霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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小猫って戦車なのに一撃でやられているイメージが ユーベルーナ コカビー サイラオーグの戦車に一撃でやられてましたよね?


三十五話

一誠と玉藻は何時も一緒だった。生まれて間もなく兵藤家に貰われてきた玉藻は一誠に良く懐き、遊ぶのも一緒、ベットも一緒、……お風呂は玉藻が風呂嫌いだったので一緒では無かったが……。何時も一誠の後からチョコチョコと付いて歩き、一誠が座ればその膝の上で丸まる。そして、あの日も一誠の後から付いてきていた……。

 

「じゃあ、行ってきま~す」

 

「キュ~ン」

 

「付いてきちゃ、ダメ!」

 

その日、初めてのお使いに出かけた一誠は珍しく一人だった。その日は玉藻が風邪を引いていたからだ。自分を置いて行く一誠の背中に悲しげな声を掛けるも一誠は戻ってこず、玉藻は一誠を追いかけようとするも一誠の母親に見つかってしまう。だが、賢かった玉藻は母親がトイレに行っている間にこっそりと部屋から抜け出す。ベランダのドアが半開きになっていたのを見つけた玉藻はそこから脱走。そして外に出て直ぐに一誠を発見した。

 

「コ~ン♪」

 

「玉藻! 来ちゃダメ!」

 

玉藻は直様一誠目掛けて駆け出す。向かって来る車に気づかないまま……。車にはねられた子狐の体は宙を舞い一誠の目の前に叩きつけられる。慌てて抱き起こそうとした一誠の手にドロリとした感触が伝わる。そして血が止めど無く溢れ出す中、玉藻は震える体に力を入れ一誠の顔を舐めようとし、そのまま崩れ落ちて二度と動く事はなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……またあの夢」

 

ベットから飛び起きた一誠の顔は青褪め、パジャマは汗でびっしょりだ。一誠は不安そうな顔で隣りを向く。其処には玉藻の姿はなかった。

 

「玉藻? 玉藻何処?」

 

一誠はまるで打ち捨てられた子犬や母を探す迷子のような表情を浮かべながら玉藻の名を呼ぶ。そして一階のリビングまで向かうとキッチンに立つ玉藻の姿があった。

 

「あ、ようやく起きたんですね、ご主人様。も~、日曜の上にご両親がいないからってだらけ過ぎです。朝ごはん冷めちゃいますよ! ……ご主人様? キャッ!?」

 

少し寝坊した一誠を咎める玉藻だが、不安そうな一誠の顔にただならぬ物を感じ、急に抱きしめられて驚いた声を出すもそのまま大人しくしていた。

 

「ねぇ、玉藻。もう俺の前から居なくならないよね? もう、あの時のように……」

 

「また、あの時の夢を見たのですね? ……大丈夫です。玉藻はこの魂が尽き果てるまで貴方のお側に……」

 

「……うん」

 

玉藻も一誠の背中に手を回し二人は見つめ合う。そして……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……朝っぱらから熱いやんすね。出難いでやんす》

 

ハーデスからの伝言を持ってきたベンニーアは二人が落ち着くまで気不味い思いをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「テレビ出演の要請?」」

 

《どうもこの前のゲームでありすちゃん達とグレンデルの旦那が注目を浴びたらしくって、冥界のテレビ局から出演要請があったんでやんすよ》

 

どうやら珍しい魔法らしき物を使う双子らしき美少女のありす達とドラゴンなのに格闘技を使っていたグレンデルが子供を中心に爆発的に人気が上昇。それに目をつけたテレビ局が冥府に交渉して来たというのだ。

 

「……面倒くさい」

 

「出演費は弾むらしいけど、私がちょ~っと術を使えばお金なんか簡単に儲かりますしねぇ」

 

っと、このように乗り気でない二人であったが、

 

 

「あたし、出たい! ねぇ、お願いお兄ちゃん!」

 

「私も興味あるわ、お兄ちゃん」

 

「……仕方ないなぁ」

 

当の本人達が出演したいと言い出し、一誠は仕方なく折れた。なお、残りのグレンデルだが……、

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ? パッチワークが今良い所で、最高傑作ができそうなんだよ。今の俺には手芸の神が舞い降りているぜ!!』

 

と言って断った。

 

『相棒、もう奴には邪龍の威厳など欠片もないな……』

 

「そんな他人事みたいに言ってるけどロリ龍帝ペドライグも威厳の形もないよね」

 

『うぉぉぉぉぉん!! そのあだ名は辞めてくれぇぇぇ!! 誰だ、誰が広めたんだぁぁぁぁ!!』

 

その噂を広めたのは一誠と愉快な死神達である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ちしておりました! ささ、此処でお待ちください!」

 

テレビ局に着いた一誠達は歓迎ムードの中、控え室に通される。最初は乗り気でなかった一誠もテレビでしか見た事のない局内の様子に興味津々といった様子だ。今回の護衛は玉藻とランスロット。自由奔放な二人を制御できる数少ない人材である。四人が控え室で待っているとまだ収録前だというのに部屋を訪ねる者がいた。

 

「ふぉっふぉっふぉ、久しぶりじゃなぁ」

 

「お、お久しぶりです!」

 

訪ねてきたのはオーディンとロスヴァイセ。どうやら二人は番組収録の見学に来たらしい。

 

 

 

 

冥界から申し込まれた同盟。その話を北欧とギリシア勢は結局飲んだ。しかし、その条件としてテロリストの被害が出た場合、旧魔王派は悪魔、ヴァーリチームは堕天使、英雄派は天使が損害額を全負担する事になり、更に国債を幾らかと貴重鉱物の採掘権など、色々と巻き上げたが。しかも、ニ勢力にその条件を付けたのならウチの勢力も、と他の勢力も条件を提示。魔王達はかなり頭を痛めているとの事だ。そして北欧と冥府は友好条約を結び、互いの名産品や技術の交換などを始めていた。

 

「そろそろ時間で~す!」

 

「あ、もう時間だって。俺と玉藻は二人に付き添うからランスロットはオーディン様の相手をしてあげて」

 

「りょ、了解しました!」

 

そしてランスロットを置き去りにし、番組の撮影が始まった。

 

 

 

 

 

 

「え~、それでは今回のゲストをご紹介します。先日のレーティングゲームでご活躍なされた……え~と、お二人共アリスで良いんですよね?」

 

二人の名を改めて知らされた司会は二人の名が同じ事に戸惑いを見せる。無理もない話だろう。どう見ても双子にしか見えないのだから。

 

「うん! あたしとあたしは二人で一人のあたしなの! だからあたしとあたしは同じ名前なんだよ!」

 

「まぁ、ドッペルゲンガーみたいな物と思ってくれたら良いわ」

 

白い方のありすは幼さゆえか話が通じないが、黒い方のアリスは話が通じるのか無難な答えを出す。こうしてインタビューは続いていった。

 

 

「二人の好きな物と嫌いな物は?」

 

「あたしはお茶会とお兄ちゃんが好き! でも、苦いからピーマンは嫌いなの」

 

「わたしもお茶会とお兄ちゃんが好きよ。嫌いなのは玉ねぎね」

 

「お兄ちゃんというのは赤龍帝さんですよね? 彼とはどういう関係?」

 

「お兄ちゃんはあたし達を助けてくれたの。あのね、あたしはずっと病院に居たの。そこではずっと痛くて苦しくて……寂しかった。パパもママもあまり会いに来てくれなかったし、誰もあたしを人間扱いしてくれなかった。だからあたしはアリスを作り出して遊んで貰ったの。アリスは死んだ後もあたしの傍に居てくれたわ。でも……」

 

「わたし達は二人っきりだった。わたしはわたしさえいれば良かったけど、ありすは違った。でも、だれもわたし達には気付いてくれなかったわ。……お兄ちゃん以外は」

 

「お兄ちゃんはあたし達を見付けてくれて、友達の沢山居る所に連れていってくれた」

 

「「だからあたし(わたし)はお兄ちゃんが大好きなの!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ランスロットはオーディン達と共に局内の食堂に向かい、今はロスヴァイセと二人っきりにされていた……。

 

「(は、恥ずかしい! こうやって正面から見たら改めてイケメンだと思います!)」

 

ロスヴァイセはランスロットの顔を真正面から見ることができず、ランスロットはロスヴァイセの顔を見てとある人物の事を思い出していた。

 

「(……やはりこの方はグィネヴィア様によく似ている)」

 

それは彼が忠義を誓ったアーサー王の妻であり、ランスロットは自分が彼女と恋に落ちた事がアーサー王の死に繋がったと未だに悔やんでいた……。




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