ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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どこかに話のネタになるものが落ちてませんかね。
それではどうぞ。


10話 成果と前の持ち主

 皆の修業を開始して約数週間、成果は上々といったところだろう。

 まずはリオだが、きあいだま、きあいパンチはもちろん、しんそくやりゅうのはどう、インファイトまでも覚えた。結構技を覚えたな。だがしかし、まだまだ覚えてほしい技はたくさんある。ま、それはおいおいだな。

 あとしんそくとほかの技との同時使用についても習得させた。実戦が楽しみになるような出来だから大いに期待できる。

 ついでに言うとこの世界にはゲームにあった優先度は存在しない。このことは幼いころテレビでポケモンバトルを観戦している時に疑問を持ち、さらに間近でリオのきあいパンチを見て確信した。ゲームではきあいパンチは優先度がマイナスという素早さに関係なく後攻になる技だったのだが、そもそもこの世界にターン制なんてものは無く、自由に技をだせる。まあ、難しいことは置いといて、とにかく優先度なんか関係なく技を使えるということが重要なわけだ。

 きあいパンチを例とするときあいパンチはこの世界においてはただの強いパンチだ。しかも格闘タイプで一番強い。このようにほかの優先度がマイナスだった技も自由に使えるようになっているはずだと考えられる。

 逆に優先度がプラスだった、つまりゲームにおいては素早さに関係なく先攻できた技は少しゲームの影響が残っているのかはわからないが、ポケモンの出せる通常の速度を上回る速度で攻撃できるようになっている。

 次にカティだがしんそくとフレアドライブの同時使用は完全にものにした。しんそくとほかの技との同時使用も同じく可能になった。あとは実戦で試すのみである。あとは技のレパートリーも増えればより良い。

 余談だが、しんそくと他の技の同時使用を指示するときは神速の○○という風に言うと言っておいた。

 次にユウヒだが、新たにほうでん、ひかりのかべ、かみなりを習得した。順調にレベルが上がっていっているようでなにより。あとしんそくも現在習得中である。しかしボルテッカーは未だ習得できる気配を見せない。やはりゲームのように条件を満たしてないと無理なのか。だが、もしかしたらユウヒの親がでんきだまと言うボルテッカーを覚えるために必要な道具を持っていたかもしれない。ユウヒの種族、ピカチュウがボルテッカーを覚える詳しい条件はまた今度説明する。

 最後にイヴだが、新たにとっておき、あさのひざし、パワースワップ、サイコショック、めいそう、リフレクター、ひかりのかべを習得した。サイコショック、めいそう、リフレクター、ひかりのかべはイヴがレベルで覚える技ではないが、私が技のイメージを伝えると簡単に覚えてしまった。イヴはひょっとしたら私のポケモンの中で一番才能があるのかも知れない。

 サイコブーストについては本来覚えることができない技なのでやはりというか習得できていない。イヴに聞いてみても全くできる気がしないとのこと。うん、まあこの結果は当然といえるだろうな。どうしてこんなことをさせようと思ったのだろうか。ゲームでできないことを無理やりやらせようとするなんて。イヴには悪いことをしてしまった。あとで謝っておこう。

 まあこんなところか、この数週間の成果は。そして現在ポケモンセンターにて昼飯時、私は皆と一緒にご飯を食べていた。

 

「ねえ、ユウヒにイヴ、そういえば一体全体誰に捨てられたの?」

 

 ユウヒとイヴに聞きたかったことを聞いてみる。

 

『む、そのことか。それはこの街にいる金持ちのボンボンだ。そいつの名前はカルチャ。最初の頃は俺とイヴのことを大事にしてくれていたが次第に俺たちの弱さがわかってきて興味が強いポケモンに移っていって次第に相手にされなくなっていって最終的には捨てられた、というわけだ』

 

 強いポケモンに興味が移るねえ、まあ気持ちは分からなくはないけど捨てるっていうのはいただけないよね。

 

「ふ~ん、そうなんだ。あ、ねえ、イヴはカルチャって奴と会ったとき嫌な予感みたいなのはあったの?」

 

 イヴの特徴ともいえる未来予知レベルの勘についても訊いてみる。

 

『うん。確かにあったよ』

 

 どうやらあった様子。

 

「へえ、そう。あとその嫌な予感って今でもあるの?」

 

 その勘が今でも有効なのか訊いてみる。

 

『うん戦闘時から普段の生活までバッチリと』

 

 イヴの勘は種族の特性ではなくイヴ固有の能力っぽいな。あと確かめてみたがイヴの特性はマジックミラーだった。これは確定している。

 特性というのはすべてのポケモンに備わっている種族固有の能力のことだ。

 リオの特性はふくつのこころといって相手の攻撃によってひるむたびにすばやさが上がるというものだ。これはリオにいたずらして驚かせた時にリオが普段よりも素早く動いたのでリオにその訳を聞いてみると力が湧いてきたというのでおそらく確定だろう。ひるむのと驚くのは少し違うと思うのだが、まあ、特性がわかったので良しとする。

 カティの特性はもらいびといって炎タイプの技をくらったときにダメージを受けず逆にこちらの炎タイプの技の威力があがるというものだ。カティに聞いてみたところ、仲間内の喧嘩で炎の技をくらったときにいつもより強い炎を出せたと言うのでこれも確定。

 ユウヒの特性はせいでんきといって接触技を受けた時に相手を確率でまひさせるというものだ。ユウヒの特性は修業中に発覚した。

 そしてイヴのマジックミラーは一部の変化技をはね返すことができるかなり強力な特性だ。イヴの特性はユウヒにでんじはを撃ってもらって確認した。

 

「ねえ、ユウヒにイヴ、そのカルチャってやつに思い知らせたくない? 私たちはこんなに強いんだぞって」

 

 ポケモンバトルは単純なポケモンの強さだけではない、トレーナーの腕もバトルでは重要なのだ。

 

『え、でも、できるのか? 相手のポケモンは相当なもんだぞ』

 

 いくらポケモンが強くてもトレーナーの腕が悪ければ負けることなんてざらにある。

 

「大丈夫だって、いくらでもやりようはあるから。それにあなたたちも今までの修業で強くなったしね。だからやってみない? ソイツの鼻を明かしてやろう!」

 

 だからおそらくポケモンの強さばかり追い求めているようなやつには負けない。

 

『うーんそこまで言うなら、いいだろう、やってやろうじゃないか』

「ユウヒはオッケーね。イヴは?」

『わたし? うーん、まあいいよ。わたしもやる』

「よっしゃ、決まりね。それと、イヴ、ごめんね。あなたに無理をさせて」

『え? なんのこと?』

 

 イヴは不思議そうに首を傾げる。

 

「サイコブーストのこと。この技はホントはあなたには使えない技だったんだ。それを無理やりあなたに使わせようとした。だからそれを謝ろうと思って」

 

 前世での叶わなかった願望を引きずっていたのかもしれない。要反省だな。

 

『そうなんだ。別にいいよ。気にしてないし。でも今後はそういうことは無いようにしてよね』

「うん。わかった。ありがとう許してくれて」

 

 そうして昼飯を終わらせて、ユウヒの案内にしたがってカルチャの住んでいるマンションに行く。そしてマンションの入り口に到着し、カルチャの部屋のベルを鳴らしカルチャを呼び出す。

 

「こんにちは~、カルチャさんですか~?」

 

 間延びした口調でカルチャに話しかける。

 

「いかにも僕はカルチャだが、なんだ君は?」

「えっと~、実はここにカルチャさんっていうとっても強いトレーナーさんがいるって聞いて、胸を貸していただければと思いまして~」

「ほう、そうかそうか強いトレーナーか。確かに僕は強い。いいだろう稽古をつけてあげようではないか。少し待っていたまえ。今準備をしてくる」

 

 おそらくこちらを映すモニターがあるはずだ。鼻の下が伸びているのが手に取るようにわかる。ちょろいな。さすが主人公の肉体だ。美少女度では誰にも負けないぜ。

 

「待たせたね、ところで君の名前を教えてもらってもいいかな」

 

 するとタキシードを着てばっちり服装をきめてきたカルチャが下りてきて私に尋ねてくる。

 

「メイです~。今日はよろしくおねがいします~」

「さて、ではさっそくバトル場のあるところに行こう。バトルカンパニーでいいかな」

 

 カルチャが提案してくる。

 

「はい~おねがいします~」

 

 道中、カルチャの質問を適当にあしらってバトルカンパニーに着く。

 

「さて、着いたぞ。ではさっそくバトルといこうか、メイちゃん。おい、今からバトルをする。だれか審判を頼む!」

 

 バトルカンパニーにはバトルをするための施設があり、そこにいる人たちはほとんどがトレーナーで日夜バトルに励んでいる。

 カルチャに言われて一人の人が渋々バトルの審判を務めようと出てくる。この様子を見るとカルチャはここの人たちにあまりよく思われていないらしい。いいね、そのほうが叩きがいがあるというものだ。

 

「さてどういう風にバトルをする? 生憎今は2体のポケモンしか持ってきていないのだがそちらはどうする? まあ何体出しても結果は変わらないと思うがね」

 

 はっ、言ってろ。その自信満々のツラ、正々堂々と真正面から叩き潰してやるぜ。

 

「いえ、ならこちらも2体まででお相手させてください」

「そうか、君がそう言うのなら仕方がない。全力でかかってきたまえ」

「ではこれよりヒオウギシティのメイ対ヒウンシティのカルチャのバトルを始める。両者位置について、始め!」

「いけ! ローブシン」

 

 そういってカルチャが繰り出してきたのは赤い大きな鼻が特徴のきんこつポケモン、ローブシンだ。

 

「イヴ! Start the Struggle!」

 

 そういって私はイヴをバトルフィールドに出す。するとイヴが珍しいのか周りから感嘆の息が漏れる。

 

「ほう……」「珍しいポケモンだ」「かわいい!」

 

 ふふーん、どやぁ、ええやろ。こんなに可愛くて強いポケモンなんてそうはいないぜ。私もほんとにいい拾い物をした。

 

「先制はそちらに譲ろう。遠慮なくかかってきたまえ」

 

 カルチャが余裕を見せる。そっちがその気なら遠慮なくいくぜ。

 

「イヴ! めいそう!」

『……』

 

 イヴはローブシンのほうを静かに見つめながらも己の中の力を高める。

 

「んん? 何をしている? こないならこちらから行くぞ? ローブシン! アームハンマー!」

『うおお!』

 

 ローブシンが持っている石柱を思いっきりたたきつけようとしてくる。

 

「イヴ! リフレクター!」

『はあっ!』

 

 ガキインという音をたててリフレクターによってできた半透明の壁に阻まれローブシンの攻撃はイヴにほとんどダメージを与えられない。

 

「なにをやっているローブシン! ばくれつパンチだ!」

『おおお!』

 

 ローブシンは今度は石柱を握りしめて強力なパンチを繰り出してくる。

 

「懐に飛び込め! イヴ!」

『うん!』

 

 イヴは小さな体を生かしローブシンの強力なパンチを懐に潜り込むことで回避する。

 

「そしてサイコキネシスで上空からたたきつけろ!」

『はあ! せい!』

 

 イヴは巨体のローブシンを浮かせて地面に何度もたたきつける。

 

『ぐふ! がは!』

「おいおいなにをやっているんだローブシン! そんな弱そうなのとっととやっつけろ!」

 

 サイコキネシスから逃れたローブシンはがむしゃらに石柱を振り回してくる。

 

「イヴ、リフレクターが切れるまでめいそうを続けなさい」

 

 しかし、ローブシンの攻撃はガキンという音をたててリフレクターで弾かれる。そうしてリフレクターがなくなるまでイヴはめいそうを続ける。

 

「くそが! ローブシン! なにをしているこの馬鹿が! いわなだれ!」

 

 カルチャが業を煮やしてローブシンを罵倒する。それでもローブシンは指示に従い虚空から多数の岩を呼び出しイヴに殺到させる。

 

「もう遅い、イヴ、サイコショックで岩を破壊しなさい!」

 

 イヴは多数の光る球状の物体を呼び出し、いわなだれの岩にぶつけることで粉砕していく。

 

「とどめだ、イヴ、サイコキネシス!」

『はあっ!』

 

 イヴの目が青く光り、ローブシンをサイコパワーが捉え、先ほどと同じようにローブシンを宙に浮かせて吹き飛ばす。そしてローブシンは壁に激突し、目を回して倒れる。

 

「ロ、ローブシン戦闘不能!」

「なんだと! おいローブシン、立て! まだいけるだろ!」

 

 カルチャの声もむなしくローブシンは立ちあがらない。

 

「くそっ! 使えない奴だな。おいそこのお前、このローブシンをくれてやる。とっととどこかへ行ってしまえ! この雑魚が!」

 

 そういってギャラリーの一人にローブシンをモンスターボールに入れて投げつける。どこまで性根の腐った野郎なんだ。ここまでひどいとは思わなかったぞ。

 

「ゴホンッ、みっともないところを見せてしまったね。あまりにもふがいない戦いをしていたのでね」

「違うだろ」

 

 私は呟く。

 

「ん? なんだい?」

 

 カルチャは私の呟きに反応する。

 

「違うっつってんだろ! ローブシンが負けたのはローブシンのせいじゃない! カルチャ! あんたの責任だ!」

 

 私はカルチャを指差し物申す。

 

「なにを言っている? 僕の指示は完璧だったではないか。なぜ僕の責任になるんだ。僕の指示に従えないローブシンがいけないのだろう」

 

 カルチャは悪びれもせずさも当然のように言う。

 

「それ、本気で言ってんのか?」

 

 私は呆れ果てながらカルチャに問う。

 

「ああ、いたって本気だが?」

「そうか、よくわかった。あんたには何を言っても無駄だっていうことが。思い知らせてやるよ、ポケモンの強さだけがバトルの強さにはならないってことをな!」

 




ありがとうございました。

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