ガルルガの甲殻も剥ぎ取りと報酬あわせて一クエで一個ずつしか出なかったけど漸く……
ゲーム少し前、一誠はテロが起きる可能性について冥界側から示唆があった事を教えられた。
《どうやらアスタロトの小僧がアガレスの小娘を倒した時に急激なパワーアップを行ったのだが、それがオーフィスの力らしいのだ》
恐らく彼がその力を使ったのはテロリスト達からしても予想外だっただろうから、次のゲームの時に仕掛けてくるだろう、という事らしい。なので出席予定の同盟相手達には注意を促したのだが、彼らは自分達がテロを返り討ちにする、と言いだしたのだ。
「……まぁ、神様ってのは面子で飯食ってるみたいな所あるからね。自分達が出席する時を狙ってテロを起こすなんて聞かされたら黙ってられないでしょう。……本当はその辺分かって言って来たんだったりして」
一誠は冗談気に肩を竦める。それを聞いたハーデスも苦笑していた。
《まぁ、そう言うてやるな。ウチの主神殿も、他の神話の神が出てくるんだったら俺も出ないわけには行かない、等と言いよってな。同盟の対価に色々と貰っている身とすれば知らんぷりもできぬし、お前も護衛をいくらか出してくれぬか?》
「いいよ。その代わりお願いがあるんだけど、もしテロが起こった時はグレモリーの所には俺を向かわせて欲しいんだ。白音ちゃん以外は死んでも構わないんだけど……ディオドラに灸をすえたいって言ってる人がいてね」
《良かろう。サーゼクスには儂から言っておこう。どうせ奴の事だから、できれば殺さないで欲しい、等と言うに決まっておるが……生きてさえ居れば言いのだろう?》
ハーデスと一誠は悪役のような笑みを浮かべながら打ち合わせを続けた。
「やぁやぁ、グレモリーさん。さぁ、クジを引いて。……それにしても大変だね。聞いたよ、此の儘だと高校卒業と同時に冥界に帰還になるんだって?」
「……随分と嬉しそうね」
失態の連続で冥界政府のリアスへの評価は深刻なレベルになっていた。短期間に堕天使の侵入を二度も許し、一件目で契約者を殺害され、二件目は危うく街が崩壊する所だった。その他にもライザーとの婚約を我が儘で破棄、これによって関わっていた多くの貴族が面子を潰され、婚約を計算に入れてていた商売なども頓挫した。そして極めつけは会談の際に残していた眷属を使って妨害をされた事だ。この時点で次期当主としての資格を疑われ、ソーナに負けた事を切っ掛けにし、今後十分な成果を上げられないのなら冥界で鍛え直される事となったのだ。
そして、その事を話す一誠の声は嬉しそうだった。
「いや、君達が居るとテロリストが街にやって来るかも知れないじゃん? コカビエルも戦争を起こす為に君達を狙って来たらしいし。俺は両親が巻き込まれないように正体を隠してるけど、君達に巻き込まれてしまうかも知れないじゃん。……悪いけど、契約者一人守れない君達の事なんか信用してないから」
その頃、引いたクジを邪魔だとばかりにゴミ箱に捨てたディオドラは今回の計画が上手く行ってアーシアを手に入れた後の事を夢想し、ほくそ笑んでいる。
「ああ、もう少しでアーシアが手に入る。ふふ、僕が罠にかけて追放に追いやったって知ったらどんな泣き顔を見せてくれるだろう? 怒って僕を苛めてくれるかな? 調教するのも楽しみだけど、そっちも楽しみだなぁ」
「……あんな奴に計画の片棒を担がせるのか。それにあんなのの身内に俺達は……」
「……言うな。虚しくなる」
そして、彼を遠くから観察していた二人の高貴そうな悪魔は計画に不安を感じていた。
「……おかしいわね」
リアス達が転移してきたのは幾つも連なった神殿の前。何時まで経っても開始の合図が聞こえて来ない事に対し、リアスは怪訝そうに呟き、他のメンバーも首を傾げた
その時、神殿とは逆方向に大量の魔法陣が出現した。間近での決戦かと思い、戦闘態勢を取ったメンバーだったが、どれもアスタロト家の魔法陣ではない。
「魔法陣全てに共通点はありませんわ。ただ……」
「ええ、全部悪魔。それも、記憶通りなら『禍の団』の旧魔王派閥に傾倒した者達よ!」
リアス達の周囲に現れたのは上級中級合わせて千を超える悪魔達。その数にリアス達が焦っていると、
「キャッ!」
突如アーシアの悲鳴が聞こえ、振り返るとアーシアを抱きかかえたディオドラの姿があった。
「やあ、リアス・グレモリー。アーシア・アルジェントはいただくよ。彼女さえ手に入れたらゲームなんてどうでも良い。さっさと『禍の団』に殺されてくれたまえ。そうそう、運良く神殿の奥まで来られたら面白い物を見せてあげるよ」
「この卑怯者! アーシアを返しなさい!」
リアスはディオドラを睨みながら叫ぶも彼は笑ったまま消えていく。そして彼女達を囲んだ悪魔達は一斉に手に魔力を作り出し放とうとしていた。
「偽りの魔王の血縁者よ。此処で消えるがいい」
集まった悪魔がリアスを睨みながらそう宣告し、それが合図であったのか一斉に魔力が放たれる。リアスと朱乃は結界を展開し、祐斗は聖魔剣でシェルターを作り出してその上から置い防ごうとするも、何時までたっても衝撃がやって来ない。
「ぎゃあっ!」
「な、なぜ貴様が……」
魔力が打ち込まれる音が消え、代わりに聞こえてきたのは悪魔達の悲鳴。そして、のんきそうな声だった。
「彼らってさ、要は本来の王に付き従ったって者達だね? へ~、結構居るなぁ。今の王ってどんだけ人望がないんだよって話だよね」
「な、なんで貴方が此処に!?」
リアス達の目の前では一誠が悪魔達を葬っていた。無数に打ち込まれる魔力も赤龍帝の力が込められた鎧には通じず、反対に一誠が操る黒い球体は次々と悪魔の体を打ち抜いていく。腹や胸に風穴を開けられた悪魔たちは血反吐を吐き、臓物をまき散らしながら倒れていく。殆どの者が即死し、運悪く生き残ってしまった者は地獄の苦しみの中、殺してくれと叫んでいた。
「いやさ、ディオドラがテロリストと繋がりがあるって分かってたから、今回のゲームの時に襲撃があるって連絡があったんだ。爺さん達はテロリストに怖気付いたと周りに思われたくないから外で撃退してるよ」
「それで貴方は私達の救援ってわけね?」
「違うよ? なんで俺が君達を守らなきゃいけないの? あ、白音ちゃんは死んだら黒歌が悲しむから危なくなったら助けてあげるね」
一誠はリアスの言葉に対し、心底可笑しそうに笑う。その間も黒球は意思を持つように悪魔達を殺し続けていた。
「俺の目的はディオドラが気に入らないって人を此処に連れてくる事と……燃料の調達」
「燃料? ……新手!」
既に先程現れた悪魔達は壊滅状態に陥っていたが、空中には先程の何倍もの魔法陣が現れ其処から無数の悪魔たちが転移して来る。
「ははははは! これだけの数が相手では敵うま……」
中の一人が勝ち誇ったように高笑いを上げ、火の玉に包まれた髑髏に頭部を噛み砕かれる。何時の間にか悪魔達を取り囲むように霊達が出現していた。悪魔達が撃退しようと魔力を放つも効果はなく、ただ不気味な声でケラケラ笑い、骨だけの者達はカタカタとその身を震わせる
「うん! たったこれだけの数で俺に敵うとでも思った? 甘いよ! ……でもま、今日は俺も目的があって来た訳だし、ソイツらは逃げ出さ無い為の壁役だね」
一誠は仮面の下でニコリと笑うと呪文を紡ぎ始めた
『我、目覚めるは覇の理を求め、死を統べし赤龍帝なり』
『無限を望み、夢幻を喰らう』
『我、死を喰らいし赤き冥府の龍となりて』
『死霊と悪鬼と共に、汝を冥府へと誘わん!』
一誠の鎧がメキメキと音を立てて変貌し、両肩に黒い液体の入ったタンクとドラゴンの羽。そして黒く鋭い爪の生えた四本の腕が出現する。その瞬間、悪魔達を取り囲んでいた霊達は歓喜したかの様に一斉に笑い出した。
『ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!』
「くっ! なんて声だ」
その声を聞いた者達は耳を押さえ顔を苦痛に歪める。その声を聞いているとまるで全身を羽虫が這い回っているかの様な不快感と、体の中から切り刻まれているかの様な鋭い痛みを感じる。しかし、何故かリアス達には見に纏わり付くような不快感以外は感じれなかった。
「……呪い。この声には強力な呪いが含まれています。多分ここで仙術を使ったら直ぐに悪の気に取り込まれる程の……」
仙術使いとして日々成長している小猫は感じる瘴気に身を震わせる。すると一誠は神殿の方を指差した。
「良く分かったね、白音ちゃん。あ、神殿内には呪いを届かせてないから仙術を使っても大丈夫だよ」
「皆、行くわよ!」
リアスは今がチャンスとばかりに眷属達に支持を飛ばし神殿へと向かっていく。それを見送った一誠は悪魔達に向き直った。
「さ、やろうか?」
「な、舐めるな人間ごときがぁ! 数で押せ! 覇龍は長時間は持たん!」
覇龍は封じられたドラゴンの力を引き出す代わりに生命力を著しく消耗し、更には自我すら失う事すらある。膨大な魔力を持つヴァーリは魔力を消費する事でコントロールしているがそれでも消耗が激しく長時間は持たない。ましてや人間である一誠ならば短時間しか持たないだろう。……それが只の覇龍だったならばの話だが。
「あがっ!?」
一誠の背中の黒腕は悪魔達を爪で引き裂き、または握りつぶし、または殴り殺している。例え掠っただけに留めた者達も糸の切れた人形にようにその場に倒れる。そして一誠が暴れる度に背中のタンクの液体が少しずつ減っていった。
「あははははは! 散々偉そうにしておいてこの程度?」
「に、逃げろ! 勝てるわけねぇ!」
もはや戦意の無くなった一部の者達は逃げ出す。向かった先には霊達がいるが一誠に比べれば楽な相手であり、実際に魔力の一撃で体の殆どを破損させている。しかし、例え頭部の半分を砕かれ、下半身を消滅させられようともその動きは止まらない。既に死んでいる彼らに死への恐怖などなく、消えかかった体で悪魔達に襲いかかる。そして新手の半分が死んだ頃、一誠は両手と背中の四本の腕の手の平を胸の前に翳す。すると其処には黒い球体が現れ、霊達が一斉に姿を消す。
「怨念収束・超断末魔砲っ!」
その瞬間、黒球から途轍もないエネルギーの波動が放たれ悪魔達を飲む込む。波動が消え去った後には悪魔達は影すらなく、ゲーム用に作られた空間は神殿を残し殆ど無に帰っていた。そしてタンク内の液体は見る見る内に減っていき、当初は半分程度だったのが殆ど無くなって鎧も少しづつ崩壊し出す。
「あはははは! この時を待ってたわ!」
その背後から一人の少女が聖剣でできた龍に乗って襲いかかった。
「お前達は予定通りリアス達を出迎えろ。僕はもう少しアーシアの絶望した顔を楽しむことにするよ」
『はっ!』
その頃、リアス達が神殿に入ったのを感知したディオドラは妙な装置に埋め込まれたアーシアを眺めながら眷属に指示を飛ばす。これから暇つぶしに中止になったゲームの代わりをしようとしているのだ。
「はははは! 結局僕を苛めてくれそうにないけど、代わりに僕がたっぷり苛めてあげるよ。あ、そうだ。最初はリアス達の死体の前で君を犯そうかな?」
「……部長」
泣き腫らした顔で呟くアーシアに対しディドドラが改めて下卑た笑みを向けた時、その後頭部に何かがぶつかり、頭から何かが垂れてくる。
「なんだ? ひっ!?」
後頭部にぶつかったのは苦悶の表情を浮かべた『女王』の頭部。頭から垂れてきたのは首の切断面から巻き散らかされた彼女の血液だった。
「でひゃひゃひゃひゃ! 容赦ねぇな、姐さん! でも、良かったのか? このビッチ共も犠牲者かもしれねぇじゃん?」
「煩いわよ、フリード。肋骨を引きずり出されたいのかしら? それにテロに加担したなら捕らえてもロクな目に遭わないわ。犠牲者なら、尚更殺してあげるのが情けよ」
後ろには浄化されて消えていく眷属の死体と魔術師風の女性。そして神々しいオーラを纏った聖剣を持つ白髪の少年が立っていた。
「……あの女。まさか……」
一方、テロリストの相手をしていたオーディンは女性戦士引き連れテロリストと戦っているハンコックをジッと見ていた。
「オーディン様! 今は美人に見とれている時ではありません! くっ!」
オーディンに注意したロスヴァイセは斬りかかって来た悪魔と鍔迫り合いになり徐々に押され出す。しかし彼女が膝を付いた時、その悪魔はランスロットによって切り裂かれた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。有難う御座いました!」
ロスヴァイセは真っ赤になりながら差し出された手を取って起き上がる。その姿をオーディンは呆れたように見ていた。
「……やれやれ、そっちこそ時を考えんか。しかし、あの女。やはり見た目や身にまとう力の質は偽装しておるが間違いない。
まさか、赤龍帝がリリスすら配下に加えておるとはな……」
リリス。それは前ルシファーの妻にして、全ての悪魔の母と聖書に記された存在である。
ハンコック=リリスは彼女の案が出た頃から考えていましたがようやく出せました
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オリキャラ案は浮かぶが自分の作品では使いづらいのばっか(つд⊂)
キャス狐メインっぽい番外編漫画が始まったと思ったらccc編に 廉価版出たし買おうかな でもエクストラまだクリアしてないし 毎回レベル6上げはきつい セイバーでそれやったら楽勝だったけどキャスターだからなぁ
しかしセイバーってほんと子犬っぽい(笑)