ハヤテside
「しっかしまぁ・・・世の中にも酷い親ってのはいくらでもいるもんだ。自分たちが博打で作った借金の返済に自分の息子を売るなんてよ・・・こんな親、もう人として最低だな」
目つきの悪いチワワを持つ、ヤクザの皆さん三人組のリーダー格がそんなこと言っている。うん、確かに同感なんだけど・・・
「まったく・・・日本はどうなっちまうんですかね~」
「ホントホント、売られる子供の身にもなれって話ですよね」
「ま、それでも買うんだけどな」
・・・買うのか~。乗ってみたけど無理っぽいな・・・そういや僕、今ゾンビだけど臓器とか取り出しても無事で済むのかな・・・ユーのおかげで楽しめた束の間の幸せは終わりをつげ、不幸マッシグラな少年(僕)を乗せ、ヤクザの車はひたすら走る・・・
「オラ、着いたぞ。さっさと降りろ!」
僕が下ろされたのは、港の倉庫街だった。
「あの・・・もしもし?ここは一体どこ何で?」
「あ~ん?病院だ」
絶対嘘だ!不味いな・・・いくらゾンビと言っても、さすがに臓器を奪われるのは・・・ど、どうにか早く逃げなくては・・・
「そう心配しなくても別に殺そうって訳じゃねェよ。取れる臓器取ってお前を外国に売るだけだからよ」
それは殺されるより酷いのでは!?よし、逃げよう。
「あ~、僕、急に用事を思い出しちゃった。と言う訳で帰ります!」
「待ちやがれこの野郎!」
「またあの足の速さで逃げる気だな!」
「逃がすか!」
すると右目に傷がある男・・・確か柏木さんが日本刀を構え、僕に振りかぶる。結果、左脚が切断され僕は倒れ込む。
「これで逃げれないだろ」
「心が痛むがしょうがないな。大体テメェの親が悪いんだろ!金が無いなら体で払え!」
「大丈夫、肺も肝臓も心臓も二つあるからよ♪」
僕の心臓は一つしかありません!
「と言う訳だから金が無い奴はとっとと売られろ!」
「嫌だー!そんなアバウトな臓器の数え方している人に売られたくなーい!誰か助けてー!」
三人が迫り、僕が思わず叫んだその時。
シュッ!グサッ!
「うおっ!?」
リーダー格の男の額に『私参上!』と書かれたメモが突き刺さり、僕が振り向くとそこには・・・
『助けてあげる、下僕』
と書かれたメモと僕の左脚を持った、足元にジュラルミンケースを置いたメイド服姿のユーがいた。・・・でもそれはどうかなぁ・・・
ユーside
間に合った・・・と思ったら左脚が転がっていたから回収した。同時にメモを投げ、一番偉そうな男の額に投げつける。
『助けてあげる、下僕』
と書いたメモを見せたら、ハヤテは微妙な顔をした。ま、そうだよね。すると傷をつけた男が私を睨みつける。
「誰だ、お前は?」
『お前たちのような馬鹿に名乗る様な名前は無いけど・・・私は綾崎悠。綾崎ハヤテの双子の妹・・・ということにしておいて』
「こいつの妹だと?聞いてないぞそんなこと!」
『そりゃ、私が勝手に名乗っているだけだから』
「おう、お嬢ちゃんヤクザ嘗めてると・・・」
『五月蠅いハゲは黙ってろ。私は今、ハヤテと話がある』
リーダー格が五月蠅かったのでそんな風に書いたメモを見せると、「ハ・・・ハゲ?俺はハゲているのか・・・?」などと落ち込み、「大丈夫っす!兄貴はハゲてないっす!フサフサっす!」ともう一人の空気薄い男に慰められた。
『私はナギから頼まれてきた。伝言。「さっきは怒鳴ってごめんなさい」それと貴方が絵日記と言ったノートの中身は「世紀末伝説マジカル☆デストロイ」という漫画。どんなに下手糞でも絵日記ではないらしい』
「あ、そうなんですか」
『それと、はい貴方の足』
「どうも」
そう言って私が投げた左足を受け取り、くっ付ける。それを見た傷を付けた男…柏木は大いに驚いた。
「いや、普通にくっつけているんじゃねぇよ・・・というか、ヤクザ嘗めんじゃねぇって言ってんだろ!」
「・・・」
そう言って柏木が日本刀を振るってきて、私は瞬時にペンを鎌にして受け止める。・・・こいつ、かなり強い・・・私は日本刀を受け流して鎌をペンに戻してメモ帳に字を書き、ハヤテにメモを投げつける。
『・・・ハヤテ、分かったならこれからもあの家で執事を続けろ。その方がナギも嬉しい、私も助かる』
「・・・はい」
私の書いた言葉に頷くハヤテ。私は無表情の顔で微笑み、再びペンを鎌にして斬りかかってきた柏木を受け流す。
「そうは行かねぇに決まってんだろうが!」
そう叫びながらハヤテを掴み、借用書を見せてくるリーダー格。
「こいつにはこれだけ貸しがあるんだ!この借金がある限りコイツは俺らの物ってことだ!」
「・・・」
「うおっ!?」
私は無言で鎌を使って日本刀を絡め投げ飛ばし、ペンに戻して書いたメモを突きつけ睨みつける。
『そんな違法金利の紙切れが何?黙れと言ったのが聞こえなかったの、ハゲ』
「こ、この餓鬼・・・」
うーん、一言喋ればそれで済むんだけどな。でも頭痛は勘弁だし・・・さっさと借金を返せばいいんだけど、タイミングがなぁ。・・・するとハヤテが私の前に立ちはだかった。
「ぼ・・・僕の命に代えてもこの人には指一本触れさせない!」
い、言うね・・・少しときめいたじゃん。だけど次の瞬間、ハヤテはリーダー格に顔面を蹴り飛ばされた。
「貧乏人が偉そうなこと言ってんじゃねぇ!」
「げふっ!?」
続けて他の二人からもボコボコにされるハヤテ。ゾンビだけど痛いものは痛いよね。
「テメェの命なんか最初から俺たちの物じゃねぇか!」
「あっご・・・ごめっ」
いや、それは違うよ。生き返らせた時点で私の物。
「金のない奴が人並みに喋ってんじゃねーよ!」
「ごめんなさいっ!」
それは酷くね?私なんか頭痛がするから喋れないんだよ?
「人間扱いしてほしかったらなぁ・・・!今直ぐに一億五千万!全額返済して見せろや!」
お、いいタイミング。私はジュラルミンケースを持ち上げ、地面にぶつけると全員こちらを向いた。
『してあげる』
「あっ?」
『全額返済』
そしてジュラルミンケースを開くと、札束の山が出てきた。ナギから受け取った物だ。
「ま、まさか・・・全部本物か?」
『当然。全て、ハヤテの今の職場・・・三千院家が払ったもの。それぐらい分からないなら貴方は馬鹿者。これで文句はないでしょ?』
「・・・」
『それに私が助けたからハヤテは私の物。貴方たちの物ではない、私の下僕だ。分かったのなら帰れ』
私がそう書いたメモを見せると、リーダー格は札束を持って押し黙り、静かに告げる。
「・・・・・・おい、そいつを・・・綾崎ハヤテを放してやれ」
「えっ!?いいんすか、兄貴!」
「金を払わない奴には容赦しない。だが払えば客だ。手を出さねーよ・・・」
そう言ってジュラルミンケースに札束を積めて閉め、持ち上げるリーダー格とそれに続く二人のヤクザ。何かかっこよく見える。
「今度はアンタがそいつ・・・いや、天下の三千院家からこの金を返してもらうんだな」
そう言って、三人のヤクザは車に乗り去って行った。・・・まあ、悪人じゃないか。それならいいや。
『足は大丈夫?』
「ああ、はい。ゾンビだからか普通に戻りました。ありがとうございます」
『そう。それはよかった。じゃ、帰るぞ下僕。貴方はナギに仕えることになるかもしれないけど忘れるな』
「え?」
ハヤテは疑問符を浮かべ、私は笑みを浮かべ口を開く。
「お前は私の下僕だ」
「は、はい・・・」
どうやら私の声に聞き惚れたようで、ハヤテは呆然とする。私はそんなハヤテをどつき、共に三千院家に戻って行った。
ここからが、私の物語の始まり。面白くなりそうだ。
意外と強い柏木さん。多分、実力行使専門だと思うのでこうしてみました。ユーはめちゃくちゃ強いです。そして「ハヤテは私の物」宣言。好きとかそう言う分けかはまだ決めていませんが。
次回はVSエイト。原作よりも激戦にするつもりです。お楽しみに?