ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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最近調子悪いです。
それではどうぞ。


8話 都会と泥棒

 船が出港してから数時間後、船はヒウンシティについた。ほえ~、すごいな、所狭しと高層ビルが立ち並んでいる。

 どうするかな~、やっぱりジム戦にするか? いや先に観光でもするか、そうしよう。

 じゃあさっそくヒウンシティでも有名なアイス屋にでも行ってみるか。そうしてヒウンアイス屋のあるモードストリートにやってきた。この通りを進んでいくと行列ができている店を見つける。ここがヒウンアイス屋かな。すると行列の整理をしていた人が話しかけてくる。

 

「いらっしゃいませ。ヒウンアイス屋へようこそ。現在、列の最後尾はこちらになります。順番を守ってお待ちください」

 

 どうやらこの行列で間違いないようだ。行列の最後尾に並び順番を待つ。それにしてもすごい行列だな、最前列が見えない。

 これは大丈夫なのか。途中で本日は売り切れでーす、みたいなことにならなければいいのだが。そうして考え事をしていると徐々に列が進んでいき、ついに私の番になった。

 

「いらっしゃいませ! ご注文をどうぞ!」

「ああ~っと、ヒウンアイスを3つください」

「ヒウンアイスが3つですね。かしこまりました」

 

 そしてアイスを3つ受け取って近くにあったベンチに腰掛け、財布をベンチのわきにおいた。

 

「出てきてリオ、カティ」

 

 そうしてでてきた2匹に買ったアイスを渡す。リオは2足歩行なので問題ないが、4足歩行のカティはアイスを持てないので私が手で持ってあげる。そして3人(1人と2匹?)で名物のアイスに舌鼓を打つ。なるほど、行列ができるのもわかる。納得のおいしさだった。

 私がアイスを食べ終わってゆっくりしていると町の中心であるセントラルエリアの方から黄色い影が走ってきて、私の財布を盗っていってしまう。

 

「あっ! こら! 待ちなさい! もどってリオ、カティ」

 

 慌ててリオとカティをボールに戻し、去っていく黄色い影を追いかける。

 よく見てみると去っていく影はこの地方では珍しいポケモンであるピカチュウではないか。いったいどうしてここにピカチュウがいるんだ? まあそんなことはいい。とにかく財布だ。あの中には全財産というわけではないが結構な金額が入っている。必ず取り戻す。

 ピカチュウを追ってヒウンシティの外周のU字通りに出てきた。あたりを見渡すと、居た! どうやら東の方向に進んでいったようだ。それを追いかける。

 すると町の外につながるゲート前の波止場の方に進んでいくピカチュウ。しめた、追いつめたぞ、さすがに海に逃げるということはあるまい。波止場にきてピカチュウは足を止める。よし。

 

「さあ追いついたぞピカチュウ」

『ちっ、しつこいやつだな。』

 

 そう言うとピカチュウは海のほうへジャンプし忽然と姿を消してしまう。

 

「なにい!?」

 

 慌ててピカチュウが消えたところまで来てみると波止場の下に足場がありそこはヒウンシティの下水道の入り口になっていた。やられた、まさかここが下水道の入り口になっていたなんて。

 しかしどうしよう、完全に見失ってしまった。いや、まだ諦めないぞ。確かこの下水道は出入り口が二つしかなく、ここじゃない出入り口の先は行き止まりだったと思う。

 しかしビルとビルの隙間に入られるともうおしまいだ。この下水道を進んだ先にピカチュウがいることを祈ろう。そうと決まればさっそくこの下水道を進もう。そうしていると研究員らしき人が話しかけてくる。

 

「ちょいとそこのお嬢さん」

「なんですか。いまちょっと急いでるんですけど」

 

 急いでいるためか少し刺々しい口調になってしまう。

 

「まあまあ時間はとらせないから。ヤナップ、バオップ、ヒヤップの3匹は特別な石で進化するポケモンなんだ」

 

 そうだっけ。あ、これはもしかして進化の石をもらえるイベントじゃね?

 

「君ならどのポケモンを進化させてみたい?」

 

 ここはカティに使える炎の石一択だな。

 

「え~とバオップですかね」

「バオップなんだね。う~んバオップか~、なら炎の石だね。はいどうぞ」

 

 そう言って炎の石を差し出してくる研究員。

 

「え、いいんですかこんな貴重なものをもらっても」

 

 おお、本当に進化の石をもらえるとは。

 

「いいのいいの、研究用のものがあまったものだから」

「ではありがたくいただきます」

「じゃあ僕の用はこれだけだから。それじゃあね」

「はい、さようなら」

 

 おもわぬ収穫があったな。おっとそれより財布だ、財布。さあ下水道の中をすすむとするか。

 下水道の中は意外とにおいがひどくなくポケモンたちも生息している。そのためポケモントレーナーたちの修業場になっているのかポケモントレーナーに時折勝負を挑まれる。

 しかし今は急いでいるのでポケモンバトルはリオに一任し軽く蹴散らしながら、そしてピカチュウを目撃したか聞きながら奥へ進んでいく。

 そして一番奥までたどり着き、上へと向かう階段を見つける。この先か……頼むから居てくれよ。念のためリオとカティを出しそばに控えさせる。さあ、いざ、泥棒退治へ……!

 

 

 

 

 

 階段を上るとそこには一本の大きな木を中心とし、そのまわりに草むらがある広場のような場所だった。

 あっ! 居た。あのピカチュウだ。よく見るとピカチュウのほかにもウサギのような長い耳と首の周りを覆う襟巻きのような毛が特徴で全体的に茶色い毛並みのイーブイがいる。

 

『ちっ、本当にしつこい奴だな、おい、逃げるぞ』

『えっ、ちょっとまってよ~』

 

 ピカチュウとイーブイはビルの隙間へと逃げようとするがそうは問屋が卸さないってね。

 

「リオ! 逃げ道をふさいで!」

 

 リオは逃げようとするピカチュウとイーブイの行く道を塞ぐ。

 

『くそっ、こうなったら……』

 

 そう言いながらピカチュウは戦闘態勢をとる。

 

『喰らえ!』

 

 そしてリオに向かって電撃を放つピカチュウ。

 

「リオ! みきりで避けてはどうだん!」

『はっ!』

 

 リオは向かってくる電撃をみきりで躱しピカチュウに向かってはどうだんを放つ。

 

『ぐわー!』

 

 ピカチュウははどうだんを避けられず直撃してしまう。

 

『きゅ~』

 

 急所にあたったのかリオとのレベル差からかはわからないがピカチュウは一撃でのびてしまう。残ったイーブイはこちらを見る。

 

『うそ……ピカチュウが負けるなんて』

 

 ピカチュウが負けたのが信じられない様子だ。茫然としているイーブイと目を回しているピカチュウを後目に財布を取り戻す。

 

「ふう、ようやく財布を取り戻せた。いやあよかった。さてと、もどってリオ、カティ」

 

 そうしてリオとカティをボールに戻す。そしてバッグから傷薬を取り出しピカチュウに使う。

 

『えっ、どうして』

 

 イーブイが聞いてくる。

 

「ふふっ、まあ細かいことはいいじゃない」

 

 ピカチュウを治しながらイーブイに返事をする。

 

『こんなことしてくれるということはいい人なのかな? あれ、そういえば……もしかして言葉が通じてる?』

 

 どうやら言葉が通じていることに気がついたらしい。

 

「まあね、実は私、君たちポケモンの言葉がわかるのだよ」

『ほんとにぃ? ええっと、じゃあ、こ、このおたんこなす!』

「おたんこなすだってえ!?」

 

 疑ってきたので凄みを利かせて返事をしてみる。

 

『ひゃあ! ごめんなさい!』

 

 すると驚いてすぐに謝ってきた。

 

「あはは、驚かせてごめんね。冗談だよ。まあ普通、言葉がわかるなんて思わないよね」

『じゃ、じゃあ、やっぱり本当なんだ』

 

 そうしてイーブイと話をしているとピカチュウが目を覚まして体を起こす。

 

『う~ん……はっ! 俺は……』

 

 目が覚めたピカチュウは辺りを見渡す。そのピカチュウに私は話しかける。

 

「おはよう。目、覚めた?」

『大丈夫?』

 

 イーブイもピカチュウを心配して話しかける。

 

『おう、俺は大丈夫だ……ってあんたは……』

 

 ピカチュウは話しかけられたイーブイに対して問題ないことを伝える。

 

『この人が回復させてくれたんだよ』

 

 ピカチュウはイーブイから私が助けたこと聞く。

 

「そうだよ。私に感謝しなさい」

『どうして俺を助けたんだ? 俺はあんたの財布を盗もうとしたんだぞ』

 

 ピカチュウは自分が助けられたことを疑問に思っているらしい。

 

「まあ、結果的に財布は戻ってきたし、それに傷ついた君を放っておくのもなんだか気が引けてさ」

 

 それに対し私はピカチュウになんとなくで助けた旨を話す。

 

『……変な奴だなお前、ん? そういやなんで言葉が通じてるんだ?』

 

 どうやらピカチュウも私に言葉が通じていることに気付いた様子。

 

「ああ、その反応はイーブイでもう見た。もう一度言うけど、私は君たちポケモンの言うことがわかるのさ」

『本当にか?』

 

 やはりピカチュウは私が言葉がわかることに疑問を持つ。

 

『うん。この人が言ってることはほんとうだよ』

 

 ピカチュウの疑問に対してイーブイが答える。

 

『そうなのか……』

 

 イーブイに言われてピカチュウは納得したようだ。どうやら二人の間には強い信頼関係があるようだ。でもどうして私の財布を盗んだのだろうか。訊いてみよう。

 

「まあ言葉が通じることは置いといて、どうして私の財布盗んだの?」

『それは……』

 

 ピカチュウは言いよどむ。

 

『わたしが悪いの! わたしたちはこの街で捨てられて、それでこの街から出ても砂漠で、生きていくことができなくて、それで結局この街に戻ってきてでもわたしたちが暮らしていくための自然が少ないこの町で生きていくには盗みをはたらくしかなくて、それでわたしのためにピカチュウが……』

 

 するとイーブイがまくしたてるように理由を話すがピカチュウはそれを止める。

 

『やめろ、いいんだイーブイ。盗みを働いたことは事実だしそれに俺も食うのに困っていたから盗みをやったんだ。別にイーブイのためだけってわけじゃない。』

「なるほどね~、つまり君たち――」

『やったのは俺だけだ』

「……ピカチュウは食うのに困って生きるために盗みを働いたというわけだね」

 

 ふむ、たしかにしイーブイやピカチュウの本来の生息地は森だから(イーブイもそうかはわからないがおそらくそう)ヒウンシティの先にある砂漠では確かに暮らすことは難しいだろう。だから自然の少ないこの都市で暮らさざるを得ない状況に追い込まれてやむにやまれずというわけか。

 

『それで俺たちをどうするつもりだ? 警察にでも突き出すか?』

 

 ピカチュウは観念し、腹を決めているらしい。

 

「そのことなんだけどな~どうかな、よかったら二人とも私と一緒にこない?」

『えっ、なんで? 俺はお前の財布を盗んだんだぞ?』

 

 ピカチュウは財布を盗んだことを気にしている様子。

 

「それは理由があったからでしょう。生きるためという理由が。そういう細かいことは気にするなよ」

『……どうする?』

 

 ピカチュウはイーブイに意見を求める。

 

『う~ん嫌な予感がしないしわたしはこの人についていってもいいと思う』

「え、嫌な予感がしないってどういうこと? というか勘で決めちゃっていいの?」

『え~と、実はわたし、昔からそういう勘が鋭くて危険なことや嫌なことが起こる前になんとなくわかるんだ』

「へえ、すごいね」

 

 確かイーブイの隠れ特性がきけんよちだった気がするけどこのイーブイのはきけんよちのレベルを超えている気がする。

 

「それでどうするの? 私と一緒にくるの?」

 

 改めてイーブイとピカチュウに問いかける。

 

『わかった、いいぜ、あんたのポケモンになろう。イーブイもそれでいいよな』

『うんわたしもそれでいい』

「やったね! じゃあこれからピカチュウはユウヒ、イーブイはイヴね」

『わかった。俺はこれからユウヒだ』

『わかった。わたしはこれからイヴだね』

「はい、じゃあモンスターボール」

 

 そう言って私が両手で空いているモンスターボールを前に差し出すと、ユウヒとイヴはモンスターボールに前足でタッチしてボールの中に入る。よっしゃ、ピカチュウとイーブイゲットだぜ。

 今後はユウヒのためにでんきだまが欲しいところだな。あとはイヴの進化先か、炎の石でブースターに進化させるのもいいがそうするとカティが強くなれない。

 進化の石が現状手に入れられない状況を考えるとエーフィ、ブラッキー、リーフィア、グレイシアの4匹が候補だな。まあゆっくり考えていくとしよう。

 さてまだ周りは明るいが今日はもう疲れたからポケモンセンターにいって休もう。昼ごはんもまだだしな。

 そういえばユウヒとイヴはどうして捨てられたんだろう。まあ、また今度訊いてみるとしよう。あ、そういえばリオがいやしのはどう覚えているのを忘れていた。……傷薬、無駄にしたな。

 




ありがとうございました。

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