とある少年が、全女性ジムリーダーのおっぱいを揉むという夢を抱いたそうです   作:フロンサワー

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 チャンピオンだと気合が入る現象。


13歩目 チャンピオンのカルネちゃん

 しんしんと雪が降り積もっている。辺り一面には銀世界が広がっていた。あまりに幻想的な風景に、心を動かされるどころか恐怖すら覚える。

 ここはとある山の山頂部。カロス地方の北部に位置する山で、その標高はこの地方でも群を抜いて高い。

 何故、僕はこんな場所にいるのか? 答えはいつだって変わらない。そこにおっぱいがあるからさ。今回の標的はカロス地方チャンピオンのカルネちゃん。彼女はチャンピオンと同時に、副業として女優までこなしている。カロス地方ではその名を知らぬ者はいない程の有名人だ。

 この山頂では、ある映画の撮影が行われている。主演は勿論カルネちゃんだ。こんな雪山で撮影するなんて、僕にはどんな映画か想像もつかない。だけど、きっと素晴らしい映画なのだろう。

 かじかむ手足に鞭打ち、山頂を目指して更に足を進める。寒いけど、吹雪がないだけまだマシだった。

 ふと、人の話し声が聞こえてきた。こんな山奥に来る物好きはそうそういない。きっとカルネちゃん達だ。

 半ば駆け足で近づくと、映画の撮影クルーであろう沢山の人がいた。だけど、みんな何やら困った表情をしていた。

 

「まさか、俳優さんが山頂の寒さにやられてダウンだなんて……!!」

「どうするんですか!? まだ撮影初日だってのに!! 何度もここに来れる程の予算なんて有りませんよ!!」

「分かっている!! しかし、どうしようも…… って、あ!!」

 

 監督らしき人が僕に気づいた。すると、あれよあれよと言う間に近寄ってきた。まさか、関係者以外立ち入り禁止的な!?

 

「いやぁ、よく来てくれたね!! ここまで大変だったろう!」

 

 監督らしき人は、僕の肩をバンバン叩きながら迎えてくれた。なんてフレンドリーな。

 

「ところで君、映画に興味はないかい?」

「映画ですか?」

「監督!!?? 正気ですか、その人は素人なんですよ!!」

「黙っちょれい!! 私の勘が言っているのだ、この少年は何かを持っていると!」

 

 映画…… ねえ。ポケウッドで演技の修行はしてきたけど、映画自体には1回も出なかったなあ。顔が世間に知られたら厄介だし。

 

「お受けしましょう」

「本当かい!!??」

 

 普段なら即お断りだけど、なんてったって出演がカルネちゃんだからね。これを期にお近づきになれるかもしれない。断る理由なんてないね。

 

「よぉし、これが台本だ!! ここのページを暗記したら、直ぐに私に教えてくれ!!」

 

 結構厚い台本が渡された。幸い、覚えるべきページはそこまで多くない。この分ならすぐにでも覚えれそうだ。

 まず、パラパラと台本を流し読みをしてみた。ふむふむ、貴族の娘と新聞記者の青年がこの山に駆け落ちしたのか。逃げるにしたって、どうしてわざわざこんな山奥を選んだのやら……。

 最終的にはその2人を追ってきた娘の父親とポケモンバトルをして、2人の関係を認めてもらおうとする…… って流れね。うんうん、王道だけど良いストーリーじゃないか。

 さてさて、大半の映画の結末はポケモンバトルの勝敗で決まる。打ち合わせなんて一切無いガチバトルでだ。勝敗によって、映画の結末がハッピーエンドにもバッドエンドにも変わる。役者ってのは演技力と同時に、ポケモンバトルの強さも求められる。難儀な職業だよ、まったく。

 

「監督さん、暗記完了です」

「そうか! では、君の恋人役を紹介しよう。きっと驚くぞ!!」

 

 カルネちゃんですよね、知ってます。

 ここからそう遠くない場所に設営されたテントまで連れてこられた。黄色で、そこそこ大きなテントだ。多分、スタッフや役者があの場所で寒さを凌ぐのだろう。あの中にもカルネちゃんが……!!

 

「さあ、入りたまえ」

 

 テントに入った瞬間、世界が変わった。

 煌びやかなオーラがこの空間いっぱいに広がっている。そのオーラの主は他でもない、カルネちゃんである。

 椅子に座りながら、寒さに震えてマグカップに口を付けていたとしても優雅な雰囲気は少しだって損なわれない。

 

「はっ!? ……あなたが代役さん? 私はカルネ、よろしくね」

 

 僕に気づくと、即座に凜とした佇まいに変わった。そして、右手を差し伸べた。

 

「いつも映画で拝見しています。僕はライムっていいます。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 僕も左手を伸ばし、カルネちゃんと握手を交わした。寒さで手が震えているけど、そんな表情は一切顔に出さない。流石は大女優。

 

「ライム君…… 聞き覚えがない名前ね。もしかして、新人さん?」

「その通り! 彼は、今回が映画初挑戦なんだよ!!」

「そうなの……。ライム君、新人さんだからって遠慮しなくていいのよ。私たちで最高の映画を作りましょう!」

「ええ、頑張りましょう!」

 

 こうして、映画の撮影はスタートした。

 僕らが今から演じるのは、映画のラストシーンの場面だ。だからといって、これまで全部撮り終えたって訳でもない。

 この山の天候が安定した時期と、撮影を開始する時期が偶然重なり合っただけ。つまり、最後のシーンを最初にやるんだ。映画の撮影ではよくある事らしい。

 寒風吹き荒れる中、カルネちゃんと手を繋ぎ、お父様役の俳優さんと向かい合った。演技の修行はしてきたとはいえ、初めてだから緊張する。

 

「アクションッ!!!」

 

 監督さんの声が響いた。

 えっと、最初の台詞は僕だよな……。

 

「お父さん、僕とカルネちゃんの結婚を許してくれませんか!? この子は、僕の人生の全てを懸けて幸せにしてみせます!!」

 

 一挙一動に気を配りながら、頑固オヤジに結婚を認めさせようと躍起になっている青年に成り切った。

 今のところ、カットは無い。どうやらセーフらしい。

 

「黙れ小僧! 貴様にお父さんと呼ばれる筋合いはない!」

 

 渋味と威厳に溢れた、よく通る声だ。きっとベテランの俳優さんなのだろう。

 

「どうして分かってくれないの、お父様! 私たちは、こんなにも愛し合ってるのに!!」

 

 カルネちゃんが悲愴な声で訴えかける。演技だと理解しているけど、あまりの演技の迫真さに唾を飲んでしまう。

 

「こうなれば、多少手荒な真似も辞さないな」

「ッ!? 来るよ、カルネちゃん!!」

「ええ……!」

 

 それぞれがモンスターボールを手に取る。今まさに、戦いの火蓋が切って落とされる瞬間―――

 

「カット!」

 

 監督さんからカットが出された。

 モンスターボールを仕舞い、ふぅ、と一息ついた。台詞も間違えていない。大きなミスはしていない筈。多分、テープの交換とかでカットが出たのだろう。

 

「凄いわ、ライム君! 貴方の演技、まるで本物のような自然体だわ!!」

「ああ、若いのに大したもんだ。私が君と同じ歳の頃では、そんな演技などできなかったよ」

 

 意外にも絶賛された。どうやら警察に捕まりたくないという執念は、プロにも迫るレベルの演技力を与えてくれたらしい。

 

「いえいえ、お二人に比べれば僕なんて全然ですよ」

「それは私も同じよ。トラさんの演技に呑まれてしまったもの」

「はっはっは、この道で生きて数十年。まだまだ若いのに負けるつもりはないさ」

 

 こんな感じで談笑していると、スタッフらしき人がモンスターボールを持ってきた。

 映画で使用するポケモンは、スタッフの用意したポケモンでないといけない。

 もしもバリバリシリアスな悪の首領がピンプクで闘ったりしたら、それはもう一種のコメディー映画だ。そうならないように、映画のスタッフがポケモンを用意するんだ。

 

「お二人にはこのポケモンでバトルしてもらいます」

 

 ボールの中に入っていたのは、ニドリーノとニドリーナだった。最終形態ではないが、よく育てられている。

 

「あらあら、おしどり夫婦って感じね」

「そうですね〜」

 

 明らかに狙いまくってる人選…… もといポケ選だ。

 

「私のポケモンは…… ふむふむ、成る程」

「トラさんはどんなポケモンですか?」

「うむ、これだよ」

 

 トラさんのボールを見てギョッとする。ボールに入っていたのはニドキングだった。

 ニドキング。言うまでもなく、ニドリーノの最終進化形態だ。

 サシの勝負なら敗戦濃厚だけど、カルネちゃんと2人で闘えば勝率は8割といったところだろうか。僕は兎も角、相方がチャンピオンですし。

 

「……これは、厳しい闘いになりそうね」

「え?」

「いいえ、何でもないわ! そろそろ撮影が再開するわよ」

 

 それから間も無く、撮影が再開した。このままさっきの続きを撮るらしい。

 ボールを構え、決めポーズをしながら投げた。少し恥ずかしいけど、映画のお約束なのだから仕方がない。

 トラさんもボールを手に持つ。たったそれだけで、ハッと息を呑んだ。余計なポーズなど入れず、ただただ自然にボールを投げた。

 

「頼んだ、ニドリーノ!」

「お願い、二ドリーナ!」

「蹴散らせ、ニドキング」

 

 それぞれのボールから、それぞれのポケモンが繰り出された。審判はいない。ポケモンを出した時点で、バトルは始まっている!

 

「先手必勝よ! 冷凍ビーム!!」

 

 カルネちゃんの指示が響いた。

 二ドリーナの角の先に冷気を帯びたエネルギーが収束する。ある程度のサイズになると、一筋の閃光がニドキングを撃ち抜かんと空を切った。

 ニドキングは毒・地面タイプ。氷タイプの技は効果抜群だ!

 

「火炎放射」

 

 冷凍ビームが直撃する寸前、ニドキングの口から炎が放たれた。

 炎は冷凍ビームを呑み込み、そのままニドリーノたちへと迫っていった。

 

「躱して!!」

「躱せ!!」

 

 ニドリーノたちはその場から跳び退いた。その直後、さっきまでニドリーノたちがいた場所は炎に包まれた。どうにか直撃は避けたけど、2匹とも少しダメージを負ったみたいだ。

 タラリ、と冷や汗が流れる。冷凍ビームの威力と、この天候のおかげで勢いが衰えていたからこそ、2匹はどうにか躱せたのだろう。

 完全に虚をつかれた。まさか、限界まで引きつけて火炎放射を指示するなんて。カルネちゃんに目を向けると、彼女も同じ様子だった。

 このやり取りで確信した。トラさん、めっちゃ闘い慣れてる……!

 

「畳み掛けろ、メガホーン」

 

 その巨体からは想像もつかない速度でニドキングは肉薄した。すかさず角を降り上げ、ニドリーノに振り下ろした。

 

「させない、守る!」

 

 ニドリーノが前に出て、緑色のバリアを張ってニドキングのメガホーンを受け止めた。

 うおおぉ、間に合ってよかった!!

 

「ナイスよライム君! 二ドリーナ、手助け!」

 

 ニドリーナは前足で二ドリーノの身体に触れた。決して逆セクハラではない。

 手助け。味方の攻撃力を上げる技だ。これだけで攻撃力が上がるかは謎だけど、上がるったら上がるんです。

 何はともあれ、ナイスアシストですカルネさん!

 

「穴を掘る!!」

「逃がさん、怪力!!」

 

 次の瞬間、ニドキングの剛腕が二ドリーノを吹き飛ばした。

 一瞬ヒヤッとしたが、二ドリーノは空中で体勢を整えて、そのまま雪に潜っていった。これだと雪を掘るじゃね?

 穴を掘るは地面タイプの技だ。ニドキングに対してダメージは2倍となるが、それだけじゃない。手助けと二ドリーノの特性、闘争心で更にダメージが底上げされている。

 闘争心とは、性別が同じタイプなら攻撃力が上がる特性だ。因みに、性別が違う場合は攻撃力が下がる。

 

「ニドキング、地面にもう一度怪力!」

 

 ニドキングが右腕を振り上げた。

 地面を砕いてニドリーノの動きを制限するつもりか!! ホント、戦い慣れ過ぎだろ!!

 

「二ドリーナ、右腕に冷凍ビーム!」

 

 拳が振り下ろされる瞬間、二ドリーナの冷凍ビームがニドキングの右腕を凍らせた。

 関節ごと凍ったのか、ニドキングの腕はピクリとも動かなかった。

 

「ぎゃう!!」

 

 ニドリーノはニドキングの真下から現れた。勢いそのまま、ニドリーノはニドキングの懐に突っ込んだ。

 鈍い音が響いた。ニドキングは後ろからゆっくりと地面に倒れた。雪が舞い散った。ニドキングは起きる素振りを見せなかった。

 トラさんは一つ息を吐き、ニドキングをボールに戻した。

 

「完敗、だな……」

 

 か、勝った……!!

 やはり、こちらが有利な技構成と状況だったのだろう。本当の意味で、トラさんに勝った気がしないし。まったく同じ戦力で、勝てたかどうか……。

 

「勝った……。勝ったよ、カルネちゃん!」

「ええ、ライム君!」

 

 カルネちゃんの手を取ろうとした瞬間、何かが裂ける音がした。

 

「えっ?」

 

 カルネちゃんの立っていた地面がヒビ割れた。まさか、クレバス!? さっきまでの激しいバトルが原因か!!

 吸い込まれるように、カルネちゃんが雪の割れ目へと落ちていった。カルネちゃんを追うように、僕はほぼ無意識にクレバスへと飛び込んだ。

 カルネちゃんは今にも泣きそうな表情だって。僕は彼女の手を掴み、抱き寄せた。

 底がまだ見えない。僕はいいとして、カルネちゃんは無事じゃ済まない!

 やがて、暗闇のような地面が僕らを待ち構えて―――

 

 

 

 

★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 誰かが僕の名前を呼んでいる。その声に引っ張られるかのように、僕は眠りの世界から現実へと引き戻された。

 目を開けると、そこには目尻に涙を溜めながら僕の名前を呼ぶカルネちゃんがいた。

 

「カルネちゃん……」

「喋っちゃダメ!! 重傷なのよ!?」

 

 ああ、そうだった。背中から落ちて、カルネちゃんのクッションになったんだっけ。

 怪我は…… うん、そこまで酷くないな。背中が冷たい。どうやら、クレバスの衝撃で先に落ちていった雪がクッションになってくれたみたいだ。

 上から微かに光が差し込んでいる。どうやら、そこそこ深い場所のようだ。

 今すぐにでも起き上がんなきゃだけど、何となく空気を読んで横になっといた。

 

「カルネちゃん…… なんだか、とっても寒いんだ」

「ま、待ってて! 今すぐ助けを……」

 

 震えさせた手で、僕はカルネちゃんのおっぱいに手を伸ばした。

 うっひょおおおおおおおお!!!! おっぱいおっぱい!!! 低反発、低反発!!!

 

「!!!???///」

「温かい…… 心臓の鼓動も感じる。良かった、僕は君を守ることができたんだね」

 

 自分でもよく分からない言い訳を並べる。いやね、なんかもう雰囲気でゴリ押せるかなって。

 

「ライム君……!!!」

 

 カルネちゃんは僕の手を包み込み、胸にぎゅっと押し当ててくれた。ごめんなさい、本当は純度100%の下心なんです。だけど、罪悪感より快感の方が遥かに大きいぜ!!!

 流石に揉んだらあれなので、手の平を微振動させておっぱいの柔らかさを堪能する。

 巨乳ではない。が、美乳!! 美乳なのだ!! 流石は女優、おっぱいの形にも気を遣っておる。

 寒いおかげで、カルネちゃんのポッチもビンビンになっている。悪くない…… 悪くないじゃないか、寒い気候も!!

 指を動かしたい!! 5本の指をピアニストと如く動かしたい!!

 もういいよね、いっちゃっていいよね? 限界だ!! 揉むね!!

 

「無事か、2人とも!?」

 

 真横の壁がぶち抜かれた。壁の穴から現れたのは、ニドキングに乗ったトラさんだった。あのニドキング、穴を掘るまで覚えていたのか。

 助けに来てくれたのはありがたいけど、なんてタイミングの悪い……!! あと3分…… いや、2分あればもっと先まで行けたのに!!

 あっ、映画は無事に撮り終えました。僕がカルネちゃんを助けるため、クレバスに飛び込んだのを映画に流用したせいか、かなり話題のヒット作になりました。

 

 




映画を見たそれぞれの反応
Kさん「誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰あの女誰」
Hさん「私も夢に向かって頑張んないとな」
その他「」

 演技力の伏線、無事回収です。
 感想・評価してくれると嬉しいです。












 次回、原点にして頂点 VS 変態紳士



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