ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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最近思うように筆が進まない……。
それではどうぞ。


39話 久々の本格修業と自信

 次の日、日課の鍛錬を終えて、ミスティと朝食をとる。

 

「さて、サッカーとテニスの試合とかミュージカルとかにはまだ時間があるわけだけど、何をすればいいと思う?」

 

 私はミスティに尋ねてみる。まあ、何を言われようと修業だけどな!

 

「修業でもしてればいいんじゃない?」

 

 ミスティは適当にそう答える。

 

「やっぱり? そうだよね~」

 

 どうしようかな。新たな技を覚えさせるにしてももうルカとライカ以外はレパートリーがね……。なんとかひねり出すか。……よし。

 

「は~い。みんな、ご飯食べながらでいいから聞いて。これからの修業内容について話しまーす」

 

 リオたちポケモン組がこちらを向く。

 

「とりあえず、みんなで組み手をするのはいいとして、新しい技についてだね。予定としては、リオはれいとうパンチ、カティはおにび、ユウヒはかわらわり、イヴはまた覚えている技の改良。で、ルカとライカだけどまだ技を詳しく見てないから、ちょっと見させてね」

 

 そうしてルカ、ライカの技を見てみる。ふむ、これは……。

 

「ねえ、ルカにライカ、訊きたいことがあるんだけどいい?」

『なんですか?』

『なによ?』

「単純な興味なんだけど、まずはルカ、あなた、昔トレーナーと一緒にいなかった?」

 

 ルカの技を見てみると普通ではトレーナーがわざマシンなどを使うか私のように訓練することによってしか覚えることができない技を覚えていた。だから、私は昔トレーナーとともにいたのではないかと推測した。

 

『そうですね。確かに私は昔、トレーナーと一緒にいました。ですが、その方は数年前に亡くなりました。それで私はそのトレーナーが亡くなった後にその家族によってあの入り江で放されました』

 

 そうだったんだ……。

 

「そのトレーナー、優しかった?」

『ええ。いつも私たちを気遣ってくれる優しい人でした。もちろん、メイも十分信頼のおける人だと思っていますよ。比べることはできませんが』

 

 どうやら信頼されているようだ。

 

「その言葉を聞けてうれしいよ。ありがとう」

 

 私はルカにお礼を言う。

 

『どういたしまして』

 

 ルカは優しく微笑む。そんな姿も美しい。

 

「みんなもありがとうね。私の言うことに従ってくれて」

 

 私は日頃の感謝を述べる。

 

『いいんだよ。メイと僕の仲じゃないか』

『アタイもメイのことは信頼してるよ!』

『助けてくれたこと、強くしてくれたことには感謝している』

『私もおかげで自信がついたんだ。ありがとう』

『……』

 

 順番にリオ、カティ、ユウヒ、イヴが言う。ライカは黙っている。いやあ、よかった、仲良くできているようで、ライカ以外は。

 

「ライカはまだ私を信用できないか。まあ、会ったばかりだもんね」

 

 そりゃね、さすがに会ったばかりでは無理だよね。

 

『そんなことない! メイのことは信用している……いや、できると思う。それにメイがいいトレーナーだってことは今の様子を見てもわかる。だから、その、……』

「大丈夫だよ、ライカ。私はいつまでも待ってるから。あなたが自然と私を信頼できるようになるその時までね。私は粘り強いからね。信用してくれないからってあなたを見捨てたりしない。それどころかいつまでも面倒みちゃうよ~」

 

 私はニヒヒッとライカに笑いかける。

 

『メイ……い、今は大人しく従ってあげる。しょうがなくなんだからね! 少しでもひどいことしたらアタシからアンタを捨ててやるんだから!』

 

 ライカはふん! と顔を背けながら言う。なにこれかわいい。もしかしてライカってツンデレ? いや順序的にはデレツン?

 

「うん。今はそれで十分だよ。で、ライカに訊きたいことなんだけど、あなた、進化するのが遅くなかった?」

 

 技を見て一目でわかった。ライカの種族、フライゴンで覚えるはずの技を覚えておらず、その進化前のナックラーの時点でしか覚えない技を多数覚えていたからだ。

 

『な、なによ。それがどうしたっていうの!? もしかして、アンタもバカにする気!?』

「そんなことしないよ。進化が遅かったからって恥じることは何もないよ。むしろライカの場合は進化が遅くてむしろ得してるんだよ。進化する前でしか覚えられない技がたくさんあるからね」

 

 本来使えない技を使おうとするのは以前の例の通り無理だからね。本来覚えているはずの技を思い出す方はカティの時に可能だと証明された。

 

『そ、そうなの? 確かに群れでは私しか覚えていない技があったりしたけど……そういうことだったのね』

 

 ライカは何かに納得したようなに頷く。

 

『で、でも、私が進化が遅かったのは事実よ。どうしてバカにしないの? アタシなんて……』

 

 ライカは俯く。

 

「そう卑屈にならないで。あなたは自分の力で進化を成し遂げた。それは誇ってもいいことだと思うよ? それに重要なのは昔どうだったかじゃなくて今どうなのかだと思わない?」

『そう……かもしれない。でもアタシは自信がない。どうすればいいと思う?』

 

 ライカは何かにすがるように訊いてくる。ふむ、出会ったときは不安を押し隠して強がっていたのかもね。

 

「そうだね。手っ取り早いのは強くなることだね。そうすれば自分に自信が持てるようになると思うよ」

 

 まあ、覚えている技から考えるとライカはもうすでにかなり強いはずなんだけどなぁ。あと必要なのは自信だということだね。何か考えておくか。

 

『そうね……なら、メイ! アタシを強くしなさい! じゃないと許さないから!』

 

 ライカはこちらを指差して言う。よし、少しは元気になったようだな。

 

「了解~。で、ルカに覚えてもらう技はりゅうのはどう、ライカはドラゴンクローとドラゴンテール、りゅうのいぶきの三つね」

『アタシだけ三つも!?』

 

 ライカは驚いて思わず食べようとしていたポケモンフーズを落とす。

 

「大丈夫、今のあなたならすぐに使えるようになるはずだから」

 

 カティが一日でしんそくを習得したことからレベルで覚える技を思い出すのは容易だと考えられる。リオなんてぶっつけ本番でメタルクローを習得したからなぁ。今思うと私もあの時はテンパっていた。反省です。

 

『本当でしょうね? 嘘だったら承知しないからね!』

「は~い。じゃあ、朝ごはんを食べて少し休憩したらさっそく修業にいくよ!」

『了解』

『いいよ!』

『ああ』

『うん』

『はい』

『ええ』

 

 そうして私とミスティ、ポケモンたちは朝食を食べ終えて、ポケモンセンターを出た。そして今はライモンシティ近くの16番道路に来ている。

 

「みんな出てきて!」

 

 私はポケモンたちを出す。

 

「じゃあ、まずは組み手からだね。とりあえず二人一組になって。相手は誰でもいいよ。ああっと、やっぱり一組だけ指定する。リオとライカ、あなたたちで組んでやってみて」

『アタシやり方わかんないんだけど』

「やり方は単純。簡単なバトルをするだけ。基本はあなたたちだけでやってもらうけど、時々指示をだすからそれにも注意しててね。リオもやりながらコツとかを教えてあげてね」

『了解』

「二人一組になったね。なら、始めようか!」

 

 そうしてリオとライカ、カティとユウヒ、イヴとルカがそれぞれ組になって組み手を始める。私はそれをリオとライカの組み手を重点的に観察し、時折、指示を出す。そして何度か休憩を挟んで昼頃に組み手が終了する。

 

「は~い。お疲れ様。お昼休憩に入るよー」

 

 私たちは昼ごはんの用意をして、昼食タイムに入る。組み手を見ていて気になることがあったのでそれをリオとライカに聞いてみる。

 

「ねえ、リオ、それにライカ、ちょっと気になることがあるんだけどいい?」

『ん? なに?』

『なによ?』

「最初のほうだけど、ライカがそれほど速くない速度だったにも関わらずリオは攻撃を受けそうになってたよね。なんで?」

『ん~その時はなぜか一瞬意識を逸らされたんだ。みきりを使って何とか避けられたけど』

 

 一瞬意識が逸らされる、か。

 

「じゃあライカに訊くけどその時何か技使った?」

『確かに使ったわ。相手の隙を作る技で今までは外したことなかったんだけどリオには避けられちゃった』

 

 外したことがないということは……おそらくこれはライカの使っただましうちかな。

 

「あとは、ライカが高速で移動してリオに攻撃を仕掛けていた時だけど、珍しくリオがガードしてたよね。あれはなんで?」

 

 この場面は何度もあった。みきりの使えるリオにとってガードするという行為はする機会があまりないはずなのに、だ。

 

『その時は焦ったよ。一瞬意識がライカから外れてその隙に突進してくるんだもん。それにうまく集中できなかくてみきりができなかったんだ。いつもなら簡単にできるんだけど』

 

 みきりが発動できないということはこれはフェイントかな。ふむ、両方意識を逸らす技か。特徴が似ているし組み合わせたらなにか相乗効果が見込めるのではないか? さっそく実験……はまだ駄目だ。ライカは二つ同時に技を使うことができない。

 

『ふうん。意識が外れるねえ。この技にそんな効果があったなんてね。速く動けるだけかと思ってたわ』

 

 ライカの中ではフェイントは高速で動けるだけの技だったらしい。とにかく、だましうちとフェイント、それの同時使用についての研究は必須だな。

 

「そう、ありがと二人とも」

 

 そうして昼休憩が終わり、午後の訓練に入る。

 

「はーい。じゃあ、午後は新しい技の習得をしてもらいまーす」

『うん』

『おおー!』

『ああ』

『はーい』

『わかりました』

『ええ』

 

 リオたちが返事をする。

 

「詳しい技の説明するね。まずリオのれいとうパンチだけど、氷の力を拳に込めてパンチする技。氷の力の込め方は氷タイプの技を覚えているルカから聞いてやってみて」

『わかった』

 

 リオが力強く返事をする。

 

「次にカティ、おにびは相手をやけど状態にさせる技。うまく説明できないんだけど、おそらくはいつも使っている炎の技の性質とは違う炎を出すんだと思う」

 

 正直に言ってこれで理解できるならカティは天才だと思う。こんな説明しかできない頭の悪い自分が恨めしい。

 

『うん!』

 

 相変わらずカティは元気だね。もしおにびを習得できなかったら対策を考えないと。

 

「次にユウヒ、かわらわりだけどこれは相手のリフレクター、ひかりのかべを破壊できる技なんだ。すでに覚えているきあいパンチと同じかくとうタイプの技だからそう難しくないと思う」

『イヴがよく使うあの二種類のかべのことか』

 

 ユウヒは小さな腕を組んで言う。

 

「そう、だから、練習はイヴと一緒がいいんだけど……そうなるとどちらかの練習がおろそかになっちゃうんだよね。何かいい案はある?」

『う~ん、そうだね。……じゃあ、こうしようよ。わたしはまた今度でいいから、ユウヒの練習に付き合うよ。それにその状態でもできることはあるし。例えばあさのひざしの回復速度の上昇を狙うとか。これならユウヒからもしダメージをもらっても回復できるからいいんじゃない?』

「イヴはそれでいいの?」

『うん。ユウヒの役に立てるなら、うれしいし』

 

 イヴはそう言ってもじもじしながら上目遣いでユウヒの方を見つめる。

 

『イヴ……』

 

 ユウヒもイヴの方を見つめ始める。はいはい、のろけのろけ。このリア充共め。

 

「はいは~い、わかりました~。じゃあ、イヴの言うとおりってことでいいよ~」

 

 私はラブラブ空間を作り出している二匹への精一杯の抵抗としてセリフを棒読みで言う。嫉妬は醜いって? だまらっしゃい。

 

「次は、ルカ! りゅうのはどうだけど、これはリオが覚えているからリオからやり方を学んでね」

『わかりました。そのようにしましょう』

 

 ルカが承諾の返事をする。

 

「では最後にライカ、あなたの覚える三つの技だけど、これらの技はすべてドラゴンタイプの技、つまり今のあなたに宿る力の一部だと思って頂戴。あなたの奥底に眠っている力を呼び覚ますだけだからコツさえ掴めれば習得は容易なはず。まずはリオのりゅうのはどうを体感して、ドラゴンタイプの力がどのようなものかを感じ取った後は自分の好きなようにやってみるといいよ。例えばその力を腕に込めたり、尻尾に集約してみたり、口から吐き出してみたり、ね」

『わかった。アンタの言うとおりにやってみるわよ』

 

 ライカは少し自信なさげに返事をする。

 

「はい! じゃあみんな! 練習に入って!」

 

 そうしてリオたちは各々の修練にとりかかる。そしてそれは夕方まで続いた。

 

「は~い! みんな、お疲れ様! 今日はこれで終了~」

『お疲れ様~』

 

 皆意外と元気だな。声の調子でわかる。

 

「ね、だから言ったでしょ? 習得は簡単だって」

『まさか本当にできるとは思わなかったわ。全部アンタの言うとおりになってなんか怖いわ』

 

 ライカは無事に三つの技を習得した。うん、予想通りに事が運んでよかった。これで少しは自信がついてくれればいいんだけど。

 

「今日も無事、終わったみたいね」

 

 ミスティが話しかけてくる。とりあえず私はリオたちをモンスターボールに戻す。

 

「まあね、とりあえずは予定通りってところかな」

「ふ~ん。それで? この後はもうライモンシティに戻るんでしょ?」

 

 ミスティは興味無さそうに言う。

 

「その事なんだけど、実はこの16番道路には迷いの森ってのがあってね」

 

 私はニヤリと笑ってミスティの方を向く。

 

「行ってみたいというわけ?」

 

 ミスティは呆れているようだ。

 

「あ、そういえばミスティは怖いの駄目なんだっけ。残念、諦めるよ」

「どうして? 森なんて夜でも怖くないでしょ?」

 

 ミスティは不思議そうに首をかしげる。

 

「え? 怖くないの? 夜の森とかいかにも何か出そうじゃない。それに迷いの森だよ? 迷ったりしたらどうするつもりなの?」

「その時は飛んで脱出すればいいじゃない。それに夜の森に何か出るなんて非科学的な妄想を誰が信じると?」

 

 う~ん、ミスティの怖がる基準がわからん。

 

「そう、なら行けるね!」

 

 やったね!

 

「そうね。でも行くにしてもどうやって行くの? 場所とかわかるの?」

 

 ミスティが何かを疑う目で訊いてくる。

 

「そ、それは、ほら! 空から見ればそれらしい森なんて一発でわかるよ」

「はあ、そんな事だろうと思った。まあ、いいけど」

 

 ミスティは呆れた顔でため息をついた。何かごめんなさい。

 

「じゃ、じゃあさっそく行こうか! 出てきてライカ!」

『あれ、今日はもう終わりじゃないの?』

「ちょっと行きたいところがあってね。ミスティと私を乗せて飛べる?」

『それくらい楽勝よ。任せなさい』

 

 そうして私たちは夕方の空をライカの背に乗って飛んだ。

 




ありがとうございました。

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