霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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要望があったキャラ紹介は今から二十二話に付け足します


二十三話

ヴァーリにとって戦いこそが全てであり、恋愛など二の次であった。だから同じ組織の女性から告白されても断ったし、アザゼルに誘われてもナンパにも出かけずに修行を続けていた。そんなある日、彼は嫌な噂を耳にする。それは自分と所有する神器に宿るアルビオンについての噂だった。

 

 

 

 

 

 

《ありゃりゃ、何があったんでやんすか?》

 

エクボがギャスパーの体を乗っ取り神器をコントロールした事でベンニーアは動き出した。彼女はボロボロになった室内と校庭の上空で行われている一誠とヴァーリの戦闘、そして一誠を応援するチアリーダー姿の玉藻と応援旗を振るランスロットを見て首を傾げた。

 

「こ・ろ・せ! こ・ろ・せ! りょ・う・て・を・血に染めろ♪」

 

「頑張れ頑張れ頑張れ主!」

 

とりあえず話の通じなさそうな二人を無視してベンニーアはアザゼルに状況を聞く事にした。

 

「起きたのか嬢ちゃん。……テロだよ。ハーフヴァンパイアが利用されてな。首謀者のカテレア・レヴィアタンは赤龍帝の部下が倒したが、ヴァーリが裏切りやがった」

 

《ありゃりゃ、それは悪魔と堕天使側の手落ちでやんすね。話を聞いたハーデス様の喜ぶ顔が目に浮かぶやんすよ》

 

ベンニーアは呆れた様な溜息を吐きながら一誠の戦いを見つめる。一誠の蹴りをマトモに喰らったヴァーリの鎧にはヒビが入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらほら、どうしたの? やっぱり正々堂々とした戦いは苦手?」

 

「お前が言うな!」

 

一誠はヴァーリをおちょくりながら攻撃を避ける。そして時折、再び唐辛子粉を投げる動作をし、咄嗟に腕で顔を庇った為にガラ空きになったヴァーリの胴体に攻撃を加える。そしてヴァーリがフェイントだと思って無視したら本当に投げつけていた。

 

「はぁっ!」

 

ヴァーリは無数の魔力弾を放ち、一誠がそれを避けても軌道を変えて再び襲いかかる。そして出来た隙に攻撃を加えるが……、

 

 

 

 

 

「ハッズレ~♪」

 

「ちっ! また幻覚かっ!」

 

一誠の体は煙の様に霧散し、別方向から攻撃が加えられる。一誠はヴァーリの隙を見て霊を自分の姿の化けさせ入れ替わっていた。それにより遠距離攻撃がすり抜けず、感触は分からないから直接殴るまで偽物と分からない。そしてヴァーリはそれを高度な幻覚だと思い込んでいた。

 

「アルビオン! こうなったら辺り一面を半減させるぞ!」

 

『スマン。何故か先程から上手く力が使えんのだ。まるで俺の魂に誰かが干渉しているような気分だ』

 

ヴァーリの宿す『白龍皇の光翼』の力は十秒毎に触った相手の力を半減し、それを自分の力に変える事。禁手化する事で広範囲に半減の力を掛けられるのだが、何故か先程から上手く力が使えないでいた。そう、力の源は神器内のアルビオンの魂。一誠は流石に魂を奪えないまでも干渉して力の使用を妨害していた。焦るヴァーリに対し余裕綽々といった態度の一誠は呆れたような馬鹿にしたようなトーンで話しかける。

 

 

「ねぇ、その程度? そんなんだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショタ龍皇 ホモビオンとかネットで呼ばれるんだよ。まぁ、ドライグもロリ龍帝 ペドライグとか呼ばれてるらしいけどさ」

 

『『がはっ! い、言わないでくれ!』』

 

一誠の言葉に宿敵のはずの二匹が息ぴったりに悲哀の篭った声で叫ぶ。そう、ロリコンでペドフィリアのドライグに対し、アルビオンはショタコンのホモという噂が流れだしたのだ。しかもヴァーリは普段から女性を寄せ付けていなかった為、普段から玉藻を傍に置いている一誠と違い、アルビオンと同じ性癖だと最近になって噂され出している。なお、噂の出処は彼の普段の行動をよく知るグリゴリであり、それを知った事がヴァーリの裏切りの大きな要因であった。

 

 

 

 

 

なお、ヴァーリは一誠の言葉を聞いた途端にストレスから呼吸困難に陥り、声も出せないでいる。当然、一誠がそれを見逃すはずもなく、彼の口元に真っ黒の靄の様な物が渦を巻いて集まりだし、やがて野球ボールほどの大きさの球体となる。

 

「断末魔砲!!」

 

それは散っていった者達の残した怨念にドラゴンのオーラと一誠の霊力を混ぜた物だ。

 

『ギィィィィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!』

 

そして、その球体から凄まじいエネルギーが断末魔の叫びのような耳をつんざく声と共に放たれる。その音量に窓ガラスが割れ校舎にヒビが入った。そしてある程度離れた場所に居るアザゼル達にも声は届き、耳栓をしている玉藻とランスロットとベンニーアの三人以外は思わず両手で耳を塞いで身を竦ませる。そしてそれは断末魔砲に飲み込まれそうになっているヴァーリも同じであった。

 

「くっ! 何て叫びだ……」

 

今すぐ避けなかればならないと頭で分かっていても断末魔叫びは生物的な本能を刺激し、耳を手で塞がせ身を竦ませる。そしてそのままヴァーリはエネルギーの奔流に飲み込まれ、校庭に空いた大穴から出てきた彼は鎧は全て砕け全身から血を流しているという満身創痍の状態で……笑っていた。

 

 

「……ククク。ハーッハッハッハッハッハ!」

 

「え? 何? 君ってマゾだったの? ショタコンのホモの宿主はマゾか……」

 

一誠は近づきたくないという風にヴァーリから距離を開けた。

 

「違う! 俺はマゾじゃない! ……いやいや、運命とは面白いものだな。魔王の血統に伝説のドラゴンという最強の組み合わせだと思っていたが、まさか純粋な人間に此処まで追い詰められるとは思わなかったよ。君は英雄の血を引いているのかい?」

 

「いや、両親ともに由緒正しい一般人だよ。ハーデスの爺さんが言うには俺は人間の変異種だってさ。たまに居るらしいよ? 異常な力を持った一般人が。後はそうだな~。先代所有者の残留思念を食ったからかな? ほら、魂っていう中身が上等になったら入れ物も上等になるんだよ。副作用としてドラゴンのオス特有の女好きが際立つけどさ。あれ? 魔王の血統?」

 

「……やれやれ、俺のライバルは本当に規格外の様だな。おっと、名乗り忘れていたな。俺の本名はヴァーリ。ヴァーリ・ルシファーだ。俺の父は初代ルシファーの孫でね。人間との間に生まれた俺は神器を宿してたんだ」

 

ヴァーリが旧魔王の血を引いているという言葉に一同は騒然となる。だが、一誠と玉藻達だけはどうでもよさそうにしていた。二人にとってルシファーなど、ゲームとかによく出てくる強い悪魔、程度でしかないのだ。

 

「ふ~ん。つまり、『俺のひいお祖父ちゃんは凄いんだぞぉ』って事でしょ? それでさぁ、結局君って何がしたいの? 戦いが好きみたいだけどさ、戦って戦って戦い抜いた先に強いのが居なくなったらどうするのさ?」

 

「死ぬさ。そんなつまらない世界に興味はないからね」

 

一誠の問いにヴァーリは迷いなく答える。その瞬間、一誠と彼の周囲を誰にも見えないように漂っている霊達の空気が変わった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ありゃりゃ、禁句を言っちまいやがりましたねぇ。『まだ死にたくなかった。もっと生きていたい』。そんな言葉を幼い頃から聞かされ続けたご主人様にとってあの言葉は禁句だってのに」

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり赤龍帝が聖杯も持ってやがんのか」

 

アザゼルが勘違いを増す中、一誠は呪文を紡ぎ出した。

 

『我、目覚めるは覇の理を求め、死を統べし赤龍帝なり』

 

『無限を望み、夢幻を喰らう』

 

『我、死を喰らいし赤き冥府の龍となりて』

 

『死霊と悪鬼と共に、汝を冥府へと誘わん!』

 

その瞬間、一誠の鎧が変化し出す。布の部分が消え去り、骨の様な部分が盛り上がって全身を覆う。そして背中にはドラゴンの羽と靄が集まって出来たような鋭い爪を持つ四本の腕。そして両肩には透明なタンクがついており、中にはボコボコと泡立つ黒い液体が入っていた。

 

「これが俺の覇龍。『魂を喰らいし(ヘル・ジャガーノート・ドライブ)冥覇龍(・ソウルイーター)』だ!」

 

「ははははは! 禁手が亜種なら覇龍も亜種なのか! 面白い! 面白いぞ!」

 

楽しそうに笑い出すヴァーリに対し、一誠も笑い声を上げた。

 

「あはははは! 戦いが楽しいと思ったのは初めてだよ! この戦いはどちらが善か悪か決める戦いではなく、どちらが綺麗か汚いか決める戦いでもない! どちらが先に倒れるかを決める戦いだ! さぁ、君も覇龍を使えるんだろう? 一体一で決着をつけようじゃないか!」

 

「……やっとマトモに戦う気になったか。良いだろう! それでこそ俺のライバルだ!!」

 

「おい、止めろ! 覇龍同士で戦ったら街が吹っ飛ぶ!!」

 

ヴァーリは更に楽しそうに笑みを浮かべ、アザゼルの制止を無視して呪文を唱え出す。

 

『我、目覚めるは―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、戦うのが俺とは一言も言ってないけどね」

 

「……は?」

 

一誠の言葉に思わず固まったヴァーリが急にできた影を不審に思い振り返ると巨大な黒い粘液の塊が覆い被さってきた。

 

「隙アリィィィィィ!!」

 

シャドウの体内に飲み込まれたヴァーリは抜け出そうとするも粘性が強いために上手く動けず、砕けた鎧を治す前に覇龍を使おうとしていた為に容赦なく全身から生命力を奪われる。そして、それだけでは考えられない程の激痛が彼を襲っていた。

 

「ぐっ!? だ、騙したなぁ。この、卑怯者……」

 

「俺が卑怯? 俺はちゃんと一対一だって言った通り手出ししてないじゃん! 俺は騙してないよ。君が勝手に勘違いしてんだ。俺と君のタイマンだってね。……そうか、分かったぞ! そうやって精神的動揺を誘っているんだな!? なんて卑怯なんだ! ニ天龍を宿す者としての誇りはないのか!?」

 

ヴァーリが息も絶え絶えになりながら辛うじて発した抗議の声も一誠には届かず逆に非難される。玉藻達以外がそろそろヴァーリに同情しだした頃、サーゼクスはヴァーリの様子が気になった。

 

「……少し聞きたいんだが、いくら何でも効き過ぎじゃないかい? ヴァーリ君の力なら生命力を吸い取られながらも抜け出せそうだが……」

 

「ご主人様ぁ! サーゼクスがシャドウの事を訊いてきましたが、話しても宜しいですかぁ?」

 

「うん! 別に良いよ」

 

「なら、特別にお話して差し上げましょう。ご主人様の広いお心に感謝するように。元々シャドウは呪いを固めて作った存在ですが、ハーデス様がコキュートスに連れて行って下さった時にサマエルの封印場所に行きましてね、其処から漏れ出てた龍殺しの呪いを核にしたんですよぉ」

 

ちなみにサマエルとは強力な龍殺しの力を持ち、その力を喰らったドラゴンは魂さえも汚されるほどなのだ。今は危険すぎるので冥府に預けられ、最下層のコキュートスに厳重に封印されている。それを聞いたサーゼクスは理解が追いつかないのか暫くの間固まっていた。

 

「……まぁ、封印を解いた訳じゃないから約定には反してない……のかな? それじゃあ、シャドウ君はサマエルの毒を持っているということかい?」

 

「それは残念ながら否と答えておきます。私がご主人様に影響がないように調整しましたので、他のドラゴンも脱力と激痛は本物と同様ながら精々効果は一ヶ月程度。魂にも肉体にも対して影響がないんでございますよ」

 

玉藻は残念そうにそう言うとシャドウの方に目をやる。すっかり動けなくなったヴァーリはシャドウによって上空に吐き出され,それを一誠が狙っていた。しかし、そこで邪魔者が入る。邪魔者は三国志の武将が来ているような鎧を身に纏っていた。

 

「ヴァーリ、迎えに来たぜぃ。……って、随分やられてるな」

 

「に、逃げろ、美猴。アレはヤバイ」」

 

突如現れた男は一誠から放たれるプレッシャーに固まる。しかし、一誠は何を思ったのか覇龍を解除すると二人に背を向けた。

 

「……眠い。やっぱ人間にはこの時間帯はつらいよ」

 

会談の開始時刻は深夜だったので一誠は眠くなったらしく、仮面の上から口元を押さえて大アクビをする。それを好機と見た二人は闇の中に去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《それじゃあ、あっしは今回の件をオリンポスの主神様方に報告しやすね。……言っておきやすが覚悟しておいてくだせぇ》

 

今回、悪魔側と堕天使側の手落ちは大きい。カテレアはかつて追放した王族であり、利用されたギャスパーはリアスの眷属だ。前者は王座を奪ったのだから復讐を防ぐために粛清しておくべきだったし、ギャスパーの神器の危険性を考えれば攫われる危険性や今回のように利用される危険性は考えておくべきだった。なのに何も用心していなかったのは大きな手落ちだ。堕天使は言わずもがなヴァーリの反乱。そしてその全てを解決したのは冥府に仮所属している一誠とその配下達。これからの対応に三すくみのトップは頭を悩ませながらも正式に和平を結び、その協定は『駒王協定』と名付けられた……。




意見 感想 誤字指摘 アンケート お待ちしています


ふと思ったが、アニメのワンピースで黄猿にベックマンが銃を向けてたし、覇気って銃弾にも込めれるのかな?

あと、原作二巻でイッセーがリアスに手を出すのに成功してたら多分殺されてたかな? ドライグ自体いい印象を持たれてないし、強い神器を持ってるだけの転生悪魔が公爵家の令嬢に命令とはいえ手を出したんだからねぇ、 あとは内内に処理して秘匿。って所かな?

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