ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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今回は展開に少し無理があるかな? いや今回もか。
とりあえず急展開なのは間違いない。
それと一部視点が変わります。
それではどうぞ。


32話 新生プラズマ団と声

 入り江で休んだ日の夜、眠っている時のことだ。私は何者かの気配を感じて目を覚ます。

 

「誰?」

 

 私が訊くと、その影はMにナイフを突きつけていた。

 

「動くな。こいつが心配ならいうことを聞け」

 

 ! こいつ……! しゃーない、ここは素直に従うしかないか。するとMも目を覚ました。

 

「う~ん、メイ? どうしたの……!」

 

 Mは状況を把握すると身をこわばらせる。

 

「動くな。こちらの要求に従えば危害は加えない。まずはそちらのモンスターボールを渡してもらおう」

 

 私は素直にモンスターボールを取り出し、テーブルの上に置く。

 

「おまえもだ。早くしろ」

 

 Mもモンスターボールを置く。ここでMのモンスターボールを確認しておく、ボールを取り返すときMのものかどうかを把握するためだ。モンスターボールには自分のものかどうかを把握するために独自のマークを付けておくのが通例だ。Mのボールにも例に漏れずマークが付いていた。よしこれならわかる。ナイフをMに突きつけている人物は手で何か合図をする。すると、どこからか複数の同じ格好をした人が出てきてモンスターボールを回収する。

 

「こいつらの荷物も一応、回収しておけ。少し眠ってもらうぞ」

 

 ナイフを持っている人物がそういうと、私は薬か何かを嗅がされて意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 次に目を覚ますと、私は両手を縛られベッドに寝かされていた。変なところで丁寧だな。周りを見てみるとどこかの建物の中の部屋にいるらしい。う~ん、どこかに連れてこられたみたい。窓もないから時間がわからないけど、おそらくそう時間は経っていないだろう。

 さて、どうするかな。とりあえず、ポケモンを取り返して、Mを探してついでに荷物も見つけて、と。やること沢山。なら、まずはこの縄を解いてっと。こんなもの、波導の力でちょちょいのチョイよ。私は波導を用いて縄を操り解くことに成功する。よし、解けた。次はここから出て探索だな。どうやってここから出るか。扉の鍵の確認でもしてみよう。扉を確認してみると案の定鍵がかかっていた。

 

「おい、大人しくしていろ!」

 

 おっと。外から声が聞こえてくる。見張られているようだ。声からすると女性のようだが、どうしたものか。ふむ……こいつを利用してどうにかできないかな。例えば何か騒ぎを起こして扉を開けさせるとか……そして部屋に入ってきたところを波導の力でドンッ! と一発かまして気絶させよう。そしてこの建物の探索だな。だがこの格好だと逃げ出したのが一発でばれる。なら、外の女性の服を奪うとしよう。さて、騒ぎを起こす件だけど、私の美声でも聞かせてやるとしよう。

 

「♪~♪~♪~♪~」

 

 私はお気に入りの歌を大音量で歌う。

 

「うるさいぞ! なに歌っている!」

 

 よし、外から注意が飛ぶ。私は波導の力を全身に漲らせる。そして歌い続ける。

 

「♪~♪~♪~♪~」

 

 ガチャンと鍵が開く音が聞こえる。キタ!

 

「うるさいぞ!!! 今何時だと思って……がはっ!」

 

 私は扉を開けて入ってくる女性に鳩尾に波導のこもった一撃を喰らわせる。女性はくぐもった声を出し、気絶する。ふう、習っておいてよかった合気道、……これ本当に合気道か? まあいい、できたことを喜ぼう。

 じゃあ、服を奪ってっと。てかこの服、プラズマ団だ。ということは、私をさらったのはプラズマ団ということか。私は女性の服を脱がせて着替える。そしてそこにいるのはプラズマ団の服を着た私と下着姿の女性だ。……意外とスタイルいいな。ってそんなこと気にしている場合じゃない。次は探索だ。

 私は奪ったカードキーを使って気絶した女性を部屋に閉じ込めて、探索にでる。部屋の外に出てみると機械的な廊下が広がっていた。さて、まずは何から探そうかな? ポケモンかな? ポケモンがいれば力によるゴリ押しができるようになる。そうして考えているとコツコツという音がする。! 誰かが来る! 一応髪はおろしているが気づかれるか?

 

「む、今は休憩の時間のはずだが?ここで何をしている?」

 

 男性が話しかけてきた。これは……?

 

「あの私、奪ったモンスターボールを持ってくるように言われたのですが、場所が分からなくて……」

「ああ、さきほどのか。それならこの通路をまっすぐ行った突き当りの部屋にあるぞ。お前もこんな夜中に仕事で大変だな」

「いえ新人ですので……」

「それではな」

 

 そう言って男性は去っていく。ふうううう、緊張したー! ばれるかと思ったが大丈夫だったようだ。年の割に身長が高かったこともあるかな。それに時間もわかった。今は夜中のようだ。まったく心臓バクバクもんだったぜ。

 さてと、突き当りの部屋だったな。私は教えられた部屋に行く。その部屋に入るとテーブルの上にモンスターボールと私とMの旅の荷物が無造作に置いてあった。よし、どうやら私とMのモンスターボールに間違いないようだ。荷物も軽く見てみたが大事なもの、トレーナーカードや財布もそのまま入っていた。Mの荷物も見てみたが大丈夫そうだった。よし、あとはMを探すだけだな。

 

 

 

 

 

 

― Side M ―

 

 あの入り江で脅され、意識を奪われた。そのあと目を覚ますと、とある部屋に男とふたりきりだった。

 

「ようやく、お目覚めか。女王さま」

 

 男が話しかけてくる。

 

「女王さま……?」

 

 こいついったい何を……! まさか……!

 

「おっと先走っちまった。Mさんよ。実はあんたに折り入って話があるんだよ」

「……何?」

 

 おそらくこいつの目的は私を王に据えること……こいつが組織する新たなプラズマ団の。

 

「あんたには新しく俺が作る組織の王様になってもらいたいんだよ。新生プラズマ団のな」

 

 やはりね。こいつはゲーチスの真似をして自分の、自分だけのプラズマ団を作るつもりだ。だけどゲーチスはなぜ反乱分子を放っておいた? ゲーチスの目的を考えると後々確実に邪魔になるはずなのに……いや優先順位が低いだけか。おそらくこいつが小物であるから捨て置かれているだけだろう。やり方もゲーチスをまねているだけだし。賢いもののやり方を模倣するのは感心できるけど。

 

「断ると言ったら?」

 

 そういえばメイはどうなった? もし人質に取られているなら、いや、確実に取られている。どうする? どうやって救い出す?

 

「おいおい、こちらは知っているんだぜ? Mさんよお。お前はあのプラズマ団の王様、Nのプロトタイプとして育てられたことも。Nと同様の力を持っていることも。そしてえ……お前に味方が一人もいないこともなあ……! だから、いくらでもやりようはあるんだぜ?」

 

 くっ、確かに味方は一人もいない。でもメイだけは助けないと。私は苦い顔をする。

 

「確かメイって言ったっけ? あいつもバカだよなあ! お前のことを何にも知らずに仲良くしちゃってよお! どうせ教えてないんだろう? お前のこと、何にも。かわいそうだよな。お前のそばにいたばっかりにこんなことになっちまってなあ」

 

 そうだ、私はメイに何も話してない。しかもこんなことに巻き込んでしまった。だから、なんとか助けないと……。

 

「そうそう、お前のお気に入りのメイってやつはうちらが身柄を確保しているんだよ。どうする? 断るってことは見捨てるってことになるぜえ?」

「……わかった。あなたに従う」

 

 ここは従うふりをして……。

 

「従うふりをしても無駄だぜ? お優しいお前はメイってやつを見捨てるなんて選択肢はないんだろう? つまりはそいつさえ手放さなけりゃお前は俺に従うしかない。お前に最初から選択権なんてなかったわけだ。クハハハハハハ!」

 

 ……さすがに読まれていたか。ここまで私に優しくしてくれたメイを見捨てるなんてできない。こいつに従うしかないの? こいつに従っていたとしてもメイの安全が保障されるわけじゃない。いったいどうすれば……。

 

「それにしても、メイってやつは哀れだよなあ! M! お前みたいなポケモンと話せる化け物と一緒にいたんだからな!」

 

 違う! メイは!

 

「メイは化け物なんかじゃない!」

「お? どうした? その反応だとメイってやつまでポケモンと話せるみたいじゃないか」

 

 私は、ハッと反応してしまう。

 

「クハハハハ! もしかしてホントにそんなこと信じてるのか! そんなもんそいつのハッタリに決まってるじゃないか!」

 

 え? でも、ホントに? メイはポケモンと話せるって言ってたのに?

 

「違う!」

「違わねえよ! ポケモンと話せる化け物なんてお前とNみたいなやつしかいねーよ」

 

 じゃ、じゃあメイは……私が勝手に仲間だと思っていただけなの?

 

「おめでたいやつだな! お前も、メイってやつも! 少し一緒に旅をしたくらいで盛り上がっちゃってさあ! そういうの俺、大っ嫌いなんだよねえ!」

 

 男は思いっきり嫌悪感を表す。そうだ、私とメイは一緒に旅をしてきた。たとえポケモンと話せるのが嘘だとしても、寝食を共にし、旅の苦労を分かち合ったのは変わらない。それにこいつの言うこととメイの言うこと、どっちを信じるって言うんだ。

 

「私は……メイを信じる!」

 

 私はキッと男を睨み付ける。

 

「ああ、いやだいやだ。麗しい友情ってやつか? 寒気がするぜ」

 

 男は体を抱えて寒がる様子を見せた。

 

「それを信じられないあなたは哀れね」

 

 私は精一杯の抵抗として憐れむ。

 

「はっ、言ってろ。そういやお前いい体してるじゃねえか。くひひっ。体から屈服させるってのもまた一興ってか」

 

 男は突然下卑た視線を向けてくる。くっ、メイも今頃辱めを受けているかもしれない。私がここで屈するわけにはいかない。メイ……力を貸して……!

 

 

 

 

 

 

― Side メイ ―

 

 さて、後はMだけだ。気付かれる前にさっさと見つけるとしよう。どこかなーっと。……適当に探しても見つかる気がしない……。どうしよう。すると

 

 “メイ……力を貸して……!”

 

 ! Mの声だった。こっちだ! 私はMの声が感じられた方へ走る。階段を上り、廊下を走り抜ける。するとある扉の中から声が聞こえる。

 

「へへっ! 楽しませてやるよ!」

「私はあなたになんか負けない!」

 

 M!

 

「出てこい、リオ! ユウヒ! イヴ! この扉をぶっ壊せ!」

 

 私はポケモンたちに指示し扉を壊す。ドガアアアンという激しい音を立てて扉が壊れる。

 

「! なんだ!?」

 

 中を見ると男がMに襲い掛かろうとしていた。

 

「てめえか! Mにひどいことしてたのはああああ!!!!」

 

 私は中にいた男を波導を思いっきり込めた拳で殴り飛ばす。

 

「ぐはあっ!」

 

 男は吹き飛んでいき壁にぶつかった。

 

「メイ!」

 

 Mが泣き笑いの状態で抱きついてくる。

 

「メイ、メイ! よかった! 何もされてない?」

 

「うぇ!? M、大丈夫だって。私は何もないよ。それよりMだよ。何かひどいことされなかった?」

 

 私はMの方が心配だ。今にも襲われようとしていたみたいだし。

 

「う、うん。その、メイが助けて、くれたから」

 

 Mは私から離れるとなぜか照れたように顔を赤くしながら言ってきた。ぐはっ! か、かわいい! いやいや今はそんなこと言っている場合じゃない。

 

「M、Mのポケモンたちと荷物はここにある。ここから脱出するよ!」

「う、うん」

 

 M、どうしたんだろ? なんか変だな。いつもと比べてしおらしいというかなんというか。

 

「て、てめえ……!」

 

 すると男が起き上がってきた。

 

「お前は寝てろ! はああああああ!」

 

 私は男にはどうだんを当てる。

 

「がはっ!」

 

 男ははどうだんを喰らって気絶してしまう。

 

「うわあ……」

 

 Mが男を憐れんでいる。Mにひどいことしようとしてた悪党に遠慮の必要なし。

 

「ほら、いくよM」

「うん」

 

 そうして壊した扉からこの部屋を出る。

 

「いたぞ! 捕まえろ!」

 

 すると廊下にはたくさんの野郎どもがいた。ちっ、逃げ出したのがばれたか。

 

「リオ! はどうだん! ユウヒ! 10まんボルト! イヴ! サイコショック!」

 

 私はリオたちに指示を出し、野郎どもを蹴散らす。もちろん気絶する程度に手加減させるのも忘れない。

 

「ぐわー!」

「ギャース!」

「のわー!」

 

 野郎どもは妙な悲鳴を上げて倒れていく。

 

「走れ! M!」

「う、うん!」

 

 私とM、リオたちは廊下を走り抜けて、階段を下り、出口を目指す。

 

「追えー!」

「逃がすなー!」

 

 さらに追ってくる野郎ども。ちっ、しつこいな。

 

「リオ! きあいだま! ユウヒ! かみなり! イヴ! サイコキネシス!」

 

 後ろを振り返り、また野郎どもを吹き飛ばす。

 

「ぎゃあああ!」

「ごああああ!」

「ひいいいい!」

 

 そしてまた出口を目指し走り続ける。

 

「メイ! こっち!」

 

 するとMが出口を見つけたのか手招きする。そばにはラティアスとラティオスがいた。

 

「ナイス! M!」

 

 私とM、リオたちとラティアスたちで出口へと走る。その先には外の景色が広がっていた。

 

「M! ラティアスとラティオスに乗って空に飛べない?」

 

 私はMに訊いてみる。

 

「いける? うん、うん。当たり前のこと聞くなって」

 

 よし、オッケー!

 

「ラティアス、ラティオス、頼んだよ!」

 

 ラティアスとラティオスはコクンと頷く。私とMはリオたちと共に外に出る。

 

「戻って! リオ! ユウヒ! イヴ!」

 

 リオたちをモンスターボールに戻し、私はラティアスに、Mはラティオスに飛び乗る。

 

「とりあえず空へ!」

 

 そして私たちは夜空へと舞い上がる。雲を突き抜けるとそこには大きな月があった。

 

「とりあえず、ここまで来れば安心だね」

 

 ふう、これで追手もまけただろう。

 

「あ、あの、ありがとう、メイ、助けてくれて」

「そんなこと。いいって、気にしない気にしない。私たち友達じゃない」

 

 まあホントは友達以上になりたいんだけど……なんてね。

 

「友達……ね、こんな私でも友達って言ってくれるんだ」

 

 Mは呟く。

 

「ん? なんか言った? よく聞こえなかったんだけど」

 

 やっぱり様子が変だ。どうしたんだろう。やっぱりひどいことされたんじゃないだろうか?

 

「ううん、なんでもない。とりあえず、どこか、休めるところに行こう」

「ねえM、やっぱり何かされたんじゃ……」

「それはない! その前にちゃんとメイが助けてくれたから」

 

 Mは強く否定する。……どうやら何かされたわけじゃないらしい。よかった。じゃあ、Mは一体どうしたんだろう? くそ、考えても分からない。Mが話してくれるのを待つしかないか。

 

「そう。ならいいけど。こんなところで話しててもあれだしどこかの街に行こう。さっき雲の隙間からルカと出会った入り江が見えたから、多分ここは18番道路の近くだと思う」

「そうなんだ。それなら17番水道を抜けてカラクサタウンに行く?」

「いや、カノコタウンに向かおう。カノコタウンならアララギ博士のポケモン研究所がある。そこに助けを求めよう」

 

 ポケモン研究所は重要な研究データが詰まっているため、実はそこらの警察署よりもセキュリティが高く安全なのだ。それにアララギ博士と知り合いなのもあるし、なにより、誘拐されてそこから脱出してきましたなんて言って警察に信じてもらえるか正直不安なところもある。そんなわけで私はポケモン研究所を選んだわけだ。

 

「わかった」

 

 ここからだと……だいたい東南東あたりかな。ラティアスとラティオスに方向を指示し、カノコタウンに向かう。そして大体十分ほどで街の明かりの近くまで来た。

 




ありがとうございました。

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