ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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最近お菓子を食べ過ぎな気がします。
どうでもいいですね。はい。
それではどうぞ。


50話 いつもの漫才とライモンジム

現在、私たちはライモンジム前に来ている。ちなみにライモンジムは遊園地の中にある。

 

「ようやくここまで来た。いやあ――」

「ここまで長かったなあ」

 

私のセリフがミスティに取られるのは最早様式美だけど一応つっこんでおく。

 

「セ・リ・フ・を・と・る・な」

「まあまあ、落ち着きたまえメイくん。君がわかりやすすぎるのがいけないのだよ」

 

ミスティと漫才をしているとアリアがクスクスと笑う。ウケてよかった。

 

「ふふふ、緊張はしていないみたいだな」

「緊張してないわけじゃないけどリラックスはしてる」

「なるほど、一番いい状態だな」

 

いつも通りにいけば勝てる戦いのはずだし、そこまで緊張はしない。

 

「じゃあ、早速行くとしますか」

 

そうしてライモンジムの中に足を踏み入れる。このジムの仕掛けはジェットコースターだ。ジェットコースターに乗ってカミツレさんのところに向かう。今になって思うけどジムの中をアトラクションにする意味ってあるんだろうか。別になくてもいいような……。い、いや、何か私にはわからない高尚な理由があるに違いない。うん、きっとそう。とそんなことを考えているとジェットコースターが終わってジムの最奥部に辿り着いた。辺りは照明が不足しており薄暗い。辛うじてバトルフィールドがあるのが見えるくらいだ。すると突然スポットライトがある一点を照らす。そしてそこには……。

 

「よくきたわね。可愛い挑戦者さん。私がこのライモンジムのジムリーダー、カミツレよ!」

 

バーン! という効果音と共に登場したのはこのジムのジムリーダーカミツレさんだった。……なんというか。派手な登場だなあ。私たちが呆気に取られて黙っているとカミツレさんはぶつぶつ呟き始めた。

 

「やっぱりちょっと派手すぎたかしら。次からはもう少し抑え気味でいきましょう」

 

カミツレさんは一人で考え込む仕草を見せてうんうんと首を振っている。ちなみにカミツレさんの髪は短めの黄色のぱっつんだが、衣装は全体的に黄色と黒の配色なところ以外は今の季節に合わせたファッションをしている。さすがモデル、今までのジムリーダーたちのようにゲームと同じ格好をしているわけではないようだ。よくよく考えると今までのジムリーダーたちはゲームの格好が仕事着だったんじゃないかと思う。きっと。

 

「コホン。えーっと、一週間ぶりね、メイちゃん。それと以前ジムに来てくれたMちゃんに、初めての方ね」

 

カミツレさんは私たちに近づいてきて言う。それと同時に辺りの照明がついてスポットライトが消え、バトルできる環境になった。バトルフィールドの四隅には電極みたいなものが設置され、バトルフィールドは軽く電気を帯びているようだ。

 

「私はアリアと言う。よろしく」

「ええ。よろしく。それで今回はメイちゃんとアリアさんのジム戦かしら?」

「いや、私はトレーナーではない。だから挑戦するのはメイだけだ」

「あらそうなの。じゃあ、メイちゃんのために説明するわね。今回はあなたのために特別ルールでいかせてもらうわ」

「え? 特別ルール?」

「ええ。あなたがコンテストで見せたバトルは明らかにジム巡りをしているトレーナーのレベルを超えていた。だからジムバッジをただであげてもいいんだけど、それじゃあつまらないでしょう?」

 

ニッコリと笑ってバッジを見せつけてくるカミツレさん。いえ、つまらなくないです。ですからそのキラリと光るジムバッジをくれませんか? 私が物欲しげにバッジに手を伸ばすとカミツレさんはヒョイッと私の手から遠ざけるように腕を動かす。あ~。

 

「私は一トレーナーとしてメイちゃんに勝負を挑む。ルールは3対3のシングルバトル。バトル中の道具の使用はなし。ポケモンの交代は互いに一度のみ。ただし、技による交代はどちらも無制限。こんなところかしら」

 

なるほどね。これは最初から全力でくると考えてもいいかもね。

 

「わかりました。この勝負、受けます!」

「そうこなくっちゃね」

 

そうして私はバトルフィールドに立ちカミツレさんと向かい合う。ミスティとアリアは観客席に移動した。

 

「これより、ジムリーダー、カミツレ対チャレンジャー、メイのポケモンバトルを始めます。使用ポケモンは互いに3体。相手のポケモンを全て戦闘不能にした方の勝利とする。では……始め!」

 

審判から開始の合図が飛び、私とカミツレさんはポケモンを出す。

 

「リオ! Start the Struggle!」

『最初は僕か』

「エモンガ! スポットライトの中へ!」

『あははっ!』

 

カミツレさんが出してきたのはどことなくピカチュウに似た姿のモモンガポケモン、エモンガだ。

 

「先制はもらうわ! エモンガ! でんげきは!」

『喰らっちゃえ~!』

 

エモンガから迸る電撃が放たれ、リオに向かってくる。

 

「リオ! みきりで躱してストーンエッジ!」

『はっ!』

 

しかし、リオはその電撃を躱し、周りに尖った岩を生み出してエモンガに発射する。

 

「エモンガ! 躱してアクロバット!」

『いやっほう!』

 

エモンガは次々に発射される尖った岩を空中で舞うように動き回って躱しながらリオに接近、攻撃を仕掛けてくる。それなら。

 

「リオ! 攻撃を受け止めてカウンター!」

 

リオはエモンガのアクロバットを受け止める態勢に入る。

 

「甘い! エモンガ! そのままボルトチェンジ!」

『わほーい!』

 

エモンガはアクロバットがリオに当たる直前に体に電気を纏ってそのまま突進してくる。リオはそれを受け止めてしまう。

 

『くっ!』

 

しまった。ボルトチェンジは特殊技だ。カウンターが意味を成さない。エモンガはボルトチェンジをリオに当てた後白い光に包まれ、ボールに戻っていく。リオのカウンターはもちろん不発だ。

 

「シビルドン! スポットライトの中へ!」

『ディヒヒッ!』

 

エモンガの代わりに出てきたのは宙に浮いたウナギのようなでんきうおポケモン、シビルドンだ。ちっ、やはりボルトチェンジは厄介だね。ボルトチェンジは接近しなければいけないみたいだから遠距離攻撃で封じ込める!

 

「シビルドン! かえんほうしゃ!」

『ぶおうらっ!』

 

シビルドンから勢いのある炎が吐き出される。

 

「リオ!しんそくで躱してはどうだん!」

『ふっ!』

 

リオの弱点である炎タイプの技は喰らうわけにはいかない。リオはかえんほうしゃをしんそくで避けてはどうだんを放つ。

 

「シビルドン! でんじほうで撃ち落としなさい!」

『いりゃっ!』

 

シビルドンは口から球状の電気を発射し、はどうだんに当てて相殺する。

 

「! 今だリオ! 神速のきあいパンチ!」

『はあっ!』

 

でんじほうを撃った後に隙が見えたのですかさずリオに攻撃の指示をする。リオの神速の一撃はシビルドンを捉え、吹き飛ばす。

 

『ぐはあっ!?』

「シビルドン!?」

 

カミツレさんがシビルドンに呼びかけるがシビルドンは目を回して倒れていて反応がない。

 

「シビルドン、戦闘不能」

「くっ、まさか一撃とは。戻って、シビルドン。お疲れ様。ふふっ、やはり強いわね。だけど次はこうはいかないわ。エモンガ! スポットライトの中へ!」

『再び飛び出てちゃんちゃらら~ん!』

 

カミツレさんは再びエモンガを繰り出してくる。

 

「今度はこちらからいきます! リオ! 連続ではどうだん!」

『ふっ、はあっ!』

 

出てきたエモンガに軌道が直線的で避けやすいストーンエッジではなく追尾性能のあるはどうだんを撃ち込む。

 

「エモンガ! アクロバットで回避! 避けきれないものはエアスラッシュで相殺!」

『よっ、ほっ、とりゃっ!』

 

しかしエモンガは今回も素早い空中機動ではどうだんを避け、白い刃を飛ばして撃ち落としていく。かなり素早いぞあのエモンガ。もしかしてエースだったりするのかな?

 

「リオ! ストーンエッジも織り交ぜて!」

『わかった!』

「! エモンガ! かみなり! ルカリオにストーンエッジを撃たせちゃダメ!」

『おっけ~!』

 

エモンガが避けながらもかみなりを撃つ準備を整え、バリバリッと体に電気をチャージし始める。この時を待っていた!

 

「今だ! リオ! 見切りのストーンエッジ!」

『うおお!』

 

次の瞬間エモンガが荒ぶる雷を放つが、リオはそれを避け、かみなりを撃っている最中で身動きが取れないエモンガにストーンエッジを直撃させる。

 

『いった~い!』

「畳み掛ける! リオ! 神速のれいとうパンチ!」

『はあっ!』

 

リオは空中にいるエモンガに向かって跳躍し、下から突き上げるようにしんそくで加速したれいとうパンチを放つ。

 

「戻って! エモンガ!」

『う~!』

 

しかし、カミツレさんはここでエモンガを交代させる。エモンガは光に包まれボールに戻っていく。そのせいでリオの神速のれいとうパンチは当たらなかった。

 

「ゼブライカ! スポットライトの中へ!」

『ギュイイイイイイイン!』

 

カミツレさんの最後のポケモンは黒い部分が多いシマウマのような姿をしたらいでんポケモン、ゼブライカだ。

 

「ゼブライカ! こうそくいどう!」

『ふっ!』

 

早速行動を開始するゼブライカ。すばやさを上げてくるか。それなら。

 

「リオ! つるぎのまい!」

『コオオオ!』

 

リオの周りに剣が浮かび上がり回転する。これでこうげきが二倍になったはず。もうリオを阻むものはいない。攻撃が当たればだけど。

 

「いくよ、リオ! 神速のきあいパンチ!」

『おおっ!』

「ゼブライカ! でんじふゆうで空へ!」

『はっ!』

 

リオはゼブライカに必殺の一撃を叩きこもうとするが、リオが最初の一歩を踏み出した瞬間ゼブライカは空中を駆け始め、リオの攻撃は空を切る。ゼブライカは空中に足場があるかのように自由に駆け回っている。ちぃ、また対空戦かよ。さすがに分が悪い。交代かな。

 

「ゼブライカ! オーバーヒート!」

『ふうあっ!』

 

ゼブライカか白い炎を吐き出した瞬間に私はモンスターボールを取り出しリオを戻す。そうすることでゼブライカの攻撃を避ける。

 

「戻れ、リオ。ライカ! Start the Struggle!」

『アタシの番ね!』

 

ライカは空が飛べるから空中戦が可能だ。これで浮いているゼブライカやエモンガと対等に戦える。

 

「くると思っていたわ、フライゴン。だけど、私のポケモンたちなら! ゼブライカ! すてみタックル!」

『しっ!』

「ライカ! ゼブライカに合わせて無影の後ドラゴンテール!」

『いくわっ!』

 

ゼブライカは宙を駆け、突進してくる。その速度は相当なものだ。しかし、ライカはいつもリオのしんそくの速度を体感している。この程度は造作もなく捌き切れる!

 

『なにっ!?』

 

ライカはゼブライカのすてみタックルをすれすれで躱し、その際にドラゴンテールを当てる。

 

『がっ!?』

 

ライカの尻尾の一撃を喰らったゼブライカは光に包まれボールに戻っていく。そしてカミツレさんの手持ちの中で残っているエモンガが再びフィールドに姿を現す。

 

『あららら?』

 

エモンガは困惑している様子だ。なら今のうちに!

 

「ライカ! 瞬影からのドラゴンクロー!」

『はあっ!』

「! エモンガ! かげぶんしん!」

『え、うん!』

 

ちっ、セイガさんの時と同じ方法で避けられた。これは要対策。エモンガは多数の分身を生み出し、それは未だに健在。まずはそれを消さないと。

 

「ライカ! いわなだれ!」

『喰らいなさい!』

 

ライカは虚空より多数の岩を呼び出しエモンガの分身たちにぶつけて次々に消していく。

 

「エモンガ! エアスラッシュ!」

『ニヒヒッ!』

「ライカ! 後ろにりゅうのいぶき!」

『! くあっ!』

 

本物のエモンガがライカの背後に回り込んでいてそこからエアスラッシュを放つが、ライカは後ろを振り向きながら吐き出した赤紫色のブレスで相殺し、そのままブレスを維持してエモンガに当てる。

 

『うわあああ!』

「エモンガ!?」

 

りゅうのいぶきを喰らったエモンガは力尽きて地面に横たわった。

 

「エモンガ、戦闘不能」

 

審判よりエモンガが戦闘不能になったことを告げられる。よし。あと一匹。あとはゼブライカのみ。カミツレさんはエモンガをボールに戻し、再びゼブライカをフィールドに出す。

 

「くっ、ゼブライカ! スポットライトの中へ!」

『ギュイイイイイイイン!!!』

 

先ほどよりも更に力強い咆哮を上げるゼブライカ。その周りには電気が溢れ出ている。しかし生憎ライカは地面タイプを持つフライゴンだ。電気タイプの技は効かない。だがその意気やよし。こちらも全力をもって応えよう。

 

「いくよ! ライカ!」

『ええ!』

「ゼブライカ! でんじふゆう!」

『はっ!』

「ライカ! すなあらし!」

『はあっ!』

 

ゼブライカが宙を駆け始めるのと同時にフィールドが砂嵐に覆われる。これでフィールドは完成。次だ。

 

「ゼブライカ! こうそくいどうの後ニトロチャージ!」

『ふっ!』

 

ん? まあ、今はいいか。ゼブライカはすばやさを上げた後さらに攻撃と同時にすばやさを上げることのできるニトロチャージで攻撃してくる。

 

「ライカ! フェイントのすなじごくで足止め!」

『よっ、と』

 

ライカはニトロチャージを使って炎を纏って突進してくるゼブライカをフェイントで気を逸らしてまたもやすれすれで躱し、すれ違い様にゼブライカを砂の竜巻の中に閉じ込める。

 

「くっ!」

『なにっ!?』

 

でんじふゆうのせいで効果がないかもしれないが目くらましくらいにはなるだろう。ていうか今フィールドは激しい砂嵐のせいで視界が悪くゼブライカやライカが見えない。波導の力のおかげでなんとか位置を把握できるが細かいことはわからない。おそらくカミツレさんやゼブライカからは何も見えないだろう。だがこの状況でもライカなら、砂嵐が吹き荒れる砂漠で生きてきたライカなら見えているはずだ。

 

「ライカ! フェイントのドラゴンクロー!」

『いくわよっ!』

「! ゼブライカ! とにかく動き回って!」

『! ああ!』

 

とりあえず動き回って攻撃を躱そうという魂胆だろうが、その程度で避けられるほど私のライカは甘くないぜ。その証拠に、ほらヒットした。

 

『ぐうっ!』

「一気に決めろ!」

『ええ!』

 

ライカはゼブライカを地面に叩きつけ、そして重力の力を借りた一撃をお見舞いする。

 

『がはあっ!?』

「ゼブライカ!?」

 

やったか!? ゼブライカは動きを見せない。しばらくして砂嵐が晴れると、そこには嬉しそうに仁王立ちをしているライカと倒れて目を回しているゼブライカの姿があった。

 




ありがとうございました。

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