霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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遅いので誤字は明日探します とりあえず投稿!!


十七話

「ご主人様ぁ。やっぱり結婚式ではウェディングドレスが着たいですぅ。あ、まずは何にしますか?」

 

「じゃあ、大根をお願い。ふ~ん、やっぱり玉藻もそういうのに憧れるんだ」

 

一誠と玉藻は校庭にピクニックシートを敷いてコンビニのオデンを食べながら談笑を続ける。玉藻は一誠の口に大根を運びながら冥府の結婚式場のパンフレットに目をやった。

 

「はい! 精神や記憶は玉藻の前のと混同していますが、基本的にはご主人様のペットの玉藻ですから。やっぱり現代日本で暮らしてたら、そういう事に興味が湧いてきたんですよぉ」

 

「ふ~ん。まぁ、俺が冥府に正式に所属して、落ち着いたら式を上げようね。あ、玉藻は厚揚げが好きなんだよね? はい、あ~ん」

 

「あ~ん♪」

 

 

 

 

 

「貴方達! イチャつくのは後にしなさい!」

 

「え~? だって俺には悪魔と違って人の戦いを見物する趣味ないし。このシート内は結界で安全だし」

 

「それにまぁ、彼女も強くはなってはいますが、まだコカビエルに勝てる程じゃございませんよ。態々味方の負け戦なんて見物してもねぇ。そんな事より良いんですか? どうやら不細工なワンちゃんがお出ましの様ですよ?」

 

リアスが振り向くと校庭に三匹の巨大な三頭犬、ケルベロスが現れ唸り声を上げている。

 

「――完成だ」

 

そして、フリードの傍らに立っていた男性の言葉と共に、校庭に描かれた魔方陣の中の四本のエクスカリバーが光りだし、其処には一本の神々しい聖剣が存在した。

 

「エクスカリバーが一本になった光で、下の術式も完成した。あと二十分もしない内にこの町は崩壊するだろう。解除するにはコカビエルを倒すしかない。フリード、私に完成したエクスカリバーの力を見せてくれ」

 

「へいへい、人使いの荒いこって。でもまぁ、この腕の恨みは晴らさないとなぁ!」

 

フリードはエクスカリバーを手に取るとポチへと向かっていく。その時、祐斗が間に割って入って魔剣で斬りかかった。

 

「悪いが君の相手は僕だ!」

 

「ちっ!」

 

だが、その一撃はフリードに防がれる。流石に片手で受け止めるのはキツいようだが、フリードは刃の一部の形を変えて地面に突き刺す事で祐斗の一撃を受け止めきり、そのまま腹部に蹴りを放つとエクスカリバーで斬りかかる。咄嗟に後ろに避けた祐斗だったが避けきれず傷口からは煙が上がりその場に蹲った。

 

「テメェの始末は後だ。今はアイツをぶっ殺す!!」

 

片腕を切り飛ばされた恨みからかフリードは祐斗に目もくれず真っ直ぐにポチへと向かっていく。

 

「死ねやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

フリードの持つエクスカリバーは無数に枝分かれし、刀身を透明にすると高速でポチへと襲いかかる。

 

 

 

 

 

「……温い!」

 

「あ……?」

 

そして、ポチが刀を一閃すると全ての刃が砕け散り、フリードの体もバラバラになって血と臓腑を校庭にぶちまけた。

 

「……所詮はこの程度で御座るか。……そして奴も徐々終わりで御座るな……」

 

エクスカリバーへの復讐の為に生きてきた祐斗は復讐の対象が目の前で簡単に打ち砕かれる光景に呆然とする。ポチはそんな彼など気にも止めずレイナーレとコカビエルとの戦いに目をやった。その時、ケルベロスが祐斗に襲いかかる。だが、ポチは動こうとせず、そのまま鋭い爪が祐斗へと迫り、横から飛び出した小猫によって殴り飛ばされた。

 

「……祐斗先輩、今は戦いに集中してください!」

 

ケルベロスは体内に気を送り込まれた事によって内蔵に深刻なダメージを受けて吐血。そのまま立ち上がろうとした所で、急に現れたゼノヴィアの一撃で頭を飛ばされ死に絶えた。

 

「……どうやら遅れたようだな。既にエクスカリバーが破壊されているとは。あの男は何者だい?」

 

「……今の赤龍帝の部下らしいです。詳しくは知りません」

 

「そうか。おい、良い事を教えてやる。あそこで打ちひしがれているのが聖剣計画の首謀者、皆殺しの大司教バルパー・ガリレイだ!」

 

「……そうか。アイツがっ!!」

 

ゼノヴィアは既に用が済んだとばかりに一誠の所に向かうポチを一瞥した後で校庭の隅にいるバルパーを指差す。彼は目の前でエクスカリバーが砕かれた事によって呆然としており、自分に近づいてくる祐斗に気がつかないまま首を切り飛ばされた。

 

「……皆、敵はとったよ」

 

長年の復讐に終止符を打った祐斗は死んでいった同士に祈りを捧げる。だが、彼に胸に去来するのは虚しさと喪失感。目標を失ってしまった彼の心は空っぽになっていた。

 

 

 

そして、松田が光の矢をケルベロスの顔面目掛けて連射し、本能的な恐怖から足が止まった所をリアスと朱乃がトドメを刺すことで全て倒しきった頃、コカビエルとレイナーレの決着がつこうとしていた。

 

「ぬんっ!!」

 

コカビエルは校舎ほどもある巨大な槍を振るいレイナーレに襲いかかる。その左半身は先程の攻撃で焼かれ、左目も見えていないが避けまわるレイナーレを正確に狙っていた。一方のレイナーレも時折光炎を飛ばし、両手に持った槍で立ち向かうも一蹴される。

 

「中々の力を持っているようだが……如何せん経験が足らんな」

 

レイナーレは確かに短期間で急激に力を付けた。だが、それでも歴戦のコカビエルには一歩及ばず、経験値では圧倒的な差がある。そしてコカビエルもレイナーレと同じように両手に身の丈ほどの槍を持ち、レイナーレと打ち合う。次第にレイナーレの体に裂傷が出来始め、レイナーレは後ろに大きく退避した。

 

「此れでも喰らいなさい!」

 

レイナーレは再び光を含む炎の龍をコカビエル目掛けて放つ。炎の龍は徐々に激しく燃え上がりコカビエルへ向かって行き、

 

 

 

 

 

「……焦りすぎだ。その距離では最大威力を発揮できん」

 

「なっ!?」

 

威力が最大まで上がる前に巨大な光の槍で貫かれ風穴を開けられる。そしてコカビエルはその穴が修復する前に穴を通り抜け、再び身の丈ほどの槍を創るとレイナーレ目掛けて投擲する。レイナーレは腹部を刺し貫かれ校庭に落下していった。

 

「申し訳…ございま…せん…」

 

まるで昆虫標本のように貼り付けにされた彼女の足がピクピクと動き、やがて力なく垂れ下がる。その光景を見ていたコカビエルの背後に無数の光の槍が出現し、レイナーレ目掛けて降り注いだ。しかし、槍が降り注いだ事で舞い上がった土煙が晴れた後にはレイナーレの姿はなく、何時の間にか一誠の腕の中に抱えられていた。

 

 

 

 

「……やれやれ、漸く重い腰を上げたか。さぁ、赤龍帝の力を見せてみろ」

 

「う~ん。悪いけど君の相手は俺じゃないんだ。君とコイツの戦いは本人が望んだ事だから恨み言を言う気もないし……。ま、細かい事は別に良いや。やっちゃえグレンデル!」

 

『グハハハハハハ! 漸く俺の出番かよ、旦那ぁ! こんな雑魚相手てのは興が乗らねぇが……、まぁ、雑魚を甚振るのもきらいじゃねぇ!』

 

何時の間にかコカビエルの背後には巨大なドラゴンが出現していた。浅黒い鱗に銀の双眸。そのフォームは人に近く、巨人型のドラゴンと言った方が良いだろう。ドラゴンの名はグレンデル。かつて暴虐の果てに初代ベオウルフに滅ぼされた『大罪の暴龍(クライム・フォース・ドラゴン)』と呼ばれる邪龍である。

 

「な、なんで貴様が……がっ!?」

 

完全に滅ぼされたはずのグレンデルの出現にコカビエルは固まり、そのままグレンデルの巨大な拳で地面に叩き落とされる。コカビエルが衝突した事によって校庭には巨大なクレーターができ、ポチによって結界まで運ばれた小猫と宙に浮かんだ一誠、そして結界内の玉藻以外の全員が衝撃で吹き飛ばされる中、グレンデルは楽しそうに笑い声を上げた。

 

『グハハハハハ! なんで滅ぼされた俺がいるかって? そこの旦那が俺の魂の破片と削り取ったドライグの魂の欠片を合成させて復活させてくれたのよ!』

 

『……相棒? あいつを復活させる為に俺の魂を削り取ったなんて初耳なんだが……』

 

「当たり前じゃん。言ってないんだから」

 

『相棒ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

悪びれる様子のない一誠に対しドライグは嘆きの声を上げ、グレンデルはそれを聞いて可笑しそうに笑う。そんな中、まだ息のあったコカビエルがクレーターから飛び上がってきた。その姿はもはや虫の息であり、右腕は力無く垂れ下がり無事だった右目も腫れ上がってマトモに開いていない。そして口からは止めど無く血が流れ落ちる。そんな中でも彼は笑っていた。

 

「ははははは! こうでなくてはな! 俺はこういうのを望んでいたのだ! 今のつまらん平和の中、老いていくのが耐えられなかった! やはり戦場こそが俺の死に場所よ! ここで貴様と戦って、あの世で死んだ神や魔王共と再び戦いたいものだ!!」

 

『……グハハハハハ! いい戦闘狂っぷりじゃねぇかっ! おい、旦那。アレをやろうぜ!』

 

グレンデルはそう言うと一誠の返事を待たずに鎧に付いた宝玉へと吸い込まれていく。

 

「……あ~、幽死霊手の構成員ってコレだから嫌」

 

「そんな! 私も嫌ですか!?」

 

「あ、玉藻は嫌じゃないよ? ただ他のが我が強すぎるだけで。……ねぇ、コカビエル。赤龍帝の鎧の能力は知ってる?」

 

「ああ。一気に最大まで倍加をするのだろう。あとは通常時でも出来る倍加した力の譲渡だったか?」

 

一誠に質問されたコカビエルは訝しがりながらも答える。すると一誠は口角が釣り上がらせ、不気味な笑みを浮かべた。

 

「うん。俺のこの亜種の禁手である『死を纏いし赤龍帝の(デット・オブ・ブーステッド)龍骨鎧(・ギア・ボーンメイル)』も基本能力は同じ。でも、追加能力があるんだ。ドライグの魂の欠片を埋め込んだ奴をこの宝玉に入れる事ができるんだ。そしてその事によって、例えば入れたのが天使や堕天使なら光力に耐性が付いたりするんだけど……八回で良いかな?」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost』

 

「俺の力と同時に宝玉内の奴の力も倍加するんだよ!」

 

『グハハハハハハハ! 力が漲ってくるぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

一誠が言葉を放った瞬間、宝玉内からグレンデルが飛び出しコカビエルに殴りかかる。彼は急激にパワーアップしたグレンデルの動きに反応できず拳の一撃を受けた。その威力は凄まじく、コカビエルは肉片すら残さず消え去り、衝撃で体育館と新校舎が完全に崩壊した。

 

『グハハハハハ! やりすぎちまったか? まぁ、どうでも良いこった。……なぁ、アルビオン。テメェはどう思うよ?』

 

校舎を破壊した事に対し、気にした様子もないグレンデルは空を見上げる。すると其処には白い鎧を身に纏った男が浮かんでいた。

 

「……やれやれ、コカビエルを捕縛しに来たら思わぬサプライズがあったな」

 

『止めておけ、ヴァーリ。流石に奴ら二人を同時に相手するのはキツイ。……他にも厄介そうなのがいるしな』

 

現れた男は一誠とグレンデルを見て嬉しそうな声を上げるも、鎧についた宝玉から発せられた声に窘められる。

 

『赤いの。そちらの今度の宿主は随分変わった奴のようだな』

 

『ああ、そうだぞ白いの。悪いが今回は俺の勝ちだ。此奴は過去・現在・未来において最強で……最凶の赤龍帝だ』

 

「ねぇ、ドライグ。アレが俺のライバル?」

 

ドライグと白い鎧の宝玉の声……アルビオンの会話に入った一誠は興味深そうに男……ヴァーリを見つめる。ヴァーリも興味深そうに一誠を見返したが、その身をクルリと反転させた。

 

「今日はコカビエルを捕らえに来たから、彼が死んだ以上は帰らせてもらう。……君と戦う日を楽しみにしてるよ。俺の名はヴァーリだ。覚えておけ!」

 

「うん。俺も君を殺す日を楽しみにしてるよ。悪いけど俺は名乗れないんだ。ごめんね」

 

ヴァーリは一誠の言葉に楽しそうに笑い声を上げるとそのまま消えていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、帰る前に用事を済ませとくね」

 

ヴァーリを見送った一誠はリアス達の前に降り立ち、バルパーの死体から光る球体を取り出した。

 

「ねぇ、其処のエクソシストさん。これが何か分かる? ……聖剣計画の被験者から取り出した因子の結晶さ」

 

「なっ!? では聖剣使いが儀式の際に入れられたのは……」

 

「そう。一人分の因子じゃ足りないから沢山の人から集めたんだ。笑っちゃうよね。エクスカリバーの適合者に選ばれた人達は大勢の人間の命を踏みにじって手に入れた力を神の名の元に使ってたんだ」

 

その言葉にゼノヴィアはショックを隠せない様子だ。そして祐斗は更なるショックで膝から崩れ落ちる。すると一誠は祐斗の目の前に因子の結晶を翳した。

 

「俺は生きた人間にはあまり興味がないんだ。でも、死んだ人の頼みはできるだけ聞くようにしてる。さ、彼らの最後の想いを聞こうよ」

 

その瞬間、因子が光り輝き歌が聞こえ、天から魂が舞い降りてきた。

『聖剣を受け入れるんだ――』

 

『怖くなんてない――』

 

『たとえ、神がいなくても――』

 

『神が見てなくても――』

 

『僕たちの心はいつだって――』

 

「――ひとつだ」

 

その光は祐斗を祝福しているように見え、祐斗は軽く頷くと再び天に登っていく魂を涙を流しながら見送る。

 

「……僕は剣になる。皆の、仲間たちを守る剣に……」

 

「……ふ~ん」

 

祐斗から興味を失った一誠はリアス達が止める間もなく家に帰っていった。

 

 

 




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