もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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早く終わった~!!
7,000字超えたけど早かったな~


放っておかれた彼女たち

2日目の訓練は非常に疲れるものだった。

一夏君が所要で不在のため、織斑先生の機嫌がすこぶる悪かったのだ。

少しでも気を抜けば容赦無い一撃が襲ってくる。

それをかわし、反撃しようとしても織斑先生のスピードにはついて行けない…

あの人、IS装着してないのにISのスピードと同等で動くのよ…

 

「つっかれた~!」

 

「お嬢様、だらしないですよ」

 

「私もヘロヘロだよ~」

 

「本音、スカートの中見えてるよ」

 

「平気平気~!女子しか居ないもんね~」

 

「そう言う問題では無いでしょ…」

 

 

訓練を終えて着替え、部屋でぐったりしていると虚ちゃんに怒られた。

別に良いじゃない、自分の部屋なんだから…

 

「一夏君が帰ってきたら文句言ってやるんだから!」

 

「何故一夏さんに文句を?」

 

「だって~!」

 

「そんな泣きそうにならなくても……」

 

 

泣きたくもなるわよ!

織斑先生が暴走したら、一夏君しか止められないんだよ!?

その織斑先生があれだけの力で訓練に望めば誰だって泣きたくなる。

 

「これもすべて一夏君が居なかった所為だ!」

 

「そうだ~!おりむ~が居なかったせいだ~!」

 

「本音まで…」

 

 

簪ちゃんが呆れてるが、今はそんな事気にする余裕は無い。

兎に角、全身がダルイのだ…

 

「一夏君のマッサージを受けたい気分だわ…」

 

「お姉ちゃんだけなんてズルイんだからね!」

 

「そうですよ!」

 

「簪ちゃんと虚ちゃんは山田先生相手で楽したんだから、今日くらいは良いでしょ!」

 

「そうだそうだ~!」

 

「楽ってなんです!」

 

「訓練時間は同じなんだから!」

 

「でも山田先生なら怖く無いでしょ!」

 

「そうだそうだ~!」

 

 

口論になってしまった…

これも全部一夏君が居なかった所為なんだから!

帰ってきたら許さないんだからね!!

 

「ところで本音…さっきから同じ事しか言ってないよね?」

 

「ほえ~?そんな事ないですよ~」

 

「そうかな…?」

 

「そうだそうだ~!」

 

「やっぱりそれしか言ってないよね!?」

 

「気のせいですよ~」

 

 

う~ん…?

気のせいな気もするし、そうじゃない気もするんだよね……

考えるのが面倒なので気にしない事にした。

 

「ねえねえ、今日の夕飯は如何するの~?」

 

「一夏君が居ないなら、食堂でも良いけど…」

 

「でも、食材はたくさんありますよ?」

 

「じゃあ作る?」

 

「ええ~!今日は疲れたよ~!」

 

「私も~!」

 

「お姉ちゃんや本音だけじゃなくって、私たちも疲れてるんだよ?」

 

「自分たちだけが疲れてるみたいな言い方止めてください」

 

「「ええ~!!」」

 

 

織斑先生相手と山田先生相手じゃ疲れ方が違うと思う。

特に今日の織斑先生相手は普段の数倍は疲れるだろう…

 

「ねえ…今何時?」

 

「7時だけど?」

 

「一夏君って今日中に帰ってくるのかな?」

 

「如何でしょう……早朝から居ませんし、帰って来るとしても深夜か明日になるのではないでしょうか?」

 

「ええ~!今日は一夏君と一緒にお風呂に入るはずだったのに~!!」

 

「そう言えばそんな約束もしてたね…」

 

「でも、肝心の一夏さんが居ない以上、それは無理でしょうね」

 

「おりむ~と入りたかったな~!」

 

「でしょ!じゃあ帰って来るまで入らないでおこう!!」

 

「何時帰って来るのか分からないんだよ?」

 

「普通に入る方が明日楽ですよ?」

 

 

簪ちゃんと虚ちゃんに止められるが、私は絶対に一夏君と一緒にお風呂に入るんだ!

 

「なら、簪ちゃんと虚ちゃんだけで入ってくれば?」

 

「そうだそうだ~!」

 

 

……やっぱり本音のセリフがワンパターンに感じるんだけど…

 

「そうしましょうか?」

 

「そうだね…私も疲れたし…」

 

「何に疲れたんだ?」

 

「ん?……一夏!?」

 

「え?一夏君帰って来たの!?」

 

 

簪ちゃんが一夏君の名前を呼んだので、私は飛び上がってドアに向かう。

そこにはやけに疲れている感じのする一夏君が立っていた。

 

「何処行ってたのよ!」

 

「そうだよ~!心配したんだよ~!」

 

「心配?」

 

「うん!だっておりむ~が居なかったらご飯無いんだもん!」

 

「…本音、それって一夏の心配じゃ無いよね?」

 

 

簪ちゃんの言葉に本音以外が頷く。

別にご飯は食堂でも良いでしょうが…

 

「何だ、まだ食べてないのか?」

 

「だって~!今日は疲れたんだもん~!!」

 

「一夏君の所為でね!」

 

「俺の?」

 

 

何で自分の所為で疲れたのか、と言う顔で驚く一夏君。

無自覚でも許してあげないんだからね!

 

「そう!一夏君が居なかった所為で大変だったんだから!!」

 

「はぁ……」

 

「おりむ~が居なかったから、織斑先生が機嫌悪かったんだから~!」

 

「俺が居ないからじゃなくて、俺が束さんのところに行ってたからだろうがな」

 

「どっちでも一緒だよ!」

 

 

涼しい顔して原因の分析をしている一夏君。

私たちにとっては大差無いんだよ、そんな事!

 

「兎に角、それで疲れたなら謝ります。スミマセンでした」

 

「え……そう謝られても困るのよね…」

 

「別におりむ~に謝ってもらいたかった訳でも無いし…」

 

「なら如何しろと?」

 

「「マッサージ!!」」

 

「マッサージ?」

 

「うんそう!」

 

「おりむ~のマッサージで疲れを癒して~!」

 

「そんな事で良いのなら…」

 

 

一夏君は拍子抜けしたように返事をした。

もっと凄い事でも要求されると思ってたのかしら?

 

「お嬢様や本音だけズルイですよ!」

 

「そうだよ!疲れてるのは皆一緒なんだから!」

 

「ん?俺は全員にするつもりだったんだが、2人だけで良かったのか?」

 

「「駄目!!」」

 

 

一夏君は皆平等に疲れを癒そうと思ってたらしい…

そこが一夏君らしいっちゃらしいんだけど、何か納得いかないのよね~…

 

「でも、その前に夕飯にしましょう。今から作りますから、皆は風呂でも入っててください」

 

「一夏君、今日は一緒に入るんでしょ?」

 

「そうだよ~!約束したもんね~!」

 

「……俺だって疲れてるんですが?」

 

「「そんなの関係無いもんね~!!」」

 

「簪や虚さんもですか?」

 

「「当然(です)!!」」

 

「……ハア………」

 

 

一夏君は盛大にため息を吐いてキッチンに向かった。

承諾したって事で良いんだよね?

 

「可哀想な一夏様…」

 

「あっ!須佐乃男もお帰り~」

 

「さっきから居ましたよ」

 

「ゴメンゴメン」

 

 

一夏君が帰ってきたんだから、須佐乃男も帰って来るよね。

一夏君に集中し過ぎて気付かなかったわ…

 

「それで、何で一夏が可哀想なの?」

 

 

須佐乃男がつぶやいた言葉に簪ちゃんが反応した。

そう言えば、何で一夏君が可哀想なんだろう?

 

「束様の研究所で朝からぶっ続けで新武装の開発を手伝い、その後夕飯の準備をして大急ぎで帰ってきたら、今度は自分の疲れを癒す暇も無く皆様の夕飯の準備。その後はゆっくり出来ないだろうお風呂に入り、出てきたら皆様の疲れを癒すためにマッサージを行うんですよ?これが可哀想じゃなきゃ、何が可哀想だと言うのですか!」

 

「何大声出してるんだ?」

 

「一夏様も疲れてると言う事を皆様に教えていたんです!」

 

「別に心配されるほど疲れてないから…」

 

「一夏様は自分を犠牲にし過ぎです!」

 

「別にそこまで大げさな事でも無いだろ…」

 

 

一夏君は自分を気遣ってくれている須佐乃男を宥めている。

確かに話しを聞くと一夏君の方が疲れてそうだが、一夏君の優しさについつい甘えちゃうのよね……

 

「須佐乃男、俺は平気だから心配するな」

 

「ですが!」

 

「本当にヤバかったら俺だって休むさ。だから心配するな」

 

「……分かりました」

 

「お前も1日中動いてたんだからゆっくり休んでろ」

 

 

一夏君はそれだけ言ってキッチンに戻って行った。

今日1日動き続けているのは私たちだけでは無かったのだ。

一夏君の方が朝早くから活動しているんだし、訓練と開発では、内容は違えど疲れる事には変わりない。

その事を考えてなかった私たちは、一夏君にあれこれ要求してしまったのだ。

 

「私、一夏君の事を考えて無かった…」

 

「私も…一夏なら平気だって思い込んでた…」

 

「お嬢様方だけでは無く、私たちもそう思ってしまっていました…」

 

「おりむ~も疲れるんだよね…」

 

 

さっきまでの明るい雰囲気は無くなり、一気に暗くなる。

一夏君が疲れてなかったらって約束だったのに、強引に承諾させてしまったのだ。

 

「やっぱりお風呂は私たちだけで入ろうか?」

 

「そうだね……」

 

「一夏さんにはゆっくりしてもらいましょう…」

 

「おりむ~とは今度入れば良いしね~」

 

「それなら、私もご一緒します」

 

 

一夏君の事を考えて、今日は大浴場に行く事にした。

 

「一夏君!私たちお風呂に行ってくるね!」

 

「え?…ごゆっくり」

 

「何想像したの?」

 

「いえ…一緒に入るって言ってたので、何があったのかな~って」

 

「私たちだけじゃ無いんだもんね?」

 

「はい?」

 

 

何を言ってるのか分からないって顔をして首を傾げる一夏君。

 

「そうだよ。私たちだけじゃ無くて一夏だってだもんね」

 

「そうですよ。一夏様もですよ」

 

「あの~?」

 

「おりむ~も一緒だもんね!」

 

「何が?」

 

「皆様、一夏様の事を心配してるんですよ」

 

「???」

 

 

ますます混乱しているようだが、私たちは気にせず大浴場に向かう事にした。

心配してるんだから、一夏君は後でゆっくり入りなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ~?本音、貴女たちもお風呂?」

 

「そうだよ~!」

 

「うわ!生徒会長のスタイル…すっごい!」

 

「本音のお姉さんも凄いね…」

 

「更識さんも相当だわ…」

 

「本音って、あれだけお菓子食べて、何処に行ってるの?」

 

「全部おっぱいになのだ~!」

 

「羨ましい…」

 

 

大浴場には1年生が大勢居た。

当たり前だが、此処は1年の寮だし、私と虚ちゃんが異分子なのだ。

そっか、1年生から見れば、虚ちゃんもスタイルが好い方なのね。

 

「そう言えば織斑君が帰ってきたらしいね」

 

「そうそう、さっき織斑先生が嬉しそうに廊下を見回ってたもんね」

 

「やっぱり弟が好きなのかな?」

 

「でも、織斑君みたいな弟なら、私もきっと好きになっちゃうんだろうな~」

 

「アンタじゃ相手にされないって!」

 

「何よ!?」

 

「あはは~!」

 

 

皆一夏君の話題で盛り上がってる。

やっぱり一夏君は1年の中でも人気なんだな~……

私たち2年に中でも、虚ちゃんたち3年の中にも一夏君が好きな生徒は多い。

1年生が一夏君に話しかけられないのは、一夏君の見た目もあるが、大人っぽい雰囲気が自分たちには恐れ多いと思ってしまうのもあるのだろう…

それでも、クラスメイトくらいはそろそろ慣れても良いと思うのだけどね。

 

「織斑君って怖いって思ってたけど、すっごい優しいんだよね~」

 

「何かあったの?」

 

「昨日の訓練でボーデヴィッヒさんへの対応を見てそう思ったの」

 

「あれはお兄ちゃんって感じだったよね~」

 

 

昨日の訓練で一夏君と一緒だった相川さんと夜竹さんが盛り上がっている。

でも、私はその事を良く知らなかった。

 

「それって如何言う事かな~?」

 

「え?…生徒会長!?」

 

「更識先輩で良いよ~。それで、一夏君がお兄ちゃんって如何言う事なのかな~?」

 

「え~っと…昨日織斑君の攻撃でボーデヴィッヒさんの専用機が強制解除されてしまったんです。それで目を瞑って衝撃に備えていたボーデヴィッヒさんを優しく抱きかかえて…『何て顔してるんだ?』って!ああもう~!すっごくカッコよかったんです!」

 

「アンタが悶えて如何すんのよ?」

 

「アンタじゃ一生言ってもらえないセリフだろうしね」

 

「何よ~!」

 

 

相川さんを弄って遊んでいる下級生のセリフは私の耳に入って来なかった。

もしかして一夏君はまたフラグを建てたのだろうか…

 

「ゴメン虚ちゃん、私もう出るね」

 

「私も出ます…」

 

「あれ~?楯無様とおね~ちゃん、もう出るの~?」

 

「如何かしたの?」

 

「うん、チョッとね…」

 

「一夏さんに用事が出来ましたので…」

 

「ふ~ん…」

 

「一夏様によろしく言っておいてください」

 

 

簪ちゃんと本音は何も感じなかったのだろうか?

これ以上一夏君の周りに女が増えると私たちの立場が危うくなるかもしれないのだ。

須佐乃男は何となく察しがついているようだったが……

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏君!!」

 

「あれ?早いですね」

 

「チョッと聞きたい事が出来てね!」

 

「聞きたい事?」

 

 

携帯を弄っていた一夏君が顔を上げてコッチを見た。

一夏君が連絡を取れる相手ってそう居ないわよね?

 

「その前に、誰とメールしてるの?」

 

「束さんのところで家事全般をやっている人ですけど?」

 

「女の人?」

 

「そうですが?」

 

「如何言う関係なの?」

 

「はい?」

 

「だから!一夏君とその女の人の関係は!?」

 

「関係って…今日初めて会ったんですが…」

 

「それでもうアドレス交換したんですか!?」

 

「弟子にしてほしいと頼まれまして…」

 

「「弟子?」」

 

 

私たちが思ってた展開と違うんだけど…

 

「束さんにもっと美味しいものを食べさせたいようなので、メールや電話で時間がある時に料理を教える事になったんですよ」

 

「ふ、ふ~んそうなんだ……」

 

「それは大変ですね……」

 

「別に付きっ切りでは無いのでそこまでは。それで?聞きたい事ってそれですか?」

 

 

一夏君に言われて思い出した。

聞きたい事は別なのだ!

 

「昨日の訓練中にボーデヴィッヒさんを抱きしめたって本当?」

 

「抱きしめては無いですよ」

 

「じゃあ如何したの!?」

 

「抱きかかえたんです」

 

「それって一緒じゃない!?」

 

「違いますよ」

 

 

そう言って一夏君が立ち上がった。

 

「如何違うのよ!?」

 

「そうですね……虚さん、失礼します」

 

「へ?……一夏さん!?///」

 

 

虚ちゃんに断って一夏君が虚ちゃんを抱きしめた。

 

「コレが抱きしめるですよね?」

 

「そ、そうね……」

 

 

正直虚ちゃんが羨ましい…

違いを説明するためとは言え、一夏君に抱きしめられてるのだ。

 

「そして……コレが抱きかかえるです」

 

「!?!」

 

 

今度は虚ちゃんがお姫様抱っこされてる。

何て羨ましい…

 

「違い、分かりますよね?」

 

「え、ええ……」

 

「何処で聞いたのかは大体想像付きますが、ISが強制解除されたら空中に投げ出されるんですよ?それを受け止めただけです」

 

「そ、そう言えばそんな事も言ってたわね…」

 

「分かってくれれば良いです。虚さん、下ろしますね」

 

「え、ええ///」

 

 

偶然とは言え、一夏君に抱きしめられ、お姫様抱っこをされた虚ちゃんの顔は真っ赤だ。

 

「一夏君!!」

 

「今度は何ですか?」

 

「私にも!」

 

「はい?」

 

「私にも虚ちゃんと同じ事をして!!」

 

「まあ、良いですが…」

 

 

そう言って一夏君は私を抱きしめてくれた。

ちゃんと汗流したから平気だよね?臭くないよね?

 

「刀奈さん」

 

「な、何!?」

 

「ちゃんと髪を乾かさなきゃ駄目ですよ?」

 

「へ?」

 

「慌てて出てきたとは言え、髪くらいはしっかりと乾かさなきゃ、痛んじゃいますよ?」

 

「あう~……」

 

「ほら、コッチ座ってください」

 

「え?」

 

 

一夏君はポンポンと自分のベッドを叩き、そこに座るように言った。

 

「何するの?」

 

「チョッと待ってくださいね」

 

 

そう言って一夏君は脱衣所に向かった。

何するのかしら?

 

「まずはしっかり拭かなきゃ風邪ひきますよ。その後ドライヤーで乾かしますから」

 

「え?一夏君がしてくれるの!?」

 

「勘違いとは言え、俺の所為ですからね」

 

「やった!!」

 

 

コレも偶然とは言え、すっごい嬉しい!

一夏君が私の髪を拭いて、その後乾かしてくれるなんて!!

 

「動かないでくださいね」

 

「は~い!!」

 

「……普段からこの返事なら、私も疲れずに済むのですが…」

 

「それは言わない約束でしょ?」

 

「そんな約束なんてしてません!!」

 

「虚さんも少し濡れてますから、刀奈さんの後でしてあげますよ」

 

「本当ですか!?」

 

「ええ」

 

 

やっぱり一夏君は個人だけを優先的に甘えさせないのだ。

でも、これが一夏君なのよね。

 

「刀奈さん、ちゃんと髪、ケアしてます?」

 

「してるけど…何か問題あるの?」

 

「少し潤いが無いような気がするので…」

 

「しょ、しょうがないでしょ!?忙しいんだから!」

 

「お嬢様ってそんな忙しかったでしたっけ?」

 

「忙しいの!!」

 

 

虚ちゃんの冷静なツッコミに慌てる。

確かにそこまで忙しくは無いけど、私だって色々あるんだからね!

 

「ケアしてるなら良いですが…」

 

「今度からはもっと気をつけるわ…」

 

「それが好いでしょう」

 

 

一夏君はまず手櫛で私の髪を梳き、そのあとからブラシを使う。

いったい何処で覚えたのだろうか?

 

「はい、終わりましたよ」

 

「うん、ありがとう。自分でするより良いかも…」

 

「今度は私ですよ!」

 

「分かってますから、そんな慌てなくても平気ですよ」

 

 

虚ちゃんが大慌てで一夏君の前に座る。

一夏君は慌てなくても良いと言うが、コレは慌てたくなる虚ちゃんの気持ちが良く分かる。

一夏君のブラッシングは凄く気持ち良いのだ。

 

「ねえ、一夏君。何処でこんなテクニックを身に付けたの?」

 

「昔千冬姉の髪を梳いてたんですよ。そうしてるうちに慣れたんでしょう」

 

「そうなんだ……」

 

 

一夏君って色々大変なのね…

 

「はい、終わりです」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあ俺は夕飯の仕上げをしますので」

 

 

そう言って一夏君はキッチンに向かって行った。

それにしても一夏君にこんな特技まであったとは……

その後お風呂から出てきた簪ちゃんに、普段と髪が違う事を見抜かれ、本音と須佐乃男も共に一夏君に髪を梳いてもらったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏君に髪を梳いてもらって、一夏君の作った夕飯を食べて、その後で一夏君にマッサージをしてもらう。これって贅沢だよね~」

 

「お姉ちゃんの言う通りだね」

 

「一夏さんはどれも上手いですからね」

 

「おりむ~にこんなしてもらえるのは私たちだけだもんね~」

 

「私まですみませんね、一夏様」

 

「別に良いが、そろそろ俺のベッドから退いてくれるか?」

 

 

結局5人をマッサージした一夏君は、疲れた顔をしてベッドを空けてくれと要求した。

一夏君のベッドって、広くて良いのよね~…

 

「お休み~」

 

「うん、お休み…」

 

「お休みなさい…」

 

「スー…スー…」

 

「一夏様、お休みなさい」

 

「……俺のベッド…」

 

 

一夏君はガックリと肩を落としてお風呂場に向かった。

ゴメンね、一夏君。

でも、今日は君を感じながら寝たいんだ♪




次回3日目。
連携訓練をしてないのは一夏の関係者だけ。
波乱の予感?

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