ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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少し前に風邪ひきました。
皆さんも体調には気を付けてください。
それではどうぞ。


42話 参加者と貸衣装

「じゃあ、私たちも行こうか」

「そうね。事務局だったね。どこにあるかわかるの?」

「大丈夫。さっきのチラシに書いてあったから」

 

私とミスティはコンテスト事務局に向かった。事務局に着いて中に入ると、お姉さんが受付をしていた。

 

「ようこそ。ここはポケモンコンテスト事務局です」

 

営業スマイルで私たちを出迎えるお姉さん。

 

「あの、私コンテストに参加したいんですけど」

「本当ですか!?」

 

お姉さんはいきなり大きな声をだしカウンターから身を乗り出す。

 

「聞きましたか!? 参加希望者ですー!」

 

お姉さんが事務所の奥に向かって声をかけると、奥から今度は男性が出てきた。

 

「おお、参加者の方、よく来てくれました。わたくし担当のクルヤマと申します。どうぞお掛けください」

 

私とミスティは用意されていた椅子に座る。

 

「それでどちらが参加なさるので? もしかして両方とか!?」

「いえ、参加するのは私だけです」

 

返事をしたのは勿論私。

 

「そうですか……いやいや一人でもありがたいです。実は参加者が少なくて困っていたんですよ。一流コーディネーターが多数出場するということを宣伝したためか、コンテスト未経験がほとんどのイッシュ地方のみなさんが気おくれしているみたいで」

 

ああ、そらそうだ。コンテストがどのようなものかもわからないのにその筋の一流の者たちが出ると言われたら出場する気は起きないよね。玄人の大会に素人が出るみたいなもんだ。あれ? 私って実はアホみたいなことしてる? 今さら気付いたぜ。まあ、いいか。なんとかなるさ。

 

「ここに必要事項を記入してください」

 

クルヤマさんは用紙を取り出しボールペンを差し出してくる。私はそれを受け取り順に記入していく。

 

「いやあ、それにしてもよかった。あなたのような勇気ある人が来てくれて。実は募集をしたにもかかわらず参加者がまだあなたを含めて四人しか集まってないんですよ。みなさん、デモ映像を見ただけで帰ってしまわれるんですよ」

 

クルヤマさんも苦労してんな。

 

「へえ、他の参加を決めた方はどんな人たちなんですか?」

 

私は用紙に記入しながらクルヤマさんに訊いてみる。

 

「全員女性の方で、一人はかわいらしい感じで金髪のミニスカートのミキさん、一人は茶髪でふわふわした雰囲気のマナさん、そして最後の一人なんですが、サングラスをかけていて顔はよくわかりませんでしたが、青い髪のグラマラスで妖艶な方でした。確か名前はセイガさんと言っていました。あれは絶対美人ですね~」

 

最後のほう、鼻の下が伸びてる。やっぱり男ってそういうのに弱いよね。うん、私もよくわかる。それにしても青い髪で名前がセイガ、ね。またいつものゲームキャラクターの予感しかしない。まあ、勘違いかもしれないけど。私は記入を終える。

 

「クルヤマさん、終わりました」

 

私は用紙をクルヤマさんに渡す。

 

「はい。ありがとうございます。メイさんですね。ではこれから大会について説明します。デモ映像を見ながらの説明となります。そちらの方も説明を聞いてご納得されたらぜひご参加を」

 

クルヤマさんはミスティの方を向いて言う。そしてデモ映像付きの説明が始まる。

 

「競技は一次審査と二次審査に分かれており、一次審査はポケモンのアピール、二次審査はコンテストバトルが行われます。まずは一次審査の映像をご覧ください」

 

映し出されたのはポケモンとコーディネーターが演技をしている場面だ。これはゲームのポケモンコンテストというよりアニメのものかな。今まで言ってなかったがこの世界にはアニメの設定も混じっている。ポケモンリーグなんかがそう。カントー・ジョウトリーグ、ホウエンリーグ、シンオウリーグなど各地方にそれぞれポケモンリーグがあるのは変わらないが、各地方リーグで優勝すると今度は地方リーグ優勝者同士で行われるチャンピオンリーグの参加資格を与えられる。チャンピオンリーグで優勝すれば四天王に挑戦する権利を得ることができる。四天王制覇後にはチャンピオンマスターとの戦いが待ち受けており、それを倒してようやくリーグ制覇となる。おっと、話がそれた。今はコンテストの話だった。

 

「このように、一次審査ではポケモンの魅力を引き出すアピールを行ってもらいます。このときにフリスビーやボールなどの小道具を使っても構いません。なお今大会ではダブルパフォーマンスと呼ばれるポケモン二匹による演技とシングルパフォーマンスと言うポケモン一匹で行う演技のどちらでも可能になっています。どちらを選ぶかは参加者の自由です」

「へえ」

 

ミスティが関心を見せる。

 

「次に二次審査のコンテストバトルですが、こちらの映像をご覧ください」

 

そういって今度はコンテストバトルの映像を見せられる。

 

「二次審査では、コーディネーター同士でポケモンバトルをしてもらいます。それぞれのコーディネーターは一定量のポイントを持っていて、自分のポケモンがダメージを受けたり、技を外したり、相手のポケモンの動作が良いものと評価されたりすると減っていきます。対戦時間は5分間でポイントが無くなったり、 ポケモンが戦闘不能になったら負けです。タイムアップの場合は残りポイントが多い方が勝ちです。ちなみにポイントがなくなることをポイントアウト、戦闘不能になることをバトルオフと言います。あとコンテストバトルは一対一のシングルバトルです」

 

うむ、やはりアニメのポケモンコンテストだ。

 

「二次審査に進めるのは八名、一次審査の上位七名と特別審査員賞に選ばれた一名です。そして二次審査を勝ち抜いた優勝者にはコンテストリボンが送られます。ちなみに他地方にはコンテストリボンを五つ以上集めた者だけが出場できる、グランドフェスティバルという大きなコンテストの大会があります。イッシュ地方でもいずれ開催される見込みです。そしてこの大会のリボンはそのときの出場規定リボン数に数えることができます。他地方では使えないのでご注意を」

 

ということはこの大会は公式大会ということか。

 

「大会の開催場所は総合ポケモン競技施設ライモンドームです。集合日時は●月◆日▲時★分、集合場所はもちろんライモンドームです」

 

どうやらそこが会場のようだ。時期は一カ月ほど先のようだ。

 

「以上で説明を終わります。何か質問はありませんか?」

「いえ、ないです」

「観戦チケットってどこで買える?」

 

ミスティが質問する。

 

「チケットならここで販売しております。ご購入ですか?」

「今残ってる中でできるだけ見やすいとこお願い、二席ね」

「それなら……」

 

ミスティはクルヤマさんと席を決めている。そしてそれはすぐに終わる。

 

「この二席ですね。合わせて○○円になります」

 

ミスティはトレーナーカードで払う。

 

「ありがとうございました。それはそうと、メイさん、衣装なんかはどうなさるおつもりですか?」

 

クルヤマさんが訊いてくる。

 

「え? あ、考えてなかった」

「それなら、いいところがあります。実は当事務局では有料ですが衣装の貸出を行っておりまして、よろしければご利用ください!」

 

クルヤマさんはパン、と両手を叩き、顔を明るくさせて言う。

 

「え、え~と、じゃあ、お願いしようかな?」

 

私はクルヤマさんの何かを期待する笑顔に押され、承諾してしまう。

 

「そうですか! ありがとうございます! では早速――」

「ちょっと待った」

「? どうされました?」

 

ミスティがストップをかける。

 

「もうお昼だしそれは御飯のあとでいいんじゃない?」

 

そう言われ時計を見てみると確かにお昼を過ぎていた。

 

「ホントだ。すいません。お昼ご飯を食べてからでもいいですか?」

「ええ。もちろんかまいません。ごゆっくりどうぞ」

「では昼食後にまた来ます。そのときはよろしくお願いします」

「お待ちしております! ありがとうございました!」

 

そうして私たちはコンテスト事務局を後にし、ポケモンセンターで昼食をとる。

 

「ねえ、メイ、衣装ってホントにいるの?」

「う~ん、どうだろ? デモ映像の人たちはみんなきれいな衣装を着てたし、私も着飾ったほうがいいかな~と思ったんだけど」

 

アニメでも主人公たちはドレスアップしてたしね。

 

「まあ、いいけど。値段、みたの?」

 

あ、忘れてた。

 

「……ううん、見てない」

 

私はあはは、とバツが悪そうに笑う。

 

「もう、お金は無限にあるんじゃないんだよ? いくらメイがトレーナーたちに連戦連勝だからって無駄遣いしちゃダメ」

 

ミスティがまるでお母さんのように注意する。

 

「はい。すいません」

「まあ、今回は許してあげる。せっかくのコンテスト大会なんだし、オシャレしてもいいと思う」

 

ミスティからの許しがキタ! これで勝つる!

 

「ははー。ありがとうございます!」

「まったく調子がいいんだから」

 

そんな会話をしながらお昼ご飯を食べて、再びコンテスト事務局に戻った。

 




ありがとうございました。

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