ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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今回は時間が飛びまくります。
それではどうぞ。


2話 出会いと初バトル

 今日はお母さんと二人でサンギ牧場に遊びに来ている。なだらかな平原に黄色い体毛がもふもふの羊のようなポケモン、メリープがたくさんいる。

 

「ほらみてメイ。メリープがたくさんいるわ。かわいいわねぇ」

 

 お母さんが言う。

 

「ほんとだ! かわいい!」

 

 精一杯こどもっぽく返す俺。この子供っぽくするのも慣れたものだ。

 

「さわってみるかい?」

 

 すると牧場のおじさんがこのように言うので遠慮なくもふもふする。ふわぁ……すげぇ気持ちいい。俺がメリープの毛を堪能しているとお母さんが俺ごと抱きついてくる。

 

「「もふもふ~」」

 

 二人でしばらく堪能する。そして離れると俺は牧場の奥に何かがいるのを発見する。

 

「ねぇ、あっちのほうに何かいるよ」

 

 そう言って俺は見えた方向に走っていく。

 

「あ、こら待ちなさい!」

 

 お母さんもついてくる。見えたものに近づくと特徴的な青と黒の体躯が見えた。はもんポケモンのリオルだ。だがどうやらけがをしているようで苦しそうにしている。

 

「ママ、リオルがけがしてる」

「たいへん! 様子をみせて!」

 

 すぐに状態を確認するお母さん。

 

「おじさん、きずぐすりはある?」

「すぐにもってくる」

 

 そう言っておじさんは走っていく。

 

「応急処置をしたらポケモンセンターにつれていくからメイもついてきなさい」

「うん、わかった」

 

 そう言うとお母さんはリオルをかかえて駆けていく。俺はそれについていく。それにしてもここじゃ珍しいはずのリオルに出会えるとは思わなかった。それになぜけがをしていたのだろうか。……まあ考えてもわかるわけないか。

 そういえばリオルといえば波導の力だ。たしかゲンというひとがリオルの進化系であるルカリオといっしょに修行して波導の力を使っていた気がする。ひょっとしたらリオルと一緒に修行すれば波導の力が使えるようになるかもしれない。なんかわくわくしてきた。さっそくリオルと仲良くなるために看病に精をだすとしよう。この感じだと打算的だが単純にポケモンと仲良くなりたい気持ちもある。

 

「行くわよメイ」

「はーい」

 

 さあポケモンセンターに行くか。

 

 

 

 

 

 現在、俺はポケモンセンターのリオルの病室にいる。リオルの病状が気になるからわがままを言って今日はポケモンセンターに泊まることにしてもらった。この世界のポケモンセンターはトレーナーたちの宿泊施設も兼ねていてトレーナーでなくともお金さえ払えば一般客でも泊めてもらえるのだ。しかも格安で。その分各種サービスと食事は有料だが。ちなみにトレーナーたちはすべて無料でサービスもいい。いったいどこに財源があるのか不思議だ。

 

『アウ、ウウウ……』

 

 おっとどうやらリオルが目を覚ましたようだ。

 

「こんにちは、リオル。体は大丈夫?」

『アウ?』

「はじめましてだな。俺はメイっていうんだ、よろしく」

『アウ』

 

 リオルは俺にすり寄ってきた。

 

『ウウ~ン』

 

 なんだこのかわいい生物は。ハッ! やばいやばいあまりの可愛さにけが人であることを忘れて抱きつくところだった。どうやら俺に助けられたと思っているようだ。まあそれは今はいいとりあえずお母さんかジョーイさんを呼ぼう。するとちょうどお母さんとジョーイさんが入ってきた。

 

「あら、目が覚めたのね、よかったわ。けがもたいしたことはなかったみたいだし」

「それにしてもずいぶんとメイちゃんになついているみたいね」

 

 ジョーイさんが言う。これはひょっとして頼めば飼ってもいいと言われるフラグじゃないか? さっそく実践だ。

 

「ねぇママ、このリオル飼いたいな。ねえいいでしょ?」

「うーん。そうねぇ……メイがちゃんとお世話できるって約束できるならいいわよ」

「ほんと! 約束する! やったあ!」

『アウ!』

 

 まさかほんとに飼ってもいいことになるとはな。

 

「じゃあこれからあなたはリオね。これからよろしくリオ!」

『アウアウ!』

 

 こういうわけでリオはうちのポケモンになった。

 

 

 

 

 

 リオがうちにきてからもう5年がたった。今では私はトレーナーズスクールの小学3年生だ。私の一人称はうっかりお母さんの前で俺と言ってしまったため、矯正された。

 相変わらず学校は前世の知識があるためポケモンの授業以外退屈だがうれしいことがあった。リオが来てからリオといっしょに続けていた波導の修業が実を結んだのだ。相手に触れているとき限定だがポケモンのいうことがわかるようになったのだ。初めてリオのいうことがわかったときは思わずリオを抱きしめて叫んでしまった。そのあとお母さんに怒られたがそんなことがどうでもよくなるくらいにうれしかった。ちなみにはじめて理解した言葉は『どうしたの?』という疑問だった。

 

 キーン、コーン、カーン、コーン

 

 よし今日も授業が終わったさっそくうちに帰ろう。実は4年前からリオといっしょにポケモン合気道というものを習っている。なんでも人間とポケモン両方に通じる合気道らしい。格闘タイプのリオにとっても私にとってもいい修業になっていると思う。

 

「ただいまお母さん、リオ」

「おかえり~」

『ガウ』

「さあ今日も合気道教室にいこうリオ!」

『ガウガウ』

「気をつけていってらっしゃい」

「はーい」『ガウ』

 

 このとき私たちはあんなことがおきるなんて想像もしてなかった。きっと理解していなかったのだ、この世界にも悪い奴らがいるということを。

 合気道教室の帰り道のことだった。

 

「ふう、今日も疲れたね。リオ」

『そうだね』

 

 手をつないでリオと話していると草むらの影から声が聞こえる。

 

「へへへ、今日は収穫アリだな」

「そうだな、まあガキ相手だから楽勝だったな」

 

 こいつらもしかしてプラズマ団か? だとするとまずい。今は私とリオだけ。格好の標的だすぐに逃げないと。

 

「おっと待ちな」

 

 くそ、見つかった。このまま逃げられるか。私の行く手をプラズマ団に阻まれる。

 

「逃がさないぜ」

 

 そして後ろもプラズマ団にとられる。しまった、はさまれた。こうなったら戦うしかない。

 

「リオ戦うよ!」

『うん!』

「我々はプラズマ団、ポケモンの解放のためお前のポケモンを奪わせてもらうぜ。いけ、ホイーガ!」

 

 ホイーガはタイヤのような姿をしたまゆムカデポケモンだ。

 

『イーガッ!』

「でてこい、ミルホッグ!」

『ミルホ!』

 

 ミルホッグは二本足で立つネズミのような姿をしたけいかいポケモンだ。くそ2対1だけできついのにホイーガはリオが苦手などくタイプだ。

 

「いくぜ、ホイーガ、ころがるだ!」

『ホーイ!』

「ミルホッグ、かみつく!」

『ホッグ!』

 

 リオに前と後ろから攻撃がせまる。

 

「リオ、ジャンプしてよけてそのままミルホッグにはっけい!」

『リオッ!』

 

 指示通りにリオはジャンプし前後から迫る攻撃をよける。するとホイーガとミルホッグが衝突したがいにのけぞりその状態のミルホッグにはっけいという掌底が当たる。

 

『ホイッ!?』

『ミルホッ!? グ!?』

「おいなにやってんだ!」

「そっちこそ!」

 

 たがいのポケモンが衝突したことでもめるプラズマ団の二人。今がチャンスだ。

 

「連続でミルホッグにはっけい!」

『リーオッ!』

 

 指示を待つミルホッグにリオの流れるような連続のはっけいが襲い一気に瀕死状態になる。

 

『ミルホ……』

「うお! おいしっかりしろミルホッグ!」

 

 やられたミルホッグをみてうろたえるプラズマ団の一人。

 

「なにやってんだバカめ! ホイーガどくばりだ!」

『ホイーガッ!』

 

 もう一人のプラズマ団の指示をうけてホイーガからどくばりが飛んできて、ミルホッグをたおして隙だらけだったリオに直撃する。

 

『アウゥ!』

「リオ! 大丈夫!?」

『アウ!』

 

 リオはまだやれるとばかりに元気に返事をする。

 

「ちっ! ホイーガころがるだ!」

『ホーイ!』

 

 ホイーガがリオに向かって再度ころがってくる

 

「リオ、はっけいで受け流してフェイントだ!」

『アウウ!』

 

 リオは指示通りにしようとするがうまく受け流しきれずにダメージをもらってしまう。

 

「むぐっ!」

 

 するとミルホッグを使っていたプラズマ団に私は突然口を塞がれる。

 

「へへ、おとなしくしてもらおうか」

 

 そして体を拘束される。

 

「いまだホイーガ連続でころがるだ!」

『ホーイガ!』

『アウウウ』

 

 突然指示がなくなったリオはなす術もなく連続でころがるをくらってしまい満身創痍になってしまう。

 

「むぐう(いいかげんに)むぐ(しろ!)」

 

 口を塞がれつつも私は腕をおもいっきりうしろにひいてプラズマ団の腹を肘打ちし、拘束が緩んだところを振り返っておもいっきり股間を蹴りあげる。

 

「はぐぅ!」

 

 プラズマ団の拘束が完全にとけて私はリオにかけよる。

 

「はっもう遅いぜ、ホイーガとどめだ! どくばり!」

 

 襲ってくるどくばりからリオをかばうようにリオを抱きしめる。

 

「がああっ!」

「ははは! バカめ! ポケモンをかばうとかどうかしてるんじゃないのか」

 

 プラズマ団が言う。

 

「馬鹿なものか! 家族の危機をたすけるのは当たり前だ!」

『メイ……もっと強くなりたい……メイを守れるくらいに!』

 

 するとリオの体が光り始める。そしてまばゆい光をはなちリオの姿が変わっていく。

 光が収まるとそこには胸と両手に銀色のとげを生やし大きくなったルカリオの姿があった。

 

「リオ……すごい」

 

 ポケモンの進化の瞬間をはじめてみたことで背中のいたみも忘れてリオに魅入ってしまう。

 

「進化がどうした! ホイーガどくばりだ!」

 

 プラズマ団の指示によりホイーガからどくばりが発射される。それをみたリオはこんどは私をかばうように前に出る。そしてリオはどくばりを弾く。

 

「なにい!?」

 

 どくばりをはじかれてうろたえるプラズマ団。しまった見入っている場合じゃない。背中の痛みを我慢してリオに指示をだす。

 

「リオ! メタルクロー!」

 

 するとリオはリオルだったころとは比べ物にならない速度でホイーガに接近し鋼の爪で攻撃するメタルクローを繰り出す。急所にあたったのか一撃でホイーガをたおす。

 

『がおおおーん!!!』

 

 おもいっきりさけんで威嚇するリオ。

 

「くそ! 覚えていろ!」

 

 そんなリオにビビったのかプラズマ団の一人は金的から復活したもう一人のプラズマ団と一緒に撤退していった。

 

「おわったんだ」

 

 安心するととたんに腰が抜けてしまう。

 

『大丈夫、メイ?』

 

 ルカリオになったリオが駆け寄ってくる。

 

「うん、大丈夫。ちょっと腰が抜けただけだから」

 

 腰が抜けたことから立ち直ってからリオといっしょに家路についた。

 

 

 

 

 

 あのプラズマ団が襲ってきた事件から約4年がたった。あのときはたいへんだった。家に帰ってからまずお母さんに怒られそのあとすぐにぼろぼろになった背中を見られ事情を説明するとすぐに病院に連れて行かれた。検査の結果は大したことはなかったためよかったがこういう危ないことは二度とするなと釘を刺されてしまった。

 話は変わっていまの私の容姿がBW2の主人公メイのような頭の両サイドにお団子(お団子というよりドーナツに近い)があるツインテールになった。服装も同じだ。女の子らしくおしゃれすることへの抵抗感はとうに消えうせた。まあ、男と付き合えるかと聞かれるとそれははっきりと無理だと言える。こうなったらお母さんには悪いが百合にはしるしかないな。

 

「それでですね、ぜひあなたの娘さんであるメイちゃんにポケモン図鑑完成のために協力して旅にでてほしいのです」

 

 今私の家に来て喋っているのはイッシュ地方におけるポケモン博士であるアララギ博士だ。

 ちなみに女性。

 実は私に旅に出てみないかという誘いがきたのだ。この話は私にとっては渡りに船だった。学校の授業は相変わらず退屈だから常々旅に出てみたいとおもっていたからだ。

 

「メイちゃんは幼いながらプラズマ団を撃退したという功績があります。もちろん旅には危険もありますがこちらも出来得る限りのサポートをさせていただきます」

「お母さん私、旅にでてみたい」

「うーん、そうねぇ、じゃあひとつ約束をして頂戴。けっして無茶をしないこと、これを守れるならいいわ。あなたの人生なのだからあなたの好きにするといいわ」

「ほんとに! お母さんありがとう!」

「でも時々は帰ってきてね。お母さんさびしいから」

「うん! わかった!」

「話はまとまったようですね。ところで最初のパートナーはルカリオということでいいのかしら。」

「はい! リオも私の旅についてきてくれるよね」

『(コクン)』

 

 リオがうなずく。

 

「よし、わかったわ。私は一度カノコタウンの研究所に帰ります。今度来るときにポケモン図鑑をわたします。これからよろしくねメイちゃん」

 

 アララギ博士は今回は話だけしに来たらしい。

 

「はい。よろしくお願いします」

「それではまた」

 

 そう言ってアララギ博士は出て行った。

 

「さて、じゃあ旅の準備をしなきゃね! メイ!」

「うん!」

 

 こうして私は旅にでることになった。

 

 

 

 

 

 旅にでることが決まって一カ月、トレーナーズスクールの小学課程を卒業しクラスのみんなに旅にでることをいい別れを告げてきた。これで旅に出る準備が整った。あとはアララギ博士がくるのを待つだけだ。そしてアララギ博士が来る。

 

「ハーイ、こんにちはメイちゃん。おまたせしたわね。はい、これがポケモン図鑑よ」

「ありがとうございます」

 

 お礼を言ってポケモン図鑑をアララギ博士から受け取る。

 

「あとライブキャスターに私を登録しておいてほしいの。いいかしら」

 

 アララギ博士が言う。

 

「もちろんです!」

「よしこれで登録できたわね。何かわからないことがあったら遠慮しないで聞いてね」

「はい!」

「いよいよなのね……。メイ、タウンマップは持った? なにか忘れ物はない?」

 

 お母さんが心配するように言う。

 

「もうお母さんたら、昨日さんざん確認したじゃない、大丈夫だって。」

「そう、だといいけど。いい? 寂しくなったらいつでも帰ってきていいのよ。ここはあなたの家なんだから」

「うん。ありがとうお母さん。それじゃあ、いってきます!」

「いってらっしゃい!」

 

 こうして私は長い旅路の第一歩を踏み出したのだ。

 

 

 

 

 

 数日後 カノコタウンのポケモン研究所にて。

 

「ハーイ、待っていたわよ。ヤングガールにヤングボーイ」

 

 そう言うアララギ博士の前には4人の男女トウヤ、トウコ、ベル、チェレンがいた。

 

「もしかしてもうバトルはしてきたのかしら?」

「「「「はい」」」」

 

 4人が返事をする。

 

「そうなのそれはいいわね。さて、あなたたちを見込んで大切な話があります。」

 

 そう言ってアララギ博士は4人にポケモン図鑑をわたす。

 

「実はあなたたち以外にもう一人図鑑の完成のための協力者がいます。その子はヒオウギシティ出身のメイちゃんといってあなたたちより年下ですがすでに優秀なトレーナーです。

 もし旅の途中で出会ったら仲良くしてあげてください」

「へえ、どんな子だろう」

 

 トウコが言う。

 

「優秀か、一度バトルしてみたいな」

「アララギ博士がいうんだからすごいんだねきっと」

「(もしかして俺と同じ転生者か?)」

 

 上から順にチェレン、ベル、トウヤが言う。

 

「どうかしたトウヤ?」

 

 トウコが問いかける。

 

「いや、なんでもない。おれたちより年下なんてすごいよな」

 

 するとトウヤが答える。

 

「ほんとにね~」

 

 ベルもすごいね、というように言う。

 

「さて、つぎはポケモンのゲットの仕方を教えるわ。ついてきて」

 

 こうしてカノコタウンの4人の冒険者にメイのことが伝わったのだった。

 

 




ありがとうございました。

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