まずいです。
それではどうぞ。
私たちは街の様子を見て回る。各地でプラズマ団とトレーナーたちのポケモンバトルが行われていた。街の中はまさに戦場の様相を呈していた。そしてその中には四天王たちの姿も見受けられる。バトルは基本的にトレーナーたちが優勢でプラズマ団たちを押していて、助けが必要なところは少なかった。そしてその少ないところもトレーナーたちがお互いに助け合っていたので、態々私たちが手を貸す必要もなかった。
「ミスティ、アリア、聞いて。ゼクロムに対抗するには同じ伝説のポケモン、レシラムが必須だと思う。そしてレシラム復活のカギを握るのはトウコだ。だから私たちはトウコの支援に入る」
「わかった」
「了解した」
「トウコもきっと城を目指しているはず。城の方へ行こう」
私たちは姿を隠したまま城の方へと向かう。空から城の中へ侵入するのはあまり良くない。空から入ろうとすると壁か窓を壊さなければいけないため私たちの隠密行動の優位性を崩すことになるからだ。そこで開かれている城の入り口まで来ると丁度二人組が城に入っていく姿が見て取れる。トウコとトウヤだ。続いてジムリーダーたちが次々に城の中へと入っていく。
「ミスティ、アリア、私たちも城の中へ入るよ」
ミスティとアリアが頷いたのを確認し、城の入り口に降り立つ。ライカをボールに戻して私たちは城の中へ足を踏み入れる。
城の中は質実剛健と言う言葉がピッタリ似あうような内装だった。豪華さを示すものは何ひとつなく、機能性が重視された城は空虚さすら感じさせる。入り口から続いていた廊下を抜けると広大なロビーが見えてくる。そしてそこではデントさん、ポッドさん、コーンさんを除くジムリーダーの7人とアイリスがそれぞれのポケモンを出し、七賢人の内、ゲーチスを除く6人と対峙していた。先に入っていったはずのトウコとトウヤはいない。奥に進んだのだろう。勿論今も私たちはラティアス、ラティオス、アリアの能力で姿を隠したままだ。
「ここも助けは必要ないね。奥に進もう」
私は小さな声で言い、奥に進もうとする。
「ぐぐぐ、こうなっては仕方ありません。秘密兵器を起動するとしましょう。おい、起動しろ」
七賢人の一人がそう言った瞬間のことだった。
『ぐうっ!?』
『がっ!?』
『うあっ!?』
突然、アリアとラティアスとラティオスが呻きだす。
「どうしたの!?」
「おやおや、まだネズミが紛れ込んでいたようですねえ」
この場に居た全員が私たちの方を向く。
「「「メイ(ちゃん)(さん)!?」」」
ジムリーダーたちのうちアーティさん、アロエさん、カミツレさんが私達を見て驚く。何が起こった!? 姿が見えない状態だったはずなのに。まさか、秘密兵器とかいうやつ?
「まあ、いいでしょう。何者もこの装置の前では無力! 見てみるがいい。貴様らのポケモンを!」
ジムリーダーたちはその言葉で自分のポケモンたちの方を見る。ジムリーダーたちはポケモンに声をかけるが何も反応が返ってこない。それに対し七賢人のポケモンたちは変わった様子はない。どうなってるんだ一体。アリアたちも苦しそうにしているし。
「貴様ら、何をした!」
ジムリーダーの一人が七賢人を問い詰める。
「フハハハ! あなたたちが知る必要はありません。さあ、ジムリーダー共よ我らにひれ伏――」
「ポケモン不活性化装置!」
突然ミスティが叫ぶ。なんだそれは?
「「「!」」」
ミスティの言葉に七賢人たちは驚く。
「貴様なぜそれを!」
「ポケモンの活動を抑制し、仮死状態に追い込む電波を発生させる装置。まさか完成していたなんて」
マジかよ。そんなものが……。じゃあ、今アリアたちが苦しんでいるのはその装置のせいか!
「ぐっ、はあっ!」
するとアリアが気合を入れる様な声を出し、何かをする。
「な、なんだこれは!?」
アリアの発声と共に七賢人とジムリーダーたちは突然うろたえ始める。
「アリア、何をしたの?」
「今、私はあいつらに幻影を見せている。はあ、はあ、そう長くはもたない。今のうちに装置を見つけて破壊するんだ」
アリアは苦しそうにしながらも力を振り絞る。ジムリーダーたちにまで幻影を見せているのは力を上手くコントロールできないからだろう。
「わかった。じゃあミスティは左へ、私は右へ行く。ラティアス、ラティオス、あなたたち、能力は使える?」
『少々きついが、大丈夫だ』
『わたしも、なんとか』
なら、姿が見えない状態でいけるな。おそらく城内にはプラズマ団の監視がいるはずだ。ポケモンたちがこんな状態になってしまう今、バトルはできない。
「よし、じゃあもう少し踏ん張って。ラティアスは私についてきて。じゃあミスティ、また後で」
「うん」
そうして私はミスティと別れて、城の右の通路を進んでいく。途中で何度かプラズマ団とすれ違うが気付かれた様子はない。ちゃんと隠れられているようだ。ポケモン不活性化装置は秘密兵器と言うくらいだ、恐らく警備が厳重なところにあるはず。警備のいない部屋は無視して装置を探す。すると一番奥まで来るとそこには上と下に通じる階段があった。う~ん、どっちだ? ええい、迷ってる暇はない。下だ下。秘密兵器は地下に造るって相場が決まってる。きっとそうだ。というわけで地下へと続く階段を下りていき、また続いている廊下を走っていく。そして地下の最奥部と思わしきところに着くと更に下へと続く階段があった。しかもそこには他の部屋にはいなかった警備のプラズマ団の姿があった。
「暇だよな。あの装置の警護なんて」
「そうだな。俺も戦いたかったぜ」
間違いなくここだ。私はポーチから棒を取り出し、全身に波導を滾らせて構える。一撃必倒!
「がはっ!?」
「ぐほあっ!?」
警備のプラズマ団を一撃で気絶させ、階段を駆け下りる。そして階段の終わりにあった扉を開け……れない。ちっ、くそ。……そうだ。警備のあいつらなら何か持ってるかも! 私は急いで階段を駆け上り、さっきの警備のプラズマ団のポケットなどを探る。よし、見つけた。カードキーだ。また階段を駆け下り、早速カードキーを使う。しかし、まだ開かない。! パスワード!? くっ、どうする。さっきの奴らのポケットにはヒントになるようなものはなかった。こうなったら無理やり破壊して中に入るしか……。
『まって、メイ。少しだけ、少しだけでいいの。どうにか装置の影響を取り除くことは出来ない? それが出来れば私のサイコキネシスでコントロールパネルに侵入して扉を開けられる』
どうやら独り言が聞かれていたようだ。
「ホント? やってみる」
ミスティは電波だと言っていた。ならその電波を阻害するような……くそ、駄目だ。私の頭じゃ難しいことは考えられない。とにかく波導でまもるを再現できれば。
「フウウウウウ…………」
私はラティアスを波導で包み込み、あらゆる攻撃から身を守るバリアのイメージを波導に流し込む。
『うん! これならいける! ちょっと待ってて』
ラティアスがコントロールパネルに手を触れて、目を青く光らせる。すると、ピピピという電子音が聞こえてきて、プシューという音を立てて扉が開く。中はかなり大きな空間になっていて、天井は空を飛べるポケモンが不自由に感じないほどに高く、数百人は余裕で入るほど広かった。そして最奥部に巨大な装置があった。あれだな。私は入り口の時と同じように中に居るプラズマ団たちを気絶させて装置の前まで来た。装置の前には操作端末が設置されていた。私は端末を操作しようとするがロックされていて全く操作を受け付けない。それなら。
「ラティアス、またお願い」
『任せて』
私は再び波導でラティアスを包み込み、ラティアスに装置のハッキングを行ってもらう。
『くっ、流石にセキュリティがきつい』
ラティアスは解析にてこずっている。すると突然けたたましいアラームが鳴り響いた。
ありがとうございました。