ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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ビックルうめぇ。
それではどうぞ。


30話 新たな発見と影

「ボスゴドラ戦闘不能。よって勝者、メイ」

 

 いつの間にか審判をしていたMにより試合終了の合図がなされる。

 

「ふむ、結構自信があったんだがな。負けてしまったか。よくやったボスゴドラゆっくり休め」

 

 ケイネさんは苦笑しながら何かを取り出しボスゴドラに与える。するとボスゴドラが目を覚まし元気な様子を見せる。どうやらげんきのかたまりだったようだ。

 

「ほら、メイ。お前のルカリオにも。まんたんのくすりだ」

 

 そういってまんたんのくすりをくれる。気前いいな。さっそくもらったものをリオに使う。周りを見てみるとあまりに激しいバトルだったためか呆然としていた。

 

「す、すげえ――――! 先生こんなに強かったんだな! アタイ知らなかった!」

 

 すると突然チルノが大きな声を上げる。その声を聞いたほかの生徒たちも次々に「すげえ」だとか「マジか」だとか色々な私とケイネさんを褒める言葉が飛び出す。

 

「あ~、コホン! みんなバトルの最初の方は覚えているのか?」

 

 ケイネさんが照れながら生徒のみんなに聞くと生徒たちは、あ、という音を発し、ハッとした表情をする。

 

「すまない。どうやら少々刺激が強すぎたようだな。少し熱くなりすぎたようだ」

 

 ケイネさんの言うとおり少々真剣になりすぎた。

 

「今回は私が悪かった。最初から解説していくから安心してくれ」

 

 ケイネさんの言葉に生徒のみんなはほっとした表情を浮かべる。

 

「では、今回のバトルの解説を始める。まずはタイプ相性からだな。私が出したのはボスゴドラ。メイが出してくれたのはルカリオ。この両者のタイプが分かるやつはいるか?」

 

 ケイネさんは質問する。すると金髪ボブの子が手を挙げる。

 

「よし、ルーミア。答えてみろ」

 

 うん、ゲームのキャラクターと一緒の名前だ。なんかもう慣れた。

 

「ボスゴドラは鋼、岩タイプなのかー。そしてルカリオは……格闘?」

 

 ルーミアはルカリオのタイプまでは分からなかったようだ。半分正解だけど。

 

「ボスゴドラはルーミアの言うとおり、鋼、岩タイプだ。そしてルカリオは格闘、鋼タイプだ。惜しかったな。それでどちらのポケモンが有利かわかるか?」

 

 正解は私のルカリオだ。向こうのタイプ一致の攻撃である鋼タイプは半減と岩は四分の一しかリオには通らず、逆にこっちのタイプ一致の攻撃である鋼タイプは等倍、格闘タイプは四倍で向こうに通る。

 

「えっと、タイプ相性から言うと……ルカリオなのかー」

 

 ルーミアはタイプ相性表を見ながら答える。

 

「うむ。正解だ。理由は鋼、岩タイプの攻撃は、格闘、鋼タイプに対してダメージが通りにくいからだ。逆に格闘タイプの攻撃は鋼、岩タイプによく通る。つまりはそういうことだ。タイプ相性表からもこのことがわかるはずだ」

 

 ケイネさんが理由を説明する。

 

「次にバトルの内容、技についてだ。私は最初、ルカリオに対してもろはのずつきを使った。これはいい手だろうか? わかる者はいるか?」

 

 ケイネさんが次の質問を投げかける。すると今度は小豆色のショートヘアの子が手を挙げる。

 

「よし、ミスティア。答えは?」

 

 うん、またゲームのキャラクターと一緒の名前だ。これはもう……ね。どうしようもないね。

 

「もろはのずつきをしたのは悪い手です。さっきのタイプ相性から言うと岩タイプのもろはのずつきはダメージが通りにくいはずですから」

 

 正確にはダメージは四分の一になるな。

 

「うむ。正解だ。ミスティアの言うとおり岩タイプのもろはのずつきではダメージが通りにくい。だからあれは悪手だ。ついでに言うとその直後にルカリオが放ったカウンターだが、カウンターは受けたダメージに応じて相手にダメージを返す技だ。だから与えたダメージが少なかったもろはのずつきでは返ってくるダメージが少なかったのだ。さらに言うとボスゴドラの使ったメタルバーストも同じ性質の技だ。さらにさらにミラーコートという技もある。細かな違いはあるがどれも同じ性質の技だ。詳しくは自分で調べてくれ」

 

 おおう、みんな真剣に聞いてメモをとったりしている。やっぱり刺激のあるバトルの後だとやる気が違うのかな。

 

「次の質問いくぞ。ルカリオのはっけいという技でボスゴドラは状態異常になった。なった状態異常が何なのかわかる者はいるか?」

 

 この質問には緑髪のショートヘアの子が手を挙げる。

 

「よし、リグル。答えてみろ」

 

 ……あ、ゲームのキャラクターと一緒の名前ね。もうわかりきっているよね。

 

「先生はまひなおしを使っていました。ですからまひだったんじゃないですか?」

 

 お、よく覚えてるじゃん。

 

「うむ、正解だ。よく聞いていたな。まひになったのは先ほど言った通りはっけいの追加効果だ。まひの状態異常になったときは体に電撃が走るんだ。バトル中に見分けるにはこの電撃を見逃さないのが大事だ。ほかにも突然動けなくなったり、すばやさが落ちたりするからその点でも気付くことはできるが、できれば体に電撃が走る時点で気付いておきたいところだな。あとまひは電気タイプには効かない。これも覚えておくといい。ほかにも状態異常はたくさんあるがどれも相手がなればバトルが有利になる。状態異常は積極的に狙っていくのがいいな。」

 

 え? 電気タイプにまひが効かない? マジか、そうだったのか。う~ん、こんなところにもゲームの時と違うことが。それはそうと、状態異常を狙うというが、そう簡単にいかないのが実際のバトルなんだよね。技を弾くなんてことができるんだから状態異常技も弾かれる可能性がある。もちろんかわされることだってある。その後もケイネさんの質問と解説が続く。いやあ、為になるね。私にとっては大半は当たり前のことだからいまいち実感がないけどこういった小さなことの積み重ねがトレーナーを強くしていくんだろうね。そのあと、私とMの旅の話をおもしろおかしく話したり、ポケモンを見せたりして授業は終了に近づいていく。

 

「さて、最後の話だ。最近の研究の成果を話そう。ああ、私のじゃないぞ。ポケモン博士たちの、だ」

 

 お、キタキタ。最近の研究っていっても何してるんだろうな。案外、新たなタイプが見つかったとかかな。

 

「最近の研究によって新たなタイプが発見された。その名もフェアリータイプ。その研究によるとタイプ相性は……こうなる」

 

 マジ? 新しいタイプ? フェアリーって何? 私はそんな疑問を抱きながらケイネさんの書くタイプ相性を見つめる。なるほど、フェアリータイプのポケモンが相手ポケモンから技を受けたとき、格闘、虫、悪タイプがいまひとつで毒、鋼タイプが抜群、そしてドラゴンが無効か、なるほどね。そしてフェアリータイプの技を相手ポケモンに使ったとき、炎、毒、鋼タイプにいまひとつで、格闘、ドラゴン、悪タイプに抜群と。

 

「そして新タイプの登場により今までのタイプ相性も見直された。その結果がこれだ。鋼タイプのポケモンが持っていると思われていたゴーストタイプ・悪タイプへの技の耐性がないことがわかった。これらのことは今後のトレーナーたちにとって重要なことだ。新たなタイプが出てきたことでいろいろとバトルの常識も変わってくるだろう。ほかにもメガシンカという現象が確認されている。詳細は最新の雑誌に載っている。知りたい者は私が持っているから私に言ってくれれば貸し出そう。新タイプの出現によって、ポケモンのタイプが変更されたり新たな技や特性が発見されたりするだろう。そしてそれにより既存の技や特性の効果などの見直しも検討されている。膨大な量だがいずれは詳細がわかるだろう。目下研究中というやつだな」

 

 ほう、いろいろ変更点があるみたいだね。これは研究しないといけないことが増えたなぁ。だけど私にできるかな? 今ある知識で凝り固まってる私ではちょっと厳しいかも。まあ、私の知識がすべて使えなくなるわけじゃないし私の有利さは変わらないだろう。研究については、ま、おいおいだね。

 

「こんなところか。新しいことについては。それではこれでこの授業は終了する。おっとその前に今回授業に来てくれたメイとMにお礼の挨拶をしないとな。みんなお礼を」

「ありがとうございました」

 

 生徒たちから頭を下げられお礼を言われる。うん悪い気分ではないね。

 

「では、六年生代表、終了の挨拶を」

「起立!礼!」

「「「「「ありがとうございました」」」」」

 

 その後休憩時間いっぱいまで生徒たちに質問攻めにされて私たちのトレーナーズスクールにおける授業は終わりを告げた。

 

「メイ、M、今日はありがとう。少し熱くなった部分もあったが今回の授業は成功と言えるだろう」

「いやあ、バトルのときはいったいどうするのかと思いましたよ」

「すまなかったな。バトルしていると気持ちが高ぶってきてしまってどうにも抑えられなくなったものでな。それにしても一応私はリーグ出場の経験があるのだが、君は強いのだな」

 

 なんとケイネさんもか。サトリ、コイシに続いて三人目だな。

 

「そうなんですか。道理でボスゴドラが強かったわけですね」

 

 ホント強かった、正直ヒヤヒヤもんだった。

 

「ふむ、相性差があっても私のボスゴドラの強さが分かるとは、やはり君はいいトレーナーだな」

 

 ケイネさんは褒めてくれる。

 

「あはは、ありがとうございます」

 

 いやあ、照れるなあ。

 

「それで、君たちはこれからどうするつもりだ? 旅を続けるのか?」

 

 ケイネさんが聞いてくる。

 

「そうですね。このまま、気ままな旅に戻ります」

 

 一応目的はあるんだけどね。

 

「そうか。旅に戻るか。お前たちの旅の無事を祈っているよ。さて長々と引き止めて悪かったな。そろそろお別れだな」

 

 ケイネさんがそう言う。

 

「そうですか。では、私たちはこれで失礼します」

「ではな。またこの街に来た時は遊びに来てくれ」

「はい。それでは、また。」

 

 私とMはお辞儀をしてケイネさんと別れた。

 

「また強い人と出会ったね」

 

 Mが言う。

 

「そうだね~。またリーグ経験者かあ。……世界って意外と狭いんだね」

 

 リーグ経験者って実は多いのかな?

 

「そうじゃなくて、リーグ経験者が多いんじゃない? 毎年百人くらいはリーグに出てるし。まあその半数以上再挑戦者だって話だけど」

 

 ふうん、そうなんだ。じゃあ半分以上がジム巡りの直後より強いってことか。

 

「へえ、じゃあ初挑戦でリーグ優勝って珍しいのか」

「そうね。そうらしいよ」

 

 ポケモンリーグは甘くないってことだな。

 

「なら、私が優勝すれば有名になれるってことだね」

「できれば、ね」

 

 うん、まったくその通りで。

 

「まあ、ポケモンリーグの目標はいけるところまで、だね」

 

 気楽に構えてた方がうまくいく……気がする。

 

「そうね。それで、この後はどうするつもりなの?」

「とりあえずポケモンセンターで昼ごはんでしょ。そのあとは……今日は旅の準備だけして休もう、うん、そうしよう」

「……最近はえらくゆっくりしてるよね。まあ、いいんだけど」

 

 Mがじと目でこちらを見ている。

 そうして私たちはポケモンセンターでお昼を食べ、明日の準備をしてこの日は休んだ。

 

 

 

 

 

 

 建物の影よりどこかを見つめる影が一つ、なにやら通信機で誰かと連絡を取り合っているようだ。

「はい、はい、こちらは順調です……はっ、ではこちらは監視を続けます」

 その影は誰かを監視しているようだ。影が見つめるさきには私とMの姿があった。私とMはその影に気づくことはなかった。そしてその結果、あんなことになろうとは想像だにしなかった。

 




ありがとうございました。

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