とある少年が、全女性ジムリーダーのおっぱいを揉むという夢を抱いたそうです   作:フロンサワー

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 どうしてこうなった回、第二弾です。


17歩目 ライモンシティ

 

 やあやあ、変態紳士諸君。立てばアブノーマルジェントル、座れば変態紳士、歩く姿はマジ変態紳士。毎度お馴染み、ライムだよ。

 僕がいる街はライモンシティ。テーマパークが立ち並ぶ、活気溢れる娯楽都市だ。

 僕がこの街にいる理由は一つ。この街のジムリーダー、カミツレちゃんのおっぱいを揉むためだ!

 さてさて、カミツレちゃんはトップアイドル。普通におっぱいを揉んだら、今度こそ牢獄にぶち込まれるかもしれない。最新の注意を払って事故に見せかけないと。

 よーし、今回は僕の演技力が試されるぞ! 気合い入れないと!!

 

『ライムさん、ライムさん。とうとうライモンシティの観覧車が見えてきましたね』

「あぁ〜…… なんか、頭痛が酷くなってきた。こりゃ風邪だな。今日1日は養生しないと」

『照れ隠しですね分かります』

 

 サイコキネシスで動きを封じられ、ズルズルと観覧車まで引き摺られた。主従逆転してません?

 抵抗すら叶わず、とうとう観覧車待ちの列に並んでしまった。皆楽しそうな表情だけど、僕を見ろよ。まるで、隕石が地球に迫っているかのような顔だろ?

 僕らの順番が徐々に迫ってくる。いっそ一思いにやってくれよ!!

 そう思ってたら、順番が一気に回ってきた。いや、本当にそんな願いが通じても……。

 

「お待たせしました。お一人様の場合、相席と―――」

『あぁ……?』ドドドドド!!!

「ごゆっくりお楽しみ下さい!!」

 

 サッちゃんの迫力に押され、職員のお姉さんは一瞬で観覧車の扉を開けた。ですよね、怖いですよね。

 上機嫌そうなサッちゃんは、軽やかに観覧車へと乗り込んだ。どうでもいいけど、僕はお姫様抱っこされています。

 

『ライムさん、いつもと違うシチュエーションってそそりますよね!』

 

 バタン、と扉が閉められた。まるで、地獄の門が閉じられたかのように僕は聴こえた。

 サッちゃんとのデートを安請け合いするんじゃなかったと、心の底からそう思った。

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 サッちゃんとデートした翌日、僕はライモンジムに挑戦した。

 昨日の観覧車で何があったって? サッちゃんがツヤツヤしてたとだけ言っておこう。

 今回のジムは、ファッションショーのステージみたいな内装だ。というか、まんまだ。ホミカちゃんのジムといい、ジムを完全に私物化していませんか? まあ、別にいいけどさ。

 そんなこんなでジムトレーナーのお姉様方にバリバリ勝ちまくり、あっという間にカミツレちゃんへの挑戦権を獲得できた。女の子とのポケモンバトルは真面目にやんなきゃだからね。

 それにしても、凄いジムだな。後ろのモニターにカミツレちゃんがどアップで映ってるよ。流石はトップモデルだ。どアップでも美しい。

 さて、そろそろ行くとしますか。女性を待たせるなんて、男のする事じゃないからね。

 ステージの奥に進むと、一際オーラを放つ女の子がいた。間違いない、この子がカミツレちゃ―――

 

「こんにちは、チャレンジャーさん。貴方のお名前を聞かせてくれるかしら?」

 

 うおああぁあおぁあ!!! なんてハイレベルな露出!! 生足、生腰、生わき!!

 だけど、おっぱいがない! それはもう、悲しいくらいおっぱいがない!!

 ホミカちゃんは成長の余地があったけど、カミツレちゃんのおっぱいには成長が見込めない。こんな断崖絶壁、そうそう味わえないぞ。こいつは期待できそうだ。

 

「ライムです。以後、お見知り置きを」

「よろしくね、ライム」

 

 ポーカーフェイスは崩さないっと。態度にはおくびにも出さないようにしないと。

 

「私のポケモンとライムのポケモン。どちらが輝けるか、ここで比べましょう!」

 

 カミツレちゃんがコートを投げ捨てた。うっひょいうっひょい! 露出が増えたぞ!!

 カミツレちゃんがモンスターボールに手を掛け…… あれ? あの衣装の何処にモンスターボールを入れてたんだ?

 おっと、どうでもいい事を考えてる場合じゃない。僕も繰り出すポケモンを選ばないと。

 カミツレちゃんのエキスパートは電気タイプ。なら、繰り出すポケモンはあいつに決まっている。

 モンスターボールに手を掛ける。さあ、2連戦だぞ!

 

「お願い、ゼブライカ!」

「頼んだ、イケメソ!!」

 

 フィールドに降り立ったのはマッギョことイケメソ、そしてゼブライカだ。

 

『ライム君、昨日は…… うん、触れた僕が悪かった。だから、打ち上げられたコイキングみたいな目をしないでよ』

 

 えっ、そんな目してた?

 僕のぷりちーな目が打ち上げられたコイキングみたいなんて、冗談にもほどがあるよね!

 

「マッギョのイケメソ…… とっても素敵なニックネームだわ!」

「………そう?」

 

 自分でニックネームを付けといてアレだけど、素敵なニックネームではないと思うよ? ピッタリではあると思うけど。

 

「これより、ライモンジムジムリーダー『カミツレ』対、チャレンジャー『ライム』のポケモンバトルを始めます。使用ポケモンは1匹。どちらかのポケモン1匹が戦闘不能になり次第、バトルを終了します」

 

 相手のゼブライカは高い攻撃力と素早さを誇る。つまり、ホミカちゃんのペンドラーと似たような能力値のポケモンだ。

 さて、どうするか。イケメソならゼブライカの電気技を無効にできるけど、問題はこっちの攻撃が当たるかなんだよなぁ……。

 ああ、そうだ。ペンドラーとの闘いで編み出した幾つかの対抗策を使うとしよう。

 

「それでは、バトル開始!」

 

 まず、ゼブライカの特性を確認しないと。事と次第によっちゃ、作戦を変えなきゃだからね。

 

「イケメソ、10万ボルト!!」

 

 イケメソが放出した電撃がゼブライカを襲う。しかし、ゼブライカがダメージを負った様子はなく、逆に電気エネルギーがゼブライカの四肢に集まっていた。

 あのゼブライカ、躱すまでもないって表情だな。なんか腹立つ!

 

「この子の特性は電気エンジン! 電気技を受けると素早さが上がるわ!! ライムの攻撃は逆効果よ!!」

 

 OK、それなら話は早い。このまま10万ボルトで攻めまくる!!

 

「ニトロチャージ!」

 

 その身を炎に包みながら、イケメソに突進するゼブライカ。

 ニトロチャージは攻撃技である反面、素早さを上昇させるという補助効果もある。

 攻撃を与えつつ、素早さを上げて撹乱する作戦か。まあ、予想通りの作戦だね。

 

「10万ボルト!」

「ッ!?」

 

 10万ボルトをものともせず、イケメソに攻撃するゼブライカ。だけど、ニトロチャージは炎タイプ。イケメソのダメージは小さい筈だ。

 カミツレちゃんの表情がどんどん不機嫌になっていく。大きなダメージを与えられなかったから…… じゃなさそうだな。

 

「なんのつもりかしら、ライム。まさか、勝負を投げちゃったの?」

「まさか。勝つ気満々だよ」

「それなら、ここからどうするか見ものだわ。ゼブライカ、もう一度ニトロチャージ!」

 

 ゼブライカは縦横無尽にフィールドを駆け抜ける。何度も素早さを底上げしているだけあり、そのスピードは尋常じゃない。

 だけどそれは、ゼブライカにとってもだ。これだけのスピード、果たして制御できるのかな?

 見ろ、見ろ、ひたすら見ろ。あの速さに合わせて目を動かせ。ゼブライカの動きを予測しろ!

 スピードを持て余しているのか、動きが単調だ。この分なら、ゼブライカの動きも捉えられる!

 

「左後方に大地の力!」

 

 イケメソがバトルフィールドにエネルギーを送り、左後方の地面を砕いた。そう、ゼブライカの進行しているコースだ。

 普段のゼブライカなら、こんな攻撃など余裕で躱せただろう。だけど、小回りの利かないこのスピードならどうなるか?

 そう、直撃だ。

 

「がぁう!!??」

 

 大地の力をくらったゼブライカは目を回して地面に伏せた。

 僕をスピードで翻弄したいなら、スモモちゃんの親父さんくらいは速くないと無駄だよっと。

 

「ゼブライカ、戦闘不能! よって、勝者はチャレンジャーのライム!」

 

 あぁ〜…… 目がゴロゴロする。

 まあ、勝てて良かったけどさ。

 

『お疲れ、ライム君。ナイスな指示だったよ』

「どういたしまして」

 

 イケメソをボールに戻す。イケメソで勝負するならおっぱいを触る前だな、うん。

 

「まさか、スピードを逆手に取られるなんて。イケメソだけじゃない、ライム自身もとても輝いていたわ。その輝きに敬意を払って、このボルトバッジを渡すわ」

 

 カミツレちゃんの手にはボルトバッジが握られていた。うわ、まんま雷やん。

 僕はボルトバッジを受け取ろうと――― する振りをして、おっぱいを揉む作戦開始!!

 

「うわっ!?」ペチャ!

「きゃっ///!?」

 

 押し倒さないように優しく両手をおっぱいに当てる。

 断崖絶壁! 断崖絶壁!! 絶壁なんだけど何故か柔らかい!!

 というか、この服装って下着と何が違うの!? おっぱいの温もりがダイレクトで伝わるんですけど!

 おっと、今回は自重しとこう。カミツレちゃんはトップアイドル。さっさと離れないと、僕の人生が終わってしまう。だけど、この感触は脳裏に刻みつけたよ!!

 顔を真っ赤にしてるカミツレちゃんから離れる。そして―――

 

「さーせんっしたぁー!!!」

 

 土下座した。ふっ、当たり前だろ? 誠意を見せないと、誠意を。

 

「だ、大丈夫だから! 顔を上げて!! ほ、ほら…… 胸を触られてもマーイーカってね!」

 

 おおぉっ…… 殴らへれない!!

 新しい、新しいパターンだぞ!?

 

「あ、ありがとうございま…… ブフッ!」

「さ、さっきの面白かった!?」

 

 カミツレちゃんが嬉しそうな顔を浮かべた。

 女の子がギャグを言ったら笑っとけってじっちゃんが言ってたけど、効果は抜群だな。

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 次の街を目指し、人通りの少なくなった夜のライモンシティを進んでいる。気のせいか、不気味な静けさが夜を支配してるようだ。さっさと逃げろという啓示だろうか?

 それにしても、今日は良い1日だったな。物理ダメージを負わず、無事にジム戦を終えれたし。やっぱり、勝利したからこそ事故に見せかけれるんだよね。こう、厳しい鍛錬を積んだ真面目な人と勘違いされて。

 でも、一番の理由はカミツレちゃんは優しかったからだろうなぁ。まさか、自分から「事故だから気にしないで」と言ってくれるとは。

 この調子で、警察にもマークされずガンガンいきた――― 殺気!!?

 

「くっ!!??」

 

 地面を蹴り、後方へ跳ぶ。

 その瞬間、僕のいたアスファルトに3匹のヒトツキが突き刺さった。

 危なっ!? これ、ぼーっとしてたら針山みたいになってたよ!!

 いや、それよりも! 2kgの重量を持ったヒトツキ3匹が、アスファルトに突き刺さる勢いで同時に飛来してきただと!?

 絶対に普通じゃない! 誰がやったんだ、こんな人外染みた真似!!

 

 

 

 

 ―――ゾクリッ!!!

 

 

 

 

 野生の勘、という奴だろうか。トレーナーにも容赦無く襲ってくる野生ポケモンと戦ってきたからこそ、自然と身についたものだ。

 その勘が言っている。今すぐ振り向け、後ろにいる奴から一瞬たりとも目を離すなと。

 瞬時に振り向き、ヒトツキの主を探そうと目を走らせる。何処にもいない――― いや、上か!

 顔を上げると、ビルの頂上に佇む人影を捉えた。月明かりに照らされ、鮮明なその姿が僕の双眸に焼き付けられた。

 風にたなびく年代物であろうコート、獅子のように逆立った頭髪、頬に刻まれた古傷、丸眼鏡の奥底に潜む狂気に満ちた目。その姿が、何故か天使のようにも見えた。

 

「我らは女神の代理人。神罰の地上代行者。我らが使命は、我が女神に不埒を働いた愚者をその肉の最後の一片までも絶滅すること」

 

 女神…… 多分それは、カミツレちゃんなのだろう。つまり、彼女のおっぱいを揉んだ―――女神を穢した―――僕に神罰を下すため、この男は現れたんだ。

 両手に持つヒトツキを十字に交差させ、歪な金属音を奏でながら刃を擦り合わせた。

 

「エ゛ェェイ゛ィメン゛ッッ!」

「―――ッ!!!!」

 

 瞬間、僕は駆け出した。

 ダメだ、あれはダメだ。どう見積もってもスモモちゃんの親父さんと同格だ。僕がどうこうできる相手じゃない。

 

「るぅぅう゛ゔぁあ゛ああ゛ぁあああ゛!!!!!」

 

 人外染みた雄叫びが響いた。

 右、左とステップを刻みながら、投擲されるヒトツキを躱す。

 つーか、どんだけヒトツキ飼ってんだよ! ポケモンを大切にしろ!!

 それにしても、本当に末恐ろしいおっさんだ。僕が逃げるコースを予測して、寸分の狂いもなくヒトツキを投擲してきやがる。少しでも気を抜けば、愉快なオブジェとなってしまうだろう。逆に言えば、限界まで集中すれば逃げ切れる!

 

「我らは己らに問う!! 汝ら何ぞや!!」

 

 おっさんが暗闇に問い掛ける。何を言って……!?

 

「「「我らはカミツレ親衛隊、カミツレ親衛隊なり!!」」」

 

 いつの間にか、ビルの屋上には無数の人影で埋め尽くされていた。僕に気配を勘付かれずに待機してたってのか……!!

 というか、全員が眼鏡かけてる!! 気持ち悪っ!!

 

「ならばカミツレ親衛隊よ、汝らに問う!! 汝らの右手に持つ物は何ぞや!! 」

「「「短刀と毒々玉なり!!」」」

 

 僕の逃げ場を塞ぐように、何人もの眼鏡が現れる。

 こいつら、一人一人が僕の戦闘力を上回っていやがる!! こいつらを避けて進むしかない!!

 

「ならばカミツレ親衛隊よ、汝らに問う!! 汝らの左手に持つ物は何ぞや!!」

「コイン三十と穴抜けの紐なり!!」

 

 おっさんの投擲するヒトツキの数は、衰えるどころか激しさを増している。本当に何匹持ってんだ!!

 

「ならばぁ!! ならばカミツレ親衛隊よ!! 汝ら何ぞや!!」

「「「我ら使徒にして使徒にあらず。信徒にして信徒にあらず。教徒にして教徒にあらず。逆徒にして逆徒にあらず!!」」」

 

 ジワジワとひと気の無い場所へと追い込まれていく。逃走経路が潰されていく。

 そして、その時が来てしまった。

 僕の前に広がるのは広大な壁。そして、後ろにいるのはおっさんと眼鏡の集団。

 決して偶然じゃない。やつらの策略に嵌り、まんまと行き止まりの裏路地に誘い込まれてしまった。

 

「我ら死徒なり。死徒の群れなり。ただ伏して女神に許しを請い、ただ伏して女神の敵を打ち倒す者なり。闇夜で短刀を振るい、夕餉に毒々玉を盛る者なり。我らカミツレ親衛隊なり、カミツレ親衛隊なり!! 時至らば、我らコイン三十神所に投げ込み 、穴抜けの紐をもって己の素っ首吊り下げるなり。さらば我ら徒党を組んで地獄へと下り、隊伍を組みて方陣を布き、七百四十万五千九百二十六の地獄のキモオタと合戦所望するなり!!!」

 

 両手にヒトツキを携え、一歩一歩迫るおっさん。まさか、僕の夢を阻むのが警察じゃないなんてね……。

 くそ! こんなんなら、誰にも見られない場所でカミツレちゃんのおっぱいを触れば良かった……!!

 おっさんは緩慢な動きでヒトツキを振り上げる。その目に、一切の情はない。

 

「アポカリプス、ナウ(黙示の日まで)!!!」

 

 風切り音が響く。あまりの恐怖に、僕は目を瞑った。

 ブワリ、と体が上空へと引っ張られる感覚を覚える。目を開けると、僕の真下には光り輝くライモンシティが広がっていた。やった! 僕、天国に行けるよ!!

 

『ったく、世話の焼ける……』

「あれ、ファーザー!!??」

 

 ファーザーは僕の肩をお掴みになりながら、悠然と夜の空を羽ばたきなさっていた。

 まさか、あの一瞬でモンスターボールから出て来たっての!?

 

『覚えておけ、ライム。あらゆる事態を予測し、数多の災禍からファミリーを護る。それが、ファーザーの役目だ』

「ファァァァァァザァァァァァァァァ!!!!」

 

 この方に一生ついて行くと、改めてそう思った。

 

 





種族:人間
名前:ライム
性別:男
特性:逃げ足
性格:変態紳士
備考:我らが変態紳士。おっぱいフェチである。血の滲むような努力により、様々な特技を身につけている。最近身につけた特技が、スモモちゃん直伝の一本背負い。素早さ極振り写輪眼持ちゾンビのような身体能力。ただし、攻撃力はショボい。


 球磨川禊 VS アンデルセン神父です。
 正直、最後に全部持ってかれた感が。
 感想・評価、お待ちしています。

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