今回は皆大好きあの人が・・・
ではどうぞ。
更識の家での生活にもだいぶ慣れてきた。
この一年は色々あった。
まずは春、虚さんがIS学園に進学した。どうやら学年主席らしい。
それから時間が許す限り、俺と四人での戦闘訓練ならびにISを使っての鍛錬を行った。
もともと実力の高かった刀奈さんと簪は順調な成長を見せ、虚さんと本音もメキメキと実力を付け始めている。このまま行けば、候補生並みの実力は付くだろう。
そして夏になり、まとまった休みを利用して五人で出かけたりした。
プールに行ったときには刀奈さんが暴走して俺に水着でじゃれ付いてきたのを皮切りに、本音、簪と立て続けに抱きついてきた。
俺は助けを求めるために、虚さんの方を向くが・・・
「皆さん、ずるいです。」
なんと虚さんも抱きついてきたのだ。
あはは・・・周りの目が痛い・・・。
美女四人と男が一人──これだけでも目立つのにこの騒動だ。主に男性陣の視線が鋭く突き刺さってくる。
うらやましいって?だけど・・・手を出すわけにはいかないのだから、これはある意味地獄なんだぞ?
下手をすればセクハラだといって女尊男卑差別者の通報で警察に突き出されかねない。
勿論、そんなことは起こらなかったのだが、このまま感触を楽しむわけにはいかないだろ?
だって気を引き締めておかないと、頭が沸騰してしまいそうなのだ。
いくら大人ぶってみたところで、俺はまだ中2である。
思春期真っ只中の男子にこの苦行、俺はなにか悪いことをしたのか?
誰かおしえてくれ~!?
皆様の気持ちを代弁するなら、「リア充一夏許すまじ」といったところでしょうか。
お前は十分悪いことをしているぞ、一夏よ。
それから高原にピクニックにも行った。
全員で弁当を作り交換すると刀奈さんが提案したが、なぜか虚さんが渋い顔をした。
後で理由を聞いたら、どうやら彼女は家事が苦手なようだ。
驚きの事実だが、誰にでも欠点はあるものだ。俺はそう思い、虚さんに料理を教えると提案した。
結果から言うなら・・・・・・駄目だった。
たかが一日でどうにかなるレベルではなかったのだ。
比較的簡単に作れるサンドイッチを作ろうとして野菜を洗ってもらおうとしたら、虚さんは洗剤を使おうとしていた。
・・・・・・うーん、これはテンプレすぎて笑えなかった。
そのほかにもゆでたまごを作るのに、なぜか卵を割ろうとしたり、コンロの火を点けられなかったりなどありえないような家事オンチっぷりだった。
「すみません・・・。」
へこんでしまった虚さん。
さすがにこれ以上は無理だな。
今回は虚さんの弁当はなし、このことが決定した。
ピクニック当日、何時も寝坊する本音が集合場所にいち早く着ていた。
これは、あれか。
遠足が楽しみすぎて、異様なテンションになっている小学生だな。
事実、本音のテンションは高かった。
「おそいよ~おりむ~!」
現時刻午前6時45分、集合時間午前7時。
まだ15分前なのに遅いと言う本音、いったい何時からいるんだ。
「私はね~30分前ぐらいかな~。」
早く行動するのは良いことだが、いくらなんでも早すぎる。
それから5分で全員がそろった。
集合時間10分前行動、これが基本である。
だが本音は文句を言った。
「みんな~もっとはやくこなきゃだめだよ~!!」
俺たちが遅いんじゃなくてお前が早いんだ。
四人の気持ちが一つになり、アイコンタクトで俺が実行に移す。
「本音~、普段からこんなに早く行動してくれると、俺たちも助かるんだけどな~。」
今の俺はサイコーに良い笑顔なのだろう。若干本音が涙目になっていた。
普段遅刻ギリギリまで寝ている本音は待たせる側なのだ。
毎回俺たちの誰かが本音を起こし、ダッシュで学校まで行く。
本音を起こすのは、日ごとに交代で行っている。
余談だが、虚さんは寮暮らしだから、平日は屋敷にいない。
そして俺は、本音たちとは違う学校で、距離も遠い。
つまり、俺が起こすときは他の二人よりも早い時間になるのだ。
本音が間に合っても、俺が遅れたら意味無いだろう。
人の苦労も考えてほしい・・・。
「お、おりむ~、こわいよ~。ほら~スマイルスマイル~・・・・・えへへ」
本音は普段の事を指摘され、動揺している。
俺は今、笑いながら、
ゆっくりと本音に近づいていく。
人差し指と中指の第一、第二間接を曲げ本音の鼻をおもいっきりつまむ。
余談だが結構痛い。
本音へのお仕置きが済んだところでピクニックの目的地である高原に向かうことにした・・・約一名涙目のままで。
高原近くの駅に着いたのは午前9時少し前。
俺は今、本音をおぶっている。
電車に揺られること2時間弱、テンションの高かった本音だったが移動の時間に耐えられず、寝てしまったのだ・・・だから人の苦労を考えろといったんだ。
「すみません一夏さん、本音が何時も迷惑を・・・。」
本音の行動に虚さんが謝って来た。しょんぼりとうつむきながら少し小さくなっている印象をうけるその行動に・・・
「(やばい・・・可愛い・・・抱きしめたい!)」
想像して欲しい。普段キリッとしている女性が怒られた子どものようになっているのだ。
これが悪友の言っていた“ギャップ萌え”か!!
俺はまた一つ賢くなった・・・いや何を考えているんだ俺は。
「いや、虚さんが謝ることじゃないですし、これぐらい何の負担にもなりませんよ。」
事実、普段からトレーニングのために重りを付けていることが多い俺は本音一人ぐらいおぶったところでどうといったことない。
だからこの台詞はわりと本心からだった。しかし、どうやら虚さんは俺が気遣って言ったと思ったらしい。
「ありがとうございます。本当に一夏さんは優しいですね。」
本当にお礼を言われることではないのだけれども、ここは素直に虚さんの気持ちを受け取った。
駅から10分くらい歩き、広い場所に出た。
ここが目的地の高原だ。
普段忙しい皆に、ゆっくりとしてもらおうと俺が企画した。
だが本音、お前はそろそろ起きろ。
ちなみにだが、ここまですれ違った方々は一夏と本音の姿を見て、
「(仲のいい兄妹だな(ね)。)」
などと思っていた。
本音が例の猫耳(?)フードをかぶっていたので余計に幼く見えたのもあるが、一夏の格好も半袖のワイシャツに黒のジーンズといったおよそ中学生の私服とは思えないもので、普段より大人っぽく見えていたのだ。
「本音、着いたぞ起きろ、そして降りろ。」
俺の声に本音は目をこすりながらあたりを見渡し、
「おお~着いた~、かんちゃん、おりむ~、あそぼ~!」
あっという間にテンションが最高潮になった・・・現金な子である。
暫く遊んで昼になり俺たちは互いに作ってきた弁当を出した。
刀奈さん主催“第一回お弁当選手権”なるものが開催された。
なお、諸事情により虚さんは欠場だ。
理由についてはすでに諸兄らはご存知だろうが、刀奈さんたちにはまだ言ってない。
「あれ~、虚ちゃんのは?」
刀奈さんの一言にまたうつむいてしまった虚さん。
これは、俺が言ったほうがいいのか?
虚さんの方をみて、アイコンタクトで聞くと、どうやら自分で言うらしいので黙った。
「私、実は・・・・・・料理が出来ません。」
この発言に、刀奈さんと簪両名は驚き、本音はなぜか勝ち誇った顔をしていた。
大方、虚さんに勝てる分野があったことに喜んでいたのだろうな。
スキルは誉めるべきだが、流石に失礼だ……そんな態度をとっている本音の鼻をつまむ。
「おりむ~、いたいいたい!なにするの~!?」
本音へのお仕置きが終わり、本題(?)に入る。
なお審査は五人で行うらしい。
あくまで公平な判断が求められる。俺は気を引き締めた。
まずは簪の弁当から。
平均以上の味ではあるが、まだまだ発展途上な感じが否めない。
所々味が薄かったり濃かったりした上に、形が不恰好なのだ。
今度一緒に作って指導してみよう。
次は刀奈さんの弁当。
見た目は完璧、問題は味だ。
ハンバーグはとてもおいしかった。だが、卵焼きはいただけなかった。
火の通りがばらばらで固かったり、生だったりした。
それに、砂糖の入れすぎで、少しこげている。
これも今度指導しよう。
今度は本音の弁当だ。
サンドイッチ、ポテトサラダ、色付けでナポリタン。
洋食風の弁当だった。
味も見た目も文句なくうまいといえるレベルだ。
刀奈さんと簪は素直にほめ、虚さんは少し悔しそうだ・・・。
「(虚さん、今度はちゃんと作れるように練習しましょう。)」
心の中で慰めにならないことを考えていた。
最後に俺の弁当だ。
何故俺の弁当が最後なのかというと、刀奈さんが・・・
「その方が面白いじゃない♪」
などといったからである。
何が面白いのかさっぱり分からないが、とにかく俺は弁当のふたを開けた。
中身は、おにぎり,卵焼き,から揚げ,プチトマト,小松菜ともやしの胡麻和え、そしてデザートにウサギの形に切ったリンゴだ。
実に平凡なメニューだと思う。
しかし、四人はふたを開けただけですでに硬まっている。
何をそんなに驚くことがあるんだ?
そんなことを思いながら、四人に弁当をすすめる。せっかく作ったのだから食べてくれないともったいないではないか。
結果から言おう、俺の圧勝だった。
四票を獲得しての優勝、なんだか恥ずかしいな。
あの後、一口食べた四人は、何かを吹っ切るように俺の弁当をよく食べた。
結局俺は自分の弁当を食べてないのだ。
本音と簪は素直に褒めてくれ、虚さんはどこか恨みがましい目を向けてきた。
虚さん、そんな目で見ないでくださいよ・・・俺だって自分の意思でここまで上手くなった訳ではないんですよ・・・。
そんな中、刀奈さんはというと・・・
「う~ん、オチとしては一夏君はトンでも料理を期待していたのに、これは予想外だったわね。しかし、次は虚ちゃんに無理やり作らせて・・・・」
なにやらブツブツとつぶやきながらも箸を動かしている。
何を考えていてもいいですけど・・・行儀が悪い。
俺は刀奈さんの頭を軽く小突いた。
いきなりで刀奈さんは驚いたが、「行儀が悪いですよ。」といったら素直に反省してくれた。
某悪友の家で食事をすると、食べながら話しているとオタマが飛んでくるのだ。
食事中は行儀は良くしたほうがいい。これが俺の中での決まりごとで、基準になっている。
第一回お弁当選手権は、俺に四人が対抗心を燃やして終わりを告げた。
その後はのんびりと話をしたり、昼寝をしたりとゆっくりと過ごした。
屋敷に帰ったあと、俺はあることを考えいていた。
「(あの誘拐騒動からもう一年か。早いものだな。)」
俺の人生を劇的に変えたあの事件からあっと言うまに一年が過ぎたのだ。
あれから、束さんから連絡はない。
いったい何故俺はISを動かせたのだろう。
あの後、俺は何度かISに触れる機会があった。
しかしISはビクともしなかった。
俺がISを動かしたのを知っているのは、現在だと刀奈さんと虚さんの二人だ。
楯無さんが亡くなったために、このことを相談できる人がいないのだ。
「(あれは、偶然だったのか?あれ以降ISの声が聞こえたことはないし、動かせると思えない。)」
俺はそんなことを考えながら眠りに就いた。
秋、更識の関連企業がIS産業への進出を表明した。
それにより、布仏虚,布仏本音両名を企業代表にすると表明し、専用機の開発も計画された。
しかし、コアが無い。
量産機を作るための劣化コアは手に入るが、専用機ともなるとそんなに簡単な問題ではない。
ISのコアは開発者の束さんしか作ることが出来ない。
したがって、限られたコアを各国で分け合い、それぞれ違った研究をしているのが現状だ。
そのため現在あまっているコアが日本には無い。
専用機開発計画は、始まる前に終わったのだ。
「(何とかならないものかな?)」
俺は二人のために何か出来ないか考えていると・・・prrrrrr
電話が鳴った、しかもその相手は・・・・
「束さん!?」
丁度その人のことを考えていたら、なんと本人から電話がかかってきたのだ。
俺は慌てて電話を取る。
「はい、束さんお久しぶりですね。」
一年と少し前、あの事件のときに話して以降、束さんとは連絡を取っていなかった。
束さんは俺がISを動かせた原因を調べてくれていたので、俺は邪魔しないようこちらから連絡を取ろうとしなかったのだ。
その束さんから連絡が来たと言うことは、何か分かったのかも知れない。
俺は、はやる気持ちを抑え、用件を聞いた。
「束さん、何かあったんですか?」
「いっくんが束さんのことを考えてる気がして電話したんだ~。」
確かに考えていた。
彼女ならISのコアをつくれるのだから。
しかし、彼女は極端なコミュニケーション障害だ。
自分の認めた相手以外はまるでゴミを見るような目つきで話すし、機嫌も悪くなる。
そんな束さんに二人の専用機を頼んだところで断られるだろう。そう判断し別の可能性を探していたところに電話がかかってきたのだ。
「確かに考えてました。俺がISを動かせた理由、分かりましたか?」
俺が尋ねると、
「いっくん、何か嘘ついてるね~束さんにはお見通しだよ~」
鋭い、まったく持って俺の昔からの知り合いはどうしてこう勘の鋭い
俺は観念して本当のことを話した。
「実は、俺の知り合いが企業代表になりまして、専用機を作ろうって話になったのですが、コアが無くてどうにもならない状態でして……束さんなら何とかできるのではないかと考えてました。」
「ふ~ん、いっくんの知り合いがね~・・・でも束さんそいつらのことしらないし、ゴメンね、いっくん。」
やはりか・・・。
束さんは自分が「この世界が面白くない」といってISを作り出した。
本来は宇宙進出のためのモノだが「白騎士事件」の印象が強くて今ではそっちのほうでの開発はされていない。
彼女は自分が作り出したモノで世界を変えたが、そのせいで束さんは普通の生活ができなくなったのだ。
ISの攻撃力は驚異的だからだ。それが戦争に使われたらひとたまりもない。
現在はアラスカ条約で競技のみの使用しか認められていないが、もしコアが大量に作られたらあっという間にこの世界情勢は崩れる。
そう考えたのかは知らないが束さんは姿を隠すような生活をしている。
そのことを知っている俺は束さんにコアを作ってもらうのは申し訳ないと思いつつも、どうしてもコアが必要なことを話したのだ。
「でもでも~いっくんがISを動かせたのは分かったよ~」
束さんは俺がISを動かせた理由が分かったらしいのだ。
「どうやらね~いっくんが動かしたISのコアがいっくんのこと気に入ったみたいで、いっくん以外の人が動かそうとしてもうごかないんだ~。コアにまでもてるなんて、いっくんさすがだね~」
コアにまでとは、束さん、今の状況分かってるな。
「それでね~そのコアを使っていっくんの専用機をつくろうとおもうんだけど、いっくんどんなのが良い?近接格闘型?遠近両用型?それとも遠方射撃型?どれが良いかな~」
俺はこの話題に千載一遇の機を見出した。
この方法で二人の専用機を作ってもらおう・・・。
凄く恥ずかしいが、この際、羞恥心には目を瞑る。
「束さん、俺のと同時にさっき話した知り合いの二人の専用機、作ってもらえませんか?」
俺の提案に束さんは、
「いやだよ~、束さんには関係ないも~ん。」
予想どうりだ。
なら、こちらも切り札を切らせてもらう。
「お願い、
「はう~~~~~!?いっくんがおねえちゃんていってくれた!!」
「だめかなぁ?」
精一杯の猫なで声で頼む。死ぬほど恥ずかしい……。
「よ~し、いっくんの頼みだ!束さんがんばっちゃうよ~!じゃあ出来たらまた電話するね~、バイビ~♪」
どうやら俺を含め三人の専用機を作ってくれるらしい。
そのことを虚さんと本音に話すと、最初は驚いていたが喜んでくれた。
それだけで、俺の心の傷は治った。
そして冬・・・・
某所
「一夏、私はかえってきたぞーーーーーーーーーーッ!!」
約束の一年半を過ぎ、千冬が日本に帰ってきた。
またまた一波乱ありそうな雰囲気が一夏の周りにただよっていた・・・。
はい束さん、千冬再登場。
その前にやたらイチャイチャしてましたね。
書いてて殺意が・・・・・いやですね~考えるのは自由ですよ~。
ともかく急展開になっちゃいましたが一夏、虚、本音専用機開発決定!!
一夏の切り札に束さん陥落。
この作品の束は、箒よりも一夏でいきたいと思っていたのでどこかであのフレーズを使いたかったのですが、どうすればと考えた結果あの場面で言わせました。
専用機は次回か次々回には登場させようと思ってます。
ではまた次回お会いしましょう。
p.s.
伊丹様
誤字報告感謝です。
原作の一夏と比べると人数が少ないのでどうしようか悩みましたが、今回の話を書いている途中で、「あ、これ原作よりハーレム感出てる。」と思い追加しました。
ironmanfk様
タグのヒロイン追加しました。
ご指摘感謝です。
baruraito様
たびたびの誤字報告感謝です。
本当に面目しだいもございません。
竜羽様
専用機の件、非常に参考になりました。
自分なりに考え、何か良いネタがないか探し、使えそうなものを発見しました。
本当に感謝です。
そのほかの方々も読んでいただき本当にありがとうございます。
一部、束、千冬もヒロインになどといった意見もいただきましたが、あの二人はある意味好感度吹っ切れているのでそのままで行きたいと思います。
期待していた方々には、申し訳ないですが、ご容赦ください。