ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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前書きに書くことが思いつかない。
前にもこんなこと言っていた気がします。
それではどうぞ。


45話 練習と趣味

 次の日、いつもの鍛錬を終え、朝食を済ませて、例のごとくライモンシティ近くの16番道路の開けた場所に来ている。ちなみに朝一でアリアの分のサッカーとテニス、ミュージカルの席を予約してきた。奇跡的に私とミスティがとった席の隣の席をとることができた。

 

「は~い。今日も今日とてやってきました、16番道路! みんな出てきて!」

 

 私はテンション高めにリオたちをボールから出す。

 

「では、今日の予定を発表しま~す! リオ、カティ、ユウヒ、ライカはいつも通りに組み手をしてもらいま~す。ただし! 注意点が一つあります。ライカのコンテスト対策のために、みんなで協力して、綺麗に見える技の回避方法とかも考えてやってほしいんだ。できる?」

『わかった』

『うん!』

『ああ』

『ええ』

「よし、オッケーね。イヴとルカは昨日言ったとおりの演技の練習をするよ」

『は~い』

『わかりました』

 

 演技の内容はこうだ。まず私とイヴとルカがイヴの操るサイコキネシスで優雅に空を泳ぐ。そして、ルカのれいとうビームで作った氷塊を削りだし、氷像を作るというものだ。

 

「では、練習開始~、の前にみんなで写真を撮ろう」

 

 私の提案にミスティとアリア、リオたちがいきなりどうした? という風に首を傾げる。

 

「氷像のモデルにしようと思ってね」

 

 私の答えにみんなは納得したようでああ、なるほどと頷いている。

 

「さ、できればミスティのポケモンたちとも一緒に撮りたいからミスティもポケモンたちを出してくれる?」

「わかった。みんな出てきて」

 

 そう言ってミスティは自分のポケモンたちを出す。今は人目がないのでラティアスとラティオスも外に出ている。

 

「ミスティ、悪いけどカメラの準備を任せてもいい?」

「任された」

 

 ミスティにカメラを準備を任せて私たちはカメラの前に集合する。こうしてみると壮観だね。私とミスティとアリア、リオたちポケモン組、合わせて3人と12匹だからね。

 

「う~ん、もうちょっと中央に寄って。みんな入りきってない」

 

 ミスティの指示で私たちはいそいそと移動する。

 

「は~い。おっけ~。じゃ、一枚目いくよ~」

 

 ミスティはそう言ってタイマーを起動させてこちらに来る。そしてカメラのフラッシュが私たちに撮影したことを伝える。

 

「まだ何枚か撮るからね~」

 

 そうしてしばらく写真を撮り続ける。その途中で私はじっとしているのに耐えられなくなって、みんなにポーズを決めるように指示したり、みんなにちょっかいを出そうとして失敗し、みんなで笑ったりと楽しく写真撮影をした。

 

「う~ん。みんなどれがいいと思う? 私としてはこれが一番いいと思うんだけど」

 

 そう言って私が選んだのはみんなが自然な笑顔で笑っている写真だ。これは私がみんなにちょっかいを出そうとして失敗し、それをみんなが笑っている場面だ。私の行動が結果的にいい写真を撮ることにつながった。結果オーライだね。

 

「そうね。私もそれがいいと思う」

「そうだな。私もその写真に賛成する」

 

 ミスティ、アリア、そしてリオたちも賛成してくれて満場一致で氷像のモデルが決定した。しかし、かなり複雑だが氷像でこの写真を再現できるか? まあ、難しそうなら作るものを変えればいいだけだし、とにかくやってみるのがいいだろう。

 

「よーし、氷像のモデルも決まったことだし、改めて練習あ~んど修業開始!」

 

 そうしてコンテストまでの約四週間が過ぎた。修業の成果は上々といったところだ。まずはイヴとルカのコンテスト一次審査に向けての練習の結果を話そう。まず最初に行う空中遊泳についてだが、これは空を飛べるポケモンたちの演技などを参考に、演技するステージの構造を考えてどのように飛び回るかを決めた。まあまあいい出来になっていると思う。次に氷像を作る件だが、最初は作るのに時間がかかり出来もあまりいいものとは言えなかったが、何度も練習しているうちにかなりの完成度まで到達できた。完成までにかかる時間も一次審査の演技の制限時間にぎりぎり収まるまでになった。これならば十分張り合えるだろう。ついでに言うとルカに覚えさせようとしていたりゅうのはどうの練習は一旦中止している。

 

 リオの修業についてだが、初めの二週間ほどでれいとうパンチを覚えた。その後の二週間は技の改良に焦点を当てた。とりあえずイヴのときと同じようにエネルギーの集束・圧縮に注目し、リオの得意な格闘タイプの技、はどうだんときあいだまで試してみた。しかしその結果はあまり良くないものだった。はどうだんやきあいだまはイヴのサイコショックのように無数の弾を発射するのではなく単発の弾でもともと収束しているものなのでこれ以上収束させるのは不可能で無理やり圧縮すると今度は狙った所に飛ばなくなるという事態に陥った。イヴのときはどうして狙った所に飛ばなくなるという事態が起こらなかったのか疑問に思ってイヴにそのことを聞いてみるとサイコショックを圧縮し、発射した後もサイコキネシスで軌道を修正していたんだと。要するに力によるごり押しだったというわけだ。そしてリオはそれができない。こうなってくるとリオの技を改良するにはリオも習得可能なサイコキネシスを覚えさせるか、別の改良方法を考えるか二つに一つだ。それで考えたのが“乱回転”である。はどうだんやきあいだまのエネルギーを乱回転させ、威力の向上を図る。某NINJA漫画を参考に思いついたこの改良方法、うまくいくかはわからないが、新たな技を覚える合間にでも少しずつやってみるのがいいだろう。ちなみに威力を上げるためにきあいだまにさらにパワーを込めるというのもやってみたがその場合は集まったエネルギーが霧散した。そう簡単にはいかないってことだね。

 

 次にカティだが、初めの二週間ほどでおにびを覚えた。あんな曖昧なイメージだけでできるようになるとは思わなかった。まあ、できたのでよし。そしてその後の二週間はリオと同じく技の改良に当てたかったのだが正直に言うとカティの技の改良点が全く思いつかなかった。そのことをカティに謝るとカティは『技の改良なんてしなくても大丈夫! とにかく技を強くすればいいんでしょ! それならいつもやってるし!』と返してきた。うん、見事な脳筋ですね。忘れてたよ。カティがそんな性格だってこと。そんなわけでカティは既存の技の改良改め技の強化に時間をかけた。

 

 次にユウヒだが、リオ、カティと同じく初めの二週間でかわらわりを覚えた。ユウヒが自分の作ったひかりのかべで練習できるとわかって、そのことでイヴが自分の役割が無くなったと拗ねていたのは余談である。まあ、そのあとすぐにユウヒのフォローが入ってイヴは機嫌を直していたが。さすがのリア充共である。全く隙がない。後の二週間もリオと同じく技の改良を行った。今回手をつけたのはでんじはだ。でんじはという技はリング状の電気を飛ばしてそれが当たると相手は麻痺するという技なのだがいかんせん範囲が狭く避けられやすいという欠点があった。それを克服するために広範囲にでんじはの電気を撒き散らすという方法をとった。最初はただがむしゃらに連続してでんじはを撒き散らしていただけだったが、徐々に一度にいくつものでんじはを放てるようになり、最終的には範囲内に入り込んだ者をすべて麻痺させるという球状のフィールドを形成するまでになった。これは、ね、もうね、どうしてこうなった。さすがの私でも予想外ですよ。しかも欠点らしい欠点といえば少し力を溜める時間が必要なのと発動の直前に体に電撃が走ることくらいだからね。それで、このでんじはを広域のでんじはと呼ぶことにした。ホントは超電磁フィールドとか名付けたかったが、今まで改良してきた技のネーミングに合わせた結果がこれだ。とにかくこれでまた戦略の幅が広がった。ちょっと試してみたところ、広域のでんじはを維持したりもできるし、広域のでんじはの力を溜めている時やフィールドを維持しているときに他の技を使うこともできるらしい。後者は技の同時使用を習得していたおかげかな。ユウヒに関してはこれくらいか。

 

 最後にライカだが、ライカはこの四週間ひたすらに戦闘においてどうすれば美しく戦えるかを考え、実践していった。美しく見える戦闘といって侮るなかれ、その実態は実に実戦的でいかに最小限の動きで技を回避し、攻撃に繋げるかという一点を忠実に守った非常に映える戦闘の仕方だった。洗練された動きはある種の美しさを生み出し、さらに普通とは違う色を持つライカを引き立てている。最小限の動きにとどめようとして攻撃をかわしきれないときがあるのが玉に瑕だがライカがたった四週間でこういう戦い方を会得したのは驚きだ。そしてライカがこの戦い方を会得する合間に技の同時使用も覚えさせた。つまり実験しようと思っていただましうちとフェイントの同時使用を試せるようになったのだ。これはそのときの一幕である。

 

 

 

 

 

 

「は~い、ではでは早速実験したいと思いまーす。ライカ、リオ、準備はいい?」

『ええ』

『おっけーだよ』

 

 ライカとリオは向かい合う。

 

「何が起こるかわからないからリオはきっちりガードすること」

 

 私がリオに注意を促すとリオはコクンとうなずく。

 

「ライカも攻撃はリオがガードしているところに当てるように」

 

 ライカにも注意をしてライカが了承するのを確認し、実験を開始する。

 

「よし。じゃあ、いこうか! ライカ! だましうちのフェイント!」

 

 私の合図でライカが動き出す。そしてライカはリオに向かって突進し、リオはライカの突進を受け止める。私の眼にはそうとしか映らないが結果はどうだろう。

 

「リオ、大丈夫だった? ライカも何か問題はない?」

『アタシは大丈夫。攻撃しただけだし』

 

 ライカは大丈夫らしい。

 

『僕も大丈夫。ライカがちゃんとガードポイントに攻撃してくれたから』

 

 リオも大丈夫らしい。よかった。

 

「それで、攻撃を受けてみて、どんな感じだった?」

『いやー、まいったね、ホント。完全にライカが僕の視界から消えるんだから。しかも再びライカが視界に入ってきたのは攻撃が当たる直前だし。これは正直に言って避けられる気がしないよ。だましうちとかフェイントの単品でも大概だったのにこれはもう卑怯なんてレベルを超えてるよ。まあ威力が低いことだけが救いだね』

 

 なんと、完全に視界から外れるとは。これは強いな、うん。戦いにおいてこれは最強のスキルといっても過言ではないと思う。だけどこの攻撃の最大の弱点はリオの言うとおりだとすると威力が低いことだ。だが私は諦めないぞ。この技には無限の可能性がある。そういうわけで次の実験だ。

 

「じゃあ、次の実験ね。ねえライカ、だましうちのフェイントで相手に接近してその後別の技を使うことって出来ない?」

『相手に体当たりするまでいかないで直前で別の技を使うってこと?う~ん、わかった。やってみる』

「よし。リオ、悪いけどさっきと同じようにまた攻撃を受けてくれる? ライカもさっきと同じようにリオのガードポイントに攻撃すること。だましうちのフェイントのあと使う技は……ドラゴンクローでいいかな。リオも今度はみきりを使ってみて。できるかどうか確かめたいから」

『了解』

『わかったわ』

 

 そうして再びリオとライカが向かい合って構える。

 

「よし。じゃあ、ライカ、だましうちのフェイント、の後にドラゴンクロー!」

 

 技の名前が長いな。何か略称を考えよう。ライカは高速でリオに接近し、腕を輝かせて攻撃する。さて見た感じはうまくいったようだが本人たちの感想はどうかな。

 

「リオ、ライカ、どうだった?」

『そうね。アタシはうまくいったと思う。ドラゴンクローの手ごたえは普通に技を使ったときと変わらなかったし、普段と同じ威力が出てたと思うわ』

 

 おお、これは良い結果だ。

 

『僕のほうは駄目だね。みきりも使えなかったし、波導で気配を探ることもできなかった。さらにライカの技の威力も申し分なかった。ははは。もう笑うしかないね。この先ライカとの組み手は苦労しそうだよ』

 

 どうやら、みきりはできなかったらしい。波導で気配を辿れなかったというのも実にグッドだ。これは意識からも外れているということだからね。フェイントの効果も消えていないようだしやはりこの技はかなり使えるようだ。その後も何度か実験を繰り返し、だましうちのフェイントで相手に接近することを瞬影、だましうちのフェイントでできた隙に相手の死角に回り込むことを無影と名付けた。なお、無影については距離が離れているとだましうちのフェイントでできる隙がいくら大きいといってもさすがに死角に回り込むまでに気付かれるらしく遠距離では使えない。瞬影も相手に気付かれるまでの時間の関係上相手との距離が離れれば離れるほど効果は薄くなる。それでもこの技が有効なのには変わらない。さてと実はもう一つ実験したいことがあるんだよな――。

 

 

 

 

 

 

 回想終了。まあこんな風に着実にライカは強くなっている。ゲームでは不遇と言われていたライカの種族、フライゴンだが私にかかればこんなもんよ。並みいる強敵のドラゴンタイプのポケモンたちをばったばったとなぎ倒すライカ。想像するだけで心が震える。ちょっと自慢が入ってしまったが許してほしい。

 

 ついでにもう一つ実験したいと言っていたのはリオとライカが覚えている技、じしんについてである。じしんの出し方はリオとライカで違いはあれど共通しているのは一点に力を集めて地面をたたきつけてエネルギー波を発生させる点だ。しかもそのエネルギー波は広範囲に拡散しているにも関わらずかなりの威力を誇っている。そこで私は考えた。じしんのエネルギー波を発生させるための力が一点に込められているならその力を直接相手にぶつけることができたならさらに強大な威力になるのではないかと。そしてその目論見は見事に的中した。ライカのじしんを直接たたきつけるのはリオのきあいパンチほどの威力が出ていることがわかった。詳細な威力はわからないが強烈な威力を持っていることは確かだ。この技を普通のじしんと区別するために集束のじしんと名付けた。いやあなんか次々とライカが強くなっていく気がするな。ちなみにだがライカはじしんを使うときは尻尾に力をこめて地面にたたきつけている。リオの場合は地面にパンチしてじしんを使っている。これくらいかリオたちの修行と練習の成果は。

 

 それ以外で何か変わったことと言えば、アリアが来てから料理がすごい豪華になった。ミスティと旅を始めた時は料理は当番制で日替わりで順番に料理をしていたのでアリアが来てからも最初はそうしていたのだが、私とミスティが当番の時とアリアの時の料理の差がものすごかった。料理の品数や質などあらゆる点で私とミスティを圧倒的に上回っていた。この状態を実感したミスティは「女子として負けた。しかも圧倒的に」と言ってがっくり肩を落としていた。でもその後すぐにミスティはアリアに料理を教えてほしいと言って弟子入り志願をしていた。それを受けたアリアも最初は戸惑いながらも了承し、それ以降は毎日ミスティがアリアからアドバイスを受けながら料理を作ることになった。私もどうかとアリアから誘いを受けたが一端断った。私は別に料理ができないわけではなく、人並みに料理はできる。料理なんてレシピ通りに作れば問題なくできる。それに料理のレシピ本なんて山ほどあるんだしそれで十分だと思う。私がそのことを伝えるとアリアが残念そうに「そうか。お前にも料理の楽しさを知ってもらいたかったのだが」と言うので結局私もミスティと一緒に料理を習うことになった。現在は毎日三人で料理を作っている。今はまだかなりアリアに手伝ってもらっているがいつかはアリアを超えてみせる! とミスティは闘志を燃やしていた。私は、まあ、ゆっくりと楽しみながら上達すればいいかな? 程度でほどほどに頑張ることにする。とまあこんなことがあってアリアの趣味が料理だということが発覚したのであったとさ。……料理が趣味のゾロアークってちょっとおかしな感じがするなぁ。まあ、趣味なんて人それぞれなんだし、それにこのおかげで旅の楽しみが増えたから万々歳って感じだね。

 

 アリアの趣味が発覚したが、ミスティの趣味も発覚した。つい最近のことだが、例のミニスカウエディングコスプレ事件以来、写真を撮る楽しさに目覚めたらしい。ミスティ曰く「あのときみたいに奇跡の一瞬をとらえることにロマンを感じるようになった」とのこと。それと「被写体は主にメイたちだけどいいよね?」と笑顔で言ってきた。……まあ、いいか。ミスティだって最低限のマナーを弁えている……のかな? まあ、私の時は強く否定しなかったのもあるし、大丈夫だと思いたい。さすがに度が過ぎるようであれば注意しないといけないかな。後、予約をとっていたサッカーとテニスの試合とミュージカルがこの四週間のうちにあったが普通に楽しかった。特にミュージカルは一次審査の演技の参考にもなったし。まあ、そんなこんながあってコンテスト当日を迎えた。

 




ありがとうございました。

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