ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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お盆ですが更新は平常運転です。
それではどうぞ。


28話 教師と改良

 次の日、カラクサタウンに向かうため二番道路進んでいる途中、修業の時間がやってきた。

 

「は~い、では修業の時間で~す。みんな出てきて!」

 

 私はリオたちを出す。

 

「じゃあ、今日はリオとユウヒ、カティとイヴで組み手をしてもらおうかな。それでは位置について……初め!」

 

 リオとユウヒ、カティとイヴはそれぞれ組み手を始める。時々指示を出しながら戦うのを見守る。

 

「そこまでっ!」

 

 私の合図で戦っていたリオとユウヒ、カティとイヴは戦闘をやめる。

 

「リオ、みんなにいやしのはどう」

 

 リオは傷ついたユウヒ、カティ、イヴをいやしのはどうで治す。リオの傷もきずぐすりを使って癒してあげる。

 

「みんな休みながら聞いて。休憩したあと新たな技の習得をしてもらうんだけど、その説明をするね。まず、リオのブレイズキックだけど、この技は炎の力を込めたキックを繰り出す技なんだ。炎の力を込める方法をカティから習えばいけると思う」

 

 リオとカティはコクリと頷く。

 

「次にカティのインファイトとユウヒのきあいパンチだけど、この技は二つともリオが覚えているからリオから教えてもらえば大丈夫だと思う」

 

 リオとカティとユウヒが続いて頷く。

 

「最後にイヴだけど、まずはシャドーボールから覚えてもらおうかな。ゴーストタイプの力を使わないといけないから、まずはゴーストタイプのイメージを伝えなきゃいけないんだけど……イヴはゴーストタイプの技を見たり、肌で感じたりしたことはある?」

 

 もしないなら私の勝手なイメージから想像しないといけないからちょっと難しくなるんだけど……。

 

『あるよ。昔イーブイのとき実験っていってゴーストタイプの技を受けたことがあるからどんな感じなのかわかるよ』

 

 いくらノーマルタイプにゴーストタイプの技が効かないっていっても実験っていって実際に試すことはないだろう。

 

「そう! ならその時の力を球体にして発射するのがシャドーボールだ。いけるね?」

 

 私はニヤリと笑って問う。

 

『うん。まかせて』

 

 イヴもニヤリと笑って頷く。そのまましばらく休憩したあと技の習得の修業に入る。

 

「よし。休憩終わり! さっき言った通りに技の習得に入って!」

 

 そうしてリオたちは新たな技の訓練に入る。そんなこんなありながら修業と並行して二番道路を進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 一週間たった日の夕方、私たちはカラクサタウンに着いた。

 

「ふう、ようやく着いたか」

「そうね。やっとという感じかな」

 

 Mにとっても長かったようだ。

 

「さっそくポケモンセンターに行って休もう」

「そうね。そうしましょう」

 

 ポケモンセンターについてこの日は休むこととなった。ここでこの一週間での成果を話そう。といっても簡単なものだけど。ユウヒとイヴは無事に新たな技を覚えた。ユウヒのきあいパンチ、イヴのシャドーボール、どちらも有用な技だ。今度は何を覚えさせるかな。また考えておかないと。

 

 しかし、リオとカティの方は訓練をしていたが覚えられなかった。リオとカティに聞いてみたところイヴのサイコブーストの時と同じように全くできる気がしないと言っていた。リオとカティに覚えさせようとしていた技は俗に言うタマゴ技と呼ばれるものだ。タマゴ技というのは簡単に言うとオスの親が覚えている特定の技が子に遺伝し、生まれたときからに覚えている技のことを言う。つまりリオやカティの親が覚えていなければ本来は覚えることができないのだ。おそらくは親の遺伝子か何かが関係していると考えられる。

 

 そもそもこのイッシュ地方にいるポケモンたちの生態を知っているんだから野生のポケモンがどんなタマゴ技を覚えている可能性があるかを予想できるだろうに。あ~あ、またやってしまった。いいかげん現実を見ろよなまったく、反省が聞いて呆れる。イヴの時と同じようにリオとカティには謝っておいた。

 

 それはそうとレベル上げも順調だ。といっても野生のポケモンたちを一発殴って逃げさせるだけだけど。ちなみにそんな方法でもレベルは上がる。それに態々野生のポケモンと戦わせたり、トレーナーと戦ったりしなくても仲間内での組み手のようなものでもレベルが上がったりする。それはうちのポケモンたちで実証済みだ。それでも野生のポケモンと戦っているのは惰性のようなものだ。たまに強い野生のポケモンが出てきたりもするしね。こんなところかな。成果と言えるものは。さて明日はどうしようかな。

 

 

 

 

 

 

 次の日、いつもの体操と訓練を終えて朝ごはんを食べ終えて、

 

「ふう、どうしようかな」

 

 私は悩んだ様子を見せる。

 

「なにが?」

 

 Mはそんな様子の私に聞いてくる。

 

「次に覚えさせる技、どうしようかと思ってね」

 

 ホントにどうしよ。そろそろレパートリーが、……いやどちらかというと私の記憶がやばい。思い出すのに時間がかかる。

 

「ああ、そのこと。メイはいろんな技をよく知ってるよね。ポケモンのことをよく知っているということはそれだけバトルで有利になるからね。知識があるのはうらやましい」

 

 そうしてMと話していると、ある女性が話しかけてきた。

 

「ほう、朝からポケモン談義とは感心だな」

 

 その女性は腰まで届こうかというまで長い、青のメッシュが入った銀髪をしていた。

 

「いきなり話しかけてすまない。私はケイネという。君たちはポケモントレーナーとお見受けする」

 

 これまたゲームのキャラクターの登場だ。出典はとあるシューティングゲームのシリーズの中の一つ。ぶっちゃけると今までサトリ、コイシ、レミリア、フランドールと出会った時に紹介したのと同じだ。もうこれからは同じようなことがあった時は“出典は例のシリーズ”と言うことにする。なんか新しい街に来るたびに新たなキャラクターに出会っているような気がする。

 

「確かに私たちはポケモントレーナーですが、一体何の用ですか?」

 

 Mも不思議そうに見つめている。

 

「実は、私はこの街のトレーナーズスクールで教師をしているんだが、この街は小さくてジムもないせいか、生徒が実際のポケモントレーナーと触れ合う機会が少なくてな。そこでトレーナーを招いて生徒たちに話をしてもらおうと思っているんだ。そして私は君たちの話を聞かせてもらいたいと思っている。朝からポケモンの話をしているくらい熱心なトレーナーだ。君たちのようなトレーナーを待っていたんだ。全く、最近のトレーナーときたら朝は起きないでずっと布団の中、そして昼近くに起きたかと思うと、いつまでも駄弁っていてポケモンセンターの外にも出ようとしない。あげくそのまま一日を終える始末だ。全く嘆かわしい」

 

 前世の私のことですねわかります。返す言葉もございません、はい。

 

「ははは、それは大変ですね。そちらの事情はわかりました。どうしようか?」

 

 私はMに訊いてみる。

 

「ん~、いいんじゃない? 別に急いでいるわけじゃないんでしょ?」

 

 そうだね。特に急ぐ用事もない。

 

「だよね。わかりました。その話、お受けします」

 

 私たちは承諾の返事をする。

 

「そうか! 受けてくれるか! ありがとう! さっそく打ち合わせをしたいのだがいいだろうか?」

 

 ケイネさんが笑顔を見せる。うわあ、超美人。

 

「ええ。いいですよ」

 

 私とMは了承する。

 

「そういえば名前を聞いてなかったな。君たちの名前は何と言うんだ?」

「私はメイ、こっちはMといいます」

「そうか。よろしく頼む。ではさっそくだが……」

 

 それから、ケイネさんと授業内容や私たちの話す内容などの打ち合わせをした。

 

「ふむ、これくらいか、ポケモン博士たちの新たな研究成果の内容は当日まで楽しみにしていてくれ。君たちにも何か面白そうなことがないとつまらないだろう?」

 

 ケイネさんはフッと笑って言う。様になってるな。

 

「では、十六日後またこのポケモンセンターに迎えに来る。それまではこの町でゆっくりしていてほしい。カノコタウンのポケモン研究所を訪ねてみてもいいが、時間までには戻ってきておいてくれ。では、頼んだぞ」

 

 そう言ってケイネさんは去って行った。

 

「ふう、十六日後か、それまでどうする?」

 

 ホントどうしよう。この何もない町で。

 

「修業でもしてればいいんじゃない?」

 

 Mが至極どうでもいいように適当に言う。

 

「そうだね。修業でもしてよっか!」

 

 そしてそれを真に受ける私。

 

「……適当に言ってみただけなのに。本当に修業バカだね。メイは」

 

 Mは若干呆れているように見える。いいじゃんか、強くなれれば。そうして授業のある日までの十六日間はカラクサタウンの近くで修行して過ごした。その時の一幕のこと。

 

「ねえ、イヴちょっと聞きたいんだけど」

『? 何?』

 

 イヴがかわいく首を傾げる。

 

「あなた、何か必殺技みたいなのほしくない?」

『必殺技~? ……メイって子供だね』

 

 イヴからそう突っ込まれる。うるさいやい! いいじゃん必殺技、カッコいいっしょ?

 

「前から常々思ってたんだけど、あなたの使える技ってリオたちの持つ最強の技と比べて威力が低いよね」

『むう、確かに、そうかもしれない。でも仕方ないじゃん。できないものはできないんだし』

 

 特に最近あったポッドさんとバオッキーのジム戦、あの戦いでイヴの技の威力不足が目立った。イヴのサイコショックが簡単にかき消されてしまったのが気になったのだ。

 

「そ・こ・で! 私は最近ずっと考えてたんだ。どうすればイヴが強力な技を使えるようになるか。それで思いついたのが、今覚えている技を改良すること」

『技の改良?』

「そう、基本的にエネルギーっていうのは一点に集束させればその分強力になるんだ。例えばリオのきあいパンチなんかがいい例。あれは拳の一点にエネルギーを集束させて相手に攻撃する技だよね。だからリオの持つ技の中では一番強力なんだよ。そして、あなたのもつ技、サイコキネシスとかサイコショックとか、そのエネルギーをもっと集束させれば今までできなかったことができるようになるかもしれないし、もっと強力な技に昇華させることができるようになるかもしれない」

 

 もしかすると、もしかするかもしれない。やってみる価値はある。少なくとも本来覚えられるはずのない技を覚えさせるよりもよっぽど可能性がある。

 

『……ふうん。ま、いいよ。やってみても。それが本当ならわたしももっと強くなれるかもしれないし』

「よし、イヴもやる気だね。さっそく私の案を説明しよう! 第一の案として、サイコショックの改良を提案します!」

『サイコショック、ね。それで? あれをどうするの?』

「サイコショックは無数のエネルギーの弾を相手にぶつける技だよね。その無数の弾を一つにまとめるの」

『さっきメイが言ってたエネルギーの集束だね。いいかもしれない。さっそくやってみる』

 

 そうしてカラクサタウンでの修業は進んでいった。そして簡単な修業の成果。リオはストーンエッジ、カティはワイルドボルト、ユウヒはアイアンテールを覚えた。イヴの技の改良の結果は上々だ。サイコショックの弾は一つ一つは野球のボールほどの大きさだったのが弾を一点に集束させるとバレーボールほどの一つの弾になり、通常のサイコショックよりも明らかに威力が上昇した。その威力はリオのきあいだまを消し去るほどだ。このサイコショックを集束のサイコショックと名付けた。

 

 さらに、集束のサイコショックをサイコキネシスで無理やりビー玉ほどの大きさに圧縮するということもやってみた。これを圧縮のサイコショックと言うことにするが、この技がどういう結果を生んだかというと、着弾点を中心に大爆発を起こして地面にクレーターを作り、周囲にあった木々は丸ごと吹き飛んだ。……正直やりすぎた感はある。私もリオたちも放ったイヴ自身も始めは呆然としていた。これバトルで使っても大丈夫かな。後、圧縮のサイコショックは発射するまでに時間が必要で使い勝手で言えばすぐに発射できる集束のサイコショックのほうが使いやすい。あとはいつものレベル上げ。こんなところかな。修業をしているとあっという間に時間は過ぎて、授業の日になった。

 




ありがとうございました。

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