ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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夏ですね。灼熱地獄ですね。
それではどうぞ。


26話 三原色と赤猿

 夢の跡地での探索、修業を終えて、今日はついにサンヨウジムに挑むことになった。というわけで一昨日レミリア一家と訪れたレストランの前まで来ている。なぜこのレストランに来たかというと、レストランにジムが併設されているからだ。

 

「ついにサンヨウジムかあ。いやあここまで来るのに随分と――」

「長く感じた」

「……最後まで言わせてよ」

 

 私はじと目で言う。

 

「ふふふ、少しだけメイのことが分かった気がする」

「なに!? ……ふっふっふ、この程度で私をわかった気になっているとは笑止千万、顔を洗って出直すがよいわ!」

「そうだね。この程度でわかった気になってるなんておかしいよね」

 

 Mはしゅんとして顔を俯ける。

 

「え? あっと、冗談だよ? ご、ごめんね」

 

 私はしどろもどろになって謝る。

 

「ふふふ、冗談だよ。メイって面白いね」

 

 Mはクスクスと笑いながら冗談だと言う。

 

「……ああ! もう! ……はあ。Mをからかうのは難しいな」

 

 くそ、やられた! ……向いてないのかな。

 

「うむうむ、精進したまえメイ君」

 

 Mがさっきの私の口調を真似て言う。

 

「くそ、いつかからかってやる。まあいいや、気を取り直してジム戦にしにいこうか!」

「うんうん。その楽天的なのはメイのいいところだよ」

 

 私とMはレストラン中に入る。

 

「いらっしゃいませ!」

 

 すると従業員から声がかかる。

 

「何名様ですか?」

「いえ、今日はジムに挑戦しに来ました」

 

 このジムも原作通りかな?

 

「ジム戦希望者ですか。わかりました。デントさん! ポッドさん! コーンさん! 挑戦者です!」

 

 すると店の奥から三人組が出てくる。三人は全員白いシャツの上に黒いベストを着用して、前には膝上までの長さのウエストエプロンをしている。三人の大きな違いは髪の色と同じ色の蝶ネクタイをしていることだ。その色はそれぞれ、緑、青、赤、の三原色だ。

 

「ようこそ、こちらサンヨウシティポケモンジムです。おや……? あなたがたは一昨日うちに食事に来てくれた方ですね。それにそちらの方は……以前ジム戦を勝ち抜かれた方ではありませんか。」

 

 緑色の髪をした人がMを見ながら言う。

 

「しかしこちらの方はジムは初めてご様子。では自己紹介といきましょう」

 

 続けて私の方を見て言う。

 

「オレは炎タイプのポケモンで暴れるジムリーダー、ポッド!」

 

 赤色で炎を思わせる髪の人、ポッドさんが自己紹介をする。

 

「水タイプを使いこなすジムリーダー、コーンです。以後お見知りおきを」

 

 次に青色の長い前髪で右目が隠れている髪の人、コーンさんが言う。

 

「そしてぼくはですね、草タイプのポケモンが好きなジムリーダー、デントと申します」

 

 最後に緑色の前髪部分が少し逆立っている髪の人、デントさんが言う。

 

「私はメイといいます」

 

 そしてそのままデントさんが説明を続ける。

 

「メイさんですね。あのですね……ぼくたちはですね、どうして3人いるかといいますと……」

 

 デントさんがためを作りながら言おうとするが、ポッドさんがしびれを切らし強引に説明を引き継ぐ。

 

「もう! オレが説明するッ! オレたち3人はッ! 相手が最初に選んだポケモンのタイプに合わせて誰が戦うか決めるんだッ!」

「そうなんだよね。それで、あなたが最初に選んだパートナーは一体誰かな?」

 

 そしてコーンさんが私に聞いてくる。どうやら原作通りに最初のパートナーによって対戦相手を決めるようだ。

 

「私の最初のパートナーはルカリオです」

 

 私の予想通りなら対戦相手は……。

 

「ふむ……ルカリオですか。それならば……」

「炎タイプで燃やしまくるオレ、ポッドが相手をするぜ! おっと聞き忘れていた。お前のバッジは今いくつだ?」

 

 やはり予想通りポッドさんだ。リオは炎タイプが弱点だからな。

 

「二つです」

「わかった。二つだな。ならこいつらだな。さ、こっちへ来い。バトルフィールドへ案内する」

 

 そうして私たちはバトルフィールドに案内される。私とポッドさんは互いに反対側のトレーナーの位置に立つ。Mはいつも通りの観客席だ。そして審判の位置にはデントさんがいる。どうやらデントさんが審判をするようだ。コーンさんはポッドさんの後ろで見守っている。

 

「これよりジムリーダー、ポッド対チャレンジャー、メイのバトルを開始する。使用ポケモンはお互いに3体。ポケモンの交代はチャレンジャーのみ。相手のポケモンを全て戦闘不能にした方の勝利とする。それでは……バトル開始!」

 

 審判のデントさんより試合開始の合図がなされる。

 

「イヤッホー! 兄弟で一番強いオレ様と遊ぼうぜ! まずはこいつだ! いけ、ダルマッカ!」

『っしゃあ!』

 

 ポッドさんが繰り出してきたのは、赤いだるまのような、そのまんまだるまポケモン、ダルマッカだ。

 

「リオ! Start the Struggle!」

『ふっ! 出番だね』

 

 それに対し私はリオを出す。

 

「先行は譲るぜ! 来な!」

 

 ポッドは余裕ぶっているのか先行を譲ってくる。ふん、あまりうちのリオをなめないでいただきたいものだ。

 

「なら。いきます! リオ! ボーンラッシュ!」

『はああああ!』

 

 リオは棒状の骨を生み出し、棒術を扱うようにきれいに振り回し、そしてダルマッカに向かう。

 

「! は、はやい! ダルマッカ! 避けろ!」

『うわわわ!』

 

 しかし、ダルマッカはよけることはかなわず、リオの連続突きからの薙ぎ払いのボーンラッシュコンボを受けて倒れてしまう。

 

「ダルマッカ!?」

『きゅう~』

「ダ、ダルマッカ戦闘不能!」

 

 審判のデントさんが戦闘不能を告げる。

 

「あちゃー、こりゃあ、やっちまったな。戻れ、ダルマッカ」

「何をしているんですか。ジムリーダーともあろうものが」

 

 後ろからコーンさんのヤジが飛ぶ。

 

「うるさいやい! おい、メイ! そのルカリオ、よく育てられているじゃねえか。正直ちょっとなめてたぜ」

「ありがとうございます」

 

 ふふふ、どうだ! 見たか! リオの実力を! 相性なんて吹き飛ばすこの強さを! なんてな。レベル差があるからこんな無理ができる。普通だったらこんなことはしない。

 

「だが、次はこうはいかないぞ! いけ、クイタラン!」

『いくぜ!』

 

 次にポッドさんが出してきたのはアリクイの姿をしたこれまたそのまんまアリクイポケモンのクイタランだ。

 

「今度はこっちが先行だ! クイタラン! ほのおのうず!」

『シャオ!』

 

 クイタランの口から炎が渦を巻いてリオに襲いかかる。

 

「リオ! 見切りのボーンラッシュ!」

『ふっ!』

 

 リオは迫りくるほのおのうずをみきりでかわしクイタランに接近する。

 

「クイタラン! みだれひっかきで迎え討て!」

『うりゃりゃりゃ!』

 

 リオはボーンラッシュのコンボをクイタランに打ち込む。クイタランは腕を振り回してリオの攻撃をガードしようとするが、リオの隙を突く攻撃に対応しきれずにダメージを受ける。が、先ほどのように一撃で倒れることはない。あらら、倒れなかったか。しかし、クイタランはもうすでに肩で息をしている。多分だが、気合で立っている状態だろう。

 

「リオ! 一旦距離をとって!」

 

 リオはクイタランから目を離さずにバックステップで距離をとる。それをクイタランは追ってこない。

 

「くそッ! クイタラン! やきつくす!」

『う、おおおおお!』

 

 クイタランは最後の力を振り絞り炎の弾を発射する。

 

「リオ! 棒を回転させて弾き飛ばせ!」

『はあっ!』

 

 リオは体の前でボーンラッシュの棒を高速回転させ、クイタランの炎の弾を弾き飛ばす。それを見たクイタランは緊張の糸が切れたのか静かに倒れこむ。

 

「ク、クイタラン!?」

「クイタラン、戦闘不能!」

 

 デントさんは戦闘不能を宣言する。ふっ、やはりバッジの個数の割にはうちのポケモンは強すぎるみたいだ。これは楽勝だな。

 

「おいおい、マジかよ……。戻れ、クイタラン。くおお、くっそ、強すぎだろ……。こうなったら……!」

 

 ポッドさんは驚きとともにクイタランをモンスターボールに戻す。悔しがっているようだが何を言っているか聞こえない。

 

「おい、メイ! 今から出すポケモンはオレの最高のパートナーだ! ……心してかかれよ」

 

 ポッドさんが念を押すように言う。この言いよう……まさか……! またレベルが高いやつか! デントさん、コーンさんも驚いた顔をしている。

 

「いけ! バオッキー!」

『うおらあ!』

 

 ポッドさんが出してきたのは炎を思わせる尻尾と頭部の体毛を持つ猿のようなひのこポケモン、バオッキーだ。

 

「……戻れ。リオ」

 

 さすがに本気だしてやらないとな。

 

「イヴ! Start the Struggle!」

『ん、出番だね』

 

 私はリオを戻し、イヴを出す。

 

「ルカリオを戻したか。賢明な判断だな。だが、それだけで勝てると思うなよ! バオッキー! だいもんじ!」

『きあああ!』

 

 だいもんじ!? やっぱレベル高いだろ! 大の字の炎がイヴに迫る。

 

「イヴ! ひかりのかべ!」

『うん!』

 

 イヴの周りに半透明の黄色い壁が形成され、だいもんじのダメージを軽減する。

 

「なら! バオッキー! アクロバット!」

『きっきっきっ!』

 

 バオッキーは今度は空中に足場があるかのように軽快に動きながら突撃してくる。

 

「イヴ! リフレクター!」

『わかった』

 

 しかしこれもイヴは半透明の薄紫の壁を生み出し、ガードする。多少のダメージは仕方ない。

 

「よし、サイコキネシスで吹き飛ばせ!」

 

 イヴは攻撃のために接近していたバオッキーをサイコキネシスで吹き飛ばす。吹き飛んでいったバオッキーは空中で身を翻しきれいに着地する。ちっ、隙はないか。

 

「へッ! やるじゃねえか。ならこっちは! バオッキー! ふるいたてる!」

『ううう、らあっ!』

 

 バオッキーは体を震わせて気合を入れこうげきととくこうを上げる。

 

「イヴ! あさのひざし!」

『ふううう!』

 

 バオッキーが気合を入れている隙にイヴは体を光らせて体力を回復する。

 

「回復か、やっかいだな。だがその前に! バオッキー! かわらわり!」

『せいやっ!』

 

 バオッキーが再び攻撃をしようと接近してくる。

 

「! イヴ! サイコショック!」

『はあっ!』

 

 イヴは接近してくるバオッキーに無数の群青色の光の弾を殺到させる。

 

「バオッキー! だいもんじで焼き払え!」

『きあああ!』

 

 しかしイヴの放ったサイコショックはバオッキーのだいもんじでかき消される。そしてだいもんじはそのままイヴに襲いかかる。

 

「イヴ! 避けろ!」

『うん!』

 

 イヴはぎりぎりだが私の指示通りにだいもんじを回避することに成功する。しかしイヴの回避した先にはバオッキーが回り込んでいた。

 

「いいぞ! バオッキー! かわらわり!」

『はっはあ!』

「イヴ! 自分にサイコキネシスをかけて加速しろ!」

『! わかった!』

 

 バオッキーはイヴに腕を振りおろそうとし、イヴはだいもんじを回避した勢いをそのままサイコキネシスで加速させてバオッキーの攻撃を回避しようとする。バオッキーの振り下ろした腕はぎりぎりイヴを覆っていたリフレクターとひかりのかべを壊すだけにとどまり、イヴに直接ダメージを与えるには至らなかった。

 

「イヴ! いったん距離をとれ!」

『うん!』

 

 イヴはサイコキネシスを解除し、バオッキーから離れようとする。

 

「逃がすか! バオッキー! ほのおのパンチでラッシュをかけろ!」

『うらららら!』

 

 バオッキーはイヴを追いかけて両手に炎を纏わせ拳撃を繰り出してくる。

 

「戻れ! イヴ!」

 

 私はバオッキーの攻撃にさらされようとしているイヴをモンスターボールに戻す。

 

「ユウヒ! Start the Struggle!」

『いくぞ!』

 

 私はイヴの代わりにユウヒを出す。状況は良くない。バオッキーはこうげきととくこうが上昇した状態だ。一発でも攻撃をもらうと危ない。

 

「いくぜ! バオッキー! だいもんじ!」

『きあああ!』

 

 再びのだいもんじがユウヒを襲う。

 

「ユウヒ! かげぶんしんで回避!」

『はっ!』

 

 ユウヒは数十体もの分身を生み出し、だいもんじを避ける。数体の分身がだいもんじで消えるが、まだまだ分身は残っている。

 

「バオッキー! はじけるほのお!」

『ふんっ!』

 

 バオッキーは広範囲に弾けて飛んでいく炎の弾を撃ち出す。

 

「ユウヒ! こうそくいどうで回り込め!」

『ふっ!』

 

 あちこちに飛んでいく炎がユウヒの分身を消していく中、本物のユウヒはバオッキーの後ろに回り込む。分身が消えてバオッキーはユウヒの姿を見失い、慌ててユウヒを探す。

 

「今だ! ユウヒ! 神速のボルテッカー!」

『はああああ!』

「バオッキー後ろだ!」

 

 ポッドは後ろを見るように指示するが、その前にユウヒの必殺の一撃、神速の雷を纏った突進がバオッキーを襲う。

 

『ぐああああ!』

 

 ユウヒの一撃を受けたバオッキーはバトルフィールドを越え壁に激突する。バオッキーはずるずると地面に降りてくる。そしてバオッキーは目を回して倒れる。

 

「バオッキー!?」

「バオッキー、戦闘不能! よって勝者、チャレンジャー、メイ!」

 

 審判のデントより勝者宣言がなされる。っしゃあ! 勝ったぜ!

 




ありがとうございました。

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