霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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八十四話

「ご主人様……。私、綺麗ですか?」

 

「ああ、綺麗だよ。俺には勿体無い位だ」

 

森の中にある花畑に囲まれた小さな教会の前に一誠と玉藻は居た。一誠は黒のタキシード。玉藻は純白のウェディングドレスとシルクのヴェールを身に纏い、手には小さなブーケを持っている。一誠はヴェールを開き、真っ赤に染まった玉藻の頬にそっと手を当てる。そして、愛おしそうに優しくキスをした。

 

「新婦に問います。私、兵藤一誠を生涯……いえ、死後も伴侶とし、魂が尽きるまで愛を貫くと誓いますか?」

 

「……はい、誓います。新郎に問います。私、玉藻を死後も伴侶とし、魂が尽きるまで愛を貫くと誓いますか?」

 

「はい、誓います」

 

「「それでは誓いのキスを……」」

 

二人は抱き合って再びキスをし。二人だけの結婚式は終了し、一誠は玉藻をお姫様抱っこで担ぎ上げ、花畑に寝かせる。そしてそのままスカートの中に手を入れ、下着に手をかけた。

 

 

 

「脱がすよ?」

 

「ご主人様、来て……」

 

玉藻も一誠を受け入れるように両手を前に伸ばし、そのまま二人は……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……無粋」

 

っといった所で仕事用の着信音が鳴り響き、周りの景色は一変、一誠の部屋になる。どうやら先程までの景色は幻覚で、結婚式はプレイの一環だったようだ。花嫁衣裳を着た玉藻は不機嫌そうに頬を膨らませ、一誠も不満そうにしながら携帯を手に取る。発信先はランスロットの部下である元円卓の騎士達からであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主よ、申し訳ございません。テロリストの幹部を取り逃がしました」

 

「……何があったの?」

 

騎士達は昼間にあった事を一誠に説明する。ランスロットとロスヴァイセとのデートの尾行中、怪しい悪魔がロスヴァイセに声を掛けようとしていたので拷問(尋問)した所、彼女を姉の代わりにしようとしたらしいのだ。

 

「気持ち悪っ!」

 

「でしょ~? 髪の毛を死滅させて、ダークマター(姐さんの味噌汁)を飲ませた後、根性を叩き直す為に、ちっとやそっとじゃ抜けない剛毛が生える毛生え薬で黒ビキニを着てるみたいにして、亀甲縛りで放置してたんですが……ラブホに入った二人を冷やかそうと入り口前に待機しに行ってる間に逃げられまして。やっぱ、縛りにくいからってグレイプニル外したのが悪かったんですかねぇ?」

 

「半年間の減給。あ、もちろんデートの様子は……」

 

「録画済みです!」

 

「減給は三ヶ月ね。……じゃあ、俺はもう寝るから」

 

一誠は電話を切ると机の上にそっと置く。その首には玉藻の腕が後ろから絡みついていた。

 

「じゃあ、続きと行きましょうか、ア・ナ・タ♥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう? 新居には慣れた?」

 

「……はい。姉様がご飯を持ってきてくれますし、問題はありません」

 

《すいやせんねぇ、白音さんも一緒に暮らせれば良かったんでやんすが》

 

次の日、一誠とベンニーアは小猫を交えて昼食を摂っていた。黒歌の身内なので二人も気に掛けているのだ。

 

「……気にしないで下さい。私の我侭でもありますから」

 

リアス達と違って自分は普通に暮らしている事に対する気負いは一誠の説得(洗脳)で薄れている小猫であったが、まだ心の奥底で気にしているようだ。もっとも、最近まで一誠の顔を真面に見れなかった事から考えれば大した進歩だが。

 

 

自分が人質になったから皆殺しは避けられた。元はといえばリアス達が悪い。いや、それを言うなら姉と引き裂かれた原因は貴族を管理できていないサーゼクス達にある。そう言い聞かされ、自責の念から逃れる為に小猫自身も無意識にそう思うようになり出していた。

 

まさに、一誠達の計画通りである。

 

 

 

 

「そう。なら、今度の休暇に冥界に遊びに行かない? 会長から良い物貰ったんだ。高級リゾートホテルの宿泊券。しかも、デラックススィート」

 

 

 

 

 

 

 

それは昨日の事である。一誠は行き成りソーナにホテルの宿泊券、そして大金が書かれた小切手を渡された。

 

「今度の休日、アガレス領の首都である浮遊都市アガレウスの近くの町で私達が作った学校の体験授業があります。これはアグレアスにあるホテルの宿泊券です。どうぞお使い下さい。小切手は交通費です」

 

「……確か近くにある体験入学をする町では、魔法使いの集会もあるんだっけ? 子供は人質になるよねぇ。あ、もしテロに出くわしたら嫌だなぁ」

 

「その時は迷惑料として小切手の五倍の金額をお支払い致します」

 

二人は暗に契約を交わしているのだ。何かあった時は金を対価に力を貸す。テロ対策の人員は不足しており、狙われていると分かっている魔法使いの護衛に避ける人員も少ない。かと言って正式に護衛を依頼しては学園に冥府が関わっていると思われかねない。故に、偶然居合わせたから力を借りた、という風にする事となった。

 

本当なら今回の授業も中止にするべきなのだが、そうすれば反対派の貴族に付け入る隙を見せる事となる。故にソーナは一誠に依頼する事にしたのだ。

 

 

「結構な大金だけど大丈夫?」

 

「……命はお金では買えませんから」

 

「そりゃそうだ。分かってるじゃん」

 

 

それはソーナのほぼ全財産。しかし、今回起きるであろうテロから冥界の未来を背負う子供達を守る為なら安い。ソーナはそう考えていた。それを察したのか、一誠も特に渋らず依頼を受ける事にしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハーデス様は、お前が個人的な友人から貰ったものだから関与しない、だってさ。つまり、小切手は全部俺の物って訳さ」

 

「折角のお誘いですが私は……」

 

「食事は三食バイキングだって」

 

「行きます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~う~」

 

イリナはベットの上に寝転がると枕に顔を埋め、足をバタバダと動かす。その顔は真っ赤に染まっており、先ほどから思い起こしているのは先日の一誠の言葉を思い出す。

 

『いや、好きだよ』

 

この言葉は自分の事が嫌いか、という質問に対して返された言葉で、一誠はお笑い芸人に対する『好き』のつもりで言ったのだが、教会育ちで知識が乏しいイリナは軽い恋愛脳に陥っており、likeではなくloveの方だと判断してしまっていた。

 

 

 

「……イッセー君と私は幼馴染。そして婚約者の居る死神で、私は天使。でも……あ~もう! こういう時は桐生さんに相談よ!」

 

イリナはベットの上のBL漫画を投げ捨てると、自分に足りない知識を多く持つ桐生に相談する事にした。そして一時間後、相談に乗ってもらい、とりあえずデートに誘う事にしたイリナは、

 

 

 

「あ、もしもし? 小猫ちゃん? イッセー君の家の番号教えてくれない?」

 

携帯番号どころか家の番号も知らなかったので小猫に訊いた。普通なら幼馴染なのに家の番号さえ教えて貰えていない事に疑問を持つ所なのだが、これがイリナが残念(イリナ)たる所以なのだ。数分後、一誠の許可を取った小猫から教えて貰った番号に掛けると直ぐに一誠が出た。

 

 

 

「イッセー君? 明日の放課後に遊びに行かない? 私、良い店知ってるのよ。商店街の外れにある喫茶店が美味しいのよ」

 

「なぁ~んだ、天界絡みの事言って来ると思ったけど、よく考えれば数が揃ってこその御使い(ブレイブ・セイント)なのに、ハブられてるのか何時もボッチのイリナちゃんが大役を任されるはずもないか。悪いけど面倒だから……」

 

「ちなみに私は常連だから、一緒に行けば隠しメニューも頼めるわ。隠しメニューの芋餅入り南瓜ぜんざいは最高よ。……ハブられてないもん。単独任務なだけだもん! 多分……」

 

「行く!」

 

イリナはどうでも良いが隠しメニューは食べたい一誠は即座に承諾する。だが、通話を切ると後ろに玉藻の姿があった。

 

 

 

「あの店、私も行ってみたかったんです。今度、連れて行ってくださいませ♪ 勿論、二人っきりですよ?」

 

「あれ? 怒ってないの? 良いよ、美味しかったら明後日行こう」

 

「何を怒る必要が御座います。あの自称天使にご主人様が靡く可能性は皆無。そして夫の友人関係に口出しするなど良妻狐に有るまじき行為です。でもぉ、兆が一浮気したらどうなるか分かってますよね? ゴールデンボールクラッシャーですよ? あ、ちゃんと後で癒して差し上げますから♪」

 

「いや、イリナちゃんと浮気なんて無い無い」

 

そして散々な言われ方をしている事など残念な天使(イリナ)は露程も思わず、次の日の放課後。二人はイリナが一押しする喫茶店『ファイナルティブラスト』に来ていた。店主は国籍不明の男性。たくましい体つきに左目の傷が特長だ。

 

 

「いらっしゃいませにょ」

 

「あれ? こんな店員さん居たっけ……」

 

出迎えた店員は筋肉ムキムキの漢の娘。何処かで見覚えのあるミルたんに案内され、二人は窓際の席に座る。そこでイリナは昨日伝授された作戦を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

「良い? まずパフェを注文して……食べきれないって言うの。そして二人で一杯のパフェを食べる。当然、同じスプーンでね」

 

「そ、それって間接キ……堕ちる、堕ちちゃぅぅぅぅぅっ!」

 

「そう! うまくやれば落とせるわ。あれ? イリナ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、私はオレンジジュースとダチョウ肉のボロネーゼと……抹茶パフェを」

 

イリナは伝授された作戦通りにパフェを注文する。後は折を見て決行するだけ……。

 

 

 

「じゃあ、俺は超ジャンボパフェと芋餅入り南瓜ぜんざいと特盛カツカレー、食後にホットで」

 

「そのパフェは五人前はありますけど食べれますかにょ?」

 

「大丈夫、大丈夫。それに俺は食べきれないのに注文するのって嫌いなんだ。料理を作った店の人に失礼だもん。イリナちゃんもそう思うよね? あれ? あの壁に貼られている写真。あれだけ食べれるのに其れだけで足りるの?」

 

「と、当然よ!」

 

そして、作戦決行前に作戦は失敗した。壁に貼られていたのは制限時間内に食べ切ったらタダになるメガ盛りメニューの内、五キロステーキと五人前のカツ丼、そして一リットルのクリームソーダの計三種類を食べきって自信満々にしているイリナの写真。此れで食べきれないとはとても言えず、二人は普通に食べ終えて解散した。

 

 

なお、良い店を教えて貰ったのでイリナに対する一誠の好感度が少し上昇した。

 

 

 

そしてテロが予測される休日のアグレアスの高級ホテル近くのショッピングモール。其処には一誠と玉藻と黒歌とベンニーア、そして小猫の姿があった。

 

「アレは! 期間限定モデルのネックレス!」

 

「あ、この服、白音に似合いそうね」

 

《あっしは新しいバックが欲しいでやんす》

 

「……あれ、食べたいです」

 

四人は思い思いに買い物を続け、荷物持ちは当然のごとく一誠。異空間に荷物を仕舞えるので肉体的には大丈夫でも、長時間付き合わされて精神的な疲労は溜まる一方。やがて四人がエステを受けるというので漸く休憩を取る事ができた。

 

「……あ~疲れた。何であんなに買い物が好きかな?」

 

「全くだ。俺も妹や眷属に付き合わされて疲れた。こんな事ならずっと引き篭っていた方が良かったな。なぁ?」

 

一誠の呟きが聞こえたの隣りに座っていた青年が話しかけて来た。当然二人は顔を合わせ、青年の方は一誠の顔を見て固まる。瞬く間にホスト風の整った顔が恐怖に歪んだ。

 

 

 

 

 

 

「お、お前はっ!?」

 

「あっ! 君は……誰だっけ?」

 

 




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ふと思いついたラスボス番外ネタ

メデューサ(ソウルイーター) メドーサ(GS美神) 五次ライダー(fate)

前二人で柳くんが文字通り魔『改造』

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