霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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何故か凄く風化した双剣ばかり三個も しかも二個は同時 私は今回はガンランスかランスか弓なのに…… ってか双剣は一貫して使ったことすらねぇ


二十七話

会談の後、アザゼルから仙術の修行を言い渡された小猫は黒歌をカフェに呼び出していた。

 

「ふ~ん、それで私に修行をつけて欲しいのかにゃ?」

 

「姉様、お願いします。私は部長の為にも強くなりたいんです」

 

貴族達からのリアス・グレモリーへの評価は落ちる所まで落ちていた。かつては優れた才能から最上級悪魔まで登る詰められるとまで評価され『紅髪の滅殺姫』とまで呼ばれていたのだが、短期間に堕天使に領地への侵入を二度も許し好き勝手される始末。会談では一人残してきた眷属の力を襲撃に利用される。そして、三回中二回は人間に始末をつけられたのだ。今では才能は持っているが才能を扱う才能と王としての資質は持ち合わせない『紅髪の無能姫』と影口を叩かれるまでになっていた。

 

「……ふ~ん。まぁ、妥当な所ね。プライド任せの行き当たりばったりの行動ばっかりだからにゃん」

 

小猫は真剣な眼差しで黒歌に頼み込むものの、当の本人はどうでも良さそうな態度を取っている。彼女からすればリアスは自分の元主の様な貴族の行動を黙認しているサーゼクスの妹。小猫を保護したのも彼だが、もともと彼らが貴族の行動を抑制できていれば問題なかったのだ。だから可愛い妹の頼みでもリアスの利益になるような事には協力したく無いと思っていた。

 

「……まぁ、可愛い妹の頼みだし、テロリストに殺されても困るから力はあったほうが良いのかにゃ?」

 

「教えてくださるんですね!?」

 

「お姉さんに任せときなさい♪」

 

自分の言葉に反応した小猫に対し、黒歌は思わず笑みを零す。リアスの利益になるのは嫌だが、これも妹との触れ合いだと思う事にしたのだ。だが黒歌は急に目をスっと細め、底冷えのするような声で言った。

 

「……ねぇ、白音。分かっているとは思うけど私は冥府の所属って事になってるにゃ。だから、姉として仙術の訓練位は付けてあげれるけど他は別。リアス・グレモリーに伝えておいて。会談に呼び出したの時のように私と貴方の関係を利用して彼に頼みを聞いて貰おうって事が続くようなら、私は貴方を掻っ攫うってね……。たかが下級悪魔の身柄と冥府とのトラブル回避。上層部がどっちを取るかなんて考えるまでも無いでしょ?」

 

「……はい」

 

黒歌から発せられるプレッシャーに小猫の身は竦み、ただ頷くしかできなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パーティ? まぁた襲撃でもありそうだね」

 

《そう言うな。コウモリ共でも少しは学習するであろうよ》

 

一誠はハーデスから渡されたパーティの招待状を見て面倒臭そうに言った。悪魔政府から送られてきた魔王主催のパーティの招待状は一誠の分まで有り、ハーデスは今日はペルセポネーが夕食を作るので行けないから一誠だけでも行って欲しいというのだ。

 

《一応行けば同盟の可能性が見えてきたと思わせ、色々引き出せそうだからな。ファファファ……》

 

「うわぁ、黒いなぁ。お腹の中真っ黒だね」

 

この時ハーデスは竹輪に『中身の無い奴は嫌いだ』と言われた気分になった。

 

《フッ、何を言う。私は白骨だぞ? 黒い訳がなかろう。……言っておくが食ったものは何処に行くとかは訊いてくれるな。神による不思議パワァとでも思っておけば良い。まぁ、パーティには馳走が出るであろうからそれを楽しむと良い》

 

「も~、旅行中だってのに人使いが荒いよ。それに俺は冥界のパーティに出るような料理より玉藻の作る和食の方が好きなんだけどなぁ。……それで例の件は進んでるの?」

 

《当然だ。議会でも部隊の設立が賛成大多数で決定した。頼むぞ、冥府軍特選部隊隊長殿?》

 

「……了解。マイ・ロード」

 

一誠は演技掛かった動作で恭しく頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主、本当に私がお供で良かったのですか? 玉藻殿の方が良かったのでは……」

 

「まぁ、シャドウやブイヨセンはパーティには似合わないし、君が一番だと思うよ。玉藻は女神様達のお茶会に誘われたんだって」

 

パーティ当日。一誠は護衛としてランスロットを引き連れて来ていた。彼はいつもの鎧姿からタキシードに蝶ネクタイという格好に着替え、元が美形だけに多くの女性の視線を集めている。そして一誠も禁手姿で来ており、会談の件で有名になった事もあって注目を集めていた。

 

「あれが噂の……」

 

「何とも……」

 

彼らは一誠を遠巻きにしながら様子を伺う。送られる視線に込められているのは興味や恐れ、そして侮蔑。それらを機敏に感じ取ったランスロットはその端正な顔の眉間に僅かに皺を寄せ、当の一誠は知らんぷりを決め込んでいる。

 

「……無礼な。主は正式に招待された客人だというのに」

 

「あははは! もっと肩の力を抜きなよ。影口を叩くしかできない臆病者は放っておけば良いし、なにか仕掛けてきたら過剰なくらいの仕返しをするくらいで丁度良いんだよ。……所でもう一人の護衛は?」

 

「……カジノです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん、やっぱり悪魔好みの味付けだよね。帰ったら玉藻に何か作って貰おうかな?」

 

「……確かにこれは悪魔の貴族向けの味付けですね。円卓の騎士時代を思い出します」

 

一誠は会場にテーブルに並べられた料理を口にするも直ぐに箸を止めてしまう。ランスロットも霊体故に食べる必要はないが、嗜好品として食事を楽しめるので普通に料理を食べワインを飲んでいた。彼は一誠と違い料理を普通に食べている。彼曰く、

 

「……故郷の料理よりはマシです。特に一度だけ食べた同僚の料理と言ったら……」

 

らしい。なお、その同僚とは浅からぬ因縁があるらしく、一誠もそれ以上は詳しく聞かなかった。ただ、借金の取立てに厳しい男だったとランスロットは語った。

 

 

 

 

 

「あ~、暇暇暇暇。こっそり帰ろうかなぁ。……あれ? 意外な組み合わせだね」

 

一誠が暇なので自分もカジノに行こうかと迷っていた時、視界に知り合いの姿が映った。松田と朱乃と小猫だ。一誠は三人に近付くと声をかけた。

 

「やぁ、白音ちゃんと姫島さんと松田君」

 

「貴方は……」

 

「……お久しぶりです」

 

「げっ!」

 

一誠の姿を見るなり松田は顔を引きつらせ小猫はそっと頭を下げる。朱乃は話しかけようとするも踏ん切りがつかない様子だ。そんな中ランスロットは松田に対し、『主に対して何だその態度は。舐めとんのか、いてまうぞアホボケカスゥ』とでも言いたげな視線を送る。殺気を感じた松田が身震いする中、小猫は一誠に話しかけてきた。

 

「あ、あの、姉様の事、有難うございました」

 

「あ、気にしなくて良いよ。黒歌とは長い付き合いだし。本人からは俺との関係は聞いてる?」

 

「……はい。自分は本妻から貴方を奪うつもりの愛人だとか、セフレだとか言っていました」

 

「ふ~ん、そうなんだ。まぁ、余計な事は言ってないみたいだね。……そろそろ帰るか」

 

一誠はもうパーティに居る気を失くしたのか三人に背を向けて歩き出す。するとその背中に声がかけられた。

 

「待って下さい! 貴方がこの間仰った事ですが、アザゼル先生から聞きました。貴方は聖杯の副作用で死者の霊が見えるはずだって。母が何か言ったのですか!?」

 

会談の少し前、神社に呼び出された一誠は朱乃に対し母親が心配しているから父親と仲直りするようにと言ったのだ。そして一誠が『幽世の聖杯』という神滅具をも持っていると勘違いしているアザゼルはその副作用で彼が霊魂と意思疎通していると思っており、朱乃にもその事を伝えたようだ。故に彼女は一誠を呼び止めたのだが……、

 

 

 

 

 

「お母さんには君とお父さんが一緒の時に会わせてあげるよ。それと聖杯って何の事?」

 

ただ、そう言い残して会場を後にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、アーサー。さっさと帰りてぇなぁ」

 

「仕方ないでしょう? これも任務です」

 

ここは会場から少し離れた森の中。先日会談の会場に現れヴァーリを連れて行った美猴は一人の青年と一緒に会場の様子を伺っていた。青年はメガネを付けた冷静そうな顔をしており、腰には聖なるオーラを放つ剣が携えられている。どうやらパーティの様子を見張りに来たらしい二人だが、美猴の方は退屈し始めているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして美猴が何度目かのアクビを噛み殺したその時、二人の背後から声が掛けられた。

 

「やぁ! 久しぶりだね」

 

「「!」」

 

「……」

 

二人が後ろを振り向くと、何時の間にか一誠がランスロットと共に後ろに立っており、ランスロットは無言でアーサーと呼ばれた青年の顔と携えた剣をじっと見ていた。

 

「……少々尋ねたい。貴方はペンドラゴン家の者ですか? それに腰の剣はエクスカリバーかとお見受けいたしましたが」

 

「ええ、そうですよ。この剣は行方不明とされていたエクスカリバーの最後の一本『支配の聖剣』です。そして私の名はアーサー・ペンドラゴン。アーサー王の子孫です。……サー・ランスロット。貴方が子孫ではなく本人だという事は知っています。今一度私の先祖への忠義を貫く気はありませんか? 貴方なら歓迎いたしますよ」

 

「……私の今の主はこのお方です。ですが、王への忠義心はまだ私の中にあります……」

 

ランスロットの返事を聞いたアーサーはわずかに微笑むと,近づいて手を差し出す。だが、その首筋めがけアスカロンによる突きが放たれた。

 

 

 

 

「……何のつもりですか?」

 

「言ったはずです。王への忠義心はまだ私の中にあると。貴方はテロリストの仲間なのでしょう? 王の子孫であってもテロリストに成り下がったのなら、これ以上王の名を汚す前に斬り捨てる。それが私の出した答えです」

 

「……そうですか。なら、私も全力で抵抗させて頂きます」

 

紙一重で突きを避けたアーサーだったが、衝撃だけで彼の顔の皮が裂け血が流れ出している。それを拭ったアーサーは亜空間から途轍もないオーラを放つ聖剣を取り出した。

 

「……コールブラント」

 

「ええ、そうです。最強の聖剣と名高い聖王剣コールブランドですよ。……さて、円卓の騎士最強とまで讃えられた湖の騎士の力を見せて頂きますよ」

 

「……今の私は円卓の騎士ではなく、死従七士が一人、『憤怒』の将サー・ランスロットですよ」

 

二人は互いに剣を構えるとジリジリと近づいて行き、

 

「いざ」

 

「尋常に」

 

「「勝負!!」」

 

二人の剣がぶつかり合い火花を散らす。アーサーとランスロットが鍔迫り合いを続ける中、一誠は美猴と対峙していた。

 

「よう! 久しぶりだねぃ、赤龍帝。ヴァーリの仇を取らせてもらうぜぃ?」

 

「ふぅん。彼と仲が良いんだねぇ。あ、もしかして君って、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァーリのおホモダチ?」

 

「んなっ!?」

 

その言葉に美猴は脱力しずっこける。その瞬間、地面から無数の触手が彼に襲いかかり体中に絡みつく。一誠が鎧の下に着ている服の内ポケットに入った手帳サイズの魔術書が怪しく輝いていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、ちくしょう!」

 

パーティが開かれる中アザゼルはカジノに嵌っていた。だが、どうやら有り金をスってしまったらしく質屋に向かっている。そして一時間後、半裸の彼が金貸しの元に向かおうとした時、スロットコーナの方が騒がしいのに気付いた。見てみると一人の客がコインケースを大量に積み上げており、その客の周りには老若男女問わず多くの者が跪いてその客を褒め称えている。

 

「……なんだぁ? 随分景気の良いのが……」

 

そしてその瞬間、アザゼルの目はその客に奪われた。

 

 

 

「フフフフフ! 今日の妾はツイておるようじゃな。ほれ、誰か飲み物を持たぬか!」

 

その客は他人を見下す様に胸を反らしすぎて逆に見上げている……絶世の美女だった。ツヤのある黒い長髪に絶世の美女という言葉でさえ足りないほどの美貌。魅惑的なスタイル。そして深くスリットが入ったドレスの背中の部分にはサソリの紋様が刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




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