霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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十六話

ポチがリアス達に侮蔑を含んだ言葉を浴びせ、帰り道にある電柱にマーキングをした日の深夜、一誠が寝ずにベットの上で本を読んでいると部屋をノックする音がする。

 

「ご主人様、失礼致します」

 

入ってきたのは玉藻だった。お風呂に入ったのか体から湯気が上がり、白い肌にはほんのり赤みが差していた。普段は結っている髪も下ろしており、バスタオル以外は何も身に付けていない。そして玉藻はタオルに手をかけるとそっと脱ぎ去る。妖艶という言葉が相応しい肢体があらわになった。

 

「……玉藻、魅了の術でも俺に掛けた?」

 

「ふふふ、それって私に魅了されているって事ですよね?」

 

膨よかな胸に括れた腰、そして張りのある尻。一誠の視線が釘付けになる中、玉藻はゆっくりと近寄り一誠に覆い被さる。そして一誠が何かを言う前に軽くキスをした。

 

「……今夜はご主人様のお好きなようにしてくださいませ。どういう風に致します?」

 

本人は余裕ぶっているつもりなのだが体は正直らしく、今から散歩に行く犬のように尻尾が激しく振られている。彼女が生きていた頃、餌を前にしてクールぶっていても尻尾が激しく振られていた事を思い出した一誠はクスリと笑うと優しく玉藻を抱きしめ、そっとキスをした。

 

「何時ものご褒美に今日は玉藻の好きなようにしてあげる。どういう風にして欲しい?」

 

「はぅ~! ご主人様ったらイケメンなんだからぁ。玉藻、すっかり参ってしまいますぅ。え~と……日の出まで苛め抜いて下さいませご主人様♥」

 

「……そう。なら、今日は泣き叫んでも気にせずに……」

 

一誠の右手が玉藻の胸を強く掴むと指がズブズブと肉に沈んでいく。そして左手は張りのある臀部へと伸び、其の儘鷲掴みにした。そして……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうやらコカビエルが動いたようだね。悪いけど今日は此処までだよ。ポチとレイナーレはもう向かったようだけど、俺もやらなきゃいけない事があるからね」

 

学園の方から強い力を感じ取った一誠はベットから起き上がると寝間着から着替える。玉藻も不貞腐がりながら妖術により一瞬で着物姿に戻った。

 

「あ~ん、ご主人様のイケズ~! ……おのれ堕天使め。私とご主人様の合体を邪魔し腐りやがって」

 

玉藻は毒付きながら指で呪いの文字を描く。この日から何故か堕天使の組織であるグリゴリに所属する男性陣の頭の後退スピードが大幅に上がった。

 

 

 

 

 

 

「家は任せなヨ…。私がちゃんと守るからさ……」

 

ブイヨセンに家の事を任せた二人はあらかじめ用意していた荷物を持つと家を飛び出し、途中のコンビニでオデンを購入してから禁手姿で学園へと到着する。学園の入り口には生徒会のメンバーと血塗れで気絶しているイリナが居た。

 

 

 

 

 

「やぁ、シトリーさん。コカビエルは学園の中だね?」

 

「……その鎧。貴方が赤龍帝ですね?」

 

「うん。そうだよ。それで魔王の援軍は何時頃来るの?」

 

「……先程コカビエルの襲撃があったばかりですので時間が掛かります。それと、貴方の部下の方から貴方を通すように言われていますのでお通りください」

 

ソーナは結界に一誠達が通れるだけの穴を開ける。どうやら彼女達の役目はコカビエルが逃げ出さないように結界を張る事のようだ。そんな姿を見ながら一誠は不機嫌に呟く。

 

 

「ねぇ、玉藻。はっきり言って彼女ってタチが悪い悪魔だよね。眷属は殆ど一般人なんだよ。彼女達の親は知っているのかな? 大切な我が子が人間を辞めているどころか、今にも戦争が起こりかねない世界に足を踏み入れているって事をさ……」

 

「さぁ、知らないんじゃないですか? 知ってたとしたら信じられませんよ。子供が一歩間違えれば死にかねない危険な世界に足を踏み入れてると知ってなお、その原因と同じ学校に通わせてるなんて。ま、ご主人様からすれば彼女達も腹立たしいでしょうね。なんせご主人様が欲しかった平凡な人生をドブに捨ててるんですから」

 

二人はそのまま校庭を目指して歩いていく。二人が校庭に着くとレイナーレとコカビエルの激戦が繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し戻ってコカビエルの襲撃の直前の事。連絡役として旧校舎の一室に泊まった朱乃が寝る支度をしていると轟音と共に地響きが起こり、様子を見に外に出た彼女の目前にはコカビエルと片腕のフリード、そして司祭姿の男が立っていた。

 

「あらあら、夜分遅くに何用ですの?」

 

朱乃は内心焦りながらも平静を装い、リアス達に緊急信号を送る。そんな彼女の顔をコカビエルはジッと見つめていた。

 

「……バラキエルの娘か。貴様が幼い頃に一度会った事があるが、母親そっくりになったな」

 

「旦那。ここで殺しちまわねんですか?」

 

「……いや、此奴は出来れば生け捕りにしたい。俺の目的は戦争の再発。コイツを殺せば俺とバラキエルの間に亀裂が生まれかねんからな。それでは勝てる戦にも勝てん。……確か朱乃だったな? リアス・グレモリーの到着まで校庭で待つ。バルパー! 四本のエクスカリバーを融合させる儀式に取り掛かれ」

 

「了解した」

 

コカビエルはそう言うと二人を引き連れ校庭へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……貴様ら来たのか。全く、無謀な事だ」

 

リアス達が学園に着くと既にポチとレイナーレの姿があった。ポチは相変わらずの着物に袴姿。レイナーレは顔の上半分を隠す仮面に軽鎧を身に纏っている。ポチはリアス達を視線に移すと呆れたように呟いた。

 

「……ええ、無謀は百も承知よ。でも私は無謀だからって逃げてはいられないの。私が貴方の主に負けた事で領地にも影響が出ているわ。私には領民達の為にも武勲を上げる義務があるのよ」

 

「……勝手にしろ。貴様が何処で死んでも拙者には預かり知らぬ事で御座る」

 

ポチはそう言うとコカビエルに視線を移す。無意識の内に意識からポチを外したコカビエルは忌々しそうにリアスの赤髪を見つめた。

 

「初めましてかな、グレモリー家の娘よ。忌々しい兄君に似て美しい紅髪だ。見ていると反吐が出そうだよ」

 

「ごきげんよう、堕ちた天使の幹部―――コカビエル。それと私の名前はリアス・グレモリーよ。お見知りおきを。最後に付け加えさせてもらうなら、グレモリー家と我らが魔王は近いように見えて、遠い存在。この場で政治的なやり取りなど、するだけ時間の無駄よ」

 

「貴様の名など知っているさ。敵対する相手の事を調べるなど常識だろう? そうそう、校門の方に土産を送って置いた。俺の所にたった二人で乗り込んできたので少々手荒く歓迎してやったんだ」

 

その時校門の前魔法陣が出現し、傷だらけのイリナが現れる。それを見たソーナはまだ結界に慣れていない匙に彼女の手当を命じた。

 

「さて、要件を単刀直入に言おう。俺は戦争がしたい! 今の生ぬるい小競り合いではなく、種の存亡をかけて戦う血湧き肉躍る戦争がな! その為にエクスカリバーを盗んだが天界は動いてくれん。だから貴様を殺そうと思う」

 

「……戦争狂め」

 

「ふん! 貴様ら悪魔とてレーティングゲームという戦争紛いのゲームを楽しんでいるであろう、に!?」

 

コカビエルは言葉を途中で切ると光の槍を構え、飛んできた光の槍を弾き落とす。そしてそのまま槍が飛んできた方向を睨んだ。

 

「……貴様も堕天使のようだが、なぜ悪魔共と共に居る? それに俺が話している最中だろう?」

 

「あら、敵の前で話す方が馬鹿なのよ。口の中を刺し貫かれたいのかしら? それと今の私はご主人様の手駒。其処の悪魔達は手柄欲しさに後から来たモブ達よ」

 

レイナーレはそう言うと六枚の黒翼を広げコカビエルへと飛んでいく。彼女の手から炎が舞い起こった。

 

「喰らいなさい! コレがご主人様のおかげで目覚めた私の力。光を纏う炎の龍『光炎死龍』よ!」

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

レイナーレの手から放たれた光を含む炎は骨だけの龍の姿となってコカビエルを飲み込んだ……。

 




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