それではどうぞ。
閉会式が終わり私たち選手は控室に戻ってきた。
「みなさん、今日はお疲れ様でした。今大会はこれで終了です。これで解散とします」
そう係員に言われ選手のみんなは次々と帰っていく。最後に私とM、サトリとコイシが部屋に残った。
「あら? まだいたのですか?」
「どうしたのー?」
サトリとコイシが話しかけてくる。
「いや、なんでもない。ただ、ぼーっとしてただけ。そっちは?」
「私たちは反省会です」
「そうそう。何で負けたのかなーって」
サトリとコイシはバトルを振り返っているようだ。
「へえ、熱心ね」
Mが感心したように言う。
「なぜ負けたのか、それがわからないことには次には進めませんから」
サトリは腕を組んでうんうんと頷く。
「それにしてもゴチルゼルとランクルスの合体技が効かないなんて思わなかったな。ちょっと合体技に頼りすぎてたかもね」
流石双子。コイシも考える仕草がサトリと同じだ。
「いや、あなたたちの合体技は強力だったよ。こっちがみきりとか攻撃を回避できる技がなければ最初でやられていたかもしれない」
あれはマジでヤバかった。リオ、コジョンドともども当たれば大ダメージ必至だったからね。
「そうですか。では使いどころが間違っていたということですか?」
サトリが訊いてくる。
「う~ん、そうでもないと思うけどな。それよりも、みらいよちだね。あれ、どうしてリオを狙ったの? あ、リオってのは私のルカリオのことね」
みらいよちがコジョンドに当たっていたらきっとコジョンドは戦闘不能になっていたと思う。
「あれ? あれはね、こっちの弱点を突いてくるルカリオのほうが危険だと思ったんだけど。……ああ! 結果論になるけどあのときダメージを負っていたコジョンドのほうを狙っていたらコジョンドを倒せていたかもね」
コイシはなるほど、といった風に片方の手をグーの形にしてもう片方の手のひらを軽くポンッと叩く。
「そうね。コジョンドはエスパータイプが弱点だからみらいよちの一撃で倒れていたかもしれないし。あのときは肝を冷やした」
Mもあの時は焦っていたのかな。それでも冷静さを失わないのはトレーナーとして優れている証拠なのかもしれない。
「そっかー。じゃあ私の判断ミスだねー。あーでも、今思うと他にも私のミスがあったかも」
「コイシだけではありません。おそらく私にもミスがあったのでしょう」
「サトリとコイシは随分と熱心だね」
まあ強さを目指すトレーナーなら当然かもしれないな。
「そうですか? 強くなりたいと思うのはトレーナーとして当然だと思うのですが」
「ねー」
そう言ってサトリとコイシは顔を見合わせる。
「あのーそろそろ帰っていただけませんかね? ここを片づけたいのですが」
そうして話し込んでいると係員の人から早く帰れとのお達しがきた。
「「「「す、すみません」」」」
私たちは頭を下げさっさとここを出ようとする。
「ふう、続きは外で、ですね。では私たちはいきますのでこれで。また機会があればバトルしましょう」
「まったねー!」
そう言ってサトリとコイシは去って行った。
「じゃ、私たちもいこっか」
「そうね。でもどこへ行くの?」
「今日はもう休もうかな。ポケモンセンターに行こう」
「わかった」
そうして私とMはスタジアムの控室からでてポケモンセンターに向かった。
これはポケモンセンターでのリオとの会話だ。
「そういえばさ、リオはどうやってサイコキネシスを避けたの?」
一見すると避けられない攻撃のように思えるのだが。
『ん? ええと、なんかね。こう、ポワーッて来たのをキリッとすると避けれた』
「んんー? えっと、つまりサイコキネシスのパワーが体を包むときにみきりを使うとそのパワーが無くなった、と」
『そうそう。そんな感じ』
意味不明な説明でよくわかったな私。どうもみきりにはまだまだ秘密が有りそうだ。
大会があった日の夜、私とMはポケモンセンターの食堂で晩御飯を食べようとしていた。すると食堂に入ってくる二人組がいた。サトリとコイシだ。
「ん? サトリとコイシじゃん」
「そうね」
「おーい」
私はサトリとコイシに声をかける。するとサトリとコイシはこちらにやってきた。
「こんばんは。さっきぶりですね」
「こんばんはー」
サトリとコイシがにこやかに挨拶してくる。私はサトリとコイシを食事に誘い、二人はそれに了承してくれたので、談笑しながら一緒に晩御飯を食べる。
「それにしてもさっき別れを告げた相手とこうして話すのはなんだか不思議な気分です」
サトリがご飯を一口食べてから言う。
「そうだねー」
コイシは自らの姉の意見に賛成する。
「そういえば、反省会、終わったの?」
「ええ。まあ、結局は私たちもまだまだだということになりましたけどね」
私も結構修業しているつもりだが、まだまだバトルの奥底は見えてこない。いやあ奥深いねポケモンバトルってのは。
「ねえ。私たちちゃんとした自己紹介してなくない?」
Mからの指摘に私たちは黙り込む。
「……そうですね。確かにしてないですね。大会の実況でわかった気になっていました。では私から……。私はサトリ、ポケモントレーナーです」
「私はコイシ、お姉ちゃんとは双子で、同じくポケモントレーナーです!」
「私はメイ、同じくポケモントレーナー」
「私はM、同じくポケモントレーナー」
「全員ポケモントレーナーですか。ならここで会うのも必然ですね」
「そうだねー。トレーナーならだれだってポケモンセンターを使うよね」
サトリとコイシの意見に全面的に賛成。ポケモンセンターの食事とか宿泊は無料だし。サービスもいいし。
「ところでサトリとコイシはいつも一緒に行動してるの?」
「そうですね。基本的にいつも二人一緒です。旅も一緒にしていますし。そういうそっちはどうなんですか?」
さすが双子、いつも一緒か。仲が良いのはいいことだ。
「私とMも一緒に旅してるよ」
つい最近のことだけどな。
「ということはお互い二人組だねー」
コイシは嬉しそうに言う。なんで嬉しそうなんだろう。
「そうね」
その様子を見たMもなぜか嬉しそうに返す。ホントになんでだろう。
「じゃあじゃあ、メイたちはポケモンリーグに出場したことある?」
コイシが訊いてくる。
「え? ないない。ていうかバッジもまだ一つだけしか持ってないし」
「私もバッジは八つ持ってるけどリーグはまだ出てないかな」
Mもリーグには出ていないようだ。
「えー!? うそー!? こんなに強いのにまだバッジ一個しか持ってないの!?」
「信じられません」
サトリとコイシは私に驚いている。
「だってまだ旅を始めてから二カ月ちょっとしか経ってないし」
「それでここまで強いなんて」
コイシは驚きすぎたのか呆然としている。
「私たちは一応リーグ経験者なのですが」
サトリとコイシはポケモンリーグに出たことがあるようだ。
「へえ、そうなんだ。じゃあ私はリーグでも通用する、と」
「そうですね。まあいいところまでいけるんじゃないでしょうか。ただし今回はマルチバトルだったので一概には言えませんが」
マジか、ポケモンリーグって今の私でも通用するのか。これはいいこと聞いた。
「やった。経験者からのお墨付きだ。ところでリーグに出たことがあるならどんな目的で旅をしてるの?」
ちょっと気になるんだよな。
「とりあえず、マルチバトルでの最強を目指すといったところでしょうか? ねえ、コイシ?」
「そうだねー。そんな感じ。でも、実はマルチバトルを始めたのはつい最近なんだよね」
「そうなの? それにしてはうまく連携できていたと思うけど」
Mもそう思うか。合体技といいコンビネーションといい最近始めたにしてはかなりいい線いっていたと思うんだけどな。
「いえ私たちなんてまだまだですよ。それであなたたちはどうなのですか?」
サトリが訊いてくる。
「私の旅の目的は一応ポケモン図鑑の完成、あとポケモンリーグ出場だね」
「私はメイの観察」
至極真面目な表情でMが言うのでサトリとコイシは驚くというか呆れているというか、とにかくそんな微妙な表情をしている。
「え? メイの観察って……メイはいいの? こんなこと言ってるけど」
コイシの指摘ももっともである。が、そんなことは気にしないのが私である。
「いいのいいの。Mは悪い子じゃないし。それに旅は道連れっていうじゃない」
「おかしなひとですね。まあそれはいいとして。リーグの出場ということはこの街のバッジもゲットしにいくんですね」
サトリの表情には若干の呆れがあったような気がするが気にしない。
「うん。その予定。明日にでも行こうかなと思ってるんだけど」
「まあ、あなたの実力なら余裕だと思いますが、頑張ってください」
「油断しないようにねー!」
一瞬の油断が命取り!なんてな。それほど緊迫したバトルはサトリ、コイシペアとのバトルとMとのバトルくらいだな。
「ご忠告ありがと。サトリとコイシは明日はどうするの?」
「私たちは次のマルチバトルの大会が開かれるヒウンシティに行きます」
「そっか、ならお別れだね」
「そうですね。短い間でしたが、あなたたちといられて楽しかったです」
「うんうん。私たちとお話してくれてありがとう!」
サトリとコイシからお礼を言われる。そんな大したことはしてないんだけどな。まあ感謝されてうれしくないわけはない。Mも微笑んでいる。
「明日、見送りにいくよ」
「それはありがとうございます。では私たちはこれで」
「またねー!」
そういってサトリとコイシは去っていく。
「私たちも休もうかM」
「そうね。部屋に行って休もう」
そうして大会のあったこの日は終わりを迎えた。
ありがとうございました。