東方理想郷 ~ Unknowable Games.   作:まこと13

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 今回は14話~27話(中編)のまとめです。





ここまでのあらすじ②

 

 

 

 

〇中編ノ壱

 

 

<魔理沙編>(14~19話)

 

 幻想郷は、既に邪悪の力の感染者で溢れていた。

 異変に対抗するため、アリスと小悪魔は紅魔館の図書館で調べ物を続けている。

 そして、それを守るかのように、美鈴は紅魔館に押し寄せる妖怪たちの群れをたった一人で撃退していた。

 

 程なくして、魔理沙が紅魔館に到着する。

 魔理沙はアリスに協力を求めたが、ルーミアへの殺意に囚われている魔理沙に対し、アリスは魔理沙を見捨てるかのように冷たく振る舞う。

 同時に図書館まで揺れが伝わるほどの異常事態が起こるが、アリスに拒絶されたと思った魔理沙はやむを得ず一人で外に出ることに。

 そこには、崩れた紅魔館の瓦礫に埋もれている美鈴と、そして邪悪の力に憑りつかれた幽香の姿があった。

 既に紅魔館の周りは闇に支配された数百の妖怪や猛獣たちによって取り囲まれ逃げることもできず、魔理沙と美鈴は四面楚歌の状況で幽香に挑むも、あっさりと敗北してしまう。

 己の死を待つだけの、絶体絶命のピンチ。

 だが、そこに突然現れた一人の狂った吸血鬼が周囲の妖怪たちを焼き払い、幽香に襲い掛かった。

 魔理沙たちはその隙をついて図書館へと逃げるも、吸血鬼はすぐに幽香にやられてしまう。

 それでも、狂っているはずの吸血鬼の目は諦めていなかった。

 そこに、譲れない想いがあったから。

 

 吸血鬼はレミリアの実の妹で、名をフランドール・スカーレットという。

 フランはかつてレミリアと両親とともに、紅魔館で幸せな日々の中を暮らしていた。

 だがある日、フランは自らの『あらゆるものを破壊する能力』の暴走によって自らの両親を殺しレミリアの半身を消し飛ばしてしまった。

 それでも、レミリアはずっとフランを守り続けてきた。

 その残酷な事故の記憶を忘れられるように、そしてその身に宿した狂気により自壊しないよう、フランはレミリアによって特殊な結界を張った地下室に500年近く閉じ込められてきたのだ。

 今のフランにその記憶はない、それでもフランは心の奥底でレミリアを信じていた。

 そしてレミリアもまた、いつかフランを無事に外に出してあげられる日が来ると信じて、ただフランのためだけに生きてきた。

 

 だが、レミリアは壊れてしまった。

 数百年の時をフランを救うためだけに費やしてきたが、何度失敗を繰り返してもその運命を変えることができなかったから。

 やがて感情を失くしていったレミリアを見ていることに耐えきれず、フランは自殺を企ててしまう。

 それでも、自殺を決行する前日にフランが見たのは、いつもと違うレミリアの表情。

 不敵に笑う、フランが何よりも求め続けたレミリアの姿だった。

 

 だから、フランは満身創痍で幽香に敗れそうになろうとも、絶対に諦めなかった。

 やっとレミリアが救われる日が来たのだから。

 何があっても紅魔館は、レミリアの帰るこの場所だけは守り抜くんだと、狂気の奥底で薄れていく意識の中で願って―――奇跡が起きた。

 フランは正気を保ち、幽香へと一矢報いることに成功したのだ。

 だが、それは奇跡でもフラン自身の力でもなかった。

 そこに存在した、もう一つのイレギュラー。

 『無意識を操る能力』を持った古明地こいしという策士の存在によって、終始攻勢だった幽香は、いつの間にかフランとこいしの二人に敗れてしまったのだ。

 

 だが、こいしに破れ、異変の情報源とされてしまった幽香のプライドは、その事実に耐えられなかった。

 全てを捨ててでも勝ち続けるために、幽香は邪悪の力に自らの全てを捧げ、更に強大化した幽香の力はあっという間にフランとこいしを圧倒する。

 なす術を失い、こいしは自らの命を諦めかける。

 

 そんなこいしを救ったのは、なんと魔理沙だった。

 

 本当は魔理沙は、幽香たちの戦いに恐怖し逃げ出そうとしていた。

 だけど、魔理沙は聞いてしまったのだ。

 臆病者の自分を心から信じてくれるアリスの声を、小悪魔の声を、美鈴の声を。

 もう、逃げ場などない。

 霊夢はいない、誰かを頼れる状態じゃない、それでも霊夢を、にとりを、大切な皆のことを守れるのは自分しかいないと気付いたから。

 だから、魔理沙は立ち向かう。

 それが無謀とわかっていようとも、たった一人で幽香の前に立ちはだかり、スペルカード戦を挑んだ。

 

 幽香は、スペルカード戦になど全く則る気はなかった。

 その気になれば一瞬で魔理沙など消し炭になっている状況で、それでも魔理沙を生かしていたのは幽香自身の魔力であった。

 自分の中に抑えきれない幽香の魔力が空間一帯に充満し、魔理沙はそれを利用することで幽香と互角に渡り合っていたのだ。

 だが、それでも力の差は歴然。魔理沙はあっという間に追い詰められ……それでも、こいしのサポートによって九死に一生を得ていた。

 こいしは幽香の無意識に介入することで、幽香の行動を誘導しようとしていたのだ。

 そのために、こいしは幽香の記憶を、その無意識の奥底を辿っていった。

 

 かつて幽香は最強の妖怪と呼ばれ、その名が放つ恐怖のもとに幻想郷の花を守り司る大妖怪として君臨していた。

 だが、最強という名は時に望まずして災厄を、伊吹萃香という鬼を呼び寄せてしまった。

 萃香は鬼の力を顕示するために幽香を正面から打ち負かし、幽香の住処である太陽の畑を焼き払った。

 幽香は太陽の畑を失い、そして最強の名を失ったことで花を守る抑止力を失い、幻想郷の花は次々と儚く散っていった。

 花々の命がゴミのように失われていく景色を見ながら、幽香は誓った。

 自分が真の最強となればいい。

 花を傷つける気持ち自体を誰の心にも生じさせないよう、情け容赦の一切を捨て全てを恐怖で支配すればいいと誓った。

 それでも再び映姫によってもたらされた新たな敗北は、幽香からプライドを奪い去っていく。

 幽香はもう、妖怪の限界を超えられない自分への怒りを抱いたまま、ただ願うことしかできなかった。

 たとえ何に縋ってでも圧倒的な力が欲しい、強くなりたいと。

 その願いが、幽香を邪悪の「怒りの支柱」へと導いたのだ。

 

 だが、幽香の記憶の中には、今の幽香と矛盾する強さの記憶があった。

 どれだけ弱くとも強くある、1人の人間の姿。

 その相手こそが、かつて花の異変で幽香を破った魔理沙だった。

 そんな魔理沙の強さに心のどこかで憧れていた幽香は、力を求めて何もかもを捨ててしまった今の自分にも全力で向かってくる魔理沙の眩しさを見て、我に返った。

 魔理沙には、こんな力に頼らずに自分の力で勝ちたい。無意識から生まれたその気持ちが、支柱としての力を幽香の中からはじき出したのだ。

 やがていつもの状態に戻った幽香は、満身創痍のままに、それでも魔理沙とともにスペルカードルールの中に身を投じていった。

 

 一方で、その状況をつくりだしたこいしには、限界が来ていた。

 幽香の無意識を操るために、自分という存在そのものを世界の無意識と一体化させたこいしには、もう誰も気付くことも思い出すこともできない。

 誰からも忘れ去られた時に訪れる妖怪の死を、こいしは覚悟したが……その運命は、アリスがこいしに気付いた途端に消え去っていた。

 アリスはこいしから異変の情報を聞き出そうとし、こいしは素直にそれに応じていく。

 さとりの力によってレミリアの心が蘇ったこと、フランの能力と幽香の能力に繋がりがあること。

 そして、必要な情報を聞き終えたアリスはこいしに何かを託し、それに呼応するようにこいしは姿を消した。

 

 その間にも魔理沙と幽香のスペルカード戦は進んでいき、死闘の末幽香が勝利した。

 スペルカード戦が終わるとともにアリスは魔理沙と幽香から話を聞き、幽香がルーミアではなく雛によって支柱の力を与えられた事実を知る。

 そして今後の計画を立てようとし、魔理沙と幽香に博麗大結界の生成をさせようとアリスが提案した時、それは起こった。

 突如として現れたこいしとフランによって小悪魔とアリスが消され、怒り狂った魔理沙も気絶させられてしまったのだ。

 呆気にとられる美鈴だったが、幽香だけは冷静に現状を把握し、魔理沙を連れて美鈴とともに博麗神社に向かうこととした。

 幽香には、その出来事を仕組んだ黒幕がわかっていたから。

 そしてこの後の結末はきっと、魔神アリスの立てたシナリオの通りに進めるべきなのだと、幽香は悔しくも理解していたから。

 

 

 

 

〇中編ノ弐

 

 

<文編>(20~25話)

 

 神奈子と諏訪子の気配が消えたことに気づき泣き叫ぶ早苗を文は叱咤し、今まで隠していた破邪計画の事実を早苗に伝えた。

 そして、まだこの異変の犠牲者を救える可能性があると。

 それを知った早苗は一人で守矢神社へ向かうことを決心し、文は破邪計画失敗の原因を探ろうと一人で河童の住処へと向かった。

 

 文はその道中、何かに追いかけられる河童たちを発見する。

 河童たちを追っていたのは、なんと同じ烏天狗のはたてだった。

 計画を失敗させた河童への罰として、はたては技術開発チームの河童たちを痛めつけていたのだ。

 はたてに対し憤慨する文だったが、はたてが次に目をつけた標的であるにとりの姿を見て、にとりが恐らく支柱としての力を得ているだろうことに気付く。

 文は河童たちのことをはたてに任せて一人でにとりに立ち向かうも、その力の差は歴然。やがて追い詰められ文は自らの死を悟る。

 だが、文は突如として現れた勇儀に救われた。

 勇儀はにとりの姿を見てその力量を把握、自分と渡り合える強者と認め戦いを挑んだ。

 互角の戦いに思われたそれは、あっけなく勇儀の勝利に終わってしまう。

 だが、それはあくまで、にとりからの勝利に過ぎなかった。

 その直後、にとりを支配した何かの力によって、勇儀は敗北した――かに思われた瞬間、妖怪の山は核の炎に包まれた。

 

 その炎を放ったのは、お燐とともに勇儀を助けに来た空の力であった。

 だが、核融合を操る力を持つ空、怨霊を操る力を持つお燐、それに加えて勇儀が3人がかりで挑んで、その相手はやっと互角であった。

 それほどまでに、邪悪の力によって強化された『あらゆるものを禁止する能力』を持つ河城みとりの力は圧倒的だったのだ。

 それでも3人は力を合わせ、みとりを止めることに成功した。

 だが、みとりに止めを刺そうとした時、みとりを庇うように文が一人勇儀の前に立ちふさがっていた。

 

 少し前に勇儀に助けられていた文は、それでももう自分にできることはないと諦めかけていた。

 だが、文はそこで、はたてがずっと抱え続けた想いを聞かされることとなる。

 はたてが妖怪の山の弱者を守るために、自分を犠牲にし続けてきたことを。

 自分が汚れてでも、どんな汚い手段を使ってでも妖怪の山の支配構造を変えようとたった一人で戦い続けて、それでもだめだったはたての涙を見て、文はずっと逃げ続けていた自分を恥じる。

 そして、文ははたての意志を継ぐと決めた。

 妖怪の山の支配構造の犠牲になっただけの、にとりとみとりを救い出そうと、勇儀たちの前に立ちはだかったのだ。

 

 文にとって、勇儀は昔からの心的外傷とでも言うべき相手だった。

 それでも文は、天魔から天狗社会の次席である大天狗を継いだ身として、そして何よりかけがえのない友が信じてくれた自分を奮い立たせ、勇儀の気迫を前に一歩も退かなかった。

 かつては勇儀を期待させる潜在能力を秘めながらも、ただの弱虫だった文。

 その確かな成長に気付いた勇儀は、文を改めて認めることとなる。

 そして、文はお燐の力を使ってにとりとみとりを救い出そうと提案し、それを成し遂げるために、お燐は気絶しているみとりを再び起こそうとする。

 だが、同時にみとりの纏う力は更に異質なものと化した。

 闇に支配され強大化したみとりの能力が、たった一つの事象を禁じていた。

 みとりの敗北の禁止。それによって、みとりの身体はこの場の誰も届き得ない力を得て異形の魔物のように変化したのだ。

 

 文たちは4人がかりでみとりに挑むも、あっという間に敗北する。

 そして、命の危機に晒された空を庇おうとした文を――更に庇ったはたてが、木端微塵に粉砕されて死んだ。

 萃香を失い椛を失い、そして目の前ではたてまで失った文の精神はもう限界だった。

 既に止め切れない負の感情をその心に宿していた文は、自らの意思で辺りに浮かんでいた怨霊を自分の中に取り込む。

 怨霊の中に混じっていた邪悪の力は文の中にある闇に反応して力をもたらし、復讐の衝動の赴くままに文はみとりを攻撃する。

 そして、強大化した文の力とみとりの力がぶつかり合う中で、それは起こった。

 いつの間にかにとりは、邪悪の力から解放されている。

 代わりに、文の精神をみとりが乗っ取っていた。

 みとりの暴走は止まった、あとは文の暴走を止めれば全て終わる状況だったが、それでも今の文の力はあまりに強大すぎた。

 勇儀は、たとえ空と自分が協力しても今の文を止めることが不可能と諦めかけて……そこに、声が聞こえてきた。

 あまりに弱気が過ぎるんじゃないかと、かつての勇儀の宿敵であった萃香の声が。

 そして勇儀は、鬼神や閻魔に敗れてから弱気になっていた自分を見つめなおす。

 今の自分は、本当の自分のあるべき姿ではない。

 誰が相手であっても、どんな不可能が目の前にあっても、それを打ち砕くのこそが自分という鬼のあり方なのだと、再認識する。

 そして、勇儀は覚醒した。

 その『怪力乱神を持つ能力』、法則さえも超えて全てを打ち砕く力でもって文の力を圧倒し、戦いに終止符を打ったのだ。

 

 にとりは救われ、文も生き残った。

 だが、はたては死んだ。

 その事実に押しつぶされそうになっていた文の前に、それでも再び奇跡は起きた。

 みとりが最後に叶えた願い。その『あらゆるものを禁止する能力』が最後に禁じた、みとりにとっての「本当の敗北」。

 みとりはただ、自分にとって何よりも大切な、妹のにとりが笑っていられる世界を望んだだけだった。

 そのためには、誰よりも強く気高い天狗である文が必要だったから。

 そして何より、誰よりも優しい天狗であるはたてが必要だったから。

 だからこそ、強大化したみとりの能力は、はたてを生かしたのだ。

 

 だが、同時にみとりの命はそこで終わりだった。

 既に死後の怨霊であったみとりは、その心残りが無くなったが故に、この世に留まれなくなったのだ。

 だが、それを知っていたお燐は、みとりの魂を自分に乗り移らせて、最後の僅かな時間を許すこととした。

 そこでみとりは、にとりに異変の事実を伝えていく。

 自分を支配していた邪悪の力が、負の感情を増幅させるための月の技術である可能性が高いこと。

 その技術とあまりに強く結びついてしまった、たった一人が抱える闇のせいで、ここまで異変が深刻化しただろうこと。

 そして、その闇に恐らく閻魔が介入し、『絶対悪』という記号を紐付けているのだろうこと。

 それを伝え終わったみとりは、今度こそ心残りが完全になくなって成仏した。

 にとりの隣に、かつて自分を救ってくれた文とはたてが、これからもいてくれるとわかったのだから。

 

 そして、みとりの成仏とともに、文は新たに決意する。

 新しい天狗社会の頂点である大天狗として、妖怪の山を変えるのではない。

 自分がこの異変の犠牲者を救った上で、天魔さえも超えてこの山の全てをやり直すのだと。

 勇儀の目からも、そしてこれから妖怪の山に住み続けるにとりやはたての目からも、それは文を信じるに十分な決意であった。

 だが、お燐だけは違った。

 現実を見ていない、本当の犠牲者の気持ちなどわかっていない文を、信用できなくなっていた。

 こんな戯言を、これ以上聞いていたくない。

 そして何より、今の地底の、自分たちの事情を文に知ってもらいたくない。

 だからこそお燐は、みとりの魂を自分の身に宿らせることで新たに得ていた力をこっそりと使って、闇に飲まれた天魔たちを召喚し、文を追い払おうとしたのだ。

 勇儀は異変のことを文に任せ、この場を自らが請け負うと提案する。

 文は勇儀たちにこの場を任せて、にとりとはたてを連れてその場から離れ、博麗神社に向かうこととなった。

 そこに、にとりの友人であり災厄の支柱である雛がいるかもしれないから。

 そして、雛を利用して邪悪の力を暴走させている、第三の勢力が存在するのかもしれないから。

 

 妖怪の山に残った勇儀と空は、闇に染まった天狗たちを一蹴する。

 しかし、天狗たちが既に死んでいることに気づいたお燐は、大急ぎでさとりのもとへと向かうこととした。

 お燐は、さとりが既に邪悪の力に感染していることを知っていたから。

 この天狗たちのように手遅れになって、さとりが死んでしまう前に助ける必要があると気づいたから。

 空と勇儀も、お燐をすぐに追いかける。

 空はお燐と同じく、大切なさとりを守りたいから。

 そして勇儀は、かつて萃香を救ってくれたさとりに借りがあるからと、そんな言い訳をしながら。

 

 

 

 

〇中編ノ参

 

 

<レミリア編>(26~27話)

 

 レミリアとパチュリーと咲夜は、その能力を駆使しながらルーミアを相手に未だ戦い続けていた。

 だが、辛うじて生き残っているだけで、今のルーミアは簡単に倒せるほど甘い相手ではなかった。

 偶然と偶然の積み重ねで与えた一撃さえも簡単に再生し続けるルーミアを前に、打開策を見つけられないまま時間だけが過ぎていって――その情報は、突然パチュリーの脳裏に浮かんだ。

 小悪魔が死んだこと、そして同時に小悪魔が調べていた情報の記憶がパチュリーと共有されたのだ。

 そこでパチュリーは、レミリアに妹のフランがいることを初めて知った。

 そして、フランの持つ不死性が、ルーミアと同質のものである可能性も。

 レミリアは観念し、今まで隠してきた全てをパチュリーと咲夜に打ち明けることとした。

 

 フランが両親を殺してしまった、あの日。

 レミリアは憎しみの衝動のままに自らの『運命を操る能力』を使って、フランの運命に絶対の死を刻んでしまった。

 だが、自らの身を犠牲にしてでもレミリアを守ろうとする本当のフランの優しさを感じ、両親の死が事故であったこと、そしてフランの死の運命が誤ったものであると気づく。

 しかし、一度決定された運命を変えることはできなかった。

 レミリアの目の前でフランが死んだことで、レミリアは自分の愚かさを呪うとともに、フランを助けてと強く願った。

 すると、暴走したレミリアの能力が奇跡を起こし、フランを生き返らせた。

 同時にフランは得体の知れない狂気に支配されたが、そこにその狂気を止める何者かが現れ、レミリアに告げた。

 フランを誰にも気づかれないまま地下の小部屋に閉じ込め続け、運命の一切を変えないようにし続ければフランを助けることができると。

 それ以来、さとりによって救われる今日この日まで、レミリアは数百年に渡ってその呪いに縛られ続けてきたのだ。

 

 だが、今重要なのはレミリアの能力ではなく、フランの能力だった。

 フランの持つ不死性、それは吸血鬼の弱点であっても死ぬことはない、ただし唯一フラン自身の力によって死ぬ力であった。

 ならば、恐らくはフランと同じ類の力を持つ者、霊夢ならばルーミアを倒しうる力を持っているのではないかと。

 そう考えた3人は、闇に飲まれた霊夢を救い出すことに気持ちを切り替え、思いつくままに次の手段を考えて戦い続ける。

 だが、それでも次第に限界はやってくる。

 最初にパチュリーがやられ、咲夜もやられ、そして遂にレミリアさえも捕えられる。

 ルーミアにとってレミリアだけは貴重な人材、再び誰よりも強い絶望を抱え得る支柱候補として生かされていた。

 だが、レミリアは追い詰められようとも決してルーミアに、闇に屈しはしない。

 絶体絶命の状況でも笑っていたレミリアの前に……突如としてさとりが現れた。

 

 さとりは自らの能力を使い、レミリアの思考に偽りの真実を植え付ける。

 レミリアが運命を変えようと思ってしまったばっかりに、フランはもう死んだのだと。

 咲夜もパチュリーも何の意味も無く死に、レミリアの人生には最後まで何の価値もなかったのだと。

 そうしてレミリアはただ絶望だけではなく、嘆き、怒り、憎悪、あらゆる負の感情に支配されたまま、再び闇に堕ちてしまった。

 

 だが、さとりは別にルーミアの味方をしに来た訳でもなかった。

 自らを全ての黒幕と思い込んでいるルーミアを嘲笑うかのように「嫦娥計画」の名を出すとともに、ルーミアを謎の頭痛が襲った。

 ルーミアはさとりをこれまで以上に危険視し、排除しようと考える。

 そこに現れたのは、かつてルーミアを陥れた映姫の姿だった。

 

 

 


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