ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

22 / 58
今回も少し長めです。
それではどうぞ。


22話 協力技と決勝戦

 “さあ! ついにやってきました決勝戦! まずは選手の入場です! 衝撃的な強さで相手を蹴散らす! 無傷でここまでやってきた凄腕トレーナー! メイ選手、M選手ペアー!”

 

 ウワァーッ! という歓声に出迎えられ私とMはバトルフィールドに立つ。

 

 “そしてもう一方! 抜群のコンビネーションで相手を圧倒! そしてなんとこちらも無傷! ここまで勝ち抜いてきた仲良し双子姉妹! サトリ選手、コイシ選手ペアー!”

 

 そしてサトリとコイシも歓声とともに入場する。

 

「いよいよだねM」

「そうね。全力を尽くして、そして勝とう!」

 

 Mと話しているとバトルフィールドの向こうにいるサトリとコイシが話しかけてくる。

 

「ようやく戦えるのですね。あなたたちとのバトル、楽しみにしていました」

「そうだよー。すっごく楽しみだったんだよ」

「こっちも、楽しみだったよ。どうやってあなたたちを倒そうかずっと考えてたんだから」

 

 私は率直な気持ちをサトリ、コイシに伝える。

 

「それはこちらも同じです」

「そうそう!」

 

 サトリとコイシは笑みを浮かべながら言う。

 

「御託はいい。私たちは今から戦うのだから」

 

 するとMが珍しく獰猛な笑みを浮かべる。

 

「そうですね。勝負の前に無粋な言葉は不要」

「だね」

 

 そうしてサトリとコイシはキッとこちらを睨みつけてくる。いいねえ。勝負の前って感じで。私も笑みを浮かべサトリとコイシの方を見つめる。

 

 “さあ! どうやら試合前の会話が終わったようだ! ついに始まる決勝戦! みんな応援の準備はいいか! さあ試合開始だァー!”

 

「リオ! Start the Struggle!」

『うしっ!』

「出てきて、コジョンド!」

『いくわよ』

「出てきなさい! ゴチルゼル!」

『いきます!』

「いっけぇー! ランクルス!」

『やっほい!』

 

 私とM、サトリとコイシがそれぞれのポケモンを出しフィールドで相対する。

 

「ではこれより決勝戦を開始します! それでは試合開始!」

 

 審判より試合開始の合図がなされる。

 

「ゴチルゼル!」

「ランクルス!」

「「ダブルサイコキネシス!」」

『『はあっ!』』

 

 “いきなりの協力技だァーッ! これはどうなる! ルカリオ! コジョンド!”

 

 先に動き出したのはサトリとコイシ、ゴチルゼルとランクルスだ。まあ、いい先行は譲ろう。だからといって好きにはさせないがな! ゴチルゼルとランクルスのダブルサイコキネシスがリオとコジョンドに襲いかかろうとする。

 

「リオ! みきり!」

「コジョンド! とびはねる!」

『ふっ!』

『しっ!』

 

 リオはみきりで、コジョンドはとびはねるで上空に逃げてダブルサイコキネシスを回避する。

 

 “おおっと! ルカリオとコジョンドはうまく回避したようだ!”

 

「コジョンド! はどうだん!」

『くらいなさい!』

「リオ! コジョンドに合わせてあくのはどう!」

『はあっ!』

 

 コジョンドは上空からはどうだんの雨を降らせ、それに合わせてリオはあくのはどうを放つ。

 

 “今度はルカリオとコジョンドのコンビネーションだァー!”

 

「ゴチルゼル! ランクルスの前に行ってまもる!」

「ランクルス! みらいよち!」

 

 ゴチルゼルはランクルスの前に立ちふさがり、まもりの障壁を生み出しはどうだんとあくのはどうをガードし、ランクルスは間をおいて発生する攻撃を発動させる。ちっ、まもるを覚えていたか。これは厄介だ。

 

 “しかしゴチルゼルとランクルスはこれをガード!”

 

「コジョンド! ゴチルゼルにアクロバット!」

『いくわよ!』

 

 コジョンドは空中に足場があるかのように動き回り、ゴチルゼルに向かって突撃する。その華麗な動きにゴチルゼルとランクルスは困惑している。

 

 “コジョンド! 華麗な動きで相手を翻弄!”

 

「今だ! リオ! しんそくで近づいてあくのはどう!」

『おおっ!』

 

 リオはしんそくでゴチルゼルとランクルスに近づき至近距離からのあくのはどうを放つ。

 

「ランクルス! まもる!」

『おっと!』

 

 しかしランクルスのまもるであくのはどうは防がれる。が、これでいい。すると空中からコジョンドが突撃してくる。よし、もらった!

 

「くっ! ゴチルゼル!」

「ランクルス!」

「「ダブルサイコキネシス!」」

 

 しかし、ゴチルゼルとランクルスは突撃してくるコジョンドをダブルサイコキネシスで操り、吹き飛ばす。

 

 “おおっと! ここで協力技が炸裂ゥー!”

 

「ちっ! リオ! 神速のいやしのはどうでコジョンドを助けろ!」

『はっ!』

 

 リオは吹き飛んでいくコジョンドをしんそくで追い抜きいやしのはどうで回復させながら受け止める。

 

「大丈夫!? コジョンド!」

『ええ、なんとか』

 

 どうやら大丈夫のようだ。すると突然光の柱がリオを襲う。

 

『ぐあああう!』

 

 “ここでみらいよちの攻撃が発動ォー!”

 

 しまった! みらいよちか! リオはすこしふらつくが全身に波導を滾らせ持ち直す。よし、まだいけるな。

 

「追撃です! ゴチルゼル!」

「さらに! ランクルス!」

「「ダブルサイコショック!」」

『『くらえええ!』』

 

 ゴチルゼルとランクルスから無数の群青色の光の弾が発射されリオとコジョンドに向かってくる。

 

 “さらに追撃の協力技ァー!”

 

「コジョンド! とびはねる!」

『ふっ!』

「リオ! 見切りのあくのはどう!」

『はああ!』

 

 それに対しコジョンドは上空へ逃げ、リオはみきりで無数の玉の間を縫うように移動しながらあくのはどうを放つ。

 

 “しかしルカリオとコジョンドもこれに対応!”

 

「! なんですって! くっ! ゴチルゼル! まもる!」

『わかりました!』

「ランクルス! 上のコジョンドを狙って!」

『あいよ!』

 

 ゴチルゼルは攻撃を中断しリオのあくのはどうをまもるでガードし、ランクルスはサイコショックの狙いを上空のコジョンドに向ける。

 

「コジョンド! 見切りのアクロバット!」

『ふっ! はっ!』

 

 コジョンドは空中を自在に動き回りサイコショックをかわしながら、ゴチルゼルとランクルスに向かって突撃する。

 

 “再びの華麗なアクロバット!”

 

「うわわっと、ラ、ランクルス! まもる!」

『おおっと!』

 

 ゴチルゼルとランクルスが同時にまもるを発動させる。これはチャンス!

 

「リオ! 神速のきあいパンチでまもるを打ち破れ!」

『はあっ!』

 

 リオは一瞬のうちにゴチルゼルとランクルスの懐に潜り込みまもるの障壁にきあいパンチをたたきこむ。するとまもるの障壁が消滅しゴチルゼルとランクルスを守るものがなくなる。そしてそこにコジョンドのアクロバットがヒットする。

 

『うあああ!』

『おわああ!』

 

 ヒットしたアクロバットで吹き飛ぶゴチルゼルとランクルス。

 

 “コジョンドのアクロバットが! 吹き飛ばすゥー!”

 

「ゴチルゼル!?」

「ランクルス!?」

「追撃だ! リオ! あくのはどう!」

『はっ!』

「コジョンド! はどうだん!」

『しっ!』

 

 リオとコジョンドのはどうだんとあくのはどうが嵐となってゴチルゼルとランクルスに襲いかかる。

 

 “ルカリオとコジョンド! さらに追撃ィー!”

 

「ゴチルゼル!」

「ランクルス!」

「「ダブルサイコショック!」」

『『はあああ!』』

 

 しかし態勢を立て直したゴチルゼルとランクルスはサトリとコイシの指示通りに無数の弾をはどうだんとあくのはどうにぶつけて相殺する。くっ、やはり一撃ではだめか。

 

 “しかし、ゴチルゼルとランクルスも負けていない!”

 

「ふう、あぶなかったですね。もうすこしでやられるところでした」

「ほんとほんと。ギリギリセーフって感じ!」

 

 ゴチルゼルとランクルス、リオとコジョンドは睨み合ったまま動かない

 

「そのまま倒れてくれればよかったのに」

「そうね。本当に」

 

 Mも至極残念そうに言う。

 

「そうはいきません。久しぶりに楽しい勝負なんですから、簡単には終わらせません」

「だよー!」

「さあ、続きといきましょう! ゴチルゼル! サイコショック!」

『いきます!』

「ランクルス! サイコキネシス!」

『いよっと!』

 

 サトリとコイシは合体技が効かないと悟ったのかこんどは別々の攻撃を指示する。ゴチルゼルは無数の弾を生み出しリオとコジョンドに殺到させ、ランクルスはサイコキネシスで直接リオとコジョンドを操ろうとしてくる。

 

 “膠着状態をさきに抜け出したのはゴチルゼルとランクルスゥー!”

 

「リオ! 見切りのきあいパンチで道を作れ!」

『うん!』

「! コジョンド! リオの作った道を通ってゴチルゼルに見切りのアクロバット!」

『ええ!』

 

 リオはサイコキネシスの操作をみきりでかわし、きあいパンチで殺到する光の弾を弾いてゴチルゼルとランクルスまでの道を切り開く。開いた道をコジョンドが走り抜けてリオを追い越し、アクロバットを当てようとゴチルゼルに突撃する。

 

 “攻撃の嵐の中をルカリオとコジョンドが駆け抜けるゥー!”

 

「ゴチルゼル! まもる!」

『くっ!』

 

 しかしコジョンドの攻撃はまもるの障壁で受け止められる。

 

「コジョンド! 連続ではっけい!」

『はあっ!』

 

 コジョンドは攻撃の手を緩めずまもるの上から腕の体毛を鞭のようにしならせ連続攻撃を加える。

 

 “コジョンドのめまぐるしい連続攻撃にゴチルゼルはまもるしかない!”

 

「ランクルス! コジョンドにピヨピヨパンチ!」

『ていやっ!』

 

 ランクルスはゴチルゼルを助けるためにコジョンドに混乱させる効果のある拳撃を打ちこもうとする。

 

「させるか! リオ! ボーンラッシュで受け流せ!」

『ふっ!』

 

 リオはランクルスの拳撃をボーンラッシュで生み出した棒でコジョンドに当たらないように受け流す。

 

 “ランクルスがゴチルゼルを助けようとするがルカリオがそれをさせない!”

 

 その間もコジョンドは攻撃を続け、ついにまもるの障壁を破壊する。

 

「今! コジョンド! 全力のアクロバット!」

「! ゴチルゼル! 避けて!」

 

 しかし、コジョンドは力を込めたアクロバットをゴチルゼルにヒットさせる。

 

『うわあああ!』

「ゴチルゼル!?」

 

 ゴチルゼルは吹き飛び、そして目を回して倒れる。

 

「ゴチルゼル、戦闘不能!」

 

 審判よりゴチルゼルは戦闘不能と判断される。

 

 “ついにゴチルゼルが倒れるゥー! ランクルスこれはピンチ!”

 

「ふう、ありがとう、ゴチルゼル」

 

 サトリは動けなくなったゴチルゼルをモンスターボールに戻す。

 

「うそー!? ラ、ランクルス、じこさいせい!」

 

 一人残されたランクルスはコイシの指示により自身を回復しようとする。

 

「させない! リオ! あくのはどう!」

『はっ!』

「コジョンド! はどうだん!」

『しっ!』

 

 しかし、リオとコジョンドは、はどうだんとあくのはどうでじこさいせいを妨害する。

 

『うわあああ!』

 

 攻撃をもろに浴びたランクルスはふらふらの状態で立っているのがやっとの様子だ。

 

 “おおっともうすでにランクルスは満身創痍かァー!”

 

「あわわ、ランクルス! きあいだま!」

 

 コイシはきあいだまを指示する。

 

「これで終わり! リオ! 神速のきあいパンチ!」

 

 しかしランクルスに攻撃をさせる前にリオは必殺の一撃を叩き込む。

 

『がはっ!?』

 

 リオの攻撃を受けたランクルスはフィールドの外まで吹き飛び、そして目を回して倒れる。

 

「ランクルス、戦闘不能! よって勝者、メイ、Mペア!」

 

 審判より勝者宣言がなされる。

 

 “ランクルスも戦闘不能! よって優勝者はァー……メイ選手、M選手ペアァー!!”

 

 ウワァーッ! と歓声が上がる。ふうう、勝ったあ。危なかったぜ。みらいよちがコジョンドを狙っていたらまた結果は違っていただろう。

 

「戻って、ランクルス、よく頑張ったね」

 

 コイシが倒れたランクルスをモンスターボールに戻す。私とMもリオとコジョンドをボールに戻す。するとフィールドの反対側からサトリとコイシが近づいてくる。ん? なんだろう?

 

「私たちの負けです」

「ああ、悔しいなあ」

 

 サトリとコイシの表情は言葉とは裏腹に晴れやかだ。

 

「ですが、いいバトルでした」

「でした!」

 

 そういってサトリとコイシは右手を差し出してくる。

 

「確かにね、いいバトルだったよ」

「そうね、それには同意する」

 

 私とMは握手に応じてサトリとコイシと手を重ねる。

 

 “すばらしいバトルを見せてくれた各選手に是非拍手を!”

 

 その様子を見て観客からは健闘をたたえる拍手が巻き起こっている。おお、なんか恥ずかしいな。手を離し周りを見てみると、何かの準備をしている係員の姿が見える。何の準備だろう? そんなことを考えていると係員がきて、

 

「メイさん、Mさん、準備ができましたのでこちらへ」

 

 私とMは係員の案内に従って表彰台の上に登る。サトリとコイシを含めたこの大会の参加者たちは後ろで一列に並んで私とMを見ている。

 

「これより表彰式を始めます」

 

 そうしてこの大会の主催者から優勝の証であるプレートが渡される。渡されたプレートを掲げるとワァーッ! と歓声が上がる。いやあ、小さい大会でどんなものかと思っていたが意外と面白かったな。

 

 “それではすばらしいバトルを見せてくれた選手のみなさんに今一度大きな拍手を!”

 

 実況の一声で会場に拍手の音が満ちる。しばらくその状態が続いたあと、拍手が収まり、閉会式が開かれる。主催者より閉会宣言がなされ、この大会は私とMの勝利で終わった。

 




ありがとうございました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。