霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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何度も行ったが赤龍帝の籠手って設定盛りすぎじゃね? 数万倍で漸く互角や数十億倍でようやく圧倒とか人間よりも悪魔は基本能力が高いのに英雄派の雑魚でさえ少しは称戦える。せめて元の二倍ずつ増えていくとかだったらさ


百一話

「……で、それを俺に教えてどうする気?」

 

一誠はミカエルから聞かされた話に対し興味なさそうに返事をする。今回のクーデターは積もりに積もった不満が爆発した事で起きたのだが、首謀者であるヴァスコらの目的は其れだけではなかった。

 

「裏切り者の炙り出し、ねぇ。で、そういう目的だから少しは手加減して欲しい、と」

 

「は、はい。彼らの気持ちをくんで下さいませんか」

 

「でもさ、裏切り者を炙り出すのは良いとして、裏切り者が居なくても何時かは起きてた事態だよね。それに、此方側が出す悪魔相手に向こうは殺す気で来るだろうし、手加減してたら痛い目を見るのは此方側だ。だからさ、三十分あげる。ランスロットとかの剣士連中も正々堂々とした戦いをしたいようだし、部下の望をかなえるのも主の責務だしね。それに、アレも貰えたしさ」

 

 一誠は指を三本立てながら後ろに目をやる。其処には布に包まれた剣が置かれていた。ミカエルは一誠の返事に安堵して胸を撫で下ろす。だが直ぐにその顔が青ざめた。彼が見た一誠の笑みは残酷極まりないものだったからだ。

 

「でも三十分が過ぎたら容赦しない。殺しはしないけど、戦士としては死んでもらうよ。もしかしたら普通の生活も送れなくなるかもしれないけどね」

 

 

 

 

「てな訳で戦いの時間は三十分だけど、更にデュランダルの前任者は弟子に押し付ける事にしたから。……我が頼もしき騎士達よ。三十分で今回の主犯の一人であるエクスカリバー使い(エヴァルド・クリスタルディ)の首を取ってこい。……あ、出来たら生かしておいてね」

 

「はっ! 必ずや時間内に仕留めてみせましょう!」

 

 ランスロットと元円卓の騎士の騎士達はその場で恭しく跪く。その前に剣が差し出された。

 

「では、信頼の証としてこれを授けよう」

 

「これは……有り難き幸せ!」

 

 

(あ~、このノリ向いてないわ。でも、最上級死神ならこういう話し方に慣れておけって言われたしなぁ)

 

 

 

 ランスロットが主君(一誠)から再び剣を賜って感動し、一誠が騎士向けの話し方に辟易としている頃、ゼノヴィアは訓練場で黄昏ていた。彼女が先ほどまで鍛錬をしていた場所はデュランダルによって徹底的に破壊されており、今は心の鍛錬の為に瞑想を行っているのだがどうも集中できない。

 

「どうかしたのかよ? ゼノヴィア」

 

「いや、今度の戦いなのだが勝てるかどうか不安でな。ヴァスコ(猊下)は歴代最強のデュランダル使い。それを三十分以内に倒すなど出来るのだろうか……」

 

 悪魔側の参加者に選ばれたゼノヴィアは内心では抗議したかったが、今のゼノヴィアの地位は下級悪魔で一誠は最上級死神。今の冥府と冥界の関係を考慮しなくても聞き届けて貰えないどころか不敬行為として主であるソーナ諸共処罰されて戦いに参加させて貰えなくなる。どうにかヴァスコ達を無事に倒せないかと苦悩しているゼノヴィアの後ろからタオルを首に掛けた匙がやって来た。

 

「出来るかどうかじゃなくて、する! 俺達はそうして来ただろ? 会長や俺達を信じろ。んで、終わったら何か美味いもん食いに行こうぜ」

 

「ああ、そうだな。元からそれしか無かった。……ただ、少しだけ勇気が足りないんだ。なぁ、匙。少し目を瞑ってくれないか」

 

「あ、ああ……」

 

 匙はゼノヴィアに言われるがまま目を瞑る。この展開で考えられるのはキス。匙は内心ドキドキしながらも平成を装おいその時を待つ。やがて顔に何か近付いてくる気配を感じ、

 

「えい!」

 

「ぶはっ!?」

 

 額に衝撃を感じて尻餅を付く。目を開けるとデコピンを放った姿勢のゼノヴィアがニヤニヤ笑っていた。

 

「何だ、キスでもするとでも思ったのか?」

 

「……違うわい」

 

「ははは、悪かった反省しているよ。……そうだな。戦いが終わったら私の初めて(・・・)をあげようじゃないか」

 

「な、なな。……良いのか?」

 

「勿論キスとかじゃなく、君が想像した”初めて”だ。ああ君も初めてなのか? それとも……」

 

 

「それとも、何ですか? 先程から高校生に有るまじき事を話していますが……」

 

「会長っ!?」

 

「いや、これは……」

 

「明日は忙しいですから今日の所はお説教は無しです。でも、終わったらお話を致しましょう。……ジックリと」

 

 ソーナは満面の笑みを浮かべながら去っていく。鍛錬後で体が暖まっているにも関わらず二人の体は小刻みに震えた。そして決戦当日、一誠は玉藻やロスヴァイセと共に観覧席に向かっていた。

 

「もう直ぐ開始時刻だね。ロスさん、準備は出来てる?」

 

「ええ、対策はバッチリです」

 

 今回の決戦は同盟の切っ掛けの地となった駒王街を模したバトルフィールドだ。既にランスロット率いる元円卓の騎士達は武器を手に構えており、ランスロットの目は遥か遠方にいるエヴァルドを捉えている。彼はエクスカリバー使いとして有名で最上級悪魔と戦える程の実力を持っている。コカビエルも彼が居たからこそエクスカリバーに興味を持ったのだ。

 

 そして決戦開始時刻、開始の合図と同時にランスロットは飛び出した。真っ直ぐエヴァルトに向かっていくランスロットの前にクーデターに参加したエクソシスト達が立ちはだかるが元円卓の騎士達が剣を振るって押さえ込む。元円卓の騎士やランスロットは邪魔をするエクソシストと剣を交え、エヴァルドが持つ剣を見て表情を強ばらせる。

 

「それはっ! エクスカリバーっ!? いや、レプリカですね」

 

「左様。貴殿はかの有名なサー・ランスロット殿だな。私は、ぐっ!?」

 

 ランスロットは相手の言葉の途中で切り掛る。その騎士に有るまじき行いにエヴァルトは振り下ろされた剣を防ぎながら顔を顰める。その瞳に映るランスロットの顔は憤怒の将に相応しいものだ。他の騎士も怒りに満ちた表情だった。

 

「……侮辱しましたね。王が国を守る為に振るい、我々が羨望の眼差しをエクスカリバーの模造品を作るなどっ!」

 

「くっ!」

 

 ランスロットはエヴァルトを蹴り飛ばして距離を開けると全身に鎧を纏う。アスカロンを鞘に収めて空いて手には別の剣が収まっていた。その剣が現れた時、エヴァルトの持つエクスカリバーのレプリカが震えだす。レプリカといってもエクスカリバーを元に作られた剣。其れ故にランスロットの持つ剣と共鳴していたのだ。

 

「行くぞ、我が相棒よ!」

 

 其の剣の名はアロンダイト。エクスカリバーの姉妹剣にしてランスロットが愛用した剣。そしてガウェインの弟を殺した為に魔剣となってしまった剣である。だが、アロンダイトはかつての聖剣の輝きを取り戻していた。

 

「はぁぁあああああああああっ!!」

 

 アロンダイトは本来のエクスカリバーと打ち合っても折れなかった程の頑強さを持つ剣。エヴァルトの持つレプリカのエクスカリバーとは格が違い、使い手同士にも大きな差がある。たった一合。たったの一合でエヴァルトの持つレプリカのエクスカリバーは刃を切られ、エヴァルトの右手右足が鮮血を撒き散らしながら飛んで行く。其れを見て固まったエクソシスト達も元円卓騎士達によって手足を切り飛ばされ、ランスロットがアスカロンを抜くと刃が多頭の蛇の様に変化して飛ばされた手足を細切れにする。こうなるとフェニックスの涙でも治療不可能だ。

 

 

「あはははは! あはははははは! 感謝してよね、ミカエルさん。これで彼らは二度と戦えない。だから今回の様な事を起こして命を落とす事もないし、今回は大人しくしていた奴らも今回の事を知ったら動かないでしょ。彼らには感謝しなくちゃね。だって、良い見せしめになってくれたんだから。あはははははははは!!」

 

 一誠は観覧席で大声を上げながら笑った。その視線は勝利の雄叫びを上げるランスロット達が映る画面があり、ロスヴァイセはその映像を見て黄色い歓声を上げる。そして約束の時間まで残り二十五分。フィールドの端では巨大な粘体の周囲を無数の音量が飛び交い、その隣には多くの棺桶に囲まれた大男が鼻提灯を出して眠っていた。




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