今回は珍しくハヤテが登場しない代わりに、ついに彼女が登場。時間をかけたのにちょっといつもより短いですが、ご了承ください。では、どうぞ。
???side
それは、今から10年も前の昔の事。私が5、6歳の頃で両親に捨てられ、お姉ちゃんに頼るしか無かった頃だ。
「彼の様にこの子をゾンビにする訳には行かない・・・でも、どうすれば?」
私はその時重傷で、血を大量に流していて今にも死にそうだった。詳しくは覚えていないし、お姉ちゃんも知らない事だから確かめるすべもない。でも、寒くて、光が失われて行って心細かったし、か細い声の譫言で姉を呼んでいたのは覚えている。そして私は出血多量で死にそうだったところに、その人に救われた。
「私は貴方を化け物にしてしまった。本当にごめんなさい。でも、生きていてよかった」
その時の泣きっぱなしで安堵した笑顔は、きっと生涯忘れない。
ユーSide
三千院家を出た足で、私が向かうのは白皇学院。マリアさんがハヤテ達に説明していた所を聞いていたので覚えたルートを歩く。
しかし、嘗めていた。ナギ達が車や自転車で行っているのだ。道のりが遠すぎた。いくら吸血忍者の体力とはいえ、機械の力には勝てない。そんな訳で現在、道中に在った銀杏商店街の喫茶店「どんぐり」で休憩してます。
何か見覚えあるけど、気のせいだろうか。もしかしたら原作に出ていたのかもしれないが、思い出せないって事は大したことじゃないのだろうか。・・・いや、ハヤテのごとくは10年以上続く漫画だ。しかも10年経っても作中では一年も経ってないと言うある意味凄まじい時系列だ。私が初期の事を覚えていたのは、単純に買ったコミックをよく読み返していたからに過ぎない。だから、5巻以上先の話となると大きなイベントごとしか覚えてないのだ。・・・実はその五巻に当たる内容がそろそろ来るのだが、私はしっかりハヤテをフォローできるのだろうか?
そんな感じにボケーッとしていると、黒髪長身で何か黒い着物っぽい物の上に店名のロゴの入ったエプロンを身に着けた男が笑顔でやって来た。・・・客が私しかいないから、手持無沙汰なのかな?
「ブレンド、どうします?」
『おまかせでお願い』
「あら、喋らないの貴方?」
『諸事情で。貴方は?』
諸事情って言葉便利だよね。理由聞かれないで済む魔法の言葉だよ。・・・しかしまあ、女口調なのは気にしないでおこう。てかこの人思い出した、かなり出番が少ない人だ。確か名前は・・・
「私はここのマスターの加賀北斗。そう言う貴方こそコスプレかしら?」
『失礼な。ちゃんとメイドをしています』
「あらそうなの。ごめんなさいね」
そう、加賀さん。ナギが成長するために必要な場所を提供してくれる人で、底なしのいい人だ。確かホワイトデーで初登場したはずなので、割と早めの接触だ。最近、知り合う子は個性的な子ばかりで、普通にいい人なこの加賀さんは何か安心というか、拍子抜けしちゃうね。
「今度、うちでバイトしてみない?お給料はずむわよ」
『考えて置きます』
とりあえず私の名前は伝えないルートで何とか間を繋げる。・・・しかしちょうどいい。私が接触したい人と、この人は知り合いなのだ。さすがに始業式とはいえ生徒会だからお昼で終わるとは思わないし、彼女は仕事ができる完璧超人だから恐らく、昼過ぎのこの時間帯には・・・
「マスター、いるー?早めに終わったから、コーヒー飲みに来たんだけど・・・あ、客いたのね」
「あら、ヒナギクちゃん」
『どちら様ですか?』
誰もいないと思ったのかフレンドリーに鞄片手に訪れたのは、桃色の髪と黄色の瞳をした白皇学院の冬制服に身を包んだ少女。BINGO!本当は下校中に出くわして、さもありなんとばかりにナギの話題を振ろうと思っていたのだがちょうどいい。とりあえず、自然に加賀さんに聞いてみた。
「彼女は桂ヒナギクちゃん。そこの白皇学院の生徒会長様なんだけど、私の古い付き合いなの。勘弁してあげてね?」
『ヅラ?』
「"桂”よ。いきなり失礼ね。メモで書いているのもそうだけどそんなに癪に障った?」
『いえ。むしろちょうどよかった』
そうメモに書き、訝しんだ視線でこちらを睨む最強無敵の生徒会長と名高い少女、桂ヒナギクに視線をやって立ち上がる。・・・まあ、メモを書いて会話している人がいたらそりゃ訝しむよね。でもだからって構えないでください、不意打ちされたらハヤテでも無い私じゃ対処不可能だから。
『初めまして、白皇学院の生徒会長。私は綾崎悠。三千院ナギのメイドをしている』
「・・・ナギのメイド?マリアさん以外で?」
『兄と一緒に拾われた。貴方の噂は聞いてる、ちょうど探していた』
「なにか?」
『うちの兄が絶賛不登校中なんだけども理由が理由でどうにかならないかなと』
「ナギと同じなのね・・・話を聞くわ。マスター、コーヒーお願い。何時もの奴ね」
うん、やっぱりお人好しのいい子だ。私と同い年とは思えないぐらいしっかりしてる、理想のヒーロー(ヒロイン)だよね。
『理由なんだけど、一言で言えば親が糞だった。それに限る』
「具体的には?」
聞かれたので、知る限りの悪行を全部語った。・・・まだハヤテが私に話していない、「彼女」に出会うきっかけでもある父親による給食費窃盗事件もだ。それを聞き終えた(見終えたかな?)ヒナギクさんは何とも言えない表情で頭を抱えていた。
「前の学校は実質退学か・・・それは問題ね。ところで貴方は大丈夫なの?」
『むしろ行きたいけど兄に悪いから』
「納得したわ。兄想いのいい妹さんを持って幸せね、その執事さんは」
柔らかな笑みを浮かべるヒナギクさん。・・・本当、何でこんないい女を原作のハヤテはことごとくフラグをへし折ってるんだろうね!天使じゃないか!生徒会三人組に賛同する訳じゃないけど!・・・・・・はい、白状します。どちらかと言うと私はハヤヒナ派です。ナギごめんね。
「それで何だけど・・・とりあえず、うちの学校に入らせる方向で行くとして、まずは「用事」としてうちの学校に来てもらいたいの」
『まずは行きたいと思わせる事からと』
「そういうこと。せっかくそのご両親から解放されたんでしょう?だったら、今度こそ楽しまないと損よ。まずはそうね・・・ナギのお弁当を持って来させるとかどうかしら?」
『私がナギの弁当を盗んで、忘れた事にするとか?』
「やり方がちょっと納得行かないけどそう言う感じよ」
なるほど。確かにそれなら、まあ上手く行きそうだ。私としてはハヤテが学校へ行くことに興味を持ってくれるだけでOKだし。やっぱりヒナギクさんを捜しに出てきて正解だった。
「後はそうね、ナギにも手伝ってもらおうかしら」
『つまり?』
「保護者のナギに、その彼を通わせる様に交渉するって事ね」
『それなら大丈夫。うちの兄がナギを学校に行かせるために「行きたくても学校に行けない人もいますから」とか言っていたらしいから、あっちが勝手にやる気出すと思う』
「そう、じゃあ問題ないわね。まずは学校への意欲を持たせる事から。・・・あーでも、うちのお姉ちゃんに会ったら幻滅しかねないわね・・・」
『名門校なのに問題児がいるの?』
「いいえ、それが教師なのよ・・・」
『お、おう』
かなりげんなりして暗い顔になるヒナギクさん。そこまでか。かの悪名高い桂雪路先生の恐ろしさは。
『会わない様に努力するとか・・・?私も一緒に兄に着いて行って』
「お願いできるかしら。あ、ちょうどいいから貴方も見学して行きなさいね?」
『そのつもり』
リアル白皇学院。ハヤテのごとくを知る者ならば、カユラの初登校回で確実に見てみたいと思った場所の筈だ。それほどに凄い学校だ。うん、凄く見たい。そして上手く運べば通えるらしい。最高じゃないか、やるしかない。
「無表情なのにどこかやる気が伝わる・・・不思議な表情ね、貴女」
『初めて言われた』
元々この顔が無表情が得意だからこの顔なだけで、私自身はちゃんと笑えるみたいなんだけどね。笑い方って、いざ意識してやってみようと思うと分からない物なのだ。何か時々できるけどね。何が違うんだろ?
「じゃあ、話はこれで終わり。早ければ明日にでも来るのかしら?」
『多分恐らくきっと大丈夫だ問題ない』
「漠然とした台詞ね・・・貴方は国語が足りてないんじゃないかしら。入学したら勉強見てあげるわ♪」
『お手柔らかにお願い』
あの三人娘程成績が悪いはずがないから大丈夫だとは思うけど、ヒナギクさんの個別授業は怖いと言うのは覚えている。まあ身に付くんだろうけどね。
「マスター、また暇ができたら来るわね。さて、ユーさんだったかしら。途中まで一緒に帰らない?ちょうどいいから白皇学院まで案内してあげる。ちょっと忘れ物もあるしね」
『是非』
そんなこんなで、白皇学院までの道のりを歩く私達。ううむ、ピンク髪の生徒会長と銀髪赤眼のメイド・・・目立つなぁ、この組み合わせ。変なのに狙われないといいけど・・・とか思っていたら、何かグレーのコートに山高帽を被った目を紅く光らせた明らかにヤバゲな男が私達の前に立ちはだかった。・・・いや、確かに変なのとかフラグ的な事を思ったけどさ。
「貴様だな?三千院家のお嬢様に仕える魔装少女の片割れと言うのは!」
「魔装少女?この不審者、なにを言っているのかしらユーさん?」
『こんなのは求めてなかった』
「は?」
しかも地味に私も魔装少女になれるって知られてるみたいだし。・・・いや、気配で分かるんだっけ。メガロは。
『ヒナギクさん、下がって』
「主の命だ。お前が、欲しい!」
『その台詞は相川歩に言え』
こいつ、誰かと思えばアニメ二期で歩に襲い掛かったイカか!一期で言うザリーさんポジな奴!ヒナギクさんを下がらせた私は、一応持ってきたミストルティンをキーホルダーから通常の大きさに戻しながら走った。メガロの本性を現し、襲い掛かってくるイカメガロ。正直、ハヤテの元に向かって欲しかったぐらいにキモい。でも私がのこのこ一人で外に出てたから格好の獲物だよね。
「・・・ノモブヨ、ヲシ、ハシタワ、ドケダ、グンミーチャ、デー、リブラ」
切羽詰まっているので早口で唱えて魔装少女に変身、路地裏に入ると立ち止まって振り返りミストルティンを構える。さあ、何時でも来い。入ってきた瞬間真っ二つにしてくれる。ヒナギクさんに面倒な説明しないと行けなくなった報いを受けさせてくれるわ。
「イカ~!」
『Megalo Must Die!』
そんなメモを額に張り付けて、イカメガロに入って来ると同時にミストルティンを振り上げた瞬間だった。
「秘剣、燕返し!」
「イカァアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
聞き覚えのある声と共に、イカが縦横と流れる様に十字斬にされ断末魔を上げて消滅。私はミストルティンを振り上げた体勢で固まってしまった。・・・え?何で?何故、彼女がその翼を持っていてそのマントを着ていて、その刀を持っているの・・・?
「ユーさん、大丈夫?いきなり出て来るから驚いちゃって・・・ん?メガロマストダイ・・・メガロ死すべし?え、もしかして貴女もメガロを知っているの?」
『それは私の台詞』
目の前・・・イカメガロの背後だった場所にて、吸血忍者のマントの下から蝙蝠のそれに似た翼を生やし、低空飛行して来たと思われる、木の葉剣を携えた紅い瞳を今、黄色の瞳に戻した少女。その姿に、私はデジャブを感じる。
いやいや、ありえない。確かにあの神様は混ざった世界だとは言っていたけど、本当にありえない。何故なら、私は去年のクリスマスまでこの世界に存在しない・・・つまり、ユークリウッド・ヘルサイズから生き血を与えられて変質した、人間の生き血を吸うことで若さと強さを得てきた一族と言う存在自体が無いはずなのだ。だから、本当の意味でありえない。私やメガロがこの世界に存在し、ハヤテがゾンビになっているのと同じくして、ありえない。
『桂ヒナギク・・・貴女、吸血忍者なの?』
「メガロを知っているなら隠す理由は無いわね。ええ、そうよ。・・・もしかして貴女、ユークリウッド・ヘルサイズ?」
ハヤテと対を成す程の完璧超人にして才色兼備のスーパー美少女、桂ヒナギクが吸血忍者なんてありえない、そんな馬鹿な話があってたまるものか。
―――――これは生徒会長ですか?はい、だけど・・・吸血忍者らしいです。
ユーの知らないところで吸血忍者になっていた桂ヒナギク、登場。やっぱり高くは飛べません。
ついでに喫茶どんぐりも登場。マスターの名前を捜すのに時間がかかってついでにコミック全巻読破していたとか言えない・・・
アニメ二期のイカメガロも登場。最近の特撮でイカが凄い豪華にやられていたので記念にと。そろそろオリジナルメガロもどんどん出していくべきだろうか。蟹とか。チワワとかも出したいですけどね。
ヒナギクが何で吸血忍者でユークリウッドの名やメガロの事を知っていたのか。そしてハヤテとユーは学校に行くことができるのか。今度こそ早く更新する所存なので次回もお楽しみに!感想や評価などをいただけると励みになります!