみりとしてしまったので、真耶を弄って場の空気を変える。

こんな空気は苦手だからな……

 

「織斑先生…」

 

「ん?……一夏!?」

 

 

名前を呼ばれて振り返れば、そこには一夏が居た。

いったい何時から!

 

「チョッとお時間よろしいですか?山田先生も一緒に…」

 

「あ、ああ…」

 

「私も平気です…」

 

 

一夏が敬語で我々に接している。

少なくとも姉としてでは無く、教師としての私に用があるのだろう。

今の話は聞かれてないよな?

 

「さっきは本当にスミマセンでした!」

 

「ん?」

 

「もう、平気ですよ」

 

 

何だ、さっきの謝罪だけか。

と言う事はさっきの話は聞かれてないって事だよな…

 

「謝って許されるとは思ってません」

 

「本当に平気ですよ。織斑君も気にし過ぎですよ」

 

「ですが…」

 

「一夏、真耶がこう言ってるんだ。お前も気にするな」

 

「元はと言えば千冬姉が変な事言ったからだろうが!」

 

 

し、シッマタ!

藪を突いて鬼が出てきた……

 

「千冬姉が持ってる昔の写真、それはいったい何時の写真だ?見せろとは言わないが、何時のかは教えてくれ!」

 

「し、しかし一夏!お前は昔の事は気にしなくて良いんだ!」

 

「だからこそ教えてくれ!これ以上悩まないためにもだ!」

 

「…教えれば気が済むのか?」

 

「とりあえず…」

 

「そうか…」

 

 

一夏がこれ以上昔の事で悩まなくて済むなら教えても良いか…

 

「私が持っている一番古い写真は…」

 

「ああ…」

 

「お前が生まれる前の写真、つまり私と両親の写真だ」

 

「ッ!」

 

 

一夏では無く真耶が息をのんだ。

何で真耶がビックリするんだ?

今の流れで行けば、普通は一夏が息をのむ場面だろうが…

 

「そうか…」

 

「満足したか?」

 

「ああ……だが!」

 

「何だ?」

 

「千冬姉が嘘を吐いていた事に関しては後日じっくりと聞かせてもらうからな」

 

「んな!?そ、それはお前の事を思って!」

 

「下手に隠されるから知りたくなるんだ。最初から写真を持っていると言ってくれればそれで終わったのにな」

 

「何?一夏、お前は昔の記憶を探してるんじゃ無いのか!?」

 

「前から言ってるが、俺は昔の記憶に興味は無い。もちろん消えた親にもな」

 

「じゃ、じゃあ今迄私が隠していたのは…」

 

「無駄な努力」

 

 

一夏がバッサリと私の努力を無駄だと言い放った。

そうか…私の努力は無駄だったのか~…

 

「山田先生もスミマセンね、こんな無駄な時間につき合わせてしまって」

 

「い、いえ……」

 

「それじゃあ俺はこれで。さっきは本当にスミマセンでした」

 

「は、はぁ…」

 

「おい、一夏!」

 

「何だ?」

 

「本当に過去に興味は無いんだな!」

 

「ああ」

 

 

それだけ言って一夏はこの場から姿を消した。

それなら今迄した努力分は一夏に労ってもらいたいぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「山田先生も気にしてないようだし、千冬姉の事の片付いたし、これで今日の訓練に集中出来るな」

 

 

部屋に戻る前に学園周りを一周するために外に出る。

この時間には警備員は居ないので、IDパスを通して学園外に出る。

やっぱスッキリとした気持ちで走る方が気持ち良いな……

 

「……誰だ!」

 

 

学園外に出てずっと付いてきている気配の持ち主に声を掛ける。

この気配はしらないものだった。

 

「さすがお兄ちゃんだね」

 

「お兄ちゃん?」

 

 

俺の事をそんな風に呼ぶ相手に心当たりなど無いんだが…

 

「そっか、お兄ちゃんはしらないんだもんね」

 

「?」

 

 

顔を隠しているが、如何やら女の子のようだ。

だが、何故俺の事をお兄ちゃんと呼ぶんだ?

 

「始めまして…いや、久しぶりって言った方が正しいよね?」

 

「何の事だ?」

 

 

久しぶり?

彼女と俺は前に会ったことがあるのだろうか?

 

「ひっどいな~!あの女はお兄ちゃんに何も教えて無いんだね~」

 

「あの女?それに、さっきからお兄ちゃんって、もしかしなくても俺の事か?」

 

「そうだよ!」

 

「俺に妹は居ないんだが…」

 

「そっか…本当に覚えて無いんだね…」

 

「だから何を?」

 

 

彼女は俺の事を知っているようだ。

それはさっきから何となく分かってたが、昔の俺の事を知っている感じがするのだ。

 

「私はね、お兄ちゃんの義妹なんだよ!」

 

「義妹?」

 

 

と言う事は俺の親の再婚相手の連れ子って事か?

俺の親って再婚してたんだな……

 

「あんなに仲良くしてたのに…やっぱりあんな親に連れてかれた所為でお兄ちゃんは私の事を忘れちゃったんだね」

 

「いったい何を言っているんだ?」

 

「私はね、織斑千冬の妹でお兄ちゃんの義妹なんだよ」

 

「千冬姉の妹で、俺の…義妹?」

 

 

如何言う事だ?

俺と千冬姉は姉弟だ。

だが彼女は千冬姉の妹で俺の義妹だと言う。

この違和感は何だ?

 

「そうだよ!私は織斑マドカ、織斑千冬の実の妹で、お兄ちゃんを捨てた両親に連れてかれた織斑千冬の本当の家族なんだ」

 

 

……いったい如何言う事なんだ!?




衝撃の事実、千冬と一夏は血が繋がってない!?
流れを原作に戻しつつオリジナルな展開にして行きます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。