ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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最近ワンタンっていいなと思い始めました。
それではどうぞ。


31話 神秘の入り江とミロカロス

 次の日、朝ご飯を食べて、出発の準備を整えて、

 

「さて、準備完了。さ、行こうかM」

「そうね。出発しましょう」

 

 私たちは1番道路へと歩みを進める。1番道路での計画はこうだ。1番道路には川のような場所があり、そこにはミロカロスが生息している。そしてそのミロカロスを捕まえるのが私のやりたいことだ。今から楽しみだな。

 そうしてポケモンたちの修業をしながら二日かけて川までたどり着いた。

 

「やっと着いたあ! いよいよ、ミロカロスに会えるぞー!」

 

 ワクワクするな!

 

「それで? どうやってミロカロスを捕まえるつもり?」

「え゛?」

 

 そ、それは……どうやってでしょう?

 

「もしかして……何も考えてなかったとか?」

 

 Mが呆れた顔をする。

 

「……うがああ――! そうだよ! どうやって捕まえるつもりだったんだ私は! ミロカロスを釣り上げる釣り竿もない! なみのりもできるポケモンがいない! 水に潜って探そうにも何の準備もしていない! 私はいったい今まで何をしてきたんだああああ!」

 

 私は頭を抱えて右往左往する。

 

「はあ、メイって意外とバカなんだね」

 

 Mはため息をついて言う。

 

「ぐはあっ!」

 

 Mの言葉が心に突き刺さる。うう、ぐすん、どうせバカですよーだ。

 

「ふえええ。どうしようM~」

「ふう、もう、ほら、あきらめなければ何かいいことあるって。私はミロカロスと会えるまで粘っても文句言わないから。ね、がんばろ?」

 

 Mに慰められてる。はあ、いい人だなあ。……もうちょっとだけ粘ってみるか。

 

「うん。もうちょっとだけがんばってみてもいい?」

「いいよ」

 

 ふう、Mからの了解も取れたことだしもう少しがんばろう! そうして粘ること二週間、川の近くでミロカロスが現れるのを待っていたがついに姿を見せることはなかった。ちなみにこの二週間でリオはじしん、カティはだいもんじ、ユウヒはくさむすび、イヴはシグナルビームを覚えた。

 

「ねえM」

「どうしたの?」

「今回は諦めるよ。また今度準備を整えてからまたここに来る。だから今回はもういい」

 

 正直、かなり残念だがミロカロスは逃げない。

 

「……メイはそれでいいの? あれだけ楽しみにしてたのに」

 

 Mは不思議そうにする。

 

「いいの。今回は準備が足りなかった、それだけだよ。それにミロカロスを捕まえること自体を諦めたわけじゃない。また今度、準備を整えてからここに来るよ」

 

 そう、今度は逃がさないぜ。

 

「そう。メイがいいならそれでいい」

 

 Mも納得したようだ。

 

「それで、さっそく準備を整えにいくの?」

「いや、ここ二週間、張りつめっぱなしだったし、17番水道と18番道路に足を伸ばそうと思う。あそこは自然が多く残っているしいい景色が見れると思うからね。気分転換になると思うよ」

 

 ちょっと寄り道だ。

 

「そうだった? 結構のんびりしてたと思うけど。まあ、いいや。メイの言う通りでいいよ」

 

 それは言うな。実はまったりしてたのがバレちゃう。

 

「それじゃ川沿いに歩いていこうか」

 

 そうして私たちは川沿いに森の中を歩いて行く。二週間かけて景色を楽しみながら17番水道(正確には近くの森)、18番道路と抜けてきて最果てのところまでたどり着く。ちなみにこの二週間でリオはかみなりパンチ、カティはソーラービーム、ユウヒははたきおとすを覚えた。イヴはサイコキネシスの改良を目指したが特に進歩はなかった。

 18番道路の最果てには小さな洞窟があった。洞窟の奥から光が漏れていることからどうやらすぐに出口につながっているようだ。私たちはこの洞窟を抜けて向こう側にたどり着く。そこは光が水面で反射しキラキラと輝く入り江になっていた。

 

「ふう、だから言ったでしょいい景色が見られるって」

 

 うん、すばらしい風景だね。

 

「そうね。メイの言う通り、いい景色に出会えた。まさかホントにこうなるとはね」

 

 Mは感心したように言う。

 

「なにそれ、私の言うこと信じてなかったの?」

 

 私は不満げに言葉を漏らす。

 

「まあね。メイが道路について調べているところ見たことないし」

 

 Mがそう反論する。む、確かにそうだな。原作知識で知っているから調べるなんてことしないんだよね。気付かなかった。

 

「まあ、私もこんなところがあるなんて知らなかったけどね」

 

 原作ではこんな所はなかった。しかし、まあ、細かいことは気にしない、気にしない。今はこの景色を楽しもう。

 

「ふうん。まあ、いいけどね。それにしてもいいところね、ここは」

「そうだねー」

 

 そうして私とMが景色を楽しんでいると、入り江の水面に何者かの影が現れる。ん? なんだ? いったいなんだ?

 

『ホアアアアアアア!』

 

 水面から飛び出してきたのは……いつくしみポケモン、ミロカロスだった。細長い魚の様な姿で、頭部から二対のカールした触角と、特徴的な長いヒレが生えており、尻尾の先端には扇の様な尾ヒレとなっている。細長い下半身部分は赤と青の鱗を持っているが、この鱗部分は見る角度によって配色が変わり、実際は七色である。

 

「ミロカロス……どうしてこんなところに」

 

 はは、どうやら運が向いてきたみたいだな! Mもその美しい姿に目を奪われている。

 

「いや、そんなことはいい……! 聞いて! ミロカロス! 私はあなたがほしい! だから! 私と戦って認めてくれたら! 私とともに生きてほしい!」

 

 私はミロカロスに語りかける。すると水面から体を出してこちらを見つめてくる。

 

『……いいでしょう。来なさい!』

 

 っし、勝負だ、ミロカロス!

 

「イヴ! Start the Struggle!」

『私の出番ね』

 

 私は空中戦ができるイヴを出す。これで水中がバトルフィールドになってもある程度戦える。ミロカロスはさっそく水中に身をひそめる。

 

「イヴ! サイコキネシスで空中に! そしてサイコショックであぶり出せ!」

『ふうっ、はっ!』

 

 イヴは空中に浮かび、無数の青い光の弾を生み出してミロカロスのひそむ水中に向かって撃ち出す。青の弾は水しぶきをあげて水中に消えていく。しかし、それによってミロカロスが水中から出てくることはない。水面に目を凝らしていると一瞬だけ水面が引っ込む。

 

「何か来る! イヴ! ひかりのかべ!」

 

 次の瞬間、水中から激しい勢いの水流がイヴに襲いかかる。

 

『くっ!』

 

 イヴは半透明の黄色い壁を形成するが、水流の勢いに負けて吹き飛ばされる。ダメージは半減されていると思うが、大丈夫か? それにしてもなんて威力だ。水中から撃っているから威力が下がっているはずなのに。

 

「イヴ! 大丈夫!?」

『うん、まだいける!』

「よし! あさのひざしで回復!」

『おっけー!』

 

 イヴはあさのひざしで体力を回復する。その間ミロカロスが襲ってくることはなかった。

 

「イヴ! ちょっとでも危ないと思ったらすぐに回避行動をとれ!」

『了解!』

 

 するとまた水中から水流がイヴに向かって放たれる。しかし、今度はイヴはすぐに危険を察知しその水流を避ける。よし! いいぞ! しかしミロカロスは依然として水中から出てこない。水中から引きずりだせないとまともに戦うことすらだめだってか? いいぜ? それならこちらにもやりようがあるってもんだ。

 

「イヴ! 圧縮のサイコショック!」

『はああああ!』

 

 イヴは周囲に青い光の弾を生成しビー玉の大きさまで圧縮させ、ミロカロスのいる水中に発射する。水中に消えたビー玉大の青い光の弾は大爆発を起こし、大きな水しぶきを上げる。その衝撃でミロカロスは水中から引きずり出される。水しぶきが収まりそこには水面から顔を出したミロカロスの姿があった。

 

『やりますね。ですが! まだまだこれからです!』

 

 ミロカロスはそういうと尻尾を振り、そこから竜巻が発生する。そして竜巻に沿い、水流が立ち上り水の竜巻と化す。するとミロカロスは水の竜巻に乗り、勢いをつけてイヴに向かって突進してきた。ミロカロスは体を振り、尻尾を光らせ、イヴに尻尾をたたきつけようとする。

 

「! イヴ! リフレクター!」

『くっ!』

 

 イヴは半透明の薄紫色の壁を生成し、ミロカロスの尻尾をガードする。するとイヴが光に包まれ、ボールに戻ってしまう。ちっ、ドラゴンテールか! そして違うボールが反応し勝手に中からポケモンが出てくる。

 

『うわ!』

 

 出てきたのはリオだ。ミロカロスは再び水の中へ入っていく。って、あれ? リオ水の上に立ってない?

 

「リオ、あなた、それ……」

『ああ、水の上に立ってること? 波導の力を使えばできるよ』

 

 リオはさも当然のように言う。波導っていったい何なんだろう。後で私もやってみよ。そんなことをしていると、水中から激しい水流がリオに向かって襲いかかってくる。

 

「! リオ! みきり!」

『! はっ!』

 

 リオはみきりで水流を避ける。まずは水中から引きずり出す。

 

「リオ! じしん!」

『はあっ!』

 

 地上で使ったときと違い、水中にエネルギー波が拡散していき、ミロカロスに衝撃が伝わる。その衝撃でミロカロスは水面に出てくる。

 

『くっ! ならば!』

 

 そして再びリオに水流を発射する。

 

「リオ! 見切りのきあいパンチ!」

 

 リオは水流を避け、水面を走り抜けてミロカロスに接近しきあいパンチを撃ち込む。

 

『ぐううう!』

 

 ミロカロスはきあいパンチを受けて少し怯むも素早い動きで水中に逃げて行った。

 

「リオ! 逃がすな! もう一度じしん!」

『はあっ!』

 

 再度のじしんがミロカロスに襲いかかり、ミロカロスは水面に飛び出してくる。ん? 体が光っている……じこさいせいか! やっかいな。ダメージを与えても水中に逃げられて回復されてしまう。なんとか地上に引きずり出すしかないな。するとミロカロスはリオに向けて水流を発射する。

 

『くらいなさい!』

「リオ、見切りのしんそくで近づけ!」

『しっ!』

 

 リオはみきりで水流を避け、しんそくでミロカロスに接近する。

 

『くっ!』

「そして尻尾を掴んで砂浜まで投げ飛ばせ!」

『はああああ! せいっ!』

 

 リオは水面から出ていたミロカロスの尻尾を掴みジャイアントスイングで砂浜まで投げ飛ばすことに成功する。ミロカロスは投げ飛ばされたあと体を起こし激昂する。

 

『くっ! やりましたね!』

「戻れリオ! そしてユウヒ! Start the Struggle!」

『っしゃあ! 俺の出番だな!』

 

 よし、この状況ならユウヒでも戦える! 地上にきたならこっちのもんだ。

 

『いきますよ!』

 

 ミロカロスはユウヒに向かって激しい水流を放つ。

 

「ユウヒ! かげぶんしんで避けて!」

『はっ!』

 

 ユウヒは分身を生み出し水流を避ける。数体の分身が消える。すると今度はミロカロスが水流を薙ぎ払ってきた。次々と分身が消えていき、あっという間に本物のユウヒ一人になった。そしてユウヒに水流が襲いかかる。

 

「ユウヒ! 恐れずに前に回避!」

『ああ!』

 

 ユウヒは迫りくる水流を前にステップすることで回避する。

 

『!?』

 

 ミロカロスは前に飛び込んできたユウヒに一瞬驚き、隙をさらす。

 

「今だ! ユウヒ! 神速のボルテッカー!」

『おおおおおおお!』

 

 ユウヒの神速の雷を纏った突進がミロカロスをとらえる。

 

『ぐううっ!』

 

 神速のボルテッカーを受けたミロカロスは岩壁にたたきつけられ、目を回して倒れる。いよっしゃあ! 倒したぞ! おっと回復、回復。

 

「リオ、出てきていやしのはどう」

『オッケー』

「イヴも出てきて、回復するから」

『うん』

 

 リオを出しイヴとユウヒの体力を回復させる。

 

「よし、戻ってユウヒ、イヴ。そしてリオ、あなたはあっちにいるミロカロスを回復させて」

『わかった』

 

 そうして私はリオと共にミロカロスの近くに行く。そしてリオのいやしのはどうでミロカロスを回復させる。しばらくするとミロカロスが目を覚ます。

 

『う、う~ん。はっ! 私は……負けたのですね』

 

 ミロカロスはふうと息を吐いて言う。

 

「そう、私たちはあなたに勝った。それで、私たちはあなたのお眼鏡にかなったかな?」

 

 私はミロカロスに聞いてみる。

 

『そうですね……。いいでしょう。私はあなたのポケモンになります』

 

 ミロカロスからの承諾キター!

 

「いやっほう! じゃあ、あなたは……ルカ、ルカね!」

『わかりました。では、私はこれからルカです』

 

 ミロカロスは祝福の咆哮を上げる。

 

「ルカ、これからよろしく!」

『ええ、よろしくお願いします』

「じゃあ、はい、モンスターボール」

 

 私はモンスターボールを差し出す。ミロカロスは差し出されたモンスターボールに優しく触れ、そして光に包まれモンスターボールに入っていった。

 

「リオ、あなたも戻って」

 

 リオもモンスターボールに戻す。

 

「んんんんんいやっっったあああああああ!!!!!」

 

 私は歓喜の雄叫びを上げ、何度もガッツポーズをする。

 

「そんなに嬉しいの?」

 

 さっきから黙って見ていたMは苦笑いしながら言う。

 

「だってミロカロスだよ!? あの世界一美しいポケモンだよ!? ああ、このイッシュ地方にも少ないながら生息していることは知っていたけどまさかゲットできるなんて思わなかったんだもん。ついこの間だって準備不足で諦めちゃったし、今度捕まえようと意気込んでいたら思わぬところでミロカロスと遭遇! なんという幸運! ああ、神様なんて信じてなかったけどありがとう感謝します。しかもそのミロカロスは強いときたもんだからもう言うことなし! なんだよ!?」

 

 私は嬉しさのあまり、まくしたてる。

 

「あはは、とりあえず嬉しいということはわかった。まあ、おめでとう、と言っておくよ」

 

 Mはやれやれといった風にして言う。

 

「ありがとう!」

 

 私は満面の笑みをMに向ける。するとMは面食らったように顔をそむける。ん? どうしたのかな?

 

「そ、それにしても珍しいね。メイがここまで嬉しさを表現するなんて」

 

 Mが動揺を隠すように言う。ん~? ま、いっか。

 

「だってミロカロス――」

「ああ、ストップ! それはさっき聞いたからいい!」

 

 Mは私の言葉を止める。危なかったなM、もう一回さっきのを繰り返すところだったな!

 

「それで? このあとどうする気?」

 

 Mの言葉に私は提案する。

 

「せっかくだし今日はここで休まない?」

「そうね。景色もいいし、いいんじゃない?」

「よし決まりだね。じゃ、さっそく」

 

 私たちは野宿の準備をしてまったりとする。そうしてこの日はこの綺麗な入り江で一晩を過ごすことにした。

 




ありがとうございました。

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