ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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最近夜更かしし過ぎです。
体によくないね。
それではどうぞ。


55話 決戦の始まりと神話の片割れ

 プラズマ団との決戦当日、私、ミスティ、アリアは前日までの緩々の雰囲気を一変させ、気を引き締めて準備をしていた。まあ、準備といっても、いつもの大きめのバッグから小さめのポーチに必要な道具類を入れ替えるくらいだけれども。後は護身用の棒と棒術の確認だな。仮想敵をイメージしながら突き、払い、流しという風に棒を振るう。ちなみに今私が居る場所はホテルの部屋のベランダ。私はいち早く準備を終えて棒を振るっているというわけだ。…………ふう、これくらいでいいかな。

 

「メイ、終わったか」

「こっちも準備完了」

 

 するとミスティとアリアがベランダに出てくる。

 

「私もオッケーかな」

 

 私はそう返事をする。現在時刻は朝の6時前だ。三人でベランダから街を眺めると、既にトレーナーたちが巡回しているのが見て取れる。おそらくプラズマ団の出現を監視するためだろう。

 

「おーおー、やってるやってる」

 

 朝早くからご苦労様です。

 

「そのようだな」

「じゃ、作戦の確認といこう」

「そうだね。まず、私たちはそれぞれラティアス、ラティオス、ライカに乗り、一人一人に分かれて上空から街の状況を観察、その際敵味方問わず周りに気付かれないように各々の能力を使い、姿を隠す。そして、隠密行動を取りながら味方の支援に徹する。連絡はライブキャスターで取り合う。これでいいかな」

「うん」

「ああ」

 

 よし、それなら……!

 

「行動開始だね」

 

 そうして私たちはホテルから出て、私はラティアスに、ミスティはラティオスに、アリアはライカに乗って上空へ飛び立つ。

 

「じゃあ、一時間ごとに街中央の広場に集合ね。ライカはアリアの指示に従って」

『わかった』

「では、散開!」

 

 私はラティアスと共に街を上空から観察する。特にまだ何も起こっておらず。街は静かなままだ。トレーナーたちの中には空を飛べるポケモンに乗って、私と同じように空から街を監視している者もいる。まあ、私の姿は見えていないけどな。あ、そういえばラティアスに訊きたいことがあるんだよね。

 

「ねえ、ラティアス。ちょっと訊きたいんだけど、いい?」

『何?』

「あなたって今みたいに姿を消したまま戦うことってできるの?」

 

 もしできるなら、バトルをかなり有利に進められるんだけど。

 

『ああ、それは無理だよ。技を使おうとすると今の周りから姿が見えない状態が解けちゃうからね』

「ああ、そうなんだ。残念」

 

 そんな会話をしながらも街の観察も忘れない。……ん~。暇だな。そうだ。これから起こることの復習でもしよう。ゲームではトウコがポケモンリーグを勝ち抜いた後アデクさんがNに負けて、その後Nの城が出現、トウコがNの後を追って城に入っていく。その直後にゲーチスを除く七賢人の内の6人に阻まれるがジムリーダーたちの機転によりトウコはNの城の最上階に向かっていく。そして最上階でトウコがレシラムを目覚めさせ、Nと最終決戦。最後にゲーチスも抵抗を見せるがトウコに敗北、決着となっていた。この世界でも同じようにいくのだろうか。ていうかまずポケモンリーグが開催されていない。開催されるのはまだ先の話で、今回のように犯行予告みたいなものが届いたこともゲームとは違う。更にアマダキシティと言う街も存在しなかったし、トレーナーたちが集っていたわけでもない。プラズマ団の総員が出張ってくるというのもゲームではなかった。こんな違いだらけの世界で果たして私の知識が役に立つのか。…………まあ、どちらでもいいか。どんな展開になろうと出来ることをするだけだ。さて、じゃあ、考えられる最悪の展開でも予想しながら街の監視をするとしますかね。そうして私は何度か街の中央広場に戻ってミスティ、アリアと状況を報告し合い、街の監視を続ける。そして丁度4回目の状況報告のために広場の一角に私たちが集合したときにそれは起こった。

 

「プラズマ団が現れたぞ――――!」

 

 ! ついにきたか! トレーナーたちは次々とポケモンリーグの会場がある方へと向かっていく、どうやらポケモンリーグに現れたらしい。

 

「ミスティ、アリア、私たちも行こう!」

「うん」

「ああ」

 

 私たちはポケモンリーグの会場に向かって飛んでいく。そしてすぐに到着するとそこには既にかなりの数のプラズマ団員がリーグ会場を占拠していた。入り口は入れないように固められ、空も飛べるポケモンたちによって監視されている。これは予告文通りならおそらく中でNとアデクさんが戦っているんだろう。空から中の様子を見てみるか。周りから見えていない私たちならいけるはずだ。

 

「ミスティ、アリア、空から中の様子を見に行こう」

 

 ミスティとアリアが頷く。私たちは空の監視をすり抜けて会場の中に入る。すると中央のバトルフィールドにはNと思わしき人物と対峙しているアデクさんの姿があった。そしてNの傍らには西洋風で人間の筋肉を意識したような黒いドラゴン、こくいんポケモンのゼクロムがいた。

 

「あれが本物のゼクロム……」

 

 私は思わず身震いする。

 

「確かに伝説と呼ばれるだけはある」

「あいつは強いぞ」

 

 ミスティとアリアもゼクロムの力の一端を感じ取ったのか、驚いた様子を見せる。するとゼクロムがこちらを向いてギロリと睨んできた。

 

「「「!」」」

 

 私は思わず息をのみ、冷や汗を流す。

 

『招かれざる客よ。我らの邪魔をすると言うのなら容赦はしない』

 

 頭の中に声が響く。向けられる敵意にバクバクと心臓が早鐘のように打ち鳴らされる。ウソだろ? こっちの姿は見えないはずなのに。ゼクロムはそれだけ言うと再びアデクさんの方へ向き直った。

 

「はっ、はっ、はっ、な、なんつープレッシャー」

 

 私は息遣いを荒くし、震える声で言う。ラティアスも微かに震えている。

 

「これは、やばい、かも」

「ふ、ふふ、伝説とはこれ程のものなのか」

 

 これ、リオたちが全員で力を合わせても勝てるかどうかのレベルじゃないか? そうして私たちがゼクロムの力に恐れおののいているとアデクさんとNのバトルが始まる。と思われたが私たちが見たのはバトルなんてものじゃなかった。そこにあったのは一方的な蹂躙だった。アデクさんの出すポケモンがゼクロム一匹に次々と倒されていく。そしてアデクさんの最後のポケモン、オレンジ色の六枚の翼を持つたいようポケモン、ウルガモスが出てくる。しかし、切り札であるはずのウルガモスでさえも一撃で沈められてしまう。圧倒的だった。抵抗する気すら失せるほどに。いやいや駄目だ駄目だ! 私はパンッと頬を叩いて気合を入れ直す。するとバトルフィールドに三人の男女がやってくる。トウコ、トウヤ、チェレンだった。Nと何かを話しているようだが私たちは上空にいるのでよく聞こえない。しばらくその様子を眺めていると突然、

 

 ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

 地鳴りがしてくる。そしてアマダキシティの最北端にあるポケモンリーグの会場の更に北、そびえ立つ山脈の中腹辺りに城が出現する。ついにお出ましか。プラズマ団の城。そしてミスティが育った場所。

 

「これは……!」

 

 そういえばアリアは城のことを知らなかったな。そんなことを考えていると声が響いてくる。

 

「聞こえるかい、トレーナーの諸君。ボクはN。たった今チャンピオンマスターを超えた者だ。この街の周りに現れたのはプラズマ団の城。ボクはチャンピオンマスターよりもはるかに強いトレーナーとして城の高みからイッシュに轟かせる。全てのトレーナーよ、ポケモンを解き放てと! それに抵抗すると言うのなら城の頂上まで来るといい。ボクはそこで待つ。もっとも、そこまで来られたらの話だけれども」

 

 そう言うとNはゼクロムに乗り城の方へと去っていった。そしてそれと同時に各地から戦闘音が聞こえてくる。

 

「ミスティ、アリア、様子を見に行こう」

「う、うん」

「あ、ああ」

 

 二人ともさっきのことで少し臆しているようだ。

 

「自分を信じろ」

 

 私は二人に語り掛ける。そして、未だに震える自分自身にも。

 

「仲間を信じろ。パートナーを信じろ。私たちならできる。力を合わせればなんだってできる。例え一人一人の力が小さくとも沢山集まれば、無限大だ」

 

 私の言葉を聞いたミスティとアリアはキョトンとした後に笑い出す。

 

「ふふふ、そうね」

「ははは、その通りだな」

「さ、私たちに出来ることをしに行くよ!」

「うん!」

「ああ!」

 




ありがとうございました。

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