実はユー、ハヤテに劣らない実力(メイド的な意味で)を持っています。そして原作では現在99%空気になっている執事長、クラウス登場です!
「・・・新しい執事とメイド?」
今私は、カイゼル髭と眼鏡が似合う執事服の男性、クラウスさん(本名はくらうすせいしろうというらしいが漢字がややこしいので忘れた)と、マリアさんと一緒に会っていた。いうなれば、綾崎兄妹の代表だ。ハヤテより私の方が説明しやすいだろう。
『そう。綾崎悠。よろしくお願いします』
「ふむ、メイドの方は礼儀正しい様ですな。で、ナギお嬢様が?」
「はい、お雇いになると・・・どうします?クラウスさん」
「うむぅ・・・執事長としては姫神の後任が欲しいところではあるし、お嬢様が心を許せる使用人が増えるのは嬉しい事なのだが・・・どんな男なのだ?その、綾崎ハヤテという少年は・・・」
「ええっとですね~・・・ユーさん?」
マリアさんがこちらに振ってきた。まあ、原作と違って私のせいでそこまで接触していないししょうがないか。
『時速80キロで暴走する車に自転車で追いつく。そのままゴミの様に轢かれて真っ赤な血の花を咲かしながらも平気に拳で車を粉砕する。幼少時から様々なバイトを年を偽ってやっていたためにかなり家事スキルが高い。あと笑顔を出したら90パーセントの確率で女を落とす天然ジゴロで女装がかなり似合う。かなり不幸なゾンビのような男。ちなみにさっきお嬢様がハヤテの事を「ゾンビ」と言ったのも、それが理由と思われる。それが私の双子の兄、綾崎ハヤテ』
「「・・・(ポカーン)」」
私がそう説明(ちょこっと捏造だけどほぼ本当の事)を書いたメモを見せると、二人は言葉を失った。あれ?何か間違えたかな?
「・・・マリアよ」
「何でしょう?」
「それは一体どこのアイアンマンだ?」
「いや、見たところ一応人間ですけど・・・」
残念だけど人間じゃなくてゾンビです。そう言っても信じないだろうな・・・体が千切れても平気なところを見せる以外。
「無理だ!アイアンマンに三千院家の執事が務まらん!ユー君はいいが、お兄さんには帰ってもらいなさい!」
『そんな・・・』
「いえ、ですがナギが・・・」
「とにかく儂は明後日の夜まで戻らんので、その間にきっちり追い出しなさい!頼んだよ!」
・・・それが(主にナギのせいで)できないからこの有能な美人であるマリアさんは困っているんだろうけどね。まあ、もしもの時は私の「言葉の力」を使うから問題ないとして・・・仕事を始めますか。
私は着ている紺色のシャツとロングスカート、その上に付けている鎧と籠手を脱いで、できるだけ魔力を放出しないようにしながら渡されたマリアさんと同系統の、色違いの紺色のメイド服に着替えてその上から鎧と籠手を着ける。ふむ、普通過ぎてつまらないな・・・。まあいいか。
『どおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』
そんな風にメモに書き、私の額に張り付けた形でバタバタ動く。元アルバイターの力、嘗めないでよ!
まず銀製の取っ手はシルバーダスターを使って磨いて、銅像は真鍮ブラシで汚れを取った後薄い中性洗剤で洗浄し水気を取ってワックスで仕上げ、ウール製のキリムとかいうカーペットはお湯を使わずに冷水に頭髪用洗剤と塩を少し混ぜて色落ちしない様に気を付けて軽く・・・あと畳にお茶っ葉を乾燥させたものを巻いて箒でパッパッパッと。私がしたの以外は、既にハヤテがしているようだ。さすがアルバイター。さて、あとは・・・
『ここはどこ?』
思わずボールペンで書いてみた。この屋敷、広すぎる。これで小さいんだ・・・お金持ちの感覚は分からん。「小さく狭い方が落ち着く」とか言っていたし。というか一種の迷路だね。迷わないのがどうかしている。と、その時。
「もう出て行け――――――――――――――――――――――――――っ!」
そんなナギの叫び声が聞こえ、思わず窓から外を見てみると執事服姿のハヤテがしょんぼりした顔で門の外に締め出されていた。・・・この短時間で何をしたんだろう?そっか、確か原作ではナギの漫画(という名の人類には早すぎる代物)を絵日記だとか言って、追い出されたんだっけ。確かこの後・・・あ、言っている傍から借金取りの皆さんに連れて行かれてしまった。
「・・・」
とりあえず、さっき聞こえた声の所に向かってみよう。
「いいんですか?」
「何が?」
「ハヤテ君、本当に出て行ってしまいましたけど」
「はっ!?いやいや、私は部屋を出て行けと言っただけで屋敷を出て行けなんて言ったつもりは・・・」
「あ~」
・・・つまり、ハヤテの早とちりか。ナギ達がいるであろう部屋に来ると、そんな会話が聞こえた。どうするか・・・
「はー、外は寒そうですねー。こんな寒空の下、帰る家も無い上に妹とも別れたまま追い出されたら・・・さぞかし辛いでしょうね~~」
マリアさんがそんなこと言っているけど、寒空ぐらいじゃゾンビには効果ないと思う。むしろ元気じゃないかな?日差しが少ないし。
「わ、私は部屋を出て行けと言っただけなのだ!それなのに何を・・・大体出て行けと言われたぐらいで本当に出ていく奴がいるか!まったくあの根性なしめ!」
・・・今の言葉にはカチンときたので、私は部屋の中に入る。
『それは違う』
「ゆ、ユー!?こ、これはだな・・・ハヤテが掃除とはいえ勝手に人の部屋に入るから・・・」
『それはハヤテがどこまでも馬鹿正直なため。それだけ、貴女の言葉に忠実だったという表し。そんなことも分からないの、三千院家のお嬢様』
「ううっ・・・だが怒鳴られたって文句は言えないだろうが!」
私は思ったことを言ってとにかく罵倒する。この我儘お嬢様にはこれぐらいで十分だろう。
『ブチ切れた理由は大方部屋に入られたんじゃなく、せっかくあなたが書いた自信作である「世紀末伝説マジカル☆デストロイ」という題名の漫画を「絵日記」呼ばわりされたことだと推測するけど、それはただ単に貴方の技量が足りないから。貴方の絵のレベルじゃ漫画もお絵かきレベル、人生の苦しさを経験していない貴方じゃストーリーのセンスも皆無、それじゃあハヤテに絵日記呼ばわりされても文句は言えない』
「な、何でその漫画の事を!」
『さっき見た。マリアさんは貴方の事を思ってちゃんと言ってないようだけどきっちり言ってやる。貴方の漫画は素人以下。私の方がまだ面白いの描ける』
「なんだと、じゃあ書いてみろ!」
・・・私、生前は夏コミに普通に出品していたのだよ?その私の頭脳と、ユーの技能があれば・・・
『ざっとこんなもん』
「・・・面白い」
「まぁ、本当に」
プロには及ばないけどちょっと上手いレベルぐらいすぐに描ける。さてと、とどめと行こうか。
『そもそも大事な物をきちんとしまう癖を付けないからこうなる』
「そうですね、日頃から部屋の掃除は人任せ。着ていた服は脱ぎっ放し。身の周りのものを自分で整理整頓する癖を付けなさいと何時もあれだけ言っているのに・・・」
「マリアまで・・・分かったよ!確かに私の失態だ!・・・ところで、ハヤテは今どんな状況にいるのだ?」
『あ、それだけど・・・現在ハヤテは臓器を売られそうになっている。何故なら借金取りにまだ一億五千万の金を返してないから。つまり絶賛死の間際』
と私が書いたメモを見せると、面白い様にナギの顔色が変わった。
「・・・マリア」
「何でしょう?」
「今直ぐ、クラウスに言って一億五千万相当の現金を用意させろ!何にしてもハヤテは恩人だ、恩人を見捨てるような真似・・・三千院家の人間としてするわけにはいかん!」
『ありがとう。・・・貴方がハヤテに渡す?』
「いや、今回は私にも落ち度がある・・・。少し会い辛い、お前からハヤテに渡してくれ、ユー」
ま、言い過ぎたか。まあいい、しょうがないし。するとナギは顔を赤らめ、こう言って来た。ツンデレ乙。
「けど約束しろ。その借金は私が、三千院家が払ってやるが・・・これからは私のそばにいるということを、兄妹そろってな。・・・私が、お前たちの主人だ!」
・・・待っていたよ、その言葉。
『了解した、マイマスター。じゃあ、行ってくる』
「一人で大丈夫か?」
『・・・一つ言っておく。私とハヤテを、嘗めない方がいい。ちゃんと連れて帰って来るから安心して』
「あ、ああ・・・」
「頼みましたよ、ユーさん」
私は背を向き、彼女たちにサムズアップして部屋から出て行った。
「何者なんでしょうね、ユーさんとハヤテ君」
「さあな。それにしても私の漫画ってそんなにつまらないか?」
「はい、確かに一般的に考えてつまらないかと・・・」
「そうか・・・」
・・・気まずいなぁ・・・。
『あの・・・』
「うん?ユー、どうした?」
『迷ったから門まで案内してほしい』
ズコッ!
私が言った言葉に、ナギ達はズッコケた。
どうですかね?ナギには、もうちゃんと言ってあげた方がいいと思うのでユーに言ってもらいました。そしたらイケメンになったよどうしよう・・・まあ、これだけで上手になったら苦労はしないんですが。ユーは基本的にハヤテに近いスペックです。一応セラフィムの身体能力もありますので。問題は方向音痴ですね。
別に、三千院家に借金作ろうが作んなくても別に問題なかったので、できればハヤテには「両親から売られた借金」という重荷を外してもらいたいんです。だからあえてこうしました。
次回はヤクザの皆さん登場。あのチワワはイメージが違い過ぎて吹きますねー。お楽しみに?